まよらなブログ

34章5話。

「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。


今回の話を書く前に、義肢の本も読みましたが、
「・・・筋電義手の構造、分からん・・・」かったので、
オーバーテクノロジー的な方向で書くことにしました。
実際のものとは異なりますので、ご了承ください。
神経に繋ぐっていう設定でいきます、まんま鋼の機械鎧な方向です。
ここは鋼サイトですから それぐらいオマージュさせてほしい。(開き直った)


それでは、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。


34章5話
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 ディスケが大量の書類を持ってマルカブの病室にやってきたのは、彼が月ではなく地上を往く手段を人に与えるのだ、と決めた三日後だった。病室にはマルカブとアヴィー、そして治療院の医師がいる。スハイルが窓の外から中を覗き込み、人間たちを心配そうに見つめていた。
「・・・つまり、」
 ディスケは図面を指した。そこにはアンドロの設計図が描かれている。
「この技術を使えば、かなり精巧な義肢を作ることが可能なわけ。」
「・・・・・・よく分からないが、分かった。」
 マルカブは理解することを放棄した返事をする。アヴィーが図面をじーっと見つめつつ、首を傾げた。
「・・・でも、どうやって元の体にこの義足をつけるの?木の義足で、受け皿みたいなところに脚を乗せて固定してるのを見たことはあるけど・・・」
「体を支えるなら、それでいいんだけど、」
 ディスケは自分の手を見つめ、その手を握っては開いて・・・と繰り返す。
「俺は、生身の脚と同じように動く義肢を作りたい。意志で動く義足が作りたいんだよ。足以上に手の方が、それが必要だと思うけど。人間は脳から出る信号が神経と通って、あちこち動かすことが出来るんだけど、その信号が『でんきしんごう』ってやつらしいんだ。ほら、前にアミディスの家で、『でんち』を見せて貰ったろ?あれが発生させるのが『でんき』で、人間の体には弱ーーい『でんき』が流れてるんだってさ。」
 アヴィーが「そうなんですか?」と医師を見上げるが、医師は「興味深い話だとは思う。」と答えるだけだった。ディスケは、とにかく、と話を続けた。
「まあ、『でんき』が流れてる、ってことで話を進めるぞ。頭が「動くぞ」と思ったら神経の中を『でんき』が通って、筋肉を収縮させる。で、体が動く・・・らしいんだ。それでな、皮膚や筋肉に流れてくる弱い『でんき』をキャッチしたら機械内で増幅・変換し義肢に内蔵されたリレースイッチに伝えて駆動機構にエネルギーを流」
「・・・ディスケ、興奮するな。専門用語が出てきたぞ。」
 マルカブが制すると、ディスケは我に返って「悪い悪い!」と手を振った。
「まあ、深都には二つの義肢技術があるらしい。一つは皮膚の『でんき』信号を受け取って増幅させるタイプ。このタイプの義手だと、手の開閉と手首を回す動きが出来る。今の技術では指を一本ずつ動かすことは難しい、と思ってくれ。もう一つの技術は、より高度なもの。世界樹が深都に与えた知識と技術を使った義肢の技術・・・いや御業なんだけど、」
 と、ディスケは別の図面を広げた。複雑な機械の設計図だが・・・、アンドロの設計図を拡大した図面のようだ。
「神経と機械を繋ぎ、直接信号のやりとりをする技術。こちらは指の一本ずつまで動かせると思ってほしい。」
 神経を?と医者が眉を寄せた。あ、これマズい方向だ、とマルカブは悟った。ディスケは、そう、と頷いた。
「深王は脳と機械の体を直接繋いだ。さすがに、今の医療技術じゃ脳をいじるのは無理。だから、神経。深都には少ないけど臨床例もある。」
 ディスケは論文の束らしきものを医者に押しつけた。医者は紙をぱらぱらをめくる。ディスケは、ちょっと失礼、と布団を剥いで、マルカブの右脚を露出させた・・・といってもそこに脚はないのだが。アヴィーが泣きそうな顔をしたが、ディスケは無視して、マルカブの大腿部・・・今となっては右脚の先端部を指す。
「マルカブの脚の先に、義足の接合部になる機械を取り付ける。そこに神経の束をまとめる。」
 そして、右脚の先を示した。
「で、その機械と義足を接続することになる。マルカブの脚の神経と義足を仲介するのが、接合部の機械の役目だな。」
「そうしたら、マルカブの足は深王さまの腕みたいに自由に動くの?」
 アヴィーの問いかけに、「同じ機械を付ければなー。」とディスケは答えた。アヴィーはぱあ!と顔を輝かせた。しかし、マルカブは脚に触れつつ、
「・・・・・・、さっきから先生が苦い顔をしているのが、俺はすっごく気になるんだが。」
 ディスケは肩を竦めた。
「まあ、そりゃあそうだと思うよー?だって、神経と機械を繋ぐんだぞ?神経に直接触れるってすっごい激痛になるわけよ?麻酔は効くのかとか機械の脚と繋げるときの激痛はどうなのかとか、そもそも生身の体と機械を繋ぐってどうなのさとか、いろいろ考えるだろうさー。」
 こともなげにディスケは言った。マルカブは頭を抱え、アヴィーはぽかんと口を開けて、医師を見上げた。医師は、そういうことだよ、と頷いた。アヴィーはディスケをきっ!と睨み、
「ディスケは、マルカブにもっと痛い思いをさせるの!?」
「させない、と言ったら嘘になっちゃうからな。接合部の機械を付けるために、もう一回手術する必要もあるわけよ。まあ、その術中・術後は激痛らしいし、義足付けた後のリハビリも辛いらしい。」
「それなのにマルカブに手術しろっていうの!?」
「しろ、とは言わない。」
 ディスケは、マルカブに伝えた。軽い口調が、急に引き締まった。
「選んでくれ、とは言う。そして、俺に協力してほしい、とも。はっきり言って、足に繊細な動きは必要はない。不自由はあっても生活は出来る。」
「走ったり跳んだり蹴りつけたりするような生活を選ばなければな。そして、そんな生活は実際・・・選べる。」
 マルカブは両手を組んで、ディスケを見上げた。では何故?お前は機械の足を付けてほしいというのか?何を協力してほしいというのか?その真意を示せるのか?と視線だけで問いかける。ディスケは視線の問いかけを正しく理解した。でもさ、とディスケは続けた。
「お前の義足のデータを元に、俺はこれから多くの人の手足を作り出したいんだ。」
 マルカブが溜息をついて、参ったな、とクッションに背中を預けた。一方で、アヴィーはみるみる顔を赤くさせた。怒りで、だ。
「それって・・・マルカブを実験台にするってこと!?」
「まあ、結果的にはそうるんだよな。」
「僕、そんなの許さないよ!」
 アヴィーの激高に、ディスケは苦笑した。
「・・・懐かしいなあ。ケトスを倒した後、お前、言ったよなあ。もし深都がなかったら、俺を許さないって。」
「今はそれはどうでもいいでしょう!?」
「そう、どうでもいいよ。でも、俺はその時と同じ答えを返す。」
 ディスケははっきりと、アヴィーではなくマルカブに告げた。
「アヴィーに許されなくてもお前に恨まれても、俺は構わない。」
「・・・・・・、俺が構う。」
 マルカブはもう一度息を吐いた。仲良くやれよ、と呟いてから、
「・・・・・・お前にとって、俺の脚作りが目的でもゴールじゃないんだな?」
「そうだな。手段になっちゃった。」
 ディスケは笑った。へらりと笑う。だが、それはバツが悪そうだった。それでも言わなければならないから、へらりと笑う。
「いろいろコロネと話してさ。お前の脚を作ることで、誰かの役に立とうって。誰かのためになって俺が出来ることがあるなら、やり続けようって。カリーナほどじゃないけどさ、俺もやれることをやらないと、と思ったわけだ。あ、ちなみに俺、コロネと婚約したから。」
「・・・・・・・・・、は?」
 ぽろっと出てきた割と重要な話題に、アヴィーが思わず聞き返した。反してマルカブは全く驚かなかった。彼らしくない反応だが。
「コロネのことは今更だろ。分かった、協力する。アヴィー、ディスケのことは許せ。」
 溜息すらつかない即決だった。マルカブらしからぬ即決に、アヴィーは「え!?」と声を出した。
「どういうこと!?マルカブ、痛い思いとか辛い思いが続くんだよ!?」
「それとこれは話が別だ、アヴィー。俺の痛みは痛みで、ディスケの決意は決意だ。ディスケが俺の痛みを分かっていても生き方を変えたりしないし、俺はディスケの生き方に賛成しても痛いものは痛いんだ。こればっかりは他人の事情が入り込めないんだよ。」
「意味が分からないよ!」
「なら、いつか分かってほしい。」
 マルカブはそれだけを言って、自分の右脚を軽く叩く。そして、ディスケを見上げた。
「いいぞ、婚約のご祝儀代わりだ。使え。その代わり、ちゃんと歩かせろよ。そもそも俺に脚をくれる、と言ったのはお前なんだからな。」
「ごめんな。本当は、お前に脚をあげることが目的だったんだけど、・・・それだけじゃ勿体ないだろ?それに、もっと大きな視野で考えてもいいって思ったんだよ。お前はきっと何かをやり遂げるだろうから、お前が歩いた先を考えてみたんだよ。」
「・・・買い被られてもな。」
「別にお前の力を買ってるわけじゃないんだなー。むしろ、才覚もないからだよ。・・・でも、だからこそだよ。何かをやり遂げなきゃさ、一国を背負ったカリーナにも海都と深都を背負ったアヴィーにも、お前は全く釣り合わない。でもお前はそれは嫌だと、死にものぐるいで努力するだろうから、だからきっと、やり遂げるよ。それが何であっても。」
 マルカブは何も言わなかった。ディスケはやっとアヴィーを見た。
「・・・俺も同じなの。せめて、お前たちに恥ずかしくないように生きたい。この年まで何にも決めてなかったけど、選んで、諦めて、やることに意味を持たせて、生きたい。必死に生きたい。」
 アヴィーは、でも、と囁いた。
「でも、僕、マルカブがこれ以上苦しい思いをするのは嫌だよ・・・!ディスケが無理をするのだって!カリーナだって同じこと思うよ!」
「最初に苦しい思いをすることを選んだのはカリーナで、お前だって戦いたくはない戦いに行かなきゃいけない。クーじいさんだって、帰したくないカリーナを国に帰した。みんな、同じさ。だから、俺たちは仲間でいられる。・・・・・・仲間でいさせてくれよ。」
 アヴィーはずずずず、と鼻を啜ったが、反論はしなかった。マルカブは、また溜息を吐いた。ディスケは笑った。
「だからさ、カリーナやお前が必死になるのと同じくらい、俺は一生かけて必死に誰かの脚や腕を作っていくよ。」
「・・・俺の事故がきっかけになって何よりだよ。」
 マルカブは呻くように言い、医師を見つめてから頭を下げた。
「先生。ディスケの無茶振りだって分かってる。だが、・・・頼む。」
 医師は返事はせずに、ディスケを見た。ディスケは視線の意図を理解して口を開いた。
「手術は深都の医者が引き受けてくれる。数少ない臨床例の、手術を担当した医者だ。機械の方は、俺とネイピアの職人が責任を持って作る。オランピアがアンドロの技師も紹介してくれた。主治医として先生の了解がほしいのと、術後の・・・」
 医者は首を振り、
「深都の医師を紹介してほしい。手術には立ち会う。主治医の仕事のためにも。」
 と、言った。そして、「君たちの話は、自分の仕事に意味や価値や誇りを持つべきだと言っているようだから。」と続ける。
 そういうことなの?とアヴィーはマルカブを見て、マルカブは「まあ、そんな感じだよ。」と適当に答えた。曖昧な返答にアヴィーが「本当?」と訝しんでいるので医師は苦笑してから、「後は君たちで話してもらおう」と退室した。
「・・・脚が出来るのはちょっと先。」
 ディスケがベッドの端に腰を下ろした。
「手術を先にしてもらう。接合部の機械は深都にあるからそれを体に埋めてもらって、その後は早めにリハビリ。調整しながら脚を作るから、それまでは仮の義足かな。手術がいつになるかは、医者次第だけど早い方がいいと思う。数日後になるかもしれない。」
「先は長いな。」
 マルカブは顎を撫でつつ呟いた。似合わない、と散々言われている髭を撫でながら、思いついたように
「・・・・・・ああ・・・、髭と髪、切ろう。」
 と、いきなり呟いた。
「え?なんで?」
 アヴィーがきょとんと聞き返す。マルカブは、リハビリの邪魔だし、と言ってから、
「もう必要もないし。」
 と、囁いた。アヴィーはじーっとマルカブを見つめてから、手を打った。
「・・・・・・、ライオンのたてがみ?」
「あー!威嚇のための髭か!。お前、厳無いもんなー!」
 ディスケが笑い、マルカブが何か言いたげにしたが、やめて、
「・・・そうだったんだろうな、多分。でも、もう威嚇なんかしてる場合じゃないだろ。」
 だからもう必要ない、とマルカブは続けた。
「俺も俺として、死にものぐるいでやり遂げるんだから。お前等はそのつもりなのに、俺もやらなきゃ『アルゴー』じゃなくなっちまう。」
 アヴィーとディスケは顔を見合わせた。そしてアヴィーはベッドの縁に手をついて、マルカブの方に身を乗り出した。
「僕、マルカブのそういうところ好きだよ!」
「俺も俺も~!」
 外から「ぴぴ!ぴぴ!」と聞こえてくる。マルカブは、どうせ好かれるんなら女の子がいい、と言おうとしたが、カリーナを引き合いに出されそうなので止めておく。そりゃどうも、とだけ伝えてから、
「・・・それと、コロネをここに連れてきてくれるか?お前のこと。よろしく頼むって、よーーーーく頼んでおかないと。」
「そうだよう!急にビックリしたよ!でも、おめでとう、ディスケ!」
 アヴィーがぴょんぴょんと跳びながら祝福する。アヴィーは興奮するとじっとしてられないことは知っているので、ディスケは笑いながら軽く手を振った。
「ありがとよー。でもさー、カリーナがいるうちに結婚決めてさ、式でブーケを投げてやればよかったな。それだけ後悔してるんだけど、マルカブ的にどうよ?おとーさん役としてというより、男としてどうよ?受け取ったカリーナは、絶対に可愛いと思うんだけどどうよ?」
「・・・聞くな。」
 マルカブは頭を押さえた。結局カリーナを引き合いに出された。その仕返しに、というわけではないが、
「ディスケ、一つだけ確認させろ。」
「おうよー?」
「デキ婚ではないだろうな。」
 マルカブの質問に、アヴィーがあわあわと狼狽え、ディスケは呆れすぎて普段のへらへらした表情さえ消して、
「・・・・・・お前、本当に心配性だな・・・」
 と唸った。


*****


 さらに数日後、すっかり装備を整えたアヴィーとオリヒメがマルカブの病室を訪ねてきた。昨日、彼らはとうとう真祖が待つ神殿の扉の前までたどり着き、今日その扉を開けようとしていた。
 そして、マルカブも今日が手術の日となった。お互い正念場だな、と髪と髭を切ったマルカブは苦笑した。
 アヴィーは、うん、と頷いて、
「マルカブも、手術、頑張ってね。」
「ああ。帰ってきたら俺の方も終わってるだろうから・・・、話を聞かせてくれ。」
「うん。」
 マルカブはオリヒメを見て、
「オリヒメ、頼むな。ヤバかったら、アヴィーとスハイルを引っ張って逃げてきてくれ。」
「・・・それを頼まれるとは思いませんでしたが、分かりました。」
「マルカブは、痛かったら痛いって言うんだよう?」
「・・・まさかお前にそんなことを言われるとは思わなかったが、分かった。」
 手術中にそんな余裕があるのだろうか…とオリヒメは思ったが、口には出さなかった。代わりに、
「・・・行きましょうか、アヴィー。レグルスたちが待っています。」
「うん。・・・じゃあ、行ってくるね。」
 アヴィーは不安そうにしている。【真祖】と戦うことよりもマルカブの手術が心配なのは明白だった。部屋から出そうにもないアヴィーに向かって、マルカブは手招きをした。
「なあに?」
 そして、近くにきたアヴィーの額を指で弾いた。あう!?とアヴィーは声を上げ、額を押さえ、
「何するんだよう!?」
「集中しろ、アヴィー。俺は俺で戦うから、お前はお前で戦え。カリーナはカリーナで、ディスケはディスケで、クー爺はクー爺で戦っている。」
 アヴィーは額を抑えながら、涙を溜めた。
「・・・大丈夫。俺も独りじゃないし、お前も独りじゃない。お前がお前の戦いをすることが、俺の傍にいることになる。俺もお前の傍にいる。」
 マルカブは、アヴィーの頭を撫でた。久しぶりだった。
「『アルゴー』は、皆、傍にいる。」
 アヴィーに言い聞かせるように、マルカブ自身に言い聞かせるように、ゆっくりと伝えられた言葉に、アヴィーは頷いた。
「うん。僕、頑張るから、マルカブも頑張ってね。」
 そう言いながら、いつも・・・今もマルカブがしているように、それをそのまま返すように、アヴィーはマルカブの頭を撫でた。


(35章に続く)

---------------あとがきのようなもの------------------

久々に、アヴィーの「~だよう。」が戻って、ほっとしてます。
一番ほっとしてるのは、ウチの赤パイだと思います。


本当の意味ではここまで書いて、第一部完な気がします
この次からは『アルゴー』がそれぞれの道を行く話になっていき
その中のアヴィーを書いていく話になるのだろうと………
・・・・・・・・・と思うのですが、来週は章の変わり目なので
一週お休みをいただきます。真祖戦の流れを練っておきたいです。

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