まよらなブログ

36章4話。


「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。

新世界樹2の公式サイトで、ボイス公開、と知り、
藤原ボイスを聴きに行ったんですが、なぜか音声が聞こえません。
PCの設定の問題か……?休み時間に職場のPCでこっそり聞こう…


それでは、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。



36章4話
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 【白亜の森】の奥・・・、以前、深王と姫が対峙し、そして人に戻った広間を取り憑かれたように姫は進む。
 徐々に呼ぶ声は強くなり、それが喜びでもあって、その足取りは顔色に反して軽かった。蝶が飛ぶかのように進む姫の数歩後ろを、クジュラが見守るように続いていく。その顔色は、姫と同じくらい悪かった。
「ーー、ああ。」
 姫が溜息のようなものを漏らし、鳥居をくぐる。その鳥居は表側からくぐってもどこにも転移されない、「ただの」鳥居だった。それなのに、姫の姿は揺らいで消える。
 クジュラは慌てて後を追い、鳥居をくぐり抜けた。抜けた先はやはり、【白亜の森】だった。どこもよく似た風景が続く森なので、どこに飛ばされたかは瞬時に判断できない。足下に、白椿のような花が三つ転がっている。
 姫は小走りに進み始めた。その先には、白い鳥居が見える。その白鳥居は、三つの鳥居を三角に組んだ形をしていた。
 同じものを知っている。四階層と【白亜の森】を繋ぐ、【白亜の森】側の転移装置だ。
「・・・あれか・・・!」
 クジュラは吐き捨てるように呟いた。探しているものを見つけたにもかかわらず、何で見つけてしまったのかと呪うように吐き捨てて、姫を追う。今の姫に、あの転移装置を触れさせてはいけない。姫の役目は、フカビトの眷属と化した己の一部を【魔】と共鳴させて、【魔】への道を探すことだ。呼ぶ声に従って、【魔】の元に行くことではない。行ってしまえば最後、永遠に恐怖と苦痛を与えられ、【魔】への供物になるのだろう。
 クジュラは、瞳だけを輝かせている姫・・・もうグートルーネ姫と呼んでいい存在なのか分からないが・・・の右の手首をつかんだ。
「姫様・・・お疲れさまでした。王宮に戻りましょう。」
 姫はクジュラを見ずに首を振る。クジュラは、もう一度「戻りましょう!」と強く告げた。
「兄王様とフローディア殿がお待ちです。戻りましょう・・・!」
 大切な人の名前を出されて、姫は一度クジュラを見た。その目に徐々に意志が宿り、ええ、と小さな声が漏れる。
「・・・・・・ええ、・・・そう、しま・・・」
 声に反して、姫の腕がごぷり!と波打った。そして皮膚を裂いて現れた魚のヒレのようなものが、クジュラの手を弾く。
「・・・!ご、ごめんなさい、でも、ああ、離れて、クジュラ・・・!」
 姫の腕が紫に変色し、ヒレのようなものから角や触手のようなものが生えてくる。それを意志で押さえようとする姫と・・・、それをあざ笑うように吹き付けてくる、転移装置からの圧力。
 【魔】の力だ。姫の身に直接力を吹き込んで、己の眷属に作り替えようとしている。
 ともかく、姫をこの場から離さなくては。クジュラは姫の、まだ人間のままの左の腕を掴み、
「もう少しのご辛抱を・・・!今、糸で帰還を・・・!」
 アリアドノネの糸を取り出して、その力を使おうとする。しかし、その糸玉は、姫の右手から伸びた触手に弾かれた。糸を弾いた触手は、そのままクジュラの首に巻き付く。
「・・・いや・・・!」
 姫は己の右手から溢れる異形のものを、細い左手で押さえようとした。しかし、その左手すらも引き裂いて、異形のものは増えていく。
「いや、やめて・・・!私の身体でしょう・・・!?言うことを聞いて・・・!!クジュラを離して!」
 姫は涙を流す余裕すらなく、クジュラの首に巻き付く触手を引っ張った。
「殺すなら、私を殺して!」
 懇願するように叫んだときだ。その触手が斬り裂かれた。クジュラの身体はバランスを崩し、一度傾いだ後に、彼は膝をついて激しく咳き込む。咳込み涙で霞む視界の中で、己の主を見る。姫は気を失い、なぜか転移装置からの圧力も消え、姫の体も人の形を取り戻している。気を失った姫を片腕で抱えているのは、一人の老剣士だった。
 クジュラは、その人を知っていた。アーモロード一帯の南洋の小国家・・・いずれも国防の力が充分とはいえない国家に、参謀と戦力としての人材を紹介している人間だ。数少ない精鋭を鍛え上げ、国家に仕官として紹介する人物だ。以前カリーナが指摘した通り、不可思議な因習だったが、何百年と続いている。一人の人間から「大将軍の采配」と呼ばれるものが出され、それを持った者を国が雇うというシステムが作られて、何百年と続いている。周辺国家が海賊や魔物から守られ、各国がある一定の秩序を保ちながら交易で栄えているのは、この男の元からやってくる「将軍」たちの功績が大きい。クジュラ自身は、この男とは無関係に海都に仕えている。しかし、周辺国家の国防を実際に担っているこの男のことは、海都の将軍として無視は出来なかった。
「・・・・・・ヤライ殿・・・、どうして・・・ここに・・・?」
「我が弟子に【魔】の元にたどり着け、と命じたのは私だ。」
 答えは返ってこないようで、返ってきた。オリヒメが『アルゴー』に強引に仲間入りをした理由を思い出す。「師に【魔】の元にたどり着け、と命じられたから。」だ。
「・・・なぜ、そのような命を・・・」
 次の質問には答えは返ってこなかった。ヤライ、と呼ばれた老剣士は転移装置を見つめながら、
「姫君を。」
 抱えている姫をクジュラに渡す。クジュラは姫が浅い呼吸をしていることに安堵して、細い身体を抱き上げた。
 この男に聞きたいことはあったが、今は姫を安全な場所に連れていく方が先だと判断し、クジュラは落ちた糸を拾い上げ、
「・・・感謝します。」
 とだけ言って、老剣士に一礼し、その場から急いで去った。老剣士はそれを見送りもせず、ただ転移装置を・・・その奥を見つめ、
「最後の鳥居の仕掛けをやっと起動させたな・・・。ここまで来るのに、千年かかったが・・・」
 老剣士は転移装置に進もうとして、それに弾かれた。やはりか、と白い鳥居に触れながら、
「・・・私を拒んでいるのは、【魔】か【世界樹】か?それとも・・・、」
 ――、必ず。必ず、誰かがここにたどり着くわ。
     貴方たちの、私たちの、絶望も振り切って、ここに辿り着く人が現れるまで、私は――
 そう言って、扉を塞いだ赤毛の少女を思い出す。
「・・・私の、同志たちなのか?」
 問いかけは哀しげで、鳥居に触れる手は優しかった。


*****

 祝賀会から二日後。オランピアが、兄王からの言伝を預かったと『アルゴー』に伝えにきた。
「【白亜の森】…、その奥に転移装置があり、それを使うと【魔】そのものの居場所へ飛ぶことが確認できた。」
 オランピアは一呼吸おいて、
「行けと強制しないが、そこに赴き魔を討つ力を持つのは、あなたたちだけだと深王さまは言われた。」
「でも、行かないわけにもいかないんだろうね。」
 アヴィーが告げると、オランピアは肯定も否定もしなかった。少し考えるような時間があってから、
「だから、そこへ行って欲しいというのが深王さまの最後の願い…。」
 こちらの伝えることはそれだけ、と言うと、オランピアはその場から離れ、姿を消した。揺れる気配だけは、しばらく漂っていた。


*****

 オランピアからの伝令を聞き、明日には【白亜の森】の奥に進もう、と『アルゴー』は決めた。その準備のため、それぞれ手分けして買い出しに出ていた。アヴィーとオリヒメはネイピア商店からの買い出しに行き、その帰り道にオリヒメがぽつり、と言った。
「アヴィー。相談をしてもいいですか?」
「・・・え!?」
 アヴィーは驚きも隠さずに、
「オリヒメが!?僕に!?相談!?」
「なんで驚いているんですか?」
「だって、オリヒメ、自分で全部決めそうだもん。・・・でも、いいよ!僕で良ければ、相談聞くよ!なあに!?」
 なぜか嬉しそうにニコニコしているアヴィーに、オリヒメはこっそりと溜息をついて、
「私が、師に【魔】の元に辿り着くように、と命じられてこの街にやってきたことは、以前お話ししていると思いますが、」
「・・・あ、そうだ。そんなこと言ってたね。でも、どうして、オリヒメの先生はそんなことをお願いしたんだろう?」
「・・・そうなんです。」
 オリヒメは声を潜めた。
「・・・そうなんです。私の師匠様はこの南海の都市国家に、大きな影響力を持つ人です。海都の秘密を知っていたとしても、おかしくはないのですが・・・」
 オリヒメは少し考えてから、改めて続けた。
「師匠様は、国の政に口を挟むことはありません。ただ、国に武人を紹介するだけです。その武人を通しての南海の治安と平和の維持が、我々の・・・師匠様の目的です。そういう意味では、師匠様にとって【魔】は倒すべき存在です。ですが、『倒せ』とか『海都に協力しろ』ではなく『たどり着け』など・・・」
「何か、調べて欲しいことがあるのかな?」
「・・・でしたら、その内容を伝えてくださるはずです。曖昧な指示では、師匠様が知りたいことを私が調べてくるとは限りません。師匠様は、データというものは正確でないと意味がない、と常々おっしゃっていました。正確さの積み重ねの先に、仮説が証明される、と。」
「・・・そうなんだ。なんだか、オリヒメの先生は科学者みたいだねえ。僕の先生も同じこと言うよ?あ、あとマリアさんも。」
 でも、とアヴィーは荷物を抱え直しながら、不思議そうに首を傾げた。
「でも、オリヒメ。ええっと・・・前にさ、カリーナに言ったよね?自分は、命令に従うだけだって。先生が何を考えてるか分からないけど、自分は【魔】のところに辿り着くだけだって。それはダメだってカリーナは言ったの、僕、覚えてるよ。」
「・・・ええ。そんなこともありましたね。」
「・・・僕にこんなことを相談するってことはさ・・・、オリヒメは、今は、自分は命令に従うだって考えてない・・・ってことなの?」
「・・・・・・、」
 オリヒメはアヴィーをじっと見つめる。アヴィーは彼女が少し頬を緩めたことに気が付いた。
「アヴィーは、少し大人になりましたね。」
「・・・な・・・な、ななな何を言ってるんだよう!?」
「頼もしく感じます。」
 オリヒメの言葉にアヴィーは真っ赤になって、あうあう、と声を上げるだけだった。オリヒメは、見た目にも分かるほど、はっきりと微笑んだ。
「アヴィーが変わったから、私も変わったのかもしれません。今になって、カリーナの言うことが正しいのではないかと、そう思い出したのです。」
「・・・従っているだけじゃだめってこと?」
「より正確に言うなら、『盲目的に』従っては危険だ、ということです。・・・アヴィーは、「真祖」との戦いの前にレグルスに言いましたね。・・・迷うことは間違いではない、と。」
「う、うん。」
「盲目的に臣従していると、迷うことはありません。ですが、やはり・・・危険だと感じ始めているのです。」
「・・・どうして?」
 アヴィーは静かに尋ねた。
「そう感じ始めたきっかけってあるの?」
「・・・。」
 オリヒメは少し躊躇いを見せたが、話し出すとそこには躊躇いは見せなかった。彼女は基本的に嘘はつかない。
「私は当初、貴方たちを巻き込むつもりでした。利用する、と言ってもいいのかもしれません。私の目的に、貴方方が一番近いところにいる。だから、連れていってもらう。その程度の認識でした。」
「・・・じゃあ、今は違うってことなんだね。」
 アヴィーはにこっと微笑んで尋ねた。自分もこの笑顔に弱いのだ、とオリヒメは認める。
「ええ、【魔】はやはり強大な敵でしょう。『アルゴー』がそれを倒すために進むことは変わらないとしても、・・・いえ、倒すつもりだからこそ、私は師匠様の意図を聞かずに進むことに恐怖も感じているんです。師匠様が【魔】のことを知っているなら、その情報を私が聞くだけでアヴィーたちの生存率は上がります。もし、師匠様が【魔】を何らかの目的に使うつもりなら、【魔】を倒しにきた『アルゴー』を無事に返すとも言い切れません。私は・・・今までの私の目的では、ここから先に進めません。」
 アヴィーはしばらくオリヒメを見つめてから、
「ありがとう、オリヒメ。それって、『アルゴー』が大切だってことだよね。」
「・・・ええ。」
 オリヒメは頷きながらも、少しだけ「違う」と感じた。レグルスたちが大切か、と聞かれたら、まだまだそうは言えない自分がいる。もう、探索には参加しないマルカブたちとは直接的には関係のない話だ。『アルゴー』が傷つき、その知らせをうけたカリーナを悲しませたくないとは思うが・・・それは今の自分の気がかりとは離れている。
 ・・・つまり、自分は何を大切に思ったから、自分が変わったのかと言えば・・・
 オリヒメはじっとアヴィーを見つめた。アヴィーは「オリヒメも『アルゴー』を好きになってくれて、うれしいな。」とニコニコしてる。オリヒメはなぜか眉を寄せてから、その鼻をぐっと摘んだ。
「・・・!!何するんだよう!?」
「いえ、何となく、イラッとしました。」
「ぼ、僕、オリヒメを怒らせるようなことを言った?」
「いいえ、…多分。」
 オリヒメは溜息をついた。この年下の少年が、仲のいい少女と別れ、頼れる大人を失い、それでも「真祖」を倒す、と決めたことを間近に見てきた。その労力だ。それでも進む、と決めた少年を大切だと思ったから、私も師に従っているだけではダメだと思ったのだ。私も、この少年を守るのだ、と。
「オリヒメ、さっきは笑ったのに、今は怒ってるよう!」
「・・・私が、笑っていましたか?」
「笑ってた!」
 アヴィーはぷっと膨れて、
「女の子って時々分かんないなあ。カリーナもミモザも急に怒ったりするしさ。オリヒメも同じ……」
 ぶつぶつと不満を言うアヴィーは、オリヒメがきゅっと拳を握ったのを見て、顔を上げた。オリヒメは何故か、耳を染めていた。
「どうしたの?」
「・・・ど、どうもしません!」
 オリヒメは袋を抱え直し、
「ありがとうございました!話は終わりです!」
「え!?僕、全然相談に乗ってないよ!?」
「いいんです!とにかく私は、師匠様に手紙を出します!それで少しでも【魔】のことを分かって、貴方の力になりますから!」
 自分は『アルゴー』が大切なのではない。そうではない。幼いくせに決意だけは一人前のこの少年が大切なのだ。
 …この四つも年下の少年が…この少年だけが、大切だ、ということは、彼が特別だ、ということでもある。
 そう気が付いたオリヒメは、ただ走り去るだけだ。


(36章5話に続く)

---------------あとがきのようなもの------------------

アヴィーは意外とモテモテです。


いきなり新キャラ登場であれですが、名前はすでに二回ほどでてます。
(というか、そもそも、正確には初登場ではない。)
グラフィックは爺ショーグンです。Yカラーじゃない方。目から火が出てない方。(笑)
ある種、「この話における私にとってのラスボス」です。
やっとここまでたどり着きました。


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