まよらなブログ

プロローグ2

「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。
本日は、そもそもの発端としてのプロローグ、1000年前の話です。

少なくとも世界樹1・2の世界観は、今より「未来」である、
とハッキリしているので、現実のネタをいろいろ仕込んでみました。
やりたい放題ですが、この1000年前の番外編、今後もやりたい放題な方向で書かれます。
何故なら、私が楽しいからだ。(どどーん)

なお、志水的世界樹世界観であって公式設定ではないので、ご了承ください。



それでは、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。

プロローグ 2 :
 「『冷たい方程式』の答えを探す」
-----------------------------------------

 移民船に絡みついた『何か』と、それを押さえつけるような木が空から降ってきて、一ヶ月。『何か』と木が降ってきた際に、白い霙のようなものが大地に降り注ぎ、汚染されかけていたこの地が急に息吹きを取り戻した。毒で枯れた生き物も再び芽吹き、汚染による人の病も治り、人々は感謝と畏敬をこめて、その白い霙を【白亜の供物】と呼び始めた。
「・・・・・・、非科学的だ。」
「ですが、起きた事実です。」
 苦々しく男が呟き、部下が大真面目に告げた。分かっている、と男は答えて続きを部下に促した。部下は報告を続けた。
「【白亜の供物】と呼ばれている例の霙ですが・・・、それ自体が高エネルギー体であるのと同時に・・・、エネルギーの移動の方向を任意に変えられる媒体と考えられます。」
「・・・あれは『マクスウェルの悪魔』だとでも言うのか?」
「・・・なんですか?」
「少しは古典を読みなさい。熱力学第二法則に関する600年近く前の思考実験だ。」
「・・・ヤライ博士は、音楽も古典がお好きですよね。私はビートルズが精一杯で、ベートーベンは何がなにやら。」
 研究室の蓄音機風のスピーカーを見ながら、部下はそんなことを言う。音楽の数学的理論を説いたら、この部下もその美しさに気がつくだろうか・・・と思ったが、野暮にも程があるのでやめる。その代わりに、おそらく計算などせずに調和の法則を本能で知っていただろう作曲者を勧めることにした。
「ならばモーツァルトを聴きなさい。」
 と、言うと、部下は首を傾げるのだ。超古楽の話は諦めて、そもそもの話の続きを促した。部下も素直に従った。
「エネルギー移動の方向を自由に変えられる、ということは、時間の経過も逆行できることになります。・・・もう一度、あの霙を手にすれば、この世界の汚染を食い止める・・・いえ、無かったことにすら出来る。調査チームがあの木の表皮と・・・そしてあの木が捉えていた『生き物』の一部を採取をしてきました。」
 部下が手に握ったリモコンのボタンを押す。宙にウィンドウが開き、ごく普通の木の皮らしきものと、魚のような鱗の光沢を持った・・・腕が映された。
「超音波を用いて、地中にエコー調査を行ったところ、この腕と同様の組成をしたものが存在している、とのことです。こちらがエコーの図ですが・・・」
 画面が変わり、二足歩行している影が映し出される。
「あの木・・・および『何か』が生み出していると考えられます。」
「・・・宇宙人ということになるのかね?」
「そうかもしれません。」
 それともう一つ、と部下はさらに画面を切り替えた。音の波形らしきグラフが表示される。
「あの木から発せられる信号です。ある一定の法則が見受けられます。おそらく、あの木からのメッセージではないかと。もし、そのメッセージを知ることが出来たら、彼らの目的や霙の正体をつかむことが出来ます。解析を進めたいのですが、よろしいでしょうか?」
「構わない。だが、どうやって?」
「アーヴィング博士の元にデータを送ります。【M.I.K.E】と言いましたか?スーパーコンピューターに解析を依頼します。通信機に電力を入れる許可をいただけますか?」
「・・・通信ではなく、直接シンジュクに向かいなさい、グンター。」
「よろしいのですか?」
「ああ。今なら、この地も余裕がある。飛行機も飛ばせるだろう。合わせて、物資と人を運びなさい。」
「・・・感謝します。」
 部下は頭を下げた。男の割に、さらさらとした黒髪が揺れた。その髪を
見ながら、ふと思い出したことを口にする。
「そういえば・・・、君には妹がいたね?」
「は・・・はい。」
「・・・妹の病も、治ったのかね?」
 その言葉に、グンターと言う名の部下の肩がぴくり、と動き、
「・・・・・・・・・はいっ・・・!」
 覚悟したように頷いた。そして、言い訳をするように言葉を紡ぐ。
「科学者として、決して誉められた行為だとは思ってはいませんが。しかし、私は、あの霙を・・・確実に手にしたいのです・・・!あの霙があれば、また妹が病に倒れたても・・・いえ、再び病に倒れることもない・・・!」
「・・・科学者が、個人的な思い入れで研究を進めることの弊害もあるだろう。」
 しかし、とグンターがさらに言い募ろうとしたのを、男は止めた。
「だが・・・、それを自覚していれば、それ以上の原動力はない。」
 そして、グンターは目を開き、窓の外に視線をやった。この博士の身内の命こそ不明であることを思い出したのだ。
「も・・・申し訳ありません・・・」
「・・・何がだね?それより、私の使いも頼まれてほしい。」
 男はそう言い、机の上からファイルを取り出した。
「シンジュクにはヴィズルもいる。彼にこのデータを渡してくれ。」
 かつて、この研究室に尋ねてきた来客の名前を出して、ファイルを部下に手渡した。必ず、という部下の返事を聞いた男は、蓄音機型のスピーカーに手を伸ばす。
「さあ、善は急げだ。君の留守中、妹君のことは私も気に掛けておく。一刻も早く、アーヴィング博士のところにデータを持って行きなさい。」
 グンターは頭をもう一度下げて、駆け出すように出て行った。男は責任感が強く優秀だが思いこみも激しい部下の足音を聞きながら、溜息を吐き、スピーカーの電源を入れた。モーツァルトを聴くことにした。
 ・・・個人的な動機で全てを動かそうとしているのは、本当は誰だろうか。
 溜息をつき、曲を指定する。一ヶ月ほど前の突然の来客・・・汚染から世界を救おうとしている科学者・ヴィズルに告げられた、孫娘の生存。福音のようでいて悪魔の囁きだと本能で知りつつも、その希望に縋る自分。 
 流した曲はクラリネット五重奏曲だが、流すべき曲はレクイエムであるようにも思われた。

*****

 そうして部下が飛び立って、一ヶ月ほどしてからだ。その巨大な木と『何か』が降り立った土地に、何人かの科学者と軍人が集まった。男の元に挨拶にきた若い(一般的に30代半ばを若いと言えるかは個々人の考え方に寄るが、彼女の研究実績を考えれば「若くして天才」と呼べた。)女科学者は、古めかしい蓄音機風のスピーカーから流れる音楽に顔を綻ばせた。部下が「これが精一杯」といった20世紀終盤の4人のグループの音楽だ。
「音楽がお好きですか?」
「それほど詳しいわけではないのですが、」
 と女史はスピーカーを眺める。流れている音楽に耳を傾けつつ、
「ビートルズは好きですよ。『Let it be』は美しいと思います。」
「・・・素晴らしい。」
 感心するというより感嘆すると、女史は微笑んだ。
「どうもね、私、時折口ずさんでいるようで。この前も同僚に指摘されて、恥ずかしい思いを。」
「ぜひ、お聞かせ願いたいものです。」
「あら、いやだ。」
 おっとりと笑う女性と音楽の話だけできればと思うが、そうも行かない。ヴァレンディア女史、と男は女性を呼んだ。
「時間が近づいています。会議室に向かいましょう。」
「そうですね。」
 女史の纏う空気が急に2度ほど下がったように感じられた。彼女は背筋を伸ばした。
「参りましょうか、世界を救う方程式を解くために。」
 そう言う女性は、遺伝子工学の最高権威の科学者になった。

*****

 会議室の円卓には数名が座っている。この会議の呼び掛け人の考えで、実行力のある人間だけで計画を進めるつもりなのだ。確かに、事は急ぎだ。議論がまとまらなくなるなら、少数で決定を早めた方がいい。・・・何より国も瓦解していく世界で、理性と実行力を伴っている人間はごく限られていた。
 円卓についたのは7人。男と、彼にヴァレンディア女史と呼ばれた女科学者。この会議の発足人であり、男に呪いのような福音を囁いた男・・・ヴィズルも座る。円卓の周囲に彼らの助手や部下がおり、以前会ったヴィズルの秘書らしき女性と赤毛の少女もいた。
 部屋にはシンジュクに向かわせた彼の部下・グンターもいて円卓に座っている。今回の会議は、彼がいないことには始まらない内容だった。グンターの前には、石板のようなものが置いてある。石版には碑文のようなものが刻まれている。
「お弟子さんは功労者ですな。」
 と、男の隣に座る軍人がそっと囁いた。男は礼をした。
「ヤワン将軍。・・・グンターがお世話になりました。飛行機に乗せていただいたそうで。」
「何、ちょうどシンジュクに立ち寄ったところでしてな。この事態だ。燃料も無駄には出来ない。同じところに行く者は相乗りすべきでしょう?」
 髭を撫でながら人の良さそうな笑みを浮かべる軍人は、もはや名前ばかりの国連軍をまとめている人間だ。人命救助や汚染の調査、情勢不安定が引き起こす暴動の鎮圧・・・と世界を駆けめぐっており、もっとも世界の実状をよく知る人間としてこの席に座っている。また、気さくで犠牲を嫌う善良な性格が、息の詰まる会議には清涼剤にもなっていた。一言で言えば、人徳がある、のだ。
 この後に及んで人徳で出席者を選ぶ我々も相当追いつめられている、と男は心の中だけで苦笑した。とはいえ、これから解こうとしている方程式は、とても冷たい。清涼剤ぐらい手元には置いておきたい。
 全員が揃ったのを見て発足人が手短に挨拶をし、早速グンターに話を振った。グンターは頷いて、机の真ん中にトレーを置き、そこに袋から粉を出した。さらさらとした粉が、小さな山を作る。
 グンターが、事前にご報告しました通り、と前置きをして、
「こちらが、開発しましたコンピューターです。【イブン・ガジ】と名付けました。」
 大昔のコズミック・ホラーから名前を取るとは趣味が悪いな、と男は思ったが、口にはしない。
「すごいな、粉にしか見えん。」
 ヤワンが粉に触れつつ感心する。グンターは苦笑しつつ、
「あの木からは特殊な波が出ていますが、非常に微弱な波です。その波を、我々が知覚できるまで増幅させる必要があります。この「粉」は、」
 とグンターは指先に粉をつけて、皆に示した。
「その特殊な波と共鳴することで、波形を大きくさせます。その波を空気の振動として・・・我々の耳に届くような音として変換するのが、こちらの装置。」
 と、グンターは自分の前に置かれた石版を指した。
「一見、碑文のような形ですが、変換器兼スピーカーとなります。」
 説明に、ヴァレンディア女史が頷きながら、
「この短時間で・・・しかもこの物資のない中、よく開発されましたね。」
「物資は、ヴィズル博士が揃えてくださりました。そして、短期の開発を可能としたのは、M.I.K.Eの解析力とツスクル嬢のプログラミング能力のおかげです。この場を借りて感謝を。」
 グンターは壁の花になっている赤毛の少女に、視線を向けた。少女は淡々と頷いただけだった。
「使ってみたのかね?」
 粉を指から落としながら、ヤワン将軍が尋ねる。グンターは頷き、発足人であり責任者でもあるヴィズルに視線を向けた。ヴィズルは息を吸う音も感じさせずに、ぽつりと告げた。
「あの木はエイリアンだ。」
 端的にヴィズルは言い、グンターに視線を戻す。詳しい説明を任せられたグンターは、ええっと・・・と言いよどみ、
「我々は『木』と会話を試み、成功しました。『木』が言うには、一緒に落ちてきた何かも・・・地球外生命体です。『木』は、共に落ちてきた『あれ』を【魔】と呼びました。【魔】は宇宙上の生き物を喰い、その星を食い尽くすと次の星へと旅立つことを繰り返し・・・『木』は【魔】が食い尽くそうとした星の免疫機能だそうです。・・・まあ、【魔】の犠牲者の生き残りだと思えばいい、と世界樹は言ってましたが・・・」
 グンターは一度咳払いをしてから、
「失礼しました。私は『木』を、【世界樹】と呼んでいます。名前は無い、と言っておりましたので、便宜的に呼称をつけました。【世界樹】が言うには、『魔』は生き物のエネルギーを吸い尽くし、全てを滅ぼしてから次の星に飛ぶそうです。その宇宙旅行の最中に・・・・・・、移民船を発見し、」
 グンターはちらりと師であり上司である男を見てから、目を伏せた。
「・・・・・・ひとまずの餌場とし、」
 男は膝の上で拳を握った。
「・・・その軌道を辿って、この星に飛来したそうです。世界樹は【魔】の軌道を変えようとしたものの力負けをし、共にこの星に降りることになったと。」
「・・・汚染は、その【魔】や【世界樹】とは関係はないのかね?」
 ヤワン将軍の質問に、グンターは頷いた。
「はい。世界樹はそう言っていました。実際、汚染はあれらがやってくる以前から始まっていました。・・・世界樹の話を信じるなら、という前提ですが、彼らがいることで、汚染からこの地は守られているようです。」
 グンターは機械をいじり、宙に図を数枚示した。
「世界樹は【魔】を地中に押さえつけているそうですが、その力が壁となって汚染は弾かれているとのことです。また、彼らは、独自のエネルギーシステムを持っています。」
 混ざり合ったものを分ける力です、とグンターは言い、
「それは、我々では達していないレベルでより分ける事が出来るのです。・・・もはや原子レベル・・・いえ、『時間の巻き戻り』とも言っても言いレベルで。彼らが活動することで、化学物質が『無害なもの』のレベルまで分解される。汚染は『無かったこと』になるのです。」
 信じ難い話でしょうが、と言いつつも、グンターが示すデータは彼の話を実証している。データの正しさを理解できる科学者たちは、正しさ故にだ黙り込んだ。とはいえ、自分たちの世界の法則とは異なりすぎていて、理解できたかといえばまた別の話だった。
「信じ難い話だが、」
 ヴィズルが重々しく口を開いた。
「だが、これは厳然たる事実だ。そして、あの『木』・・・【世界樹】は一つ我々に提案をしてきた。」
「・・・それは、」
 と、男がやっと口を開いた。
「悪魔の取引ではないのかね?」
「・・・さあ、どうだろうか。ただし、世界樹がメフィストフェレスだったとして、それに縋らなければ我々は滅びるだけなのだ。」
「ここを渡れば人間世界の破滅、渡らなければわが破滅・・・と悩む時間もないのだな。」
 ヤワン将軍がサイコロを振る真似をしてから、
「どのような提案だろうか?」
「自分のコピーを作る提案だ。」
 ヴィズルは腕を組んだ。
「世界樹のクローン体を作り、世界にいくつか『植える』。そうすることで、その地の汚染を浄化する。あれだけの巨木なので根も広い。相当広範囲の汚染を浄化できるだろう。」
 幸い遺伝子工学の天才もいらっしゃる、とヴァレンディア女史に視線を向ける。女史は、光栄ですわ、と微笑んだが、それはとてもぎこちなかった。
「エイリアンのクローンなんて、初めてですけれども。」
「まあ、二回目です、と言われても困りますが。」
 と、対して面白くもない冗談(だろう、たぶん)をヴィズルは言い、
「必要な細胞と知識は世界樹が提供する、と言っている。」
「我々は、世界樹に何をするのだ?」
「【魔】と戦うことへの協力だ。これも断ることは出来ないだろう。汚染がなくなっても生物を喰らいつくす生き物が地底にいるのでは、ルビコンを渡って渡らなくても人間世界の破滅なのだ。」
 あの『木』を信頼してもいいのか?と聞いたところで、賽などもう投げられているのだ、と答えられるだけだろう。男は溜息を吐いた。
 それを合図にするように、
「より詳細なデータと情報は、これから報告する。検討をしてほしいことは山ほどあるが、時間も方法もないことは認識してほしい。・・・レン、資料を皆の手元に。」
 ヴィズルが秘書に命じて資料が配布される中、我々はこの運命の中で方程式を解くしかないのだな、と誰かがつぶやいた。
 

(プロローグ 3に続く)

---------------あとがきのようなもの------------------

いろいろ小ネタを仕込んでいるのですが、言い訳しなきゃいけないところだけ解説します。

*「冷たい方程式」はトム・ゴドウィンのSF短編小説から。

*ビートルズとベートーベンとモーツァルト
この話の時代は26世紀ごろ、として書いてるので、500年前のビートルズも大古典です。
 
*「マクスウェルの悪魔」
一応、本は読んでるのだけど誤解してそうなので、詳細はググってください。(逃げた)
エントロピーとかと関連します。

*グンター、ヴァレンディア、ヤワンの名の由来
 ヴァレンディアはグラドリエル王女(『プリンセスクラウン』(SSソフト))の姓、
 グンターは「ニーベルングの指環」の人物名(グートルーネの兄でジークフリートの義兄)、
 ヤワンはノアの子孫の名前(かつタルシシュ族の先祖)、 
 …となっておりますが、あのNPCたちと関連があると思ってもいいし思わなくてもいい。
 なお、ヴィズルはご本人、レンとツスクルはあのレンツスとは別人です。


次週の更新は、今のアモロの話で36章に戻ります。

スポンサーサイト

PageTop

コメント


管理者にだけ表示を許可する