まよらなブログ

プロローグ3

「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。
本日は、そもそもの発端としてのプロローグ、1000年前の話の第三話です。

1000年前の話は、志水的世界樹世界観であって公式設定ではないので、ご了承ください。
でも、「私、今、二次創作してる…!!ひゃはああああ!!」
という気分になって、このプロローグシリーズは非常に楽しいです。


それでは、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。

プロローグ 3 :
「 『いっしょに生きよう』と、伸ばされる手もあるでしょう。」

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 【世界樹】の細胞から作り出した最初の『苗木』は、大陸の研究所へ運ばれることになった。カプセルに入った『苗木』を受け取ったヤワンは、ふうむ、と不思議そうに声を出し、
「この小さな木が、いずれはあの巨木になるのか・・・」
 と、感慨深いような唖然としているような呟きを漏らす。『苗木』を渡したヴァレンディアは微笑を深めて、
「この子は、大地の汚染を己に取り込み、合成物質を分解し、無害な物質を排出しながら成長します。おそらく3年もしないうちに、オリジナルほどの大きさになるでしょう。ですから、植えた場所から数キロには居住区域を作らないようになさってください。」
「街をひとつ作るような計画をたてねばなるまいな。」
 とヤワンは快活に笑い、それから、オリジナルと呼ばれる【世界樹】を見上げた。
「この『苗木』も、オリジナルのように思考を持ち、人と語るのだろうか?知的生命体なのだろうか?」
「・・・どうでしょうか。私は、細胞の移植と増殖に成功し、物質とエネルギーの変換機能は活動していることは確認しましたが、オリジナルと同じように成長するかは未知数です。人間の臓器の一部を作った状態に近いかもしれません。」
「・・・さて、その臓器に魂が宿らないとも言えないが。」
 ヤワンは肩をすくめ、ヴァレンディアは一瞬表情を暗くした。ヤワンは己が何かしかの失言をしたことに気がついた。
「・・・失礼。ヴァレンディア女史、私は貴方の気を悪くすることを言ったようだ。何せ、科学の『カ』も知らぬ朴念仁。科学者の皆様と語ることも不自由している身。許していただけまいか?」
「・・・まあ。」
 ヴァレンディアは明るく笑い、
「将軍は、充分すぎるほど科学者の素養がありましてよ?科学とは仮説を実証する学問です。つまり、頭の中のものを実体化する行動力こそ、最も重要です。」
 そして、もう一つ、と女史は指を立て、
「科学者に必要なものは、神秘への敬虔さと謙虚さです。魂を信じる敬虔さを持ちながら、その在処を未だ知らないことを認める謙虚さです。」
 だから将軍は適性がありましてよ、と女史は笑った。笑った後で、
「・・・私たちではどうにも出来ないことがありますもの。信じがたい事実を受け入れることも・・・、事実の積み上げと確認を行う科学者には必要なことです。諦めないことも勇気であれば、諦めもまた勇気。抗いも正しく、受けれれることも正しい。」
 だからこそ、といつも穏やかに微笑んでいた科学者は表情を曇らせた。
「・・・平行線が続くのでしょうね。」
 ヤワンは、ふむ、と息を吐き、小声で問いかけた。
「【箱舟計画】は上手く進んでいないのかね?」
 ヴァレンディアは息を飲んで顔を上げ、それからもう一度目を伏せた。
「・・・いえ・・・、計画自体は進んでいます。【世界樹計画】次第では、修正されるかと思いますが。」
「衛星軌道上に居住可能な舟を飛ばす、か。移民船とは別に極秘に進んだ特権階級対象のプロジェクトではあるが・・・、人類が滅亡するよりは、と私は思っているよ。」
「ありがとうございます。しかし、罪悪感は持ち続けますわ。」
 ヴァレンディアは軽く頭を振った。
「しかし、将軍。私の・・・不安は、【箱舟計画】の失敗の可能性や人間を選定した罪悪感からくるものではないのです。・・・同僚を、止められないかもしれない、ということです。」
「・・・しかし、あなたの同僚の科学者は、」
「天才です。責任感も強く、理想にも燃えている。・・・正しいと思った方法に邁進する力がある。だからこそ、もし、その方法が・・・有効であっても正しいとは言えないとき・・・」
 ヴァレンディアは白衣の前をぎゅっと握りしめた。
「・・・私では、きっと、止められないでしょう。」
 ヤワンは目の前の科学者を見つめて、そして苗木を見つめてから、【世界樹】と名付けられた巨木を見上げた。
「・・・女史。それでも、貴女は戻るのかね?」
「・・・愚かだと思われるでしょう?でも、戻ります。あそこには、私の研究も、その研究が生み出した『子ども』たちもおりますもの。その子(と言って『苗木』を見つめた)の兄弟たちも。」
「・・・愚かだとは思わんよ。」
 ヤワンは『苗木』のカプセルを大切に持ち直し、
「この『苗木』は幸せ者だな。優しい母上に生み出されて。」
 そして、約束をした。
「私は、この子を正しく植えよう。もし、この木が知性も心も持ち得たときに、人間と語り、手を差し出しあえるといい。貴女が、この子を生み出したことを、この子が幸福だと思えるように。」
「・・・ありがとうございます。」
 ヤワンの約束は、愚かにも思える決心が尊いものだと思ってくれたからだ。そう理解したヴァレンディアは、苗木を任せることとともに、深く頭を下げた。
「いつか、この子たちに・・・そして私たちに、『一緒に生きよう』と伸ばされる手があると、私は信じていたいんです。」

*****

 宇宙から飛来した【世界樹】のクローンを7本、世界に植えて汚染を浄化するこの計画は【世界樹計画】と名付けられていた。そして、この計画は科学者の予想以上の効果を上げた。特に、汚染の防波堤代わりとして大陸東部に植えられた最初の苗木の浄化率は高く、人々の期待も高かった。
 この事実を、オリジナルの【世界樹】に伝えるべく、グンターは巨木近くに造られた研究所にやってきた。そこにあるのは、碑文のような機械。彼自身も制作に携わった、【世界樹】と語るための機械だ。
「【世界樹】、君のおかげだ。」
 碑文の前で【イブン・ガジ】と名付けた(そのネーミングはいかがなものか、と師は苦い顔をしていたが)粉のようなコンピューターを使い、【世界樹】に告げる。
「君の細胞から作られた君のクローンが、この星を救ってくれる。」
 【世界樹】は【イブン・ガジ】と碑文を通して、それは何よりだ、と答え、そしてこうも告げる。
「余の持つ知恵はいくらでも提供しよう。その代わり、余の敵を倒す力を貸して欲しい。」
「勿論だとも。」
 グンターは己の胸を拳で叩いた。
「君と語らい数ヶ月が経つが、僕は君を友だと思っている。」
 【世界樹】は一瞬沈黙し、「友?」と問いかけた。グンターは頷いてから、
「君の思考言語には、『友』という言葉はないのだろうか?似た言葉はあるかもしれないな。親しく対等で、一緒にいると楽しかったり安心する存在のことだ。喜びも悲しみも共に体験してくれる人のことだ。困っていれば力になりたいと思い、交わした約束は何があっても守りたいと思う人のことだ。」
「・・・では、君は余の『友』だな。」
 【世界樹】はそう答えた。声は穏やかではあった。その声の穏やかさに気をよくしたグンターは、そうだと思ってる、と頷いた。
「それに【魔】と呼んでいるそれは、僕らにとっても害悪だ。それに・・・移民船に乗っていた人間は、未だ【魔】に捕らわれていると言えるんだろう?・・・ヤライ博士のご家族もその一員だ。早く【魔】を倒し、解放してあげたい。」
「しかし、【魔】を倒すことは容易ではない。我等は何万ともつかぬ年月を戦ってきた。余は君達より力がある。それでも、倒せぬのだ。」
「・・・まるで絶望じゃないか。」
「グンター。我が友、絶望はしないでほしい。絶望は【魔】に力を与えるのだ。【魔】は移民船内の人間の負の感情を食って、力を貯めている。余は逆だ。君や人々の喜びを糧にして、【魔】を抑えていられる。」
「ならば、これからは君の力は増すだろう。」
 グンターは安心したように微笑んだ。
「これから地上は浄化されていく。人々は喜ぶよ。」
「そうか。余の細胞を提供した甲斐があったな。」
「全てが良い方向に巡っていく。きっと、君の戦いも終わるだろう。もしその戦いが終わったら、君はどうするんだ?故郷の星に帰るのか?」
「そのつもりだ。母星は戦いで滅んだが、星自体は存在している。余が帰り、復興を始めねば。」
「・・・ここで一緒に生きられれば、と思うのは僕のエゴだな。」
「君は、そう思ってくれるか。だが・・・、」
「いや、いいんだ。変なことを言ってすまなかったね。・・・ならば、帰る前にこの星の人々の喜びを蓄えて帰ったらどうだろう?。汚染の浄化が済み、【魔】を倒した後の、この星の喜びはきっと君の力になるだろうから。そのとき、君が様々な人に出会えるといいんだが。沢山の喜びに触れられるし・・・」
 グンターはそれから、「個人的なことだが」と苦笑して、
「僕の妹も君に会いたがっているんだ。【白亜の供物】で元気になってとても喜んでいる。その姿を君に見せたい。」
「・・・そうか。」
 【世界樹】は感慨深げな声をだした。
「グンター、君が妹のことを語るとき、「喜び」が生じているな。」
「・・・そうか?・・・そうかもしれないな。あの子が元気になって嬉しいんだ。昔から体が弱い子でね、学校にもなかなか行けなかったせいか友達も少ない。それで僕の後をついてくる事が多くて・・・、僕にとっては可愛い妹だ。」
 優しく語るグンターに、【世界樹】は相づちのように返答した。
「その『喜び』は、確かに余に力を与えるだろう、我が友よ。」
 

(プロローグ 4に続く)

---------------あとがきのようなもの------------------

新世界樹2発売の発表もされましたので、
「世界樹2」をクリアしてると「あら、これはあのことかしら?」と思えるように書きました。


解説したほうが良さそうなところの解説です。

・タイトルの『いっしょに生きよう』
 ティプトリーJr.の短編。(「SFマガジン700【海外編】」(ハヤカワ文庫)に収録)
 ネタバレになっちゃうかもしれないけど、植物的な生き物との共生ということで。

・この話における【箱舟計画】
 元々は、お偉いさんの生活空間として計画されていた宇宙ステーションですが、世界樹計画によって汚染が改善され大気圏内にいられること、【世界樹】の知識により作られた転移装置の転移可能距離が最大10,000メートルだったことにより、転送装置を使って大地と行き来できる高度10,000mを飛ぶ城として作り直すことになる・・・という設定です。そしてこれは、世界樹2DXディザーサイトで10,000mまで上がったから出来た設定です。

・この話における【世界樹計画】
 ロシア東部に一本、避難者が多い日本に二本、アメリカ大陸・ニューヨーク付近に一本と、クローン世界樹が植えられていく・・・というつもりで書いてます。



37章の後にまた1000年前の話を書きます。次は、新世界樹1が下敷きになる予定です。


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