まよらなブログ

39章4話。


「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。

更新遅くなって申し訳ありません。
次回は15日の日曜更新のつもりでいますが、
なにせ、「ムジュラの仮面」が前日に発売されるため、
………もしかしたら、無理かもしれない!!
と思ってはいますが、善処はします。


では、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。



39章4話
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 ―― 採集物は1000年前に宇宙に向けて飛ばした船の残骸だ。
 そう言われても、話が突拍子もなくて実感が持てない。故に驚けない、というのがレグルスの正直な感想だった。エトリアの事情をそれなりに知っているらしいアヴィーをちらりと見ると、アヴィーは「宇宙…?」と呟き返し、
「じゃ…じゃあ!じゃあ!!もしかして月にも行けるような船ですか!?」
 そうならディスケに教えなきゃね!とスハイルと無邪気に喜びさえもしている。そういう問題ではない、とレグルスは思い、では何が問題なのかと考えてから、
「……何故、それをご存知なのですか?」
 と、いくつか浮かんだ問題点のうち一つを問いかけた。
「その船の打ち上げに、私も立ち会ったからだ。」
 と、ヤライは港の船を送り出したかのような口調で答える。話が破綻している、とレグルスは眉を寄せて
「……1000年前、と仰いましたが?」
「1000年前に立ち会ったのだ。」
 レグルスはオリヒメに視線を向ける。オリヒメは小さく首を振った。何か知ってるわけでもないし、この返答の意図も分からないようだ。だが、アヴィーがじっとヤライを見つめ……
「……そうか。だから、前の執政院長さんを知ってるんですね。」
 と囁くように問いかける。ヤライは、ふむ、と髭を撫でるようにしながら、
「…君はエトリアの…、ヴィズルの事情を知っているのだね?」
「詳しく知ってるわけじゃないです。でも……、前の執政院長さんは、千年も一人で戦ってきた立派な人だって、僕の母さんが言ってました。きっと寂しかっただろうにって。」
「―― 優しい母君だ。」
 ヤライが少しだけ目を細めた。オリヒメが不安そうにアヴィーを見つめる。アヴィーは「大丈夫だよ。」とオリヒメに囁いてから、ヤライに視線を向けなおした。
「…千年も一人で戦ってきた…っていうのは、何かの例えだと思ってました。シルンは単刀直入な言い方しかできないのに変だなって思ってたけど…、この街でお姫様と王様と知り合って、……100年も変わらないで生きた人がいるなら、もしかしたら、って。」
 シルンはやっぱり例え話は出来ないし嘘もつけないんだ、とアヴィーは少しだけ嬉しそうに呟いてから、
「やっぱり、前の執政院長さんは千年生きたんですね。オリヒメの先生も同じように生きてきたんですか…?」
「…ああ。全く…全く同じように。その技術の応用が、グートルーネ姫に用いられた不老不死の術だ。ただ…900年のうちに失われた技術も多く、姫の場合、力の源からの干渉を抑えることができなかった。そうでなくとも、姫の体の安定など術を施した連中は気にもしなかった。……最初から崩壊が運命づけられた体で、100年も自我を保って生きてくれた。」
「お…お待ちください、師匠様!」
 オリヒメが…彼女にとっては珍しい話だが、悲鳴のような声で遮った。
「で…では…!師匠様も、フカビトや【魔】の力を用いて不死の体を得た…というのですか!?ならば……!いつかは姫のように…フカビトと化していくのですか!?」
 その声は仲間たちには珍しくとも、師匠にとってはあまり珍しいものではなかったらしい。ヤライは穏やかに…言い聞かせるように、説明をした。
「…安心していい、オリヒメ。私たちが不死の処置を施したときは、技術は非常に安定していた。ヴィズルは【世界樹計画】を守るために、エトリアの世界樹と同化し自我を失っていったが…、私は世界樹のエネルギー変換機能だけを応用した技術を用いて生きている。【魔】や【世界樹】の思考の影響は受けていない。」
「……それが真実であることを証明は出来ないと思うのですが…」
 レグルスが呟くと、ヤライは「確かに。」とあっさりと認めるのだ。アヴィーは、あからさまに動揺しているオリヒメを見てから、
「…証明できないことを確かめるのは難しいよ。だから……、別のことを聞こう?」
 とレグルスを促す。レグルスは感心したようにアヴィーを見てから頷き、「質問はアヴィーに任せます。」とそう答えた。アヴィーは少し考えて、質問を選んだ。
「じゃあ……、なんで…採集したものが1000年前の船のものだって教えにきたんですか?」
「【魔】と【世界樹】がここに来た経過と…アーモロード王家の役目を教えておこうと思ったのだ。」
 君たちは【魔】について知りたいようだから、とヤライは言った。呆れたような苦笑だった。呆れているのは…『アルゴー』に対してではなく、自分自身に対してかもしれなかったが。
「私がこれから話すことは、船の残骸を見た君たちでも信じられない話だとは思う。しかし、聞いてほしい。」
 『アルゴー』から特に異議もないので、ヤライは話を進めた。
「この世界にはかつて科学という文明が栄え、そしてそれによって一度滅びかけたことを……知っているだろうか?」
「それこそ、ミズガルズ図書館によって公表された情報ですね。先程、話をしてきたばかりです。」
 レグルスの答えに、ではその前提で話を進める、とヤライは答えた。
「大地に毒が回り、人間が生活できない世界になった。人々は、人類が生き残るためにいくつかの方策をとった。エトリア、タルシス、ゴダムの【世界樹計画】、ハイ・ラガードの箱舟計画もその方策の一つ。」
 いくつか聞いたことのない地名が出てきたが、エトリアと同じような街があるのだろう、とアヴィーは理解した。そこがエトリアと同じような経過をたどり、同じような結末を迎えたのかは、分からないが。
「それらの計画には、この(といってヤライは、世界樹を見た)【世界樹】が協力をした。この【世界樹】を元にして、我々は世界を浄化する世界樹を7本、生み出した。それが…さらなる【禍】をもたらすことにもなったが…、結果的に大地は浄化された。【禍】についても、エトリアとラガードでは解決されたのでね。」
 アヴィーが「解決?」と首を傾げたが、ヤライはそれ以上言うつもりはないようだった。養母たちの探索以外の何かがエトリアでもあったらしいことだけを、アヴィーは理解した。
「それらの世界樹が植えられる前、この【世界樹】がこの地に降りてくる前…、大地を浄化させる方法もなかった時、汚染された星を抜け出すという計画が立ち上がった。宇宙を航行する巨大な船を建造し、移住可能な星を探し、その星を開拓してそこに住み…、そして人類という種を存続させるという計画だ。」
「……諸事情で今の生活が送れなくなった人が、開拓団に加わり、荒れ地を開拓して己の土地にしていく…というイメージで捉えればいいのでしょうか?」
 レグルスの問いかけに、概ねは、とヤライは答えた。本質は…変わらない。今の生活が送れない、だから新天地を目指すという点では変わらない。ただ、やはりイメージの落差は大きいのだろう。ヤライは苦笑した。
「では、ここからの話は、その開拓団が賊に襲われて僅かな財産と人が奪われる……、そういうイメージで捉えてもらえるのかな?移民船は宇宙に飛び立ち、餌場を求めて宇宙を移動している【魔】に遭遇し取り付かれた。そして、【魔】は、移民船のメインコンピューター……、指揮官のようなものだ、それに干渉し…飛び立った星に戻る航路をとらせたらしい。移民船の故郷には同じような人類が…生物がいる可能性は高く、それらを次なる餌にするためだ。移民船は、【魔】に取り付かれ…その【魔】を追ってきた【世界樹】も取り付かせ……この地に落ちてきた。後に【白亜の供物】と呼ばれるものを撒きながら。」
 それが、1000年前の一番最初にあった出来事、とヤライは言う。
「移民船と【魔】は地中深くに潜り、その上に【世界樹】が降りて、移民船ごと【魔】を封じた。我々は【世界樹】の汚染を浄化できる特性に目をつけ、新たな世界樹を7本生み出し、それで以て大地の浄化を計画した。君たちが、踏み込んでいる第六階層はその移民船と【魔】が封じられた大地の底。【魔】と【世界樹】の組織が混ざり合い、この次元とは位相の異なる空間だ。そこには、移民船の残骸も混ざっている。君たちが、採集してきたもののように。」
 ヤライは再び、【世界樹】を見上げた。憎悪を込めて、見つめた。
「進めば進むほど、移民船の痕跡は見つかるだろう。…移民船も【魔】と【世界樹】の犠牲者なのだと知っていてほしい。私は移民船を…救いたかったが、…それが許される状況ではなかった。…大地の浄化を優先させるあの時代では…無理だった。」
 ヤライは、そしてため息を吐き、
「……様々なものを犠牲にして、当時の危機を切り抜けたのだ。このアーモロード王家も、その犠牲者。彼らは【世界樹】と共にあることで【魔】を封じ続けていた。私は、そのアーモロード周辺を守ることで、アーモロード王家を守護し、【魔】が目覚めるような余計な刺激が与えられぬように努めてきた。」
「……それが、この南海を守るショーグンの組織ということですか…」
 レグルスが納得したように囁き、オリヒメが初めて聞く内容に目を広げる。弟子の驚きをヤライは敢えての無視をして、続ける。
「【魔】がこの星を滅ぼす可能性については1000年前に……タルシスから西の地で実証されていた。封じられた【魔】が目覚めぬよう…1000年前の科学者は、……様々な策を練り、実行した。この南海一帯は当時の科学者たちの子孫が治め、【魔】に対する防衛ネットワークを作り上げた。それが、今の我々の組織だ。各地にショーグンと呼ばれるものを送り、有事に備える。その有事とは本来は【魔】の目覚めだったのだが…、年月によって忘れ去れてしまうものだ。」
「だ…だから、私も、その本来の目的を知らなかったのですか…!?」
 オリヒメが、やっと声を上げた。
「我々はこの南海の秩序を守る存在だと…私が思っていたのは…師匠様もそう仰っていたのは…真実ではなかったのですか…?」
「……それも一つの真実だよ、オリヒメ。」
 ヤライは静かに答える。
「【魔】が負の感情を喰うことは聞いているのだろう?それも事実だ。では、負の感情がもっとも生まれやすい環境とは何か…?…戦争や内紛だ。【魔】を目覚めさせないためにも…奴の活動を活発にさせないためにも、南海一帯の秩序維持は非常に重要なことだった。それは、【魔】を忘れていった各国の指導者たちにとっても、重要なことだった。ならば、本来の目的の内容を忘れても目的は達成できる…。それで良いと考えた。」
「……そのために、1000年…?」
 アヴィーの問いかけに、ヤライは頷きかけたが……
「……物事には、複数の目的があることもある。…この1000年、【魔】を目覚めさせないことは…、目的でもあり…手段でもあった。」
「……。」
 アヴィーは、納得した、とも、しない、とも答えずに、少し考えてから、
「オリヒメには、【魔】のところに辿り着けって言ったんですよね…。それは、【魔】を目覚めさせることにはならないんですか?もし、僕たちが【魔】と戦って、僕たちが倒されてしまったら、【魔】は目覚めてしまうんですか?そのとき…どうするんですか?」
「……君たちごと、封じることになるだろう。」
 ヤライは、そう答えた。正直な答えですね…とレグルスは呟く。オリヒメの表情を、ミツナミとセルファがさっと見たが…彼女は師にそう言われたことには傷ついてはいないようだった。戦略的には効率的であると、オリヒメも分かっているからだろう。その点は、彼女はやはり武人だった。
「少年。君がエトリアの子ならば、話は早い。【魔】やフカビトが、モリビトや…翼人、ウロビトやイクサビトと同じと思ってくれるな。後者は我々が作り出したものだが、【魔】は星の外から飛来した生き物。この大地で生きることなど考えておらず、この大地をむさぼり食ったら飛び立つ算段だ。」
「……【魔】を倒さなくてもすむ方法はない…ってことですか?」
「…生き物としての構造がまったく異なるのだ。【魔】は、この地で生きることに価値など見いだしていない存在だ。君がもし、モリビト殲滅戦の後悔を背負っているのなら、その後悔を向ける相手ではない。」
 アヴィーとヤライ以外には分からない言葉だったが、アヴィーの深いところを突いたらしく、アヴィーは唇を噛んだ。ヤライは、おそらく、それを言いに来たのだろう。一度、息を吐いて話を区切る。
「師匠様…!」
 オリヒメが声を上げた。
「では…私が【魔】の元にたどり着いたとき…!私に何を求めるおつもりですか!?私は何をすれば…」
 ヤライは何も答えずに、ただ静かにオリヒメに視線を向ける。オリヒメはアヴィーを一度見てから唇を噛み、そして「いいえ」と首を振った。「師匠様の命令を待たずに、私からお願いします。【魔】の元にたどり着いたとき、私はアヴィーに協力をします。それが戦いなのか、【魔】への説得なのかは分かりませんが…、私はアヴィーの意志に協力をします。それはもしかしたら、師匠様の意図とは異なるかもしれませんが…、お許しを。」
「オ…オリヒメ、いいの?」
 アヴィーの問いかけに、無論です、とオリヒメは頷いた。ヤライは、ほんの少しだけ微笑を浮かべた。
「君が、それを望むのなら、それでいい。…状況がそれを許すのかは…別の話だが。」
「……不穏な一言ですね、気に入りません。」
 レグルスが呟くと、ヤライは「その時の状況など誰にも分からないのだ。」と苦笑とともに返すのだ。
「1000年前に、どうにかこの南海の防衛ネットワークを作り出したとき…その900年後の大地震によって【魔】が目覚めかけ、大異変と呼ばれる天変地異と疫病が流行るなどとは思っていなかった…。あれで、ネットワークは断絶し…、そのために100年奔走した。状況など、その時になってみないと分からないのだ。」
 ヤライは思い返すようなため息を吐いてから、アヴィーを見た。
「君の仲間が、二日後に航路探索に出発するらしいな。元老院が、国を結ぶ航路を探しているのは交易のためだけではない。この南海一帯が【魔】に対抗するための防衛ラインを、再度作り上げるためだ。元老院ももはやその目的を覚えてはおらず、ただの1000年前からの盟約を果たそうとしているに過ぎないのだが。」
 アヴィーは、そのヤライの言ったことの半分も意味は分からなかったのだが……だが、「二日後?」と問いかけた。そこだけは理解した。
「……聞いていないのかね?」
 ヤライは意外そうにアヴィーを見つめ、そして、もう一度口にした。
「…君が信頼する男の出発は、二日後だ。見送りをするつもりなら、そうしたまえ。…未知の世界に踏み込んだ冒険者が無事に街に戻ることも、出航した船が無事にこの街に戻ることも、……神も保証はしていないのだから。」
 それは……、体験談のような忠告だった。


(39章5話に続く)

---------------あとがきのようなもの------------------

この辺から、プロローグシリーズと本編が重なっていきます。
設定がごちゃごちゃしてて、ちょっとめんどくさい。


ゴダム、【禍】、タルシス、ウロビト、イクサビト…と、
4と新シリーズ用語もバンバンでてますが、読み流してください。
アヴィーたちも分かってないので大丈夫です。(笑)


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