まよらなブログ

34章1話。


「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。

もしかしたら、井藤さんの本からここに来る方もいるかもしれないのでご挨拶しておこう。

まあ、どうもどうも初めまして。
週1更新を目標に2010年から書いてますが、いまだに終わらない世界樹3話です。
長いので、適当に摘み読みしてもらえれば。
最初から読もうとすると、たぶん途中で嫌になるので適当が一番です。

そして、丁度「パーティメンバー改編」編なので、
かなり読みにくいタイミングだなあ・・・と思ってます。まあ、しょうがない。



それでは、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。



34章1話
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 アヴィーがグートルーネ姫の元から宿に帰ってきたときには、ディスケもマルカブの病室にやってきていた。アヴィーは、姫の様子と頼みを伝え、そのためにレグルスに協力を求めたことを仲間たちに伝えた。
「・・・勝手に決めて、ごめんなさい。」
 アヴィーが頭を下げると、窓枠に停まっているスハイル(病室には入らないが窓を開けていたのでその場に参加している)が「ぴぴぃー、ぴよぴよ!」とアヴィーを庇う。静かに、とオリヒメに窘められて、スハイルは大人しくなった。
「・・・・・・姫さんは、・・・ギリギリのところで生きてるんだな・・・」
 マルカブが自分だってギリギリの体調だったが呟いた。息を吐き、シーツを握りしめる。俺は何をやっているんだ、と考えているのは明白だった。
「・・・マルカブは、自分の体のことだけ考えて。」
 アヴィーは静かだが鋭く言った。
「探索のことは大丈夫。レグルスに聞いたら、ミツナミは医術も使えるって。セルファはシェリアクさんと同じ防御の技が使える。僕とオリヒメの技や弱点を考えれば、悪くない編成だよ。」
 そうだよね?とアヴィーはオリヒメに尋ねた。オリヒメは、そうですが、と答えた上でディスケを見上げた。ディスケは、あー・・・と声を上げながら、せわしなく髭を撫で、
「・・・アヴィー、なんでそこに俺が入ってないんだ?」
「ディスケは、マルカブのために何か準備してるんでしょう?」
「・・・コロネが何か言ったのか?」
「・・・コロネさんを疑うのはよくないよ。コロネさんは、ディスケのことを一番に考えてるのに。」
 アヴィーが唇を尖らせた。それを見て、マルカブとディスケはぞっとしたものを感じてしまう。仕草はアヴィーだ。ここにいるのは、確かにアヴィーだ。だが、そこには無邪気さの欠片もない。諦観が漂う様子に、マルカブは声を絞り出した。
「・・・アヴィー・・・お前、何を言われた・・・?」
「さっき言ったとおりだよ。」
「・・・姫さんにとって時間がないことは、分かった。・・・こんなことになって、申し訳ないと思う・・・」
「・・・マルカブのせいじゃないよ。お姫様も元老院のおばあちゃんも、そう言ってた。だから・・・気にしないで。」
「でも、だからって、お前が一人で背負うことはないんだ。」
 マルカブの声は掠れていた。体力も戻っていなければ、傷からくる熱もある。気力だって戻っていない。声の掠れは、当然だ。当然だったが・・・、怪我だけが原因でもないようだった。
「・・・マルカブが背負うことでもないよ。」
 アヴィーはゆっくり首を振って、そう言った。誰かに似てる・・・とマルカブは思い、その誰かが分からないまま、急に哀しくなった。その誰かも、「そうじゃないんだよ。」と言って自分の前から居なくなった。大人のような諦観で、いなくなった。
「マルカブは、まず体力を戻してよ。何より、それが先だよ。」
「・・・それは、そうだけど・・・」
「なあ、」
 しばらく黙っていたディスケが、声を出した。
「それで、なんで、俺が探索メンバーにいないんだ?」
「ディスケにも、やることがあるからだよ。違う?」
「・・・・・・俺の、やることって?」
「昨日、宿に帰ってこなかったのは、やることがあったからでしょう?」
 ディスケはアヴィーを見つめ、
「・・・お前さ、怒ってるの?」
 眉を寄せて、そう聞いた。オリヒメがぱっと立ち上がり、
「ディスケ!そういう言い方はどうかと思います。アヴィーは、ずっと貴方を待って・・・・・・」
「そうだね、怒ってたよ。」
 アヴィーはオリヒメを制して、淡々と答えた。
「・・・でも、もういいよ。理由があるのは、分かってるもん。マルカブのためになることをしてることも、分かってるもん。・・・だから、いいよ。」
 マルカブは、アヴィーが怒りを抱いているだと気が付いた。それで、謝罪も拒否していることにも気が付いた。無意識にアヴィーがディスケを追い込んでいることにも気が付いた。だが、今のアヴィーを咎めることなど出来なかった。せめてディスケは気が付かないで欲しいと・・・せめて気が付かない振りをしてほしいと思った。
「・・・つまり」
 ディスケは口を開いてしまった。
「もう遅いって言いたいのか?」
 マルカブが止めるよりも先に、口を開いてしまった。アヴィーはぱっと顔を上げた。
「そうだよ、もう遅いんだ。今更、何かを言うのなら、なんで昨日、帰ってこなかったの?何を言ったって遅いんだよ。・・・、・・・遅いんだよ!そもそもディスケが・・・!ディスケが悪」
「・・・、アヴィー・・・!」
 マルカブがベッドの上を這うようにして身を起こし、アヴィーの袖を掴んだ。
「・・・止めろ。」
「だって、マルカブ、・・・だって・・・!」
「・・・・・・、すまなかった・・・。独りにして、すまなかった。」
 マルカブが、謝った。その掠れ声にアヴィーはぐっと息を飲み、マルカブの手を袖から外してから、
「・・・・・・、とにかく、僕はもう決めたから!」
 そう叫んで、病室から出て行った。オリヒメがマルカブを支えて、彼を再びベッドに横たわらせる。マルカブは瞼を手のひらで覆いながら、
「・・・悪い。オリヒメ、スハイル。アヴィーを追ってくれ。」
「はい。」
「ぴよ!」
 オリヒメが扉から、スハイルは外からアヴィーを追っていく。マルカブは瞼を押さえたままで、
「・・・・・・、ディスケ。・・・すまない。あれはアヴィーの八つ当たりだ。許してやってくれ・・・。」
「おとーさんにそう言われちゃなあ・・・」
 ディスケはベッドの縁に腰掛け、肩を落とした。マルカブは、泣き出しそうな溜息を吐いた後、
「・・・あれじゃ、まるで、カリーナだ。」
「・・・何が?」
「・・・あの、アヴィーが全部受け入れて決めたっていう態度・・・。・・・俺に、国に帰るって言ったときのカリーナと同じだ。」
「つまり・・・何があっても譲ってくれないってこと?」
「・・・・・・・・・、そうなんだよ・・・。」
 マルカブは両手で顔を覆い、しばらく沈黙した。ディスケは溜息を吐いた。
「・・・マルカブ、」
「・・・あ?」
「・・・俺さ、義足を作ろうと思って深都で調べ物をしていた。」
「・・・・・・・・・、ああ。」
「・・・・・・でも、必要だったことは、これからをどうするかじゃなくて、今をどう耐えるかだったんだな。」
 ディスケは苦笑を浮かべたが、声は笑っていなかった。
「・・・何のために調べてたんだろうなあ、俺は。お前のためのはずなのに、お前はアヴィーが放ったらかしにされる方が辛いってこと、すっかり忘れてさ。・・・これじゃ、俺のために調べてたってことになるよ。アヴィーが怒って当然だ。ここに来たくなかったから、帰ってこなかったって思われても、・・・・・・きっとしょうがない。」
 マルカブは瞼から手を離し、ディスケの後頭部を見た。溜息を隠しもせずに吐いてから、
「・・・それでも、お前は俺のために調べていたって、俺は言い続けるぞ。」
「・・・・・・おとーさんは優しいから大好きだよー。」
 気色悪い、という気力はマルカブには無かった。・・・そもそも全ては自分の所為だ。不幸な事故で自分の所為ではなかったとしても、それでもアヴィーの所為でもディスケの所為でもない。
 だから、マルカブは背負うことにした。仲間の、理由を背負うことにした。今の自分には、それぐらいしかできないのだから。
「・・・ディスケ、だったら、今から、俺のために調べろよ。」
「・・・ん?」
「今までの理由は置いておけ。今から、俺のために義足のこと調べればいい。そうすりゃ、結果、嘘にはならない。」
 マルカブは掠れ声だが、しっかりした言葉で伝える。振り返ったディスケの眼鏡の奥の瞳が、一度大きく開かれた。
「・・・そうしたら、俺も一緒にアヴィーに謝ってやる。お前は俺のために時間を費やしたんだ、と謝れる。・・・・・・だから、」
 泣くなよ、とマルカブは言い、ディスケは、泣いてねえよ、と小さく笑った。
「・・・ああ、でも、」
 ディスケは、やっと笑った。
「泣きそう。」
 マルカブは鼻を鳴らして小さく笑った。
「頭、撫でてやろうか?」
「それはカリーナに再会する日まで取っとけよー。」
 ディスケは、一度大きく息を吐き、立ち上がった。
「・・・・・・、決めた。俺は、お前に脚をくれてやる。何があっても、くれてやる。」
 ディスケはマルカブを見下ろして、宣言した。
「それがアヴィーへの謝罪だろうし、・・・お前はやっぱり、どこかの誰かを心配して、その手を差し出す方がよっぽど性に合ってるんだ。・・・手を差し出されるのが俺だけじゃ・・・カリーナやアヴィーだけじゃ、勿体ない。」
 マルカブは複雑な顔をした。ディスケは苦笑した。本人は分かっていないが、この男は海に出ていくべきなのだ。その先で誰かの心配をして一緒に謝ったりして、その誰かを立ち上がらせるだろうから。
「お前を必要とする誰かのところにいけるように、」
 こんなところで立ち止まらせてはいけない、そう思いながらディスケは振り返った。
「俺が脚をくれてやる。」


*****

 スハイルは、宿も飛び出してきたアヴィーを追った。アヴィーが立ち止まるまでは声もかけずに、ただ後を追う。オリヒメがさらにアヴィーを追っていると分かっていたので、彼女の手がかりになるように自分の羽を抜いては花壇に挿したり石の下に敷いたりしながら、アヴィーを追っていく。
 樹海の入り口までアヴィーは走り、緑豊かな森の中で座り込み、しくしくと泣き出した。
「・・・ぴぴぃー・・・」
 スハイルはアヴィーの前まで飛んでいき、彼を見上げた。アヴィーは瞼を拭いながら、唇を尖らせた。
「・・・スハイル、付いてこないでよう・・・。」
「ぴー・・・。ぴよーぴん、ぴぴぃー、ぴよー・・・」
「・・・マルカブが、付いて行けって言ったの?」
「・・・ぴ、ぴー!?ぴよーぴん、ぴー!ぴー!?」
 スハイルは慌てて首を振るが、誤魔化しているのは明白だった。アヴィーは小さく笑みを浮かべた。
「・・・心配させてごめんね、スハイル。」
「・・・ぴー・・・。」
 スハイルはアヴィーを見つめた後に、自分の翼をアヴィーの右手の甲に押し付け始めた。
「・・・スハイル、何をしてるの・・・?」
「ぴ・・・!ぴ・・・!!」
「・・・もしかして、」
 アヴィーは自分の右手の甲を見つめ、
「印のこと?」
「ぴよ!ぴぴ!ぴぴ!!」
 スハイルは、どうやら印を自分に移そうとしているらしい。そうすれば、アヴィーは楽になるだろう、とそう考えているらしい。
「・・・ありがとう、スハイル。」
 アヴィーは笑い、自分の手の甲をさすった。
「・・・でも、いいんだよ。スハイル。スハイルが真祖を倒すこともないんだよ。これは・・・僕がすることだから。」
 ディスケにあんなこと言ったんだから僕は僕の仕事をしないとだよね、とアヴィーは呟いた。スハイルは、ぶるぶる首を振った。
「・・・アヴィー!スハイル!」
 オリヒメが息を上げて駆けてくる。彼女は一度息を整えてから、
「スハイル!あなた、こんなことまでしなくていいんです!」
 自分が握ってきた何枚もの羽を見せて、泣きそうな顔で叫ぶように怒鳴った。アヴィーは、少し大きさが変わったように見えるスハイルを見ながら、
「スハイル、羽、どうしたの?」
「ぴ!?ぴー・・・・・・、ぴよ!ぴえぴぴぴ!ぴえぴぴぴ!」
 スハイルは何か誤魔化したようだった。(クー・シーがいれば、「生え変わりピヨ!」と言ってると通訳をしただろう。)
「・・・、おそらく道標代わりでしょう。」
 オリヒメが代わりに答えて溜息を吐き、アヴィーの前に屈んだ。
「飛ばないように石の下に敷いたり、看板に挿してありました。機転が利くのはいいのですが・・・。」
「ぴよん!ぴぴ、ぴぴよぴぴよ!」
「誉めてません。」
 オリヒメはぴしゃり、と言い放ったが、スハイルの背を撫でてやった。
「自分を痛めつけるような真似をしなくていいんです。」
 オリヒメは、スハイルを撫でながらアヴィーを見つめた。
「信じてください。そんなことをしなくても、私はアヴィーを見つけます。」
「・・・・・・、」
 アヴィーはじっとスハイルを見つめ、オリヒメを見つめ、それからずずずと鼻をすすった。
「・・・そうだよ、スハイルもオリヒメも、痛い思いをすることないんだよ。マルカブやディスケだって、同じだよ。」
「・・・それはあなたもですよ、アヴィー。」
「・・・うん。でも、僕が呼ばれているんだよ。」
 アヴィーは右手の甲・・・印が現れた部分をさすってから・・・拳を握った。
「お姫様も戦ってて、カリーナも帰りたくないのに帰ったよ。僕も、僕のやれることをするんだよ。この印を受け取った僕が行かなきゃ、他に行ける人はいない。これは僕の仕事だよ。」
「ぴー!!」
 スハイルが首を振り、オリヒメは不満そうに眉を寄せた。そんな二人に、「でも・・・」とアヴィーは声を振るわせて伝えた。
「・・・でも・・・、僕、独りじゃ無理だ!二人とも、一緒に来て!」
「ぴよ!!」
「勿論です。」
 スハイルとオリヒメの返事は即答だった。



(34章2話に続く)

---------------あとがきのようなもの------------------

ただいまの一番の漢前はスハイルです。


あまりぱっとしない話ですが、
実は、「7まで続かないと終わらない志水の世界樹世界観」の下地になる話です。
我ながら、やりすぎだなとは思ってます。(笑)

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