まよらなブログ

【深夜の真剣文字書き60分一本勝負】に参加してみた・8


Twitterの「深夜の真剣文字書き60分一本勝負」に参加してみました。
(企画についてはこちら )


書いた話は追記に記載します。
推敲してないので、いつにもまして誤字脱字激しいと思いますが大目に見てください。
興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。

使用お題は、
 ・卒業する前に
 ・「あなたを思うから僕はこうするのです」
 ・忘れ去られた記憶

   ……初の複数お題使用で、オリジナル話です。




【第38回 フリーワンライ企画】
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「ここに、弓道場ってなかったっけ?」
「今更、何言ってんの?」
 三年間も通っておいて~、と友達が笑う。そうだよね、と笑い返しながら、いや、そんなはずはない、と少女は思う。
 ここに、弓道場はあった。そこを覗いた記憶もある。矢が的に刺さる瞬間の、乾いた音も聞いた記憶もある。弦の音も聞いた記憶だってある。冬の冷たい板張りの床に裸足で上がった記憶もある。そこで、友達と話をした記憶だってあるし、そこで喧嘩をした記憶だってあるのだ。
 少女にあるのは、記憶というよりも体感だった。体で感じた弓矢の記憶。それを、記憶違いと言うには鮮烈すぎる。確かに、あったのだ。
 しかし、そこに弓道場があったことを学校の人たちは忘れている。忘れ去られた記憶になっている。彼女が弓道場があったという場所は、今はただの林になっていて、3月の時期は落ち葉もなく枯れ木だけが伸びている。枝の先にはようやく芽が膨らみ始めていた。
 卒業する前の、授業もない時期。受験に向かう生徒も多く、学校に来る人数はまばらになっている。その間の奉仕活動として、校庭の掃除をしている。林でしかない場所を掃除する気にもなれず…、生徒たちは寒空の下、竹箒を持ったまま、卒業後に遊びに行く計画や新生活の(若干夢見がちな)計画を話している。
 少女だけが一人、林を眺めた。ここに、弓道場はあったはずなのだ。それが忽然と無くなっていて、みんなに忘れ去られている理由。それを卒業する前に、明らかにしたい。明らかにしたい、というより……
 ……明らかに、しなくては。
 そんな義務感にも駆られて、少女は林の木々を見上げている。好奇心というレベルではなく、義務感だった。卒業前までに、明らかにしなくてはいけない。そうしないと…………。
 少女にとって、弓道場がない学校の方がおかしいのだ。この学校に弓道場がないと気づいてからの学校生活は、まるで夢の中にいるようだった。…そう、これは夢なのだ。自分は毎日を過ごすようで、いつまでも夢の中にとらわれている。卒業する前にそこから出ないと、永遠に夢に囚われてしまうだろう。そんな危機感すら感じている。
 少女は自分の体感している記憶を頭の中で描いてみる。剣道場の方から、部活棟の隙間を縫うように細い道を歩いてくる。(剣道場も部活棟も未だにあった。)その細い道の先に、小さな剣道場がある。屋根があるのは射場と的場で、矢道は外で芝生が植えられていた。矢が飛び出さないように、矢道の周囲には網が貼られ、人が入らないように低い垣根が植えられている。
 少女は意を決したように、剣道場の方へ歩き出した。剣道場の入口に箒を立て掛けて、目を閉じる。そして、自分の頭に思い描く記憶の通りに、歩き出してみた。そちらの記憶の方が現実なのだ、と思いながら歩き出してみた。剣道場から校庭の方向。部活棟を抜けて、プレハブの木工室の裏手を回る。そして、その先に、小屋のような小さな弓道場がある。矢を打つ射場の入口がある……はずだ。
 頭に思い描いた記憶の通りに、歩く。そこはもう、林の中で土の上を歩いているはずだったのだが……不思議なことに硬いアスファルトの様に安定していた。林の木々の上で、カラスが妙にせわしなく鳴く声がした。
 カラスに目を開けるように言われたようで、少女は目を開けた。その目の前に、的場に入る引き戸の扉があった。
「……やっぱり、あった…!」
 少女は安堵したように声を上げた。この引き戸は立てつけが悪くて、開ける際にちょっとコツがいることも思い出した。少し、浮かすようにして扉を持ち上げて開けるのがコツ……
 その通りにすると扉が開いた。少女は、夢から覚めたような心持ちで、扉の中に入った。
 公立の学校だったので、弓道場は必要最低限の備品と広さしかなかった。3人で矢を射て精一杯の広さ。部員も多くはなかったから、それで十分だった。
「ほら…、やっぱり、私の記憶の通りだ…。こっちが正しいんだよ…。」
 そう呟きながら、少女は弓道場に上がり…そして、覚えのない風景を見た。
 古いが掃除はされていて清潔ではあった木の床に、赤い染みが見えた。
 ……血だ、と気が付くのと同時に、その赤い染みを見下ろしている、同じ年頃の少女が自分を見たことにも気が付いた。
「…………、ああ、」
 弓を持つその少女は、弓道場に入ってきた少女を見て、やつれた様子で微笑んだ。
「やっと、夢から覚めたんだ。」
 それは、少女が先ほどまで感じていた感覚を口にされたものの、少女はその違和感に後ずさった。この弓をもつ少女のことを、自分は知っている。知っているのに、思い出せないでいる。思い出さないようにしている。
「…私のこと、忘れたの?」
 と弓持つ少女はおかしそうに笑い、
「ここでも教室でもいろんな話もしたのに。お互い「彼女」みたいなものだったのに、忘れちゃったの?」
 ……忘れるわけもない、ただ、思い出さないようにしているだけだ。それは…忘れられないからだ。この、大好きで、でもだからこそ憎み合った少女のことを。
「…別れ話っていうのかなあ…?あの話をしたのは、もう何年も前のことだろう?卒業する前の、この時期だった。あなたは東京に行くことになって、あたしはこっちの大学に進むことになって。もう、会わないことにしようって、ねえ、どっちがそう言ったんだっけ?」
 弓持つ少女は笑い、首をかしげる。
「もう、どっちでもいいよねえ。結果は、あたしがあなたを射て、あなたは死んで、あたしも結局は死んで。弓道場は閉鎖された。部員の子たちには悪いことをしたなあ……。どうせ心中ごっこをするなら、どこか別の場所でやればよかった。」
 そう言いながら、弓持つ少女は弓を構えた。いつの間にか、矢さえ番えている。
「何年、これを繰り返すんだろうね。死にたくなかったあなたは、あたしのいない学校でもう一度をやり直した。あたしは、あたしのいない学校には入れないから、ここであなたを待っていた。そのままあたしのいない学校を満喫し続ければいいのに、あなたはいつもここに来てしまう。あたしが射て、あなたが死んだこの時期に、必ずここにきてしまう。」
 そんなに卒業したいの?と弓を構える少女は泣くように笑う。少女はただただ、己のものだった血液の染みを見るだけだ。
「ここで永遠を過ごせばいいのに。あなただって、それを望んだはずなのに。なんでここにきてしまうの?先に進もうとしたら、あなたは死ぬしかないのに。」
「……あの時も、このままならいいのに、って話をした。」
「それが、別れ話の引き金だったよね。あなたは、先に進みたくて、あたしはこのままでいたかった。あなたは、このままでは居られないといって、私はこのままで居たいといった。あなたは、一人で先に大人になろうとしていた。」
 だから射たの、と少女は囁き、だから射られたの、と少女も囁いた。
「あたしは、大人になんかなりたくないし、大人にさせたくなかった。だから、射たの。『あなたを思うから僕はこうするのです』とそう言って。」
 ねえ、と少女は涙を流したが、泣いてはおらずに尋ねてくる。
「あたしは、あなたを殺したことを後悔はしてないけど、馬鹿なことをしたと思ってはいるし、あなたには悪いことをしたとは思ってる。だから、矢を当てるか外すかは、あなたに選ばせてあげる。射られてまたいろんなものを忘れ去って、学校生活を繰り返すか、射られずにいろんなことから忘れ去られて、この夢から卒業して死ぬか。選ばせてあげる。」
 少女は涙を流さずに、しかし泣いているような目で矢を見つめた。しばらく矢を見つめて、そして自分の選択を告げた。それでいいのね?と少女に聞かれ、少女は頷いた。
「……この選択は私だけのためじゃない。『あなたを思うから僕はこうするのです』と、言っておくよ。」
「……相変わらず、いい根性してる。」
 と、少女は笑い、そして弦音は甲高く鳴った。



---------------あとがきのようなもの------------------

不思議系とホラーの中間を狙ったものの、
気が付くと色気のない百合になった事件発生。

なお、舞台が弓道場なのは中学時代の七不思議が元ネタだからです。
弓道、全然わかりません、すみません。


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