まよらなブログ

34章3話。

「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。

この次の章で真ボス戦になるので、ゲームを起動して
キャラの戦い方を思い出そうとしてるんですが、
「・・・・・・・・・真ボスの思い出がまるでない・・・・・・」と思って愕然としてます。
苦労した記憶すらないんですが・・・(実際一番苦労したのは深王戦)
どうしようかなあ・・・もう、真ボス戦はさくっと終わらせようかなあ・・・と考え中。


それでは、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。

34章3話
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 マルカブは苦しんでいた。
「・・・アヴィー、無事に探索できてるんだろうな・・・・・・オリヒメに無茶させてないだろうな・・・スハイルも余計なことしなければいいけど・・・」
 ・・・苦しみの内容は、脚の痛みではなくアヴィーたちへの心配だ。
 アヴィーたちは探索に向かいディスケは義足の研究に行ったので、病室には久々に誰もいない。(コロネやマリアが見舞いに顔を出してくれたが。)マルカブは一人でベッドの上を転がりながら、
「・・・・・・・・・・・・、心配で吐きそう・・・」
 と呟いた。心配で胸一杯になっているが、脚の痛みは心配に誤魔化されず
「俺は俺で、無いはずの脚が痛いし・・・」
 ついでのように愚痴る。無いはずの右足の親指の付け根が、ずんずんと痛むのは何故なのか。幻肢という症状だとは知っている。だが、何故なのか。なんで人間はこんなめんどくさい体として作られたのか。
 右足の親指の付け根を擦ろうとして、寝たままで身を縮める。無いはずの膝も曲げて、指に触れようとする。しかし、そこに足はない。こんなにしっかりと「曲げた」のに、足はない。
 左目が潰れたとき以上の違和感だ、とマルカブは息を吐いた。目は潰れたのであって、無くしたわけではない。潰れてはいるが、存在はしている。右脚は、無くしたのに存在を認識している。この痛みは確かに存在している。
 脚の不在は埋められない。アヴィーたちの不在には耐えられない。マルカブはシーツを掴んで、
「・・・・・・早く帰ってこい・・・」
 そう呻く。その耳に、扉がノックされる音が飛び込んできて、マルカブはぱっと顔を上げた。
「・・・マルカブ、起きてる?」
 アヴィーの遠慮がちな声がした。遠慮なんかしないで飛び込んでこい、と思いながら、「起きてるぞ。」と返事をする。扉が開いて、アヴィーとオリヒメが顔を出した。探索帰りからまっすぐ病室に向かってきたらしく、顔も服も汚れていた。
 ・・・・・・、マルカブは素直に安堵した。
「おかえり。」
「うん、ただいま。」
「スハイルは?外か?」
「ディスケの家に行くって。家にディスケはいないかもしれないけど、コロネさんがいるだろうから別れた。」
「そうか。・・・誰も怪我しなかったか?」
「平気だよ。」
 多くは語らないで、アヴィーは部屋に入ってくる。オリヒメはちらりと水差しを見てから、
「マルカブ、お水を換えてきますね。」
「あ、いいよ。さっき、マリアさんが・・・」
「換えてきます。」
 問答無用で水差しを持って、オリヒメは部屋から出ていった。マルカブは息を吐いて、アヴィーを見上げた。
「・・・何かあったか?」
「・・・・・・、ううん。平気だよ。」
 何かあった、と言っているような返事をアヴィーはして、マルカブはもう一度息を吐いたが・・・、「そうか」と答えるだけだった。まあ座れ、と言ってから、サイドテーブルの上のお菓子を顎で指す。
「それ、マリアさんから。俺宛てというより、お前等に持ってきたものだろうから。食っていいぞ。」
「うん。」
 アヴィーはテーブルの上の箱を開けた。中身は薄いクッキーだ。アヴィーは一つ口に入れて、マルカブに箱を差し出した。正直、食欲もないマルカブは緩く首を振った。クッキーはアヴィーの口の中でさあっと溶けたが、それを飲み込むよりも先にマルカブが問いかけた。
「・・・探索はどうだった?」
「・・・、うん。一度地下15階に上がってから、また16階に下がる構造みたい。その階段を今、探してるとこ。・・・レグルスたちは、強かった。僕らが怪我をしてないのは、セルファが盾で守ったからだし、ミツナミが先に敵を倒しちゃうからだよ。」
「・・・そうか。怪我がないのが何よりだ。」
 マルカブは心底安心した様子で息を吐いた。それを見て、アヴィーはやはりレグルスたちに協力を頼んでよかったのだ、と思うことにする。マルカブにこれ以上の心労をかけるわけにいかないのだから、自分とオリヒメが安全に探索を進められる組み合わせで進んでよかったのだ、・・・多分。
「マルカブ、・・・具合はどう?」
 アヴィーはクッキーをもう一枚摘みながら尋ねて、それから馬鹿なことを聞いたな、と後悔する。具合がいいわけもないし、仮に具合が悪くともマルカブはそれを正直に言うわけがない。そして、やっぱりそうだった。
「ああ、前よりは良くなった。」
「・・・本当に?」
「本当だ。」
「本当に?」
「・・・何を疑ってるんだよ・・・。本当だ。脚が痛むぐらいで・・・」
 と言い掛けて、マルカブは口を噤んだ。
「・・・脚が、痛いの?」
 アヴィーはシーツの下に隠れて見えない・・・見えてもそこには「無い」のだが・・・、マルカブの右脚を「見て」、尋ねた。マルカブは無意識に脚をさすろうとして、しかし、そこに脚がないことに気づき、手は宙に浮く。右手を意味もなく、くるくると回しながら、
「・・・あー・・・、まあ、そうだな・・・」
「・・・幻肢っていうんでしょう?」
「よく知ってるな。」
「・・・、エトリアでもそれで痛い思いをしている人、いたから。ビリビリ痛むって苦しんでた人もいた。」
 冒険者のいるエトリアでは、同じように体の一部を失った人もいるのだろう。マルカブは誤魔化しきれないことを悟った。アヴィーは、うー・・・と唸って、
「・・・マルカブ、我慢してない?」
「・・・お前ほどは我慢してない、と思う。」
「比較しないでよ。マルカブの痛みと僕が苦しいのは違う。」
「・・・お前、苦しいんだな。」
「・・・マルカブ!僕の心配はいいんだよう!」
「いいわけないだろ・・・!」
 お前が苦しいと俺が苦しいんだから、とはマルカブは口にしなかった。そんなことを言った日には、アヴィーは絶対に弱音を吐くまいとする。少なくとも、今のアヴィーはそうする。痛みがあると口を滑らせたマルカブだが、それだけは口を滑らせなかった。
「・・・比較はしたのは、悪かった。・・・けど、だからこそ、お前も、比較しなくていい。」
 マルカブは息を吐いた。
「お前と、俺の、苦しみは違う。だから、どっちが苦しいとか・・・考えないでおこう。どっちも苦しいでいいじゃねえか。」
「・・・じゃあ、マルカブ。・・・痛いって言って。」
 アヴィーはマルカブを睨むように見つめた。
「僕の前で我慢しないで。」
「・・・ガキの前で、意地ぐらい、張らせろよ・・・。」
「・・・・・・、マルカブ。」
 アヴィーはぐっと拳を作り、
「・・・僕はもう、『アルゴー』の子どもを辞めるよ。」
 そう、宣言した。マルカブは顔を上げた。そのマルカブに向かって、アヴィーはもう一度宣言した。
「今の『アルゴー』のリーダーは、僕だ。僕が、探索を進めている。」
 マルカブはアヴィーを見つめた。しばらく見つめた後に、眉を下げ、息を吐いた。吐きながら、肩を下ろし、俯いた。
「・・・・・・、ああ。・・・ああ。そうだな。・・・そうだ。・・・こんな、こんな形だなんて、思ってもなかったけど。」
 マルカブは、自分の右脚に触れた。そこに脚はなかったが、触れた。こんな短期間に、俺は一体いくつのものを無くさなきゃいけないのだ。カリーナ、右脚、そして『子ども』としてのアヴィー。
 ・・・だが、カリーナとアヴィーが自分の元からいつか居なくなるなんて、そんなことは分かっていた。自分が思っているよりも早く、大人になってしまうんだろう。そんなことはとっくに覚悟していたはずだ。その時は、その背中を押そう。自分の寂しさは、その夜に酒でも飲んで受け流せばいいのだ。・・・そう、覚悟していたはずだ。
「・・・ごめん。」
 マルカブは鼻を啜った。今の自分には、その背中を押すことができない。背中が遠い。
「俺は、お前と先に進む、と言ったのに・・・、その約束が果たせない。」
 アヴィーは瞬きをし・・・、そして思い出した。そう、そうだ。いつか、そう、この男はそう言ってくれたのだ。「その結果がどうなるか、自分たちが確かめないといけない。」そう言って、先に進む、と言った自分に、この男はそう言ってくれたのだ。マルカブは約束を忘れない。自分が忘れているような約束も、忘れない。それがどれだけ自分たちを救うのか、アヴィーは改めて理解した。あのとき、マルカブは視界を塞いでくれて、そして自分を独りにはしなかった。・・・そして約束を覚えている彼は、今まで一度だって、自分を独りにしていないのだ!
 マルカブは顔を上げた。隻眼が、アヴィーを見つめる。何かを定めた・・・、新たな約束を見つめた瞳で、アヴィーを見つめた。遠い背中が小さいことを知っている彼は、アヴィーを独りにしないためにもう一度約束をした。
「俺は、お前とは、一緒にいけない。けど・・・、けれど、別の道でお前とカリーナを追う。」
 マルカブはカリーナのことも放っておかない。アヴィーは、隣にカリーナがいるように感じて腕をさすった。遠い場所でカリーナも、痛みや辛さを我慢して戦っている。戦う土俵は異なっても、戦っている。だから、自分も戦えるのだとしたら、やはり自分は独りではないのだ。
 マルカブはもう一度、「必ず追うから。」と囁いて、それから唸るように声を出した。
「ただ・・・、・・・ただ!・・・お前に、『アルゴー』を押し付けることになってしまう。それだけは、」
 ごめん、ともう一度マルカブは言い、そして、そのまま・・・頭を下げた。
「・・・『アルゴー』をよろしく頼む。」

*****

 水差しを抱えたまま、オリヒメは廊下に立っている。中の会話は聞こえないが、・・・きっと大切な話をしているに決まっている。
 壁に背をつけてぼんやり立っているオリヒメは、ふと顔を上げた。廊下の先に、先ほど別れたばかりのセルファがいた。鎧を纏ってはおらず、ぴっちりとしたインナーとスカート姿だった。
 セルファはオリヒメを見て、一瞬たじろいだが、そのまま歩いてきた。彼女が歩いていく方向は、治療院の診察室だ。
「・・・怪我を?」 
 オリヒメは壁に背をつけたまま問いかける。セルファは一瞬口ごもったが、歩みは止めなかった。
「ええ。軽い打撲です。ミツナミが、念のために診てもらえと。」
 返事にオリヒメは、壁から背を離して背筋を伸ばす。
「・・・私たちも守ったための打撲になりますね。」
「頭は下げないでください。」
 セルファはオリヒメとすれ違いつつ、そっけなく牽制した。
「私は重騎士で、盾で皆を守ることが役目です。それだけです。」
「・・・、では、」
 オリヒメは、去っていこうとするセルファに向かって声を張った。
「私は、二刀で魔物を切り捨てましょう。それが、あなたの盾に応えることのようですから。」
 セルファは一度、立ち止まり、オリヒメを振り返る。そのセルファに、オリヒメは頭を下げた。セルファが牽制する暇を与えず、頭を下げた。
「ですが、あなたの仲間を・・・仲間の矜持を疑ったことは謝罪します。あの疑惑も私には必要なことですが、あなたにとっては仲間への信頼を踏みにじられたも同然でしょうから。」
「・・・ど、動揺を狙っての、謝罪なんて、卑怯・・・!」
 顔をあげたオリヒメは、セルファが耳まで赤くなって呻いているのを
見た。あ、彼女は照れ屋で意地っ張りなんだ、とオリヒメは気づいた。
 セルファは、ともかく、と咳払いをし、
「ミ・・・ミツナミの薬は効きます。疑うのは勝手でも、それで死んだら・・・」
「ミツナミが悲しみますか?」
「・・・・・・、」
「レグルスがそう言っていました。」
 オリヒメの淡々とした口調に反して、セルファはますます赤くなる。オリヒメは、さらにセルファが赤くなることも考えつつ、オリヒメが抱いた感想をそのまま口にした。
「あなた方はあなた方で、信頼しあった三人ですね。」
 セルファは首もとまで赤くして目を泳がせた。オリヒメは溜息を吐いた。
「・・・私も、そういう方々を知っています。・・・しかし、今は(と、オリヒメは扉を見た)どうなんでしょうか。」
「・・・・・・、」
 セルファは、ぐっと喉の奥で何かが詰まったような音を出してから、
「・・・・・・私もミツナミも、国家の敵として処罰を受けるところでした。」
 床の木目を見つめながら、口にした。オリヒメは、淡々と質問を返す。
「・・・テロリストか何かですか?」
「・・・私の家が、謀反を起こしました。私は妾腹の娘でしたので、父は、私を使用人の子で由緒ある家とは無関係の人間だ、と断じました。・・・そう言って、私の命を守ってくれました。その父の最後の矜持をレグルス様は認めてくださり、ご自分のお立場が悪くなるのに私を臣下にしてくださいました。ミツナミのことも、臣下にして守ってくださっています。私たちには、『正しく』在れば必ず認めてもらえる、そう言って、ご自分は『厳しく』在られようとします。その恩に、私たちは報いたいだけで、・・・その恩に報いたいと思っているミツナミのことを否定されたくないだけです。」
 セルファは、そしてちらりと扉を見てから、
「・・・信頼は簡単に壊れます。・・・信頼を取り戻すことも困難です。でも、信頼を取り戻すことが不可能だ、と思いません。レグルス様はそう言って私たちを守ってくださっているのだから、私はそう信じています。」
 ・・・わかりにくいが、オリヒメは励まされたことを理解した。仮に扉の奥で信頼が壊れていても、信頼を取り戻すことだってある、と彼女は言っているのだ。
 オリヒメは息を吐き、頭を下げた。
「ありがとうございます。」
 セルファはやっぱり真っ赤になり、忘れてください!と言って廊下を駆けていった。


(34章4話に続く)

---------------あとがきのようなもの------------------

この話も、13章(の5話)を読んでることが前提かもしれません。
アヴィーのオトン越えシリーズ・第一話です。


今回は、セルファについて書いてます。
ツインテールのファランクスで、サブはファーマーです。(探索スキル所持)
二部パーティは紙装甲なので彼女のガード頼みでした。主にオリヒメをディバイトガード。
照れ屋、という設定は割と最近出来ました。
照れ屋設定から、赤パイタイプか・・・と思った途端、俄然書きやすくなった。(笑)

ちなみに「セルファ」は
しし座β星(デネボラ)の別名からとってます。
単純に「主がレグルス(しし座α星)だから」という理由です。

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