まよらなブログ

38章2話。


「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。

更新日がちょっと空いてしまって申し訳ありません。
次回は、土曜日になるんじゃないかな…と思ってます。


仕事してるか新世界樹2をやってるか、な生活ですが、
この下の記事に、新世界樹2のギルドカードのQRコードを張り付けておきます。
興味のある方は、そちらもどうぞ~。


38章2話
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「義足、見たい!付けるとこも見たかった!なんで、僕が帰ってくるまで待っててくれなかったの!?見せてよう!服、脱いで!」
「ぴぴえ!ぴぴえ!」
「引っ張るな!!」
 アヴィーとスハイルがマルカブのズボンを掴んで引っ張り、マルカブに思いっきりデコピンを食らった。「痛いよう!」「ぴー!」と額を抑える二人を横目で睨みつつ、マルカブは腰のベルトを直す。探索から帰ってきたアヴィーたちは、ディアデムからマルカブの義足が完成したことを伝えられ、ディスケの家の作業部屋までやってきたのだった。
 探索から帰ってきたばかりのアヴィーに服を脱がされそうになったマルカブは、降ろすつもりもない拳骨を振り上げて、
「お前らな、好奇心もほどほどにしろ!義足が見たい余りに、服を脱がそうとするヤツがいるか!」
「だって、脱いでもらわないと見えないもんね?」
「ぴよ!」
「何で、当然って顔で話をしてるんだ!?」
「……あ!こういうときって、こう言うんでしょう!?『いいじゃないか、減るもんじゃないし。』」
「ぴうよんぴぴぴぴ!」
「どこで覚えてきたそんな言葉!?忘れろそんな言葉!スハイルは覚えるなそんな言葉!そもそも俺を脱がせるのは、美人だけだッ!」
「マルカブって時々オープンでスケベだよね。」
「ぴよっ!ぴよーぴん、ぴええ!」
 アヴィーとスハイルの一言に、ディスケが爆笑し、うるせえよ!とマルカブにタバコの箱を投げつけられた。
「あの…、一言よろしいでしょうか?」
 と、オリヒメが軽く手を挙げ、
「私がこの場にいることをもう少し意識して、もう少し控えてもらえると助かるのですが、アヴィー。」
「え!?オリヒメも義足、見たいでしょう!?」
「義足には興味はありますが、マルカブの下着は見たくありません。」
「別に普通の下着だよ?」
 とアヴィーが言い、そうじゃないだろ!?とマルカブに怒鳴られた。ディスケがひーひー笑いながら、
「アヴィー…!おとーさんはおとーさんだけど、オリヒメから見たら他人の男でもあるわけだからさ…!」
「…僕、もしかして、『セクハラ』ってやつをしちゃったのかな?もしそうなら、ごめんね、オリヒメ。」
「いえ。アヴィーに悪意がないことは分かっています。」
 オリヒメはさらりと受け流し、
「むしろ俺に対してのセクハラだ…。」
 マルカブは頭を抱えて訴えた。アヴィーは首を捻りながらも、ごめんね、とマルカブに謝る。…が、素直に謝ったことで「ああ、コイツ、本当に分かってねえんだな」とマルカブは溜め息を吐いた。
「ぴよーぴん、ぴ?」
 スハイルがそんなマルカブの右足をツツく。コツコツと固い音がした。
「ぴよ!?」
 金属の音を聞いて、スハイルが再び右足をツツく。キツツキか、とマルカブは呻き、スハイルを抱き上げた。
「本当に金属なんだねえ。歩けるの?重くない?」
 そう問いかけるアヴィーにスハイルを渡し、「歩いて見せようか?」と聞いてやる。アヴィーが顔を輝かせて頷くので、マルカブはアヴィーの頭を軽く撫でてから、部屋の隅まで歩いて見せた。特に何の違和感も感じさせずに、まっすぐ歩く様子に、
「すごい!すごい!!義足って言われなきゃ分からないよう!よかったね、マルカブ!」
 アヴィーはぴょんぴょん!と跳ねて喜ぶ。スハイルはアヴィーの腕の中で、さらにぴょんぴょんと跳ねて喜んだ。
「…でも、少し違和感はあるな。少し、内側に脚が入り込むような感じがするんだよな。」
 マルカブが右足をさすりながら言うと、ディスケはタバコを一本取り出してくわえて火をつけた。煙を一本昇らせながら、説明をする。
「神経接続のところの信号のやりとりがうまく馴染んでないせいだろう…ってディアデムが言ってたぞ。リハビリで慣れるだろうって。一回目の接続でズレが三センチ程度は奇跡に近いってさ。装着してすぐのときは、右に曲げようとして左に曲がっちゃうようなこともあるんだって。」
「そうなのか。…」
 マルカブは何かを考える素振りを見せた。どうしたの?とアヴィーが尋ねると、もう一度歩いて戻ってきた。オリヒメが椅子を勧めるが、丁重に断って、二本の脚で立ったまま腕を組む。
「…折角、全員いるし、話しておこうか。前から言ってはいたけれど、俺は元老院が進めている航路探索に協力するつもりだ。」
「うん、聞いてる。」
「…いくつか俺なりの理由はあるんだが…、アーモロードとカリーナの国、それにエトリアまでの路を結びたいっていうのも大きな理由だ。」
 アヴィーを見ての一言に、アヴィーは、え?と聞き返し、
「エトリアまでも?」
「おう。まあ、元老院は南海にある国と国交を結びたいって考えてるから、エトリアやカリーナの国に向かうのはまだまだ先になるんだろうけどさ。エトリア近くの港まで安全な航路が見つかって快速船も出るようになれば、お前も楽に帰れるだろ?お前が、いつかエトリアに戻るにしても、アーモロードに遊びに来られるしな。カリーナの国まで航路が出来れば、国交だって結べる。さすがに女王陛下になったカリーナと会うことは難しいかもしれない…けどな、アーモロードからの交易品を見て、カリーナの寂しさが和らいだらいいな、と俺は思う。」
「ぴぴ!ぴぴ!」
「僕もそう思うよう!」
 ディスケとオリヒメは口には出さなかったが、ディスケが小さく微笑んだのは煙草の煙が揺れて分かったし、オリヒメの眉間がゆるんだので、彼女も同意しているのも明白だった。そうか、とマルカブは笑う。
「義足が出来て俺が歩けるようになったら、海に出る。そう、元老院とは話をしていた。この調子だと、すぐに違和感なく歩けるようになるんだろう。…アヴィー、オリヒメ。お前等が、新しい階層に挑んでる中で、」
「ぴぴ!ぴぴ!!」
「ああ、スハイルもだな。新しい階層は気味が悪い場所だって聞いた。そんなところにお前たちが挑んでる時に、海都を離れるのは心配なんだが…、でも、」
「心配してる場合じゃないよう!」
 アヴィーが腕を振って、主張した。
「早く行って、マルカブ!カリーナはきっと寂しがってる!泣いちゃうかもしれない!だから!早く行かないと!」
「カリーナは泣かないと思いますが、他は概ねアヴィーと同意見です。」
「ぴよ!」
 オリヒメとスハイルの同意を聞いて、アヴィーは大きく頷く。
「エトリアへの航路は、その後でいいからね!」
「…そうか。」
 マルカブは軽く頷いてから、
「………ありがとう。」
 そう柔らかく礼を言った。それは、カリーナを一番に考えている事への、礼だった。

*****

 ディスケの家から宿に戻る途中、夕焼けの空を見上げているアヴィーにオリヒメが声をかけた。
「綺麗な夕焼けですね。」
「…あ、うん。」
「何を考えていたんですか?」
「うん。カリーナ、元気かなって。」
「…カリーナの国までの航路が見つかって、海都と交流が始まるといいですね。」
「うん。」
 アヴィーは頷き、それからオリヒメに向き直った。
「僕ね、マルカブがカリーナの国やエトリアまでの路を作ってくれるのも信じてるんだけど、マルカブはもっとそれ以上の路を作っていくんだろうなって思うんだよ。」
「それ以上の路ですか。」
「うん。マルカブは優しいからね、誰かと誰かが離ればなれなのは嫌だし、誰かが困っているのも泣いているのも嫌なんだよ。路が繋がれば、泣いている人のところに駆けつけられるでしょう?そういう路を作るんだよ、きっと。」
 僕らを真っ暗な海から助けたみたいにね、とアヴィーは独り言のように言う。何のことかは分からなかったが、オリヒメは「そうなのですね。」と頷いた。アヴィーは、そうなんだよう、と頷いたが、オリヒメに頷き返したわけではないようだった。
「…やっぱり、マルカブは海に出て行かなきゃいけないんだ。そういう風に決められてるんだよ、神様みたいな人に。だから、ディスケはそんなマルカブに足を作らなきゃいけなかった。カリーナが国に帰って女王様にならなきゃいけないのと、おじいちゃんがそんなカリーナを手伝わなきゃいけないのと同じくらい。」
 アヴィーは少し言葉を止めて、じっと考える。そして、口を開いた。
「『アルゴー』にずっといてほしかったけど…、マルカブが航海に出てしばらく会えなくなるのは寂しいけど、やっぱり、みんなは『アルゴー』にいる場合じゃないんだよ。もっとやらなきゃいけない仕事があって、それは誰かの役に立つことだよ。だから、これでよかったんだって、僕はそう思うんだよ。」
「……辛くはないですか?」
「ちょっと辛かったけど、オリヒメもスハイルもいてくれたしね。今はレグルスたちもいるし。平気だよ。」
 アヴィーは少し寂しそうにしながらも、微笑んだ。オリヒメも、少しだけ微笑んだ。
「力に、なれたのなら、嬉しいです。」
「すごく力になってるよう!きっとねえ、僕らがやらなきゃいけない仕事は、迷宮の先に進んで【魔】を倒すか止めるかすることだよ!オリヒメはすごく力になってるよ!」
 アヴィーが一生懸命主張をし、オリヒメが礼を言おうと口を開いたときだ、
「……私が与えた任務も順調に進んでいるようで、何よりだ、オリヒメ。」
 低い声が道の先から聞こえた。オリヒメの表情が固くなったことに気がついたアヴィーは、彼女を背中にかばうようにして声の主を振り返る。低い声は感心したような息を吐いた。
「……女の子かと思ったが、少年だったか。オリヒメに友人が出来たのかと思ったのだが。」
「ぼ…、僕は女の子じゃないし、可愛くない!!」
 アヴィーはダンダン!と地団駄を踏み、声の主を見た。白髪の初老の男性がいる。身にまとっているのは、オリヒメやクジュラの装束に似た着物。そして、腰にはニ刀。
「………ショーグン?」
「…私の師匠様です、アヴィー。」
 オリヒメはアヴィーの肩をそっと押して、彼を自分の前から横に逸らせる。オリヒメの師と聞いて、アヴィーは警戒を解こうとしたが、
「……【魔】のところに行きなさいって言った、オリヒメの先生…?」
 アヴィーの問いかけに、オリヒメは頷いた。アヴィーは、軽く唇を噛んでから、
「あの、オリヒメの先生は、どうして【魔】のこと」
「私の名はヤライだ。君は…、確かオリヒメの手紙にはアヴィーと書かれていたかな?」
 アヴィーはおずおずと頷き、オリヒメを見上げた。ヤライもオリヒメを見つめる。視線は、穏やかだった。
「オリヒメ、ここまでよくやってくれた。そして、ここから先もよろしく頼むぞ。」
「…師匠様。」
 一方でオリヒメは腰の刀に手をかけた。
「師匠様。お答えください。何故、【魔】の元にたどり着け、と命じられたのでしょうか?この南海を守るためであれば、【魔】を倒せと命じられるはずです。海都の王族を守るためであれば、そのように命じられるはずです。師匠様は、嘘をつかれることはありません。」
「そうだな、私は誠実でありたいと思っている。」
「…ですから、私は警戒をしてしまうのです。このような目的の分からない命令は…、何かを隠しているとしか思えない。」
 ヤライは、オリヒメの刀に目をやる。
「……今までも、そのような命令はいくつもお前に与えてきた。」
「…はい。その命令が、秘される必要があったことは理解しています。だからこそ、私は師匠様のご命令に疑問を抱かずに従ってきました。」
「今回も同様に、秘密にしなければならないのかもしれない、とは考えないのかね?」
「………、」
 オリヒメは、ちらりともアヴィーを見なかった。ただ、己の師を見つめる。師はその気になれば、オリヒメの抜刀よりも速く、間合いに踏み込んでこられることを知っている。目を離すことが出来なかった。
 でも、次の一言を聞いてほしいのは師ではなく、隣に立つ少年だ、とオリヒメは自覚した。
「アヴィーを、目的の分からぬ任務に巻き込むわけにはいきません。」
 ヤライは、すうっとアヴィーを見つめた。その視線はやはり穏やかだったので、アヴィーは恐怖や警戒よりも気恥ずかしさを感じて身じろいだ。
「その少年は、良い子なのだな。」
 ヤライは微笑んだ。嬉しそうに微笑んだ。それを見て、アヴィーは、この老将軍がオリヒメを大切に…、もしかしたら孫か娘のように愛しているのだと理解した。マルカブも、カリーナがアル・ジルやミモザと仲良くしてるのを嬉しく感じていたようだったから。
 しかし、だからこそ疑問にも思う。大切に想っている娘を危険な任務に向かわせるのか?オリヒメが部下でもある以上、仕事なのだから仕方がないのは分かる。しかし、オリヒメが疑問に感じるほど目的を隠すだろうか?
 そして、ヤライははっきりと答えた。
「答えられない。」
 そう、答えた。
「答えることで、私は君に嘘をつくことになるだろうから。」
「……しかし、師匠様。」
「その少年は、【魔】を倒すつもりなのだろう?」
 ヤライはオリヒメに聞くようで、アヴィーに尋ねた。アヴィーは、少し頬を膨らませた。
「…倒すか止めるかは、僕はまだ決めてません。【魔】が僕らを食べるかもしれない生き物だってことは、分かってますけど…、もし、僕らを食べなくても済む方法があるなら、僕はその方法を【魔】にお願いしたいです。倒すことが絶対に正しいって言えないと思うし…、迷わないで決めつけるのは間違ってると思うから。その上で、別の方法がないなら…仕方ないんだろうけど…。」
 その一言に、ヤライはかすかに表情を厳しくさせた。そしてすぐに哀しそうに目を伏せた。
「…その迷いが、許されない時代がきたら、君はどうするのだろうな。」
 我々は迷っている時間など無かった、とヤライは囁いた。アヴィーは首を傾げ、オリヒメはじっと考えこんだ。ヤライは顔を上げた。
「いずれにせよ、君は、」
「アヴィーです。」
「アヴィー、君は【魔】のところに行くのだろう?そして、オリヒメ。君は、その子と共に【魔】のところに行くのだろう。君を変えたその子を、放っておけないだろうから。」
「……。」
 オリヒメは返事はしなかった。だが、ヤライはそれを、渋々とした肯定だと知っているらしい。話を続けた。
「私自身も、この海都でやらねばならないことがある。君たちが【魔】に
近づくことで、私のやるべきことと重なっていく。いずれ、また会いに来るが、今日は元気な顔が見られて良かった。」
 ヤライは穏やかにオリヒメに告げ、それからアヴィーを見つめた。
「どうかオリヒメと、仲良くしてやってほしい。」
 言われなくてもアヴィーはそのつもりではあったが、返事はできなかった。
(マルカブも同じことを言ってたな…)
 そんなことを、思い出してしまったからだ。


(38章3話に続く)

---------------あとがきのようなもの------------------

そろそろ、主役はアヴィーでヒロインがオリヒメっていう方向性で行きたいです。(願望)


最後の「マルカブも同じことを言ってたな…」ですが、
12章2話で同じことを言ってるんで、ご確認ください。
それにしても、
メイド服を着せられて女の子だと間違われた思い出なのに、
美しい思い出にしてしまっていいのか。

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