まよらなブログ

39章2話。

「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。


地下22階まで着いたあたりの話です。
そろそろプロローグシリーズの方で書いている話と被ってくるので
ゲームには描写されてないものが話の中には登場しますが、
まあ、……あれだ、気にすんナ!
(第二部は、世界樹3話というよりも
 1~4の世界設定を繋げるための話…と思って読んでいただけると幸いです。)


興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。



39章2話
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 地下21階の一方通行の床と細長くぐるぐると回る迷宮を抜けて、『アルゴー』は地下22階へとたどり着いた。降りてきた場所から視認できる場所に、さらに地下に降りる道がある。少し歩いた先には、触れると開く植物のような扉があった。
 21階に比べて、22階は澱むような空気(これが瘴気と呼ばれるものなのか、とミツナミは思った。)が濃い。さらに下に降りる道からも、自分たちを拒絶するような……むしろ自分たちが拒絶したくなるような、空気が漂ってくる。そして、樹海では下の階に行くほど魔物は強くなる。以上のことから、いきなり下の階に降りていくのではなく、扉(のような植物…なのか?)の先に進むことにした。
 扉の先に踏み込むと、ぬちゃり、という感触が足に起こり、背中に悪寒となって伝わった。うねうねしたものやぬるぬるしたものが苦手らしいセルファが、口を押さえて思わず目を閉じる。叫び出さなかっただけ十分に耐えたものだ、とレグルスは心の中で感心し、そして踏む度にぬちゃぬちゃと音がする床を眉を寄せて見つめた。……その床が震えるように動き、いきなり大きく波打った。
「揺れが…!」
「地震!?」
 アヴィーも叫び、一行は身を低くする。しかし、目を閉じていたセルファだけが、立ったまま「え?」と声を上げた。
「地震?」
「危ないよ、セルファ!伏せて!」
 アヴィーに言われてセルファはとっさに伏せるが、蠢く床と接近して、また固く目を閉じる。目を閉じたセルファが、
「……ゆ、揺れていないと思うのですが…」
 と、自信なさげに言い、アヴィーがぶるぶると首を振った。
「だ、大地震だよ!?」
「で、ですが…!」
 セルファは目を開けてアヴィーを見……、そして「揺れてる」と呟いた後に、もう一度目を閉じた。
「…わ…私の…勘違いかもしれないのですが、よろしいでしょうか、レグルス様。」
「はい。手短に。」
「みなさん、目を閉じていただけませんか?」
 この揺れの中で?とアヴィーが問いかけたが、レグルスとミツナミはすぐに目を閉じる。オリヒメは目を閉じなかったが、セルファの提案に疑問を口にすることもなかった。…というか、スハイルが泣きながらしがみついていて、ちょっとそれどころではなかった。
「…あ、揺れてませんね。」
「目の錯覚…ですかねえ?」
 レグルスとミツナミがそんなことを言い、アヴィーが「大揺れだよう!?」と喚いた。
「いえ、アヴィー。本当に揺れてないんです。目を閉じてみてください。」
「あ…危ないよ!?」
「大丈夫です。揺れているように見えるだけなんです。」
 そう言われて、アヴィーは何かに思い至ったようだった。すぐに瞼を固く閉じ、辺りを窺うようにじっとし続ける。地面は揺れず、微かな振動だけが響いてくる。
「……目の錯覚…?」
「そうみたいですう。」
 答えながらミツナミがオリヒメにしがみついているスハイルを引き離し、人間より視力の良いスハイルに布で目隠しをした。スハイルは「びーー!?」と鳴いて抵抗したが、
「………ぴ?」
 地面…というよりも空間が揺れていないことに気づいたらしく、目隠ししたままできょろきょろと首を回す。
「床と…周囲の木々や蛸足の模様やその動きの所為で空間が揺れているように見える…、目の錯覚ですね。」
 レグルスが一点のみを見つめるようにしながら、動きを確かめ、
「……しかし、困りましたね…。これでは正確な道を把握することが難しい。」
「目を閉じて進まないと、気分も悪くなりますね。」
 オリヒメは周囲を見ないように、地図を意識的に見つめる。
「手で木々の茂みを伝いながら、歩数を数えていきましょう。」
 その提案に、セルファが木々…というかそれに絡みついている蛸のような脚を見て、身震いした。
「セルファは脚に触りたくないんでしょう?じゃあ、僕の発動機に掴まって付いてくるといいよ。」
 と、アヴィーが肩の発動機を指す。ミツナミが「じゃあ、私はレグルス様に掴まりますう!」とレグルスに抱きつき、セルファに引き離された。
「…お、お気遣いは感謝します…が、アヴィー。盾役である、私が、せ…先頭を行くべきです…!その…うねうねした脚のことは…、…っ我慢します!」
 ミツナミを引き離したセルファは涙目でそう宣言した。アヴィーは「無理だったら言ってね。」と言いつつも、セルファの宣言を尊重し、肩の発動機にはスハイルを乗せた。目隠しされたままのスハイルは、足の感触からアヴィーの発動機だと分かったらしく、「ぴぴぃー、ぴよー!」とけしかけている。(「アヴィー、発進ぴよ!」ぐらいのことは言っているのだろう、多分。)
 では、進もう、と左の道を選んで進む。数歩歩いただけで、『アルゴー』は落とし穴に落ちた。

*****

 落とし穴と自分の位置も定かに出来ない空間のフロアを、やっと抜けて、『アルゴー』は一息ついた。
「…この先にも落とし穴があるんでしょうか…。また22階と23階を行き来しながら進むことになるんでしょうか…。」
 オリヒメが息を吐く。落とし穴の下は、巨大な赤い花がひしめく23階だったが、この花は人喰花なのか薄い酸を吐き出している。おかげで歩くだけで皮膚が灼け、傷を負いながらも22階に戻る道を見つけ…、先ほどの周囲を見ることが出来ないフロアに戻って、それを抜けた。
「ぴぴぴえ!ぴよ!ぴよ!」
 目隠しを取ったスハイルが羽ばたいて見せて、何かを言っている。オリヒメはスハイルを見つめてから溜息を吐き、
「スハイル…。私たちに、飛んだらいい、と言ってるんですか?」
「ぴよ!」
 スハイルは得意げに頷き、人間は空は飛べないんですよ、とオリヒメは至極当然の返答をする。スハイルは「ぴぴぴ!」とディスケの名前を出して首を振る。なんでディスケが出てくるんですか、とオリヒメが聞くと、
「あ。ディスケは月まで飛んでいける道具を作ろうとしてたからだよね?」
 と、アヴィーがスハイルに聞き返し、スハイルはぴよ!と頷いた。レグルスが、そうなんですか?と興味を持ち、アヴィーが頷いた。
「うん。なんかねえ、コロネさんと約束してたらしいんだよね。だから、いろんなものを弩で飛ばしてたよ。」
「…スハイル。ディスケが飛べる道具を開発しようとしたのは、人間は飛べないからですよ。」
 スハイルに対して正論で答えるオリヒメに、スハイルは不満げにしている。いつかオリヒメと一緒に飛べる道具が出来るといいですね、とレグルスがスハイルを慰めていると、
「……レグルス様。」
 先頭を行くセルファが緊張した声でレグルスを呼んだ。
「……人工物…が、あります。」
「人工物?」
「…鉄…でしょうか。」
 セルファが指す先には、彼女の盾を何倍にもしたような鉄板(鉄なのかは分からないのだが)が枝と蛸足に絡まって浮かんでいる。その鉄板から、何本もの繊維、淡く光る枝のような金属の棒がはみ出している。よく見ると鉄板は分厚く、鉄板の中を太い繊維や金属棒が走っている。
「…何かの機械みたいだね。…どこかで見たような気がするんだけど…。」
 と、アヴィーが首をひねると、「……ぴーよぴーぴー!」とスハイルがひらめいたように鳴いた。
「……そっか!ゲートキーパーもこんな風だったね!」
 アヴィーが頷き、何ですか?と問いかけるレグルスに、「大きなアンドロ兵だよう!」とざっくりした解説をした。
「…では、ここにもそのアンドロ兵がいたんでしょうかあ?」
 ミツナミが鉄板の内部をのぞき込んで呟くと、アヴィーは首を振った。
「この階層には誰も入ったことがないって聞いてる。オランピアも知らないって。だから、深都のアンドロではない…んだと思うんだ。」
「もっと古いものかもしれませんね…。何か文字が書いてありますが…、知らない文字です。」
 レグルスが鉄板に一文字書かれた文字を指す。それは『B』と書かれていた。(が、この世界ではその文字は使われていなかった。)ふうむ、とレグルスは考えた後、
「この繊維と鉄の棒…らしきもの。刈って、持って帰りませんか?深都で原材料を解析してもらったら、【魔】の手がかりになるかしれません。」
 提案に、オリヒメはアヴィーに視線を向けた。オリヒメの視線に気づいたアヴィーは、お願い、とオリヒメに伝える。彼女は頷いて、繊維と枝のような鉄の棒を一本ずつ斬り取った。
 それを収穫として、『アルゴー』は一度街に帰ることにした。


*****


 『アルゴー』が持ち帰ったものを見て、ネイピアの工房の職人たちは早速新商品の開発に取り組みだした。しかし、それらが何で出来てるかを問われると、首を捻るのだ。職人たちは、「素材をどう使うかには協力できるが、その素材が何で出来ているのかを理解することは難しい。」と答えた。
 それなら深都の方に頼もうかな、とアヴィーが呟いていると、算盤を弾いていたネイピア商会の店主が思い出したように顔を上げた。
「……そういえば、『アルゴー』はフィニックさんところの奥さんと知り合いじゃなかったかの?」
「マリアさんですか?」
 なぜここでマリアの名前が出てくるんだろう?とアヴィーは首を捻り…、マリアのことを畏れているスハイルが「ぴー!?」と泣いてアヴィーにしがみついた。
「ネイピアのお姉さん、マリアさんのこと知ってるの?」
「時々、新素材を売り込みに来てな。」
 店主は帳簿を引き寄せながら、答えた。
「あの人、錬金術師なのじゃろ?金属の開発の専門家じゃ。頼んでみてはどうかの?」
 エトリアの錬金術師たちが実験をしている姿を思い出したアヴィーは(アヴィーの実父も錬金術師だったので、家にはいくつか薬品と実験器具があった。)、ばあ!と顔を輝かせ、早速その謎の素材をフィニック家に持ち込んだ。
 アヴィーに繊維と鉄の棒を見せられたマリアは目を輝かせ、エトリアとハイラガの樹海で冒険をともにした篭手型アタノールを引っ張り出してきた。腕が鳴るわ~と、新鮮な魚を手に入れて今日の夕食を作り出すようなノリで実験セットを引っ張り出してくるマリアだが、そんなマリアをフェイデンは怖ろしそうに見つめている。ドルチェを抱きながら「…マリア、僕と子どもたちは宿に避難してていい?」と尋ねるフェイデンに、アヴィーは「…ごめんなさい。」と心の中で謝った。
「そんなに危険な実験はしないわよ~。少し地下室にこもるから、ドルチェのお世話をよろしくね?もちろん、おっぱいの時間になったら出てくるけど、離乳食作りはジルちゃんが上手だから聞いてね?」
「きゅ…急にそんなこと言われてもだな…。それに母親としてそれでいいのかあ…?」
 フェイデンがおろおろと聞き返すと、
「フェイデンさん。こういうときに育児出来る人がイクメンっていうんだと、わたしは思うよ?わたしもサビクも手伝うから、頑張ろ!」
 とアル・ジルが慰めているようで厳しいことを言い、「分かった、頑張る…」とフェイデンは頷いた。サビクは「女は強いな。」と思ったが、賢かったので口には出さなかった。
 マリアは実験道具を整えつつ。
「アヴィーくん、結果は…そうね、三日後には伝えに行くわね。」
「は…はい。ごめんなさい。ご迷惑をおかけして。フェイデンさんもごめんなさい。」
 アヴィーはぺこり、と頭を下げてから、
「ドルチェも、お母さんを忙しくさせちゃってごめんね。」
 と、フェイデンが抱いているドルチェの手を掴んで謝ると、ドルチェはにぱあ!と笑って、あーあー、声を出しながらアヴィーに手を差し伸べてきた。アヴィーが「抱っこしてほしいの?」と聞いてドルチェを受け取ろうとするが、「ドルチェはパパの抱っこの方がいいよなあ!?」とフェイデンが渡さず、ドルチェは大泣きをし始めた。
「フェイデンさん!ドルチェを泣かしちゃダメだよ!」
「だ…だって、ジル…!なんでドルチェは、僕よりアヴィーとマルカブに懐いてるんだ!?」
「…おれから見ても、フェイデンさんよりマルカブの方が子守り上手いからなあ…。」
「そうだね!マルカブは子守り、上手だよ!あと、アヴィーはいっぱい遊んでくれるから、ドルチェはアヴィーのことも好きなんだと思うよ!」
 とサビクとアル・ジルはさらっとフェイデンが傷つくことを言いながら、ドルチェをフェイデンから取り上げてアヴィーに手渡した。パパは僕なのにぃぃ……!とフェイデンは打ちひしがれている。そんな夫を眺めながら、マリアは、ああ、そうだ、と口にした。ドルチェに向かって、べろべろべー、と舌を出して遊んでやっているアヴィーに聞く。
「マルカブさん、数日後に出発なんでしょ?午前中に挨拶にきてくれたの。」
「……、はい。」
「…やっぱり、何かあったんだ。」
 アヴィーの反応を見て、マリアは腰に手を当てて溜息混じりに呟いた。
「何があったかは知らないし、聞く気もないけど。…出発前に言いたいことは伝えておいた方がいいわ。………明日がどうなるかなんて、分からないんだから。」
「…分かってます。」
 アヴィーは頷いたが、だからといって自分からマルカブのところに会いに行こうとは、やはり思えないのだ。
 マリアは、そう、とだけ呟いて、
「ともあれ、これはお預かりします。私の実験の結果が、あなたたちの冒険に役に立つ情報になるよう、最善の努力をするわ。」
 と二つの素材を大切に布にくるんだ。
 

(39章3話に続く)

---------------あとがきのようなもの------------------

前半は、地図に現在地が表示されない例のフロアと、その先の伐採ポイントの話です。
現在地が表示されないことを理由づけて書いてみましたが、
こんなに文字数を使う必要はあったのだろうか…とは思う。(笑)

後半は、お久しぶりのフィニック家です。ドルチェは、月齢7~8ヶ月ぐらい。
フェイデンは娘を溺愛してるけど溺愛してるだけなので、娘はあまり懐いてないようです。

あと、どさくさに紛れて、アヴィーの実父が錬金術師と書いてますが、
あれ…?これ、初出か…もしかして。アヴィー父は黒ケミです。
TECの高さは遺伝です。

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