まよらなブログ

38章1話。


「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。

更新日が変則的で申し訳ありません。
次回の更新日も、平日になるんじゃないか…と思うのですが、
なにせ12月の勤務がまだはっきりしていないので、
予定をお伝えすることができません。
更新日の目途が立ったら、Twitterなどでお伝えしようと思ってます。

あと、新世界樹2を手に入れました。
こちらのプレイ状況もツイッターで呟いてると思います。


本日から本格的に6階層に入ります。
興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。


38章1話
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 ……蛸の脚が、杉の木に巻き付いたようだ。
 オリヒメは、その景色を端的に説明するならその一言だ、と思っている。
 白亜の森の奥…、その奥にあった転移装置を使って踏み込んだ先は、第六階層となるのだろうか。その迷宮は、白い森でも沈んだ神殿でも地の底の火山でも海の底の迷路でもなく…、鬱蒼とした針葉樹の森に蛸の脚のような絡みついた場所だった。細かい繊毛の生えた波打つ床は一方方向に一行を送り出し、細い通路をぐるぐると回りながら新しい道を見つければならない。定期的に森が揺れるがそれは鼓動のようだったし、ひゅるひゅるとした音を伴う風は、奥に吸い込まれては吐き出され、まるで呼吸のようだった。漂う空気は湿り気を帯び、体温すら感じさせた。終止感じる視線は、下からだ。根の奥に何かいるのか、とのぞき込んだアヴィーは、黄色く微かに濡れたつやつやとしたものを見た。その表面が動き、ぎょろり、とした瞳孔が見えた途端、アヴィーは叫び声を上げて理解した。あれは、眼球なのだ。
 …つまり、自分たちは誰かの体の表面か……、もしくは体内にいるのだ。
「…この木は、もしかして…」
 レグルスはゴツゴツとした表皮の木に触れながら(その頭上では、蛸のような何かの脚がうねうねと動いている。ミツナミがいつでも苦無を投げられるようにしているが、脚はレグルスを襲う様子はなかった。)、推測を呟いた。
「…世界樹…なのでしょうか?」
「…と、なると、」
 オリヒメは根の下から這いだしてきたアヴィーを引っ張りつつ、
「…あの脚や…アヴィーが見た目は…【魔】なのかもしれませんね。」
「それって、【魔】を世界樹が押さえているって事?」
 アヴィーは根から這いだしてきて、腕をさする。気味の悪さに身震いをする。スハイルが彼の膝の上に降りてきて、ぴよぴよと慰め、セルファが水筒をアヴィーに差し出した。水筒の水を飲むアヴィーを見ながら、レグルスは腕を組み、
「100年前の大地震…海都では【大異変】と呼んでいるようですが、あれで【魔】が目覚めたと世界樹は『ファクト』に語ったそうですね。地震で、【魔】の位置がずれたり、世界樹の一部が欠けたことで、【魔】の一部が自由になったのでは…と考えられるのですが…」
 まあ、それもどうでもいいことかもしれませんが、とレグルスは呟いてから、自ら頭上の蛸の脚に触れてみた。セルファとミツナミが「お止めください!」と懇願のような悲鳴を上げる。蛸の脚は、ぐるん!と丸くなってしまった。
 ダンゴムシみたいですね、とレグルスはおかしそうに呟いて、心配のあまり小言でも言い出しそうな腹心たちに向き直った。(そのときの二人の雰囲気は、マルカブが心配性を炸裂させて長々と小言を繰り出すときに似ていたので、あの二人も苦労してるのだろう、とオリヒメは同情した。)
「心配をさせてすみませんでしたね、二人とも。ですが、見ていたでしょう?あの脚は、こちらを攻撃するつもりはないようです。」
 ミツナミは、じとっとレグルスを見つめ、
「…そうですけどお、そういうことを試すときは、セルファにやらせてくださいぃ。」
「私!?」
 ミツナミのテイアンにセルファが悲鳴を上げた。ミツナミは当然のように頷いて、
「セルファは頑丈ですから、多少攻撃されても命の危険性はないでしょお?」
「い、いやですよ!私が、うねうねしたものが苦手だって知ってるくせに!」
 頑丈であることは否定しないですか…とオリヒメは小さくツッコんだが、「分かってて、前にも蛭の薬とか飲ませたくせに!」とミツナミに抗議するセルファとそれを聞き流すミツナミには聞こえてなかった。アヴィーとスハイルは「二人は仲がいいね。」「ぴよ!」とてんで方向性の違う感心をしている。ミツナミがびしっとセルファの鼻先に指を突きつけ、
「でも、レグルス様の安全には代えられませんよぅ?」
「そ…、それはそうだけど…!」
「はい、次からはセルファが蛸足にさわる係に決定ですぅ~!」
「係って!」
 セルファは泣き出しそうな様子で抗議をしたが、口の回るミツナミと焦るほど言葉が出てこなくなるセルファでは、どう考えてもセルファに勝ち目はない。レグルスは苦笑しながら、場を収めた。
「まあ、今ので分かったので、次からは脚にさわる必要はないでしょう?今、重要な情報は、あの脚はこちらを攻撃することはないことです。おそらくそれは、この木が脚の本体を押さえているせいではないかと、ボクは考えます。」
「…確かに、【魔】は自分では暴れてないもんね。【真祖】がフカビトを作ったり、お姫様を通じて海都を支配しようとしてた…、あ、そのつもりだったけどしなかったんだけど、…とにかく、【真祖】が100年前の海都や深都の敵だったんだよね。」
 アヴィーはスハイルを抱いて立ち上がる。
「【魔】が何をしたいのかはよく分からないけど、深都が邪魔なら滅ぼすよね。それを100年間しなかったんだから、出来なかったって考えた方がいいんだろうね。そして、【魔】の邪魔が出来るのは、世界樹しかいないかな。」
 アヴィーは落ち着くと賢いですね、とレグルスは誉めているのかけなしているのか分からない感想を口にして、
「世界樹がどこまで【魔】を抑えられるかは、今は判断できません。奥に行くほど【魔】の力は強くなるかも…。ですが、少なくともこの階では、【魔】はボクらには何も出来ない。」
 レグルスは地面…なのか【魔】の体表なのか体内なのか…を見つめ、
「ここがどこであっても、ボクらを遮るものは、魔物と迷宮のギミックだけです。それは、今までの階層と同様です。」
 そして、剣で地面を小突いた。
「視線や振動に、惑わされる必要はない。進みましょう。」
 きっぱりと、宣言する。うん、と頷くアヴィーの腕で、スハイルがぐるっと首を回し周囲を眺め、
「ぴーー!」
 警戒を告げる声を上げた。スハイルがこの声で警戒を告げるときは、魔物の奇襲であるともう全員が分かっていたので、素早く武器を取る。
 茂みの奥から飛び出してきたのは、巨大なトンボ、モリヤンマと呪いの胞子を振りまくキノコがニ体だ。キノコを地面に振り落としたモリヤンマは、両の前足でレグルスを捕らえようと急降下し…、
 その前に立ちふさがったセルファの盾に、標的を変更しようと複眼で周囲を見回す。その速度を落とした一瞬と、降下により刃が届く距離になった高度を、ミツナミは見逃さない。苦無を投げて、モリヤンマの頭の付け根に刃を立てて絶命させた。
 その間にアヴィーがエーテルを練り上げ、炎の星術でキノコを灼く。胞子どころか炭も残らず焼き上がり、戦闘は手早く終了した。
「ぴよっ!ぴうよう!」
 スハイルがご機嫌に『アルゴー』を労う。別にスハイルが指示をしたわけじゃないでしょう、とアヴィーに言われ、スハイルはアヴィーを蹴り飛ばし、彼らは喧嘩を始めた。まあまあ、とスハイルが間に入り、スハイルの警告に礼を言ったことでスハイルはすっかり機嫌を取り戻す。膨れるアヴィーには、星術の質問をすることでアヴィーの不機嫌さも逸らす。
「………、」
 オリヒメはそんなレグルスを見つめ、
「あの半分の調整力をマルカブが持っていたら、苦労もしなかったでしょうに…。」
 と呟く横で、「さすがレグルス様です!」とミツナミとセルファが、ふんす!と鼻息を吐いて胸を張っていた。

*****

「…っへくしょい!」
「なんだ、風邪?」
「いや。この部屋、埃っぽいんじゃないか?」
「失礼だなー。」
 ディスケは自宅の作業室をぐるりと見回す。
「最近は綺麗なんだぞ。コロネが掃除してくれるから。」
「…自分でしろよ。惚気かよ。」
「惚気だよ。」
 と、ディスケが言うので、マルカブはディスケを左足で蹴りつけた。椅子に座っているマルカブの脚は、左足だけだ。右足の木の義足は外されて、金属の接合部分が剥き出しになっている。
「あー!そうやっておとーさんが蹴るから、スハイルが真似するんだー!いけないんだー!」
「うるせえな、スハイルの親代わりは本当はお前だろうが。育児放棄してんじゃねえよ。」
 あまり意味のない会話を二人は繰り広げていたが、そのあまり意味のない会話を聞いて第三者が質問をした。工具箱を持ったディアデムだ。
「…スハイルの親はディスケだったのですか?」
 と、ディアデムが真面目に受け取り質問をする。ディアデムは、
「マルカブはディスケとアヴィーとカリーナとスハイルの『おとーさん』だと記憶していますが、ディスケがスハイルの親だとすると、その情報と矛盾します。」
 と、続けて指摘する。マルカブは「お前のせいで、ディアデムが要らんこと覚えただろうが!」とディスケを再度蹴りつけた。
 ディスケは、ディアデムに向かって、違う違うと手を振り、
「スハイルが刷り込みで俺のことを親だと思ってるの。刷り込みは知ってる?」
「はい、鳥の習性です。つまり、スハイルの親はマルカブなのに刷り込みでディスケを親だと思ってるのですか。なるほど、二つの情報の矛盾は消えました。」
「そうそう。」
「そうじゃないだろ!…ディアデム、俺が『おとーさん』って呼ばれるのは、…まあ、あだ名だ。不本意だが。」
「そうなのですか?」
「そうだよ。俺は誰の親でもないからな。」
「マルカブよりディスケの方が事実でないことを口にする、というデータは出ております。マルカブの意見を採択します。」
「………そうしてくれ。」
 ぐったりとしたマルカブに、ディスケが肩を竦めてみせた。
「でも実は、誰かの親かもしれないぞー?自分が知らないだけで。」
「そんなわけあるか。」
「前に、二股かけたことがあるって話してたけど、その程度には複数の女の子とそれなりの関係があったわけだろ?そのうちの誰かがってこともあるかもよー?」 
「……。……お前な、ディアデムの前でそういう話をするな。」
「何故、私の前ではそういう話をしてはいけないのでしょうか?」
「そりゃあ、ディアデム。君が女の子で、おとーさんは紳士だからさー。」
「マルカブが紳士であることは『ファクト』も認めることですので、私は疑問を挟みません。ただし、『ファクト』でマルカブが紳士であるこを話すとき、前提に「ああ見えて」の一言が入るのですが、これはどう見えた場合なのでしょう?」
「へー。それ、エラキスも言ってるの?」
「俺の前で聞くなよ!そういうこと!」
「はい。…さらに質問を重ねてもよろしいでしょうか?マルカブは、エラキスの話題になると心拍数がわずかに上がりますが、これは何故なのでしょう?」
 マルカブはもう息も絶え絶えの有様で、
「…………、ディアデム、すまない。その質問は許可できない。」
「分かりました。では、この質問も許可をいただけないでしょうか?最近では、カリーナの話題で心拍数が上がることについてなのですが。」
「……あー…ディアデム。その質問はより一層の禁則事項なのでやめてあげてくれないかな…?」
 さすがにディスケが制止をし、ディアデムは分かりました、と頷いた。マルカブは死に体の有様で、うなだれている。ディスケはそっとディアデムに耳打ちした。
「…ディアデム、謝って。君が謝れば、許してくれるから。」
「…私が、禁止された質問をし、マルカブを傷つけたのですね。申し訳ありません。」
「………、いや、誰が悪いってディスケが悪い。ただ、後で、人間にはしてはいけない質問があることについて話し合おうか、ディアデム。」
「はい。教えていただけると嬉しいです。」
 おう、と答えながら溜め息を吐くマルカブに、ディスケは苦笑をする。と、マルカブはディスケを睨みつけ、
「ディスケ。そもそもお前のせいだからな。」
「もー。おとーさんってば、都合が悪くなると全部俺のせいにするんだからー。」
「そもそもお前のせいだろうが!」
「はいはい、分かったよー。じゃあ、とっとと義足をつけようかー。」
「聞けよ!人の話!」
 マルカブが叫ぶが、ディスケはすっきりと無視をした。そして、やっと完成した金属製の義足を持って振り返る。銀色の輝くような義足を見て、マルカブは文句を止めて、へえ、と声をあげた。
「…綺麗だな。」
「そういう感想を真っ先に口に出来るおとーさんが好きだよー。ま、だんだん傷も凹みも出来て、綺麗とは言えなくなるだろうけど。」
 ディスケは義足をマルカブに渡し、
「でも、そこまで使い込んでよ?一生懸命作ったんだ。」
「……、おう、勿論。」
 マルカブはこれから自分の脚になる義足に触れる。固くひんやりとした感触は、もう一つの脚とは異なる。
「…この脚に、慣れるかな。」
 呟いた一言に、ディアデムの方が確信をもって答えた。
「慣れます。」
「…ずいぶん、はっきり言うな、ディアデム。」
 データがあるのか?と茶化すようにマルカブが聞くと、ディアデムが一瞬口ごもった。
「いえ…。データは、ありません。…失礼しました。今のは、私のバグのようです。…ディスケ、あとで点検をお願いしてもよろしいですか?」
「構わないけど、なんでそんなバグが生じたか、ディアデム自身はどう考えてるの?」
「…考えたことではないのです。反射のようでした。もしかしたら、人間の言う『直感』や『感覚』に近いのかもしれません。」
 ディアデムは義足を見つめ、
「…ただ、私は、その義足の金属が、カリーナの剣とクー・シーの槌を鍛え直したものだという事実を以て、…そう、口走ってしまいました。」
 ディアデムの言葉に、マルカブは顔を上げ、そしてディスケを見つめた。ディスケは驚きでディアデムを見つめていたが、マルカブの視線に気づき、彼を見て返し苦笑した。
「…そうなんだよ。それの金属は、カリーナと爺さんが置いていった武器で出来ている。」
「………、そうか。」
 マルカブはもう一度義足を撫でて、
「………そうか……!」
 それから、その新しい脚を絶対に手離すまいと握りしめた。そして、一度鼻を啜ってから、
「…ディアデム。お前が言ったことは間違ってない。絶対に慣れる。俺はこの脚にすぐに慣れて、今までの脚よりよっぽど上手に使うだろう。」
「『何故?』と質問してもよろしいでしょうか?」
「ああ。」
 マルカブは顔を上げた。
「カリーナとクー爺の武器が材料で、ディスケが作った。これ以上に必要な事実はない。」
「全く、理にかなっていませんが、」
 ディアデムは首を傾げてから、そして…ゆっくりと微笑んだ。
「しかし、とても正しいと、私は考えます。」
 ディスケはディアデムの微笑にも、もう驚かず、自分自身でも微笑んでから、
「じゃあ、早速だがその脚をつけよう。ディアデム、手伝ってくれ。」
「はい。そのつもりでここにいます。」
「…マルカブ、神経と繋ぐとき痛みが来るけど、耐えてくれよ。」
「おう。」
 マルカブは義足をディスケに手渡して、
「そんなの、どうってこともない。俺の今の、…この気持ちに比べたらな。」
 そう、泣きそうな顔で笑って、清々しく返事をした。


(38章2話に続く)

---------------あとがきのようなもの-----------------

6層は速攻戦法でいかないと、
状態異常をつけられて大変になるので、ミツナミの首切り(マスター)が戦力でした。
残りをアヴィーの星術で全体攻撃、
そのうち一体を残り三人で集中攻撃、
HP削ってオリヒメの介錯発動…が基本戦術でした。


6層の様子を書く!ことが目的だった回なのですが、
後半のディアデムにやられまくってる赤パイがメインになりました。
書くのは楽しかったです。(笑)

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