まよらなブログ

40章2話。

「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。

ちょっとバタバタしてるのと出勤日の関係で、
更新日がずれ込んで申し訳ありません。

そして、次回の更新は土曜日になると思うのですが
むしろそちらが間に合うのだろうか……



それでは、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。



40章2話
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「熱も下がってますしぃ、傷がまた開くこともないでしょうからあ、明日から探索を再開しましょうかあ?」
 アヴィーの傷の具合を見てミツナミが提案し、アヴィーは「今日からでもいいよう。」と唇を尖らせた。ミツナミは首を振り、
「大事をとるのも重要ですぅ。明日の探索は短めにしましょう。」
「そうは言っても、魔物が強くて午前中の探索をするだけでいつも精一杯じゃないか。」
「ええ。ですからあ、二時間の探索から始めましょうかあ?」
「それじゃあ、探索にならないよ。」
「でも、二時間分の地図は出来ますよお?」
 ミツナミは指を二本立てて、笑った。アヴィーは「そんな短い時間じゃ意味がない」となお言い募ろうとして、
「その二時間が、翌日の探索の準備になると思いましょう。」
 ミツナミの後ろで話を聞いていたレグルスが、やんわりと話に入ってきた。アヴィーは、ぶう、と膨れたが「分かったよう…」と頷いた。
「膨れるアヴィー、可愛いですぅ!」
「僕は可愛くない!あと、ミツナミ、あんまり触らないでよう!」
「診察ですぅ!」
「ぜ、絶対に違うと思う…!!」
 さわさわと触ってくるミツナミの手から逃れるためアヴィーはシャツを着ようとして、「まだ診察は終わってませんよぉ!」とミツナミはそのシャツを取り上げようとする。シャツの引っ張り合いになっている二人に、レグルスがまた割って入った。
「ミツナミ、その辺にしておきなさい。オリヒメに斬られますし、マルカブが帰ってきたら蹴り飛ばされますよ。」
 レグルスの命令ということもあり、ミツナミはあっさりと引いた。アヴィーはシャツを引き寄せて、すぐに羽織る。
「アヴィーには保護者が多くて困りますぅ。」
 ミツナミがあまり困ってなさそうに呟き、レグルスは笑って「スハイルすら、自分はアヴィーの保護者だと思ってますからねえ。」と答え、アヴィーは「え!?」とレグルスを見た。
「逆だよ!僕がスハイルの保護者だよ!」
「私から見たら、どっちもどっちですぅ。」
「そんなことないよ!っていうか、おかしいでしょう!?スハイルが僕の保護者だったら!」
「オリヒメが保護者なのは否定しないんですね。」
 レグルスがにこやかにそう言うと、アヴィーがはぐっと黙ってから、
「オリヒメは年上だし、しっかりしてるから、そう思われてもしょうがないのかな…とは思う。」
「カリーナエ様とはどちらが姉か兄かで揉めたそうですが。」
「なんでレグルスがそんなこと知ってるの!?」
「確かに、カリーナエ様よりオリヒメの方が年上ですけど…そんなに違いますかね?」
 レグルスは苦笑しながら首を傾げ、アヴィーは「……何を言いたいんだよう。」と呟きながら、シャツのボタンを留めた。ボタンを留めながら、
「……もしかして、僕、オリヒメに甘えてる?」
 と、レグルスに尋ねた。
「どうでしょうね、オリヒメがアヴィーを守るつもりでいるのは事実ですし、マルカブがいない今、尚更そう思ってるでしょうけど。アヴィーがオリヒメに甘えてるのかどうかは、よく分かりません。君は、誰にでも甘えられますから。」
 悪い意味で捉えないでくださいよ、とレグルスは苦笑した。
「甘える…というより、手を貸して貰うことが上手と言いたいんです。君に打算がないからでしょうけど。」
「じゃあ、レグルスは手を貸して貰うことが苦手なんだ?」
 アヴィーの一言は皮肉として放たれた。だが、ミツナミがこっそり笑ったので、あまり痛烈な皮肉にはならなかったようだ。レグルスに至っては、「そうなんですよ。」と同意した。
「僕はどうしても先に打算をしてしまいますからね。手を貸して貰うというより、貸し借りの契約になります。まあ、それはそれで、分かりやすい協力関係ですから、予測もしやすいですけど。」
「……予測しやすいことがレグルスにとって重要だってことは分かる気がするよ。だって、…ええと、不測の事態って国を治めるときにやりにくいことでしょう?」
「ええ。ご理解いただけて嬉しいですよ。」
「でも、別にここはレグルスの国じゃないし、今のレグルスは……少なくとも『アルゴー』の中では別に王子様でもないんだから、そんなこと考えなくてもいいのに。」
「気遣いですね。ありがとうございます。」
「だから、そういうこと言わない方がいいと思う。」
 アヴィーが唇を尖らせたが、レグルスは気にも留めずに、
「アヴィー、もう一つの気遣いを提案させてください。君が寝ている間の看病はミツナミとオリヒメがしていました。彼女らに感謝を示してあげてください。」
「私はいいですよお。治療を受け持つのはお仕事ですしぃ。夜の間、アヴィーを看病してたのはオリヒメですぅ。オリヒメにお礼を言ってくださあい。お礼をしないと、それこそオリヒメに甘えることになりますよお?」
「うん、ありがとう、ミツナミ。あと、レグルスも。」
 アヴィーは自然に礼を言ってから、
「オリヒメにお礼を言ってくるね!」
 と部屋から出ていった。それを見送りながら、
「ああいうところが「打算がない」っていうんでしょうに。分かってないですよね。」
 レグルスが呟くと、ミツナミは苦笑した。
「分かってないから「打算」じゃないんですよぉ、レグルス様。」

*****

 翌日からの探索は、アヴィーの傷がなくとも二時間が限度だった。地下22階の目の錯覚で己の立ち位置を把握できない空間と落とし穴、地下23階の人喰花の酸によるダメージが探索を阻む。試行錯誤を繰り返せざる得ない22階なのに、落とし穴に落ちた23階は一歩進むだけでダメージを受ける空間だ。体力はすぐに削がれる。それに、落とし穴に落ちて穴の位置を把握できたら、一度街に戻って探索をやり直した方が23階から22階に上がってくるよりも進みは早い。結果的に、休憩を挟みつつ、短時間の探索を繰り返すパターンになった。
 そして、23階に落ちたとき、その階の探索をしつつ22階に戻る道を探すよりも一度街に戻ることを選んでいるのは、人喰花によるダメージだけではなかった。
 ところどころ……蛸足と枝葉に囲まれた迷宮の中に『目玉』が存在していた。近寄ると、瞼を開き、黄色の目玉が現れる。まるで迷宮そのものが目を持っているようだが、おそらくは【魔】の一部なのだろう。その目が『アルゴー』を認識すると、その周辺にいた毒々しい色合いの羊…(後で元老院に報告したところ、かつて『悪夢を運ぶ者』」と呼んでいた魔物だと判明した)…その羊が追撃してくる。その猛攻を避ければ人喰花の群生地に踏み込むしかないし、それを避けるのなら『悪夢を運ぶ者』」と戦うしかない。それ以外の選択は、逃げることだ。確実に逃げるためには、『悪夢を運ぶ者』」が近づく前にアリアドネの糸を用いて街に戻ることだった。
「あの目玉が開かなければ、もう少し進めるのですが…」
 と、アリアドネの糸で何度目かも分からない脱出をし、樹海の入り口でレグルスはぼやく。スハイルが「ぴっぴっ!」と言いながら、嘴を突き出す動作をしていた。今度こそ目玉をツツいてやるという意気込みのようだ。
「…あの目玉の視覚と、『悪夢を運ぶ者』」の感覚は連動してるのでしょうか…?」
 セルファが呟き、ミツナミが首を傾げた。
「警備システム的には最高ですけどねえ、『目玉』はおそらく【魔】の一部ですよねえ?『悪夢を運ぶ者』」と感覚が連動していたなら、『悪夢を運ぶ者』」は【魔】が生み出したことになりますねえ?」
「…真祖がフカビトを生み出していたのだから、可能性はあると思いますが…。」
 セルファが、しかし何かが繋がらない、という様子で顎に手を当てて考える。アヴィーが樹海の入り口にある木の根本を見つめて、
「……でも、…」
 と、呟いた。仲間たちの視線が一斉にアヴィーに向けられた。
 アヴィーは視線に気づき、頬を掻いてから、
「あのね、6層に入ったばかりのころ…21階でさ、僕、木の根の奥を覗いてさ、その奥に目玉を見たことがあったでしょう?」
「ああ、アヴィーは悲鳴を上げましたね。」
「そういうことは覚えてなくていいんだよ!…でも、あのときは、目玉が僕を見つけても、魔物は追ってこなかった。あの階には、『悪夢を運ぶ者』もいなかったから、僕らを追える魔物がいなかったのかもしれないけど…。でも、あの目玉が『警備システム』だったら、21階で僕を見つけたときにも何か起きていたんじゃないかな…って思ったんだ。」
「では、アヴィーは目玉と『悪夢を運ぶ者』」の連動は、【魔】の警備システムではないと考えるのですか?」
 とミツナミが間延びせずに尋ねてきた。アヴィーは首を振る。
「ううん。あれは本当に、目玉が見張りで、『悪夢を運ぶ者』」は僕らを追い払うためにやってきたんだと思う。だって、見張りの警備員と、警報を聞いてやってきた兵士みたいな動きだもの。」
 アヴィーはすこし考えてから、
「ええっと…、半鐘の鳴らし方って、起きてることや急かどうかで鳴らし方が違うよね?」
 ちなみにエトリアでは近場で火事の時はこうなんだけど、とアヴィーは木の枝で木の幹を叩いて、鐘を鳴らす真似をしてみた。レグルスは肩をすくめた。
「アヴィー、話がよく見えません。」
「ご、ごめん。…ええっとね、目玉は見張りなんだけど、出している警報が違うのかなと思ったんだよう。21階の時は『誰か来たぞ、警戒しろ』で、23階のときは『侵入者がいるぞ、追い出せ』っていう警報なのかなって。」
「あり得るでしょうね。【魔】に近づいているのですし。」
「もし、そうなら、今の『目玉』は僕らに対してすごく警戒してるんだよね…?多分、一番、危険な相手だと思ってるんだろうね。」
「それは当然のことだと思うのですが…。」
「…僕ら以外の人が侵入しても、僕らのことを一番危険だって思ってたら、僕ら以外の人のことは『悪夢を運ぶ者』」は追わないのかな?……もしもだよ、レグルスの命を狙う人が何人かいるとするでしょう?そのとき、誰をマークする?」
 と、アヴィーはセルファに尋ねた。急に話を振られたセルファは一瞬狼狽えたが、すぐに護衛の顔に戻り、
「……レグルス様に一番近づける相手…でしょうか?」
「その人を意識してたら、他の人への警戒って少し下がるよね?」
 セルファは眉を寄せたが、頷かなかった。確かに、一人に注意が向けば、それ以外への注意は低くなる。しかし、レグルスの安全を万全に確保したいセルファにとって、警戒が低くなる部分があると認めたくないのだ。例え話であってもだ。そのセルファの意地のようなものも、アヴィーは分かっていたので、
「だから、レグルスの護衛は、セルファとミツナミのセットなんだとは思うよ?一人が誰かに警戒していても、もう一人が他の人たちに注意をしていられるもの。」
「アヴィーはすごいですぅ!その通りですよお!」
 ミツナミがアヴィーに抱きつこうとするので、オリヒメが彼女の服を掴んでそれを止めた。レグルスは、興味深そうにアヴィーを見つめ、
「ボクたち以外が、六層に踏み入ってくる可能性をアヴィーは考えているのですか?」
「うん。【魔】が僕らを警戒している隙に、その人が【魔】の近くまで行くこともあるかもしれない。」
「それは、『ファクト』ということですか?アヴィー。」
 ミツナミを押さえながらオリヒメが聞くと、アヴィーは少し躊躇った後に、
「…僕は、オリヒメの先生が、そうなるんじゃないかって思ってる。」
 と、答えた。オリヒメは思わずミツナミの服から手を離した。(しかしミツナミはアヴィーに抱きついたりはしなかった。)アヴィーは慌てた様子で、
「た、ただの僕の想像だよう!でも、オリヒメの先生は、移民船を助けたかったって言ってた。それが許される状況じゃなかったって。今は…、大地の汚染もなくなってるし、許される状況なんじゃないかなって。オリヒメの先生って、すごく強いんでしょう?」
「…はい。私より強いです。」
「だったら、僕らを囮にして、その間に【魔】のところまで行くかもしれない。移民船のところまでいくかもしれない。そのために、僕らに対する【魔】の警報のレベルが上がってた方がいいよね。…もしかして、それが、狙いなのかなって思ったんだよね。……オリヒメに【魔】のところにたどり着けって命令をしたのは。」
「……囮であるなら倒さなくてもいいから……ですか?」
「う、うん。……で、でも僕の想像だよ!オリヒメの先生が、オリヒメを囮にしてるのかは分からないよ!」
 アヴィーは己の発言を消すように、ばたばたと腕を振った。一緒になって、スハイルが羽を振った。レグルスは「考えられなくもないですね。」と呟き、オリヒメは無言だった。アヴィーはおそるおそるオリヒメを見上げ、
「オ、オリヒメ、僕の思いつきだから…あまり気にしないでね。」
「…いえ、考慮に入れておいた方がいい見解だと思いました。師匠様が1000年、待っていたとしたら…それも、説明が付きます。【魔】の囮になるような存在が現れるのを待っていたのかもしれない。」
「…で、でも、僕の思いつきなんだよう…」
 アヴィーはしょんぼりとうなだれた。アヴィーが悲しそうにしている理由は、オリヒメにはすぐに見当がついた。師匠に「囮」として扱われた…それがオリヒメを傷つけると考えているからだ。
「…アヴィー、気にしないでください。囮として使われるのは気に入りませんが…、戦術としては効率的な方法です。……効率をとったのなら、師匠様らしいです。」
「……でも、」
「アヴィーが気遣ってくれたことが嬉しいです。」
 オリヒメが、ほとんど分からないくらいに微笑むと、アヴィーは、うん、とだけ頷いて、それ以上は何も言わなかった。


(40章3話に続く)

---------------あとがきのようなもの------------------

なんか中途半端なところで終わってしまいました。

もう一回転するはずだったのですが、力尽きてました……
書いてる途中で突っ伏して寝てました、もう若くない。


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