まよらなブログ

36章3話。

「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。

新・世界樹2の料理システムが気になって仕方がない志水です。
鹿肉のすき鍋って…何それ…おいしそう………(じゅるり)


それでは、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。




36章3話
-----------------------------------------

「…祝賀会?」
「そうだよう!」
 病室でアヴィーがぴょんぴょん!と跳ねて、静かに、とオリヒメに
注意をされている。それを見ながら、アヴィーはカリーナにも同じような注意をされていたなあ、とマルカブは思う。
「【真祖】を倒したから、王宮でお祝いしようって!お姫様の体は、もうフカビトにならないもんね!」
「それで、『アルゴー』に出席して欲しい、ということなんですが…、」
 オリヒメはマルカブの顔を見て、
「マルカブ、出席は難しいですか?」
 とは招待状をマルカブに渡す。さすがに抜糸もしてない中で動くつもりもないマルカブは、招待状を受け取りながら苦笑した。
「丁重にお断り申し上げます、と伝えてくれ。」
「分かりました。」
「ええ!マルカブも行こうよ!ちょっとだけなら平気だよう!僕、肩を貸してあげるから!」
 美味しいものもいっぱいあるよう!とアヴィーはマルカブの袖を引っ張った。
「…あのな、俺は怪我人みたいなもんだぞ…。少しは気遣えよ…。」
「そうだけど…。」
「それに、【真祖】を倒したのはお前等だ。美味いもん、たらふく食ってこい。」
「それが違うんだよ!」
 アヴィーはぱっと立ち上がる。
「確かに【真祖】を倒したのは、僕やオリヒメやレグルスたちだよ!でも、それまで『アルゴー』で戦ってきたのは、マルカブやディスケだよ!それまでの戦いがなかったら、【真祖】までたどり着いてないんだよ!だから、僕はみんなで行きたいんだよ!……本当はカリーナとおじいちゃんも一緒がいいんだよう…!!」
 後半は泣きそうな声で、マルカブは溜息をそっと吐いた。
「…あのな、アヴィー。俺は、『アルゴー』と関係がなくなったわけじゃない。カリーナもクー爺もだ。ただ、祝賀会には行けないだけだ。…行けない俺らの代表が、お前になるんだよ。」
「…でも、僕は一緒に楽しみたいんだよう…」
「一緒に楽しめないのは、すまないよ。だから、後から話を聞かせてくれ。楽しかったことや美味い飯の話を、だ。…いつかカリーナやクー爺に会ったときにも、聞かせてやってくれ。俺たちもお前と一緒に楽しみたいと思ってるだろうから。」
「……ん、」
 アヴィーは素直に頷いた。
「分かったよう…。」
「期待して待ってるよ。姫さんにもよろしく伝えてくれな。…ところで、ディスケも行くのか?」
「はい。招待状はディスケにも渡しています。スハイルも連れてきていい、と言われています。」
 オリヒメの返事に、マルカブはオリヒメに向かって頼み込んだ。
「そうか。悪いが、アヴィーとディスケとスハイルのお守り、頼む。」
「はい、任せてください。それに「ファクト」も呼ばれているそうですから、シェリアクさんたちも気にしてくださいます。」
 それを聞いて、アヴィーが病室で地団駄を踏み出した。
「僕、お守りはいらないよ!マナー違反したりしないもん!」
「…この通り、自覚ないんだよ。頼むぞオリヒメ。」
「はい。マルカブは心配のあまり、具合を悪くすることがないように。」
 オリヒメの言葉に、マルカブは、善処する、とだけ答えた。オリヒメのお守り対象者に自分も入っているのか、と気がついた。
 アヴィーが「無視しないでよう!」と抗議したタイミングで、扉がノックされた。また看護師が注意しにきた、と思い、アヴィーは慌てて口を手で押さえる。それに肩をすくめながら、どうぞ、とマルカブが告げると、
「失礼します。」
 と、レグルスが扉を開けた。
「どうしたの?マルカブのお見舞いにきてくれたの?」
 アヴィーが口から手を離して尋ねると、レグルスは「アヴィーたちを探していました。」と答えてから、
「申し訳ありません。本来なら、もう少しお見舞いに来るべきなのでしょうが。」
 とマルカブに謝罪をする。いいよそんなの、とマルカブは答え、
「探索に力を貸してくれてるのが一番だ。この前、セルファがオリヒメを守ってくれたんだって?」
「セルファはいつも守ってくれるよ!オリヒメは防御をぜんぜん考えてないから、助かるよね!」
 アヴィーはにこにこしながらオリヒメに言い、オリヒメは「しー!」と唇の前に指を立ててそれを制した。失言していることに全く気づいていないアヴィーは不思議そうに首を傾げ、レグルスは苦笑し、マルカブは頭を押さえた。
「…ともかく、ありがとうな。お前等のおかげでアヴィーたちが助かっている。」
 頭を押さえながらのマルカブの礼に、レグルスは「どういたしまして」と答えてから、
「そして、お見舞いの途中で申し訳ありません。アヴィー、樹海の魔物退治の伝達が。」
「そうなんだ。」
 アヴィーはすっと表情を変えて背筋を伸ばした。
「どこ?」
「深都の入り口付近です。より深い階層に生息している魔物を発見したそうです。特に、被害は出ていませんが、セルファとミツナミは向かわせました。夕方まで階層に留まるようなら討伐を頼みたい、とのことです。」
「そのまま魔物が帰ってくれればいいんだけど。行こう、オリヒメ。マルカブ、また後でね。」
 アヴィーはあっさりと動き出した。ギルマスになったなあ、とマルカブは一抹の寂しさを感じつつ、
「気をつけろよ。」
 と声を掛けると、アヴィーは部屋から出る前に一度振り返って、
「行ってくるよう!」
 といつものように笑って、いつものようにぶんぶんと手を振るのだ。

*****

 祝賀会は王宮内ではなく、王宮が管理する【白亜の森】の一角に建てられた小さな屋敷で行われた。招かれているのは、元老院の要人と高位の貴族に、ほんの一握りの冒険者…つまり『アルゴー』と『ファクト』、だった。人数は、少ない。(おそらく、姫とフカビトの事情を知っている人間のみが参加しているのだろう。アヴィーの口に戸が立てられないことを考えると、この少ない人数はありがたい、とオリヒメは感じた。)
「美味しいですねえ、さすが王宮のお料理ですぅ。」
 ミツナミが口を料理で膨らませている。
「お庭も綺麗ですし、素敵ですぅ!」
 【白亜の森】を利用した屋敷の庭を見ながら、ミツナミは手を休めることなく料理をほおばっている。美しい庭にも出られるように、とテラスは開け放たれていて、会は立食パーティだった。こんもりと盛られた…そして妙に肉々しいミツナミの皿を眺めながら、オリヒメは簡潔に同意した。そしてレグルスを探し…、アーモロードの貴族と談笑している少年を見つけた。
「…ミツナミは、レグルスの側にいなくてもいいんですか?」
「セルファがいるし平気ですよぉ!それに、ほら、私、苦無投げますから、レグルス様と少し距離があった方がお守りできるんですぅ。」
 ミツナミは料理を飲み込んでから、フォークを振りつつ、
「如何にも間者ですっていう私がいない方が、相手の方もお話し易いですよぉ。セルファは礼儀作法も出来てますし、着るものを選べば貴族のお嬢様に見えるので、近衛はセルファにお任せですぅ。」
 あ、セルファは実際お嬢様でしたぁ!とミツナミは笑う。そうですか、とオリヒメは囁いてから、さらに周囲を眺めた。アヴィーは元老院の人間に囲まれているがシェリアクも一緒なので、まあ、安心していいだろう。(多分、ギルマスとして何か聞かれているのだ。)スハイルはエラキスにべったりなので安心といったら安心だが、そろそろ引き剥がしに行かねばなるまい。…とはいえ、エラキスの胸囲に惹かれてきた男たちを追い払っているので、あれはあれでいいのかもしれない。ミラとミモザはお菓子に目を輝かせ、年輩のご婦人からあれこれ薦められている。一通り冒険者たちに挨拶をした兄王が、ディアデムを見つけて何か質問している。アンドロに慣れた兄王の振る舞いに、ディアデムは安心したように受け答えをしていた。ディスケは…見あたらないが、彼の場合、単体で動いている限りは問題ないのだ。ディスケは人当たりはいいし、失言も多くない。アヴィーやスハイルが何かしたときに囃し立てるから、面倒なだけだ。ディスケはどこかで酒でも飲んでいるのだろう。もしかしたら、マルカブへの土産に酒瓶をくすねに行ったのかもしれない。とオリヒメは一人で納得し、甘い果実酒を一舐めした。
「…オリヒメは、」
 ミツナミがもごもごと口を動かしながら、呼んだ。行儀が悪いと思いつつ、オリヒメは彼女を見る。
「これで、めでたしめでたしだと思いますか?」
 ミツナミは料理を見つめつつ、そう聞いた。口調が間延びしていない。
「ミツナミ、貴方は、そうは思っていないのですか?」
「おかしいんです。お姫様、あんな体で起きていられるはずはない。」
「だから、先ほど退室されたのでしょう?」
 オリヒメは少しだけ俯いて答えた。姫はアヴィーの手をとって笑顔で感謝を述べたが、その顔色は白いままだった。もともと病弱だったらしいし、体調は優れないのかもしれない。「フカビト」支配を抜け、100年を生きた反動が出てきてもおかしくない。(手をとられたアヴィーは、綺麗なお姫様に微笑まれてドギマギしてしまい、そんなとを考える場合ではなかったようだが。)アヴィーは姫を救ったのかもしれないが、ある意味では救えないのかもしれないのだ。
「…そうなんですけど、」
 ミツナミは料理を口に運ぶ手を止めた。もうあの姫の体から『人』としての呼吸は感じられない…とはミツナミには言えなかった。それはアヴィーの決意やオリヒメの献身を「無駄なことだった」ということでもあるからだ。
「まあ、いいですぅ。」
 ミツナミは再び間延びした口調に戻る。非情なことに、答えはいつか必ずもたらされるのだ。だったら、せめて今ぐらい、
(美味しい料理を味わっていればいいんです。)
 ミツナミは料理を口に運んだ。

*****

「オランピア、俺に話ってなんだよー。」
 【白亜の森】の一角に、ディスケはふらふらとやってきた。ほとんど木に同化していたオランピアは、そっと背を木から離した。
「…トゥレイスの代わりに、貴方に聞きたい。」
「曾々じいさんの代わりに?」
「…家族はやはり、大切?」
「何だよ。急に。」
「…答えて欲しい。」
 ディスケは頭を掻いてから、
「曾々じいさんはなんて言うか分かんないけど、俺はそう思うよ?…あ、そうだ、言ったっけ?俺、婚約したんだよ。先のことは、いろいろ落ち着いてから決めようって言ってるんだけど、結婚式にはオランピアも呼んでいい?曾々じいさんもアミディスも喜ぶんじゃないかなって思うしさ、ディアデムも君がいれば心強…」
「家族は、」
 オランピアは、ディスケの言葉を遮った。
「…一緒に、いるべき?」
 ディスケは首を傾げ、一息ついてから、
「出来ることなら、そうしたかった、と曾々じいさんは言うと思うな。」
「…そう。…そうか。やっぱり、そう…。」
 オランピアは視線を落とす。ディスケは答える前に、「なぜ、そんなことを聞くのか」と真意を問いただす方が先だった、と後悔した。
「オランピア、一体、どうしてそんなこと…」
「…ザイフリート様も同じことを言っている。私は…止めるべきなのか、考えている。」
「…止めるって…どういうことだよ…」
 ディスケが聞き返したときだ。かさり、と葉が踏まれる音がして、薄暗い中に白い姫が現れた。
「…姫様、お休みになられたんじゃ…」
 ディスケの声にグートルーネは無反応だ。ただ、ぼんやりと一歩踏み出す。もう一歩もう一歩と、そこにディスケとオランピアがいることにも気づかずに進み続け、その口から笛のような音で言葉らしきものを発している。
「…やっぱり、この白亜の森に…【魔】への道があるのか…」
 オランピアが囁いて、ディスケには姫には手を出すなと制する。
「でも、オランピア。姫様は夢遊病か何かなのか…?あんな状態で、外を歩かせたら…」
「…これが、姫様がご決断された…海都最後の王族の最後の勤めだ。」
 姫の後からクジュラの声がした。
「…邪魔は…させられない。」
「…ちょっと待て。最後の王族の、最後の勤めって…」
 ディスケは奥歯を噛み、
「おい…!まさか…!!まさかアヴィーがやったことが全部無駄だっていうんじゃ…」
 叫び掛けた喉に、オランピアの腕から伸びたブレードの刃が当たる。
「…あの小さな星詠みと貴方たちのおかげで、ここまで保ったのだ。」
 オランピアは冷たく、告げた。しかし、声は…本来震えるような機能はないアンドロのその声が、涙に詰まるように震えた。
「たとえ、貴方自身でも、貴方たちの尽力が無駄だったなど言わせない…!」
 唾を飲んだディスケの背に、クジュラの声がかかる。
「…まだ、状況は変化し続けている…。お前とマルカブには、必ず事情を話に行く。だから、今は、」
 クジュラは、何かに呼ばれるように歩みを進める姫を見つめ、
「姫の征く道を、遮らないでくれ。」
 
(36章4話に続く)

---------------あとがきのようなもの------------------

36章は日常パート……といいつつも不穏な空気漂ってきました。

スポンサーサイト

PageTop

コメント


管理者にだけ表示を許可する