まよらなブログ

【深夜の真剣文字書き60分一本勝負】に参加してみた・6


Twitterの「深夜の真剣文字書き60分一本勝負」に参加してみました。
(企画については こちら


書いた話は追記に記載します。
推敲してないので、いつにもまして誤字脱字激しいと思いますが大目に見てください。
興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。
なお、
 お題:「歓喜よ、永久たれ」
 オリジナル。青春的な何かとベートベン。 です。



【第24回 フリーワンライ企画】
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 12月が近づく11月。
 どういうわけか日本人は12月にベートーベンの第九交響曲を歌うことが好きらしい。そしてそれから漏れず。日本人の学校に通っていて音楽を専攻している若者たちも、12月の第九の演奏会を行うのであった。
 ドイツ語など歌の中でしか触れたこともない。ルビを振り、その下に意味を書き、歌詞を暗唱できる程度には歌いこみ、とりあえず、冒頭の「O Freunde, nicht diese Töne!」は「おお、友よ。この調べではない!」という作曲家自身の作詩であることは理解し、…意味は分からずとも、その音に圧倒されて、とにかく歌う。そんな期間が一か月程度経っていた。
 その練習帰り。日が落ちるのが早くなり、7時前なのに辺りは「夜」だ。もう少ししたら、白い息を吐きながら帰るのだろう。寒いのは嫌いだけど、あの時期の夜になる直前の群青の絵の具を薄く溶いた空の色は好きだな、と【アルトパートを歌う女子】は思いながら自転車を押す。その隣で【ソプラノパートを歌う女子】が、あのさあ、と声を上げ、【テノールパートを歌う男子】が視線を向けた。
「…あたしね、第九を歌えて良かったって思ってるんだよね。」
「私も、好きだよ。」
 何気なく【アルト】の女子は答え、【ソプラノ】の女子は少し間を開けてから、
「ウチの学校って、みんな、頭いいじゃない?」
 と、その学校の中でもトップの成績を持つ【テノール】の男子を見ながら、続けた。
「あたし、中学校は頭良かったんだよ。」
 …私もそうだよ、と【アルト】の女子は答えられなかった。だが、そうだった。だって、中学校でそれなりの成績を取っていなくては入れない学校だ。それは大前提だった。
「なのにさあ、この学校、みんな、頭いいじゃん?それまでは、1番を取っていたのに、最初の中間テストから後ろから数えた方が早くなるんだもん。別に、あたしはそれまでも自分が凄いなんて思ってなかったよ?でも、…だからこそ、勉強だけはそれなりでいたかったのにさ、それがあっという間に奪われちゃうんだもん。」
「…それと、」
 と、【テノール】の男子が聞く。彼はいつでも冷静だ…が、それゆえに少しずれていて、少しだけ浮いていた。それでも、そのままで浮き続けているマイペースさが持ち味だと慕われていた。思春期らしい感じやすさを持つ二人の女子も、彼には無理に合わせることもしなかった。
「第九を歌うことの、何が関係があるの?」
「ううん…とさ、」
 【ソプラノ】の女子は言い淀み、それからゆっくりと言葉を紡ぐ。
「ずっと、不完全燃焼だったんだよ。入学してから。こんなんじゃない、あたしはこんなんじゃないって。でも、こんなんなんだよ。それって苦しいよ。ずっと苦しかったんだよ。」
 自転車の車輪がカラカラと回る音だけが響く。どうして私だけが自転車通学なんだろう、と【アルト】の少女は哀しくなった。独りだけ途中から別の道を行かなきゃいけないんだろう、と哀しくなった。こんなに、一緒にいたいのに。【ソプラノ】の少女が「あたしは、こんなんじゃない」と思い続けたこの半年の苦しみが、とてもよく分かるのに。
「部活も遊びも一生懸命やったつもりだったけど、今日、なんか、歌えてよかったなって思ったんだ。演奏会が終わったら、出られてよかったなって思うと思う。こんなに一生懸命、何かに取り組めて、本当に良かったなって思うんだよ。あたしが、「あたしはこんなんじゃない」って思ってたことなんか、本当にどうでもよくなるくらいに、……一生懸命歌ってるってことだけが気持ちよかったんだ。」
「……、うん。」
 と【アルト】の少女は頷いた。
「私も、そう思う。」
「うん。」
 と、【テノール】の少年も頷いて、そしてしばらく沈黙が落ちてから、
「……気持ちよくなりすぎて、歌って帰ること、ない?」
 と、【アルト】の少女が聞いた。【ソプラノ】の少女は笑い、
「あるある!この前、それで、すれ違ったおじさんに振り返られた!」
「…風呂で歌ってたら、怒られた。」
 ぼそっと【テノール】の少年が愚痴の様に言い、少女二人は弾けるように笑った。少年は少女たちを横目で見て、
「風呂で歌うの、気持ちいいじゃん?」
「いや~~、さすがに、無いわ~~。」
「小さい頃は歌ってたけど、近所迷惑になるしねえ。」
 少女二人に否定され、少年は「気持ちいいのに」ともう一度愚痴るのだ。「頭いいけど馬鹿だなあ」と少女二人は同じ感想を抱く。
「第九の歌の、どの辺が好き?」
 と、【アルト】の少女が聞くと、【ソプラノ】の少女は、歌詞を口の中で口ずさんでから
「『Über Sternen muß er wohnen.(星々の上に、神は必ず住みたもう)』」
 と、該当する部分を歌った。
「酸欠する場所じゃん。」
「さすが、ソプラノ…。高音だしてこそなのか…。」
 と【アルト】の少女と【テノール】の少年は、呆れた感心をする。
「そうだよ、酸欠起こしそうになってナンボでしょう!二人は、どこなの?」
「おれは、最後。」
 【テノール】の少年はぼそっと答えた。
「めっちゃ速い歓喜主題のところ?」
「あそこはテンション上がるよねえ。もうちょっと余韻があって終わりたいなあ。終わるのもったいなくて…」
「合唱のところもいいんだけど、」
 少年は言いにくそうにしながら、
「合唱が終わってから、オケが一生懸命弾いてる最後の最後のところが…いい。」
「「オケの方か~!」」
「…大変そうだけど、そこが…いい。」
 【テノール】の少年は、微妙なことを言った上で、「最後まで合唱も歌わせてほしい」と呟いた。それは分かる~と少女二人は同意をし、【ソプラノ】の少女は【アルト】の少女に、あなたは?と聞くのだ。
「私は…最初。」
「オケの?」
「そうじゃなくて、」
 と、少女は咳払いをしてから、少女にしてはハスキーな声で
「O Freunde, nicht diese Töne!(おお、友よ。この調べではない!)」
 そう、バリトンソロをいくらか高く歌ってみせた。おお、と聴いている二人は感心する。
「あそこ、カッコよくて、ソロもすごい上手だし、」
 少女は、それに、と呟いた。
「あそこまでずっと音楽を作っているのに、『これは違う』って言える、ベートーベンが凄い。」
「『これは、違う。』」
「うん。だから、きっと、それまで思ってたことが第九で変わるのは、当然なんだと思うよ。こんなんじゃない!もっと心地よいも、っと歓喜に満ち溢れる歌を歌おうっていう言葉から始まるから、私たちが「こんなんじゃない」って思ってきた半年も、たった一曲で塗り替えちゃうんだよ。」
 きっと、そのつもりで私たちのためにベートーベンは作ったんだよ、と【アルト】の少女は【ソプラノ】の少女に笑いかけた。【ソプラノ】の少女は、鼻を啜ってから、うん、と頷いてから、
「あと、あたしは、ソロのところが好きだなあ!あそこ、うらやましいなあ!」
 と笑って、「Ja, wer auch nur eine Seele Sein nennt auf dem Erdenrund!」と歌い出すのだ。
「…、『そうだ、』」
 と【テノール】の少年はぼそぼそと、
「『そうだ、地上にただ一人だけでも、心を分かち合う魂があると言える者も歓呼せよ。』」
 その歌詞の訳を口にした。
「…ああ、」
 【アルト】の少女が、頷いた。
「友達が出来たときに歌う歌なんだ。」
 その言葉に【ソプラノ】の少女が笑い、
「ああ、それじゃあ歌って帰ろうか!ほら、最初からね!バリトンソロ、よろしく!」
 と、【テノール】の少年に無理やり振り、【バス】パートの友人も連れてくればよかった、と言いながら、
「………、O Freunde, nicht diese Töne!」
 と、声は小さく、低音は出し切れずに、しかし歌いだした。その後の男声パートの「Freude!」は少女たちが妙に力強く歌う。「歓喜よ!」「歓喜よ!」。この歌が【歓喜の歌】と呼ばれる所以を。呼びかけるように、受け止めるように、もっともっとと歌うのだ。
 歌いながら、三人は、この【歓喜の歌】がいっそ終わらなければいい、と思うのだ。


---------------あとがきのようなもの------------------

第九を聴きながら書きました。

高校時代の実体験、当時の同級生が言ったこと、先輩が言ってたこと…
…などがモデルです。私も第九が大好きです。

あ、訳はウィキペディアのものを使わせてもらいました。



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