まよらなブログ

41章2話。


「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。


今回は短い話になってます。
京都旅行を敢行し、力尽きたからです。

もしかしたら、近々、一週休むしれません……


それでは、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。


41章2話
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 ディスケとまじめな話をするのはくすぐったい、と言いながら、アヴィーの方から「もう少し真面目な話をしてもいい?」と問いかけた。ディスケは、背中が痒くなっても知らないぞー、と言いながら、アヴィーのカップの中の茶をのぞき込み、
「その前に、お代わりを淹れよう。あと、お菓子もな。」
 と立ち上がる。
「いいよ。お構いなくだよう。」
「俺が、菓子が欲しいの。お前の前で煙草吸えないしさ。」
「え、別に吸っていいよ。」
「ダメダメ。マルカブに怒られるのは俺なんだからさー。それに、真面目な話をするのにも菓子とか茶があった方が話はしやすいんだぞー。」
 覚えておけよーと言いながら、ディスケはポットを持って部屋から出ていく。アヴィーは、平気なのになあ、と呟いて、それから部屋にある道具を見て立ち上がった。机の上に工具が置かれ、その横に木の義足が置かれている。本当に簡単な杖のような義足だ。その杖のような足の部分には、鉛筆で線が引かれ、割合らしき数字が書かれていた。
 何の数字かは分からないが、足の機能を再現するための数字なのだろう。ディスケは真剣味が足りない、と常々言われるが、研究となれば全く別の姿を見せる。検証と改良を繰り返し、欲しい道具を作り出していく。
 アヴィーは机の上に、大量の吸い殻の載った灰皿を見つけた。数日間、片づけていない…とは考えにくい。(ディスケはともかく、コロネは掃除好きなのだ。コロネは作業部屋に入らないようにしているが、数日に一回ぐらい吸い殻は片付けにくるだろう。)
「……もしかして、徹夜したのかな……」
 アヴィーは、先ほど気が付いた腕のスケッチを見る。スケッチの横には、円と正方形の中に男性が描かれたスケッチがある。円と正方形に、男性の手足が内接している絵。アヴィーも、本で見たことのある絵だ。大昔から(それこそ1000年以上前からなのかもしれない)伝わっている、人体のプロポーションの調和を描いたドローイング。
 ……ディスケは『立つ』だけの道具を作ろうとしてるんじゃないんだな、とアヴィーは何となく感じた。人間の…その人の、体の一部を作ろうとしているのかな、と何となく考えた。
「……ディスケはすごいな。」
 アヴィーがぽつりと呟くと、ドアが開いてポットと菓子の入った籠を持ったディスケが入ってきた。アヴィーは、わあ!?と声を上げた。
「なんだよー、お前、何か悪さしてたの?」
「し、してないよ!は、早かったね!」
「コロネがお湯沸かしておいてくれてたんだよー。そろそろ茶を淹れ直しに行こうかって思ってたらしくて。いやー、気が利くよなー、俺の将来の嫁さんー。」
 と、惚気ながら、ポットと籠をテーブルに置く。ポットの中で茶がでるのを待ちながら、
「で、俺がいない間にイタズラしてたの?」
「してないよ!ちょっと机の上のもの、見せてもらっただけだよ。……ディスケ、もしかして徹夜した?」
「んー…、徹夜はしてないけど寝不足かなー。」
「…僕、帰ろうか?」
「何でそうなるんだよー。」
 ディスケはポットを揺らして、
「何か、興味を引くものがあったか?」
 と聞く。アヴィーは、机の上に視線を向けて、うん、と頷きかけ、
「…興味を引いたっていうか…、ディスケはさ、足や手だけを作るんじゃないんだろうなって思ったんだ。」
「うん?」
「ううんとね…、手や足を作ってるんだけど、ただ立つための道具や持つための道具を作ってるんじゃないんだろうなって思ったんだよ。」
 ディスケはその言葉を少し吟味するように考えてから、カップに茶を注ぎ、
「じゃあ、俺は何を作ってるのかな?」
 と聞いた。アヴィーは、ううんとね、と考えてから、
「今、立つための道具を作ってるんじゃないなって思ったんだよ。さっきの話じゃないけどさ、立った後のことも考えて作ってるのかなって。だから、立つだけの道具じゃないんだ。人間そのものなんだよ。」
「それは、壮大な話だなあ。」
 とディスケは小さく笑ったが、からかっている様子はなかった。むしろ、どこか哀しそうにも見えるので、
「…僕、しちゃいけない話をした?」
 とアヴィーは聞く。ディスケはまた「なんでそうなるんだよー。」と口にした。
「だって、ディスケ、なんか…哀しそうだよう?」
「別に哀しいわけじゃ…」
 とディスケは言い掛けて、言い直した。
「そうだなあ、哀しい…んじゃなくて、悔しいのかな。」
「悔しいの?」
 そうだよ、とディスケは頷き、注いだ茶を一口すする。
「お前の言うとおりなんだと思う。俺が、作りたいのは、多分、道具じゃない。行きたいところに行けて、止まるべき時に止まって、掴みたいものを掴める、そういうものだよな。道具って言うより、意志そのものだよ。でも、まだ、作れない。」
「マルカブの義足は、行きたいところに行けると思うけど…。」
「あれは奇跡みたいなもんだって言っただろう?偶然で出来たんじゃあ、俺らの力じゃないんだよ。」
 だからデータ取るために早く帰ってきて欲しいんだよなあ、とディスケは呟く。それが研究の積み重ねかあ、とアヴィーも呟いた。
「そうだなあ、研究の積み重ねだ。いつか、俺らの力で人間の意志をそのまま表せるような義肢が作れるように、積み重ねていければいいよな。」
 ディスケはそう同意して、そして「…それは縦?」と呟いた。アヴィーが、え?と首を傾げる。ディスケは軽く手を振って、
「…ああ、ちょっとな、研究の積み重ねって、時間軸で考えると縦方向だよな。でも、俺がマルカブに託したのは横方向だな、と思ってさ。横の方向で考えると、帰ってくるよりは進んで欲しいんだけど。」
「横方向?」
「そう。人の繋がりって言うのかな。マルカブにはお前らみたいな子の頭を撫でに行って欲しいと思って、俺は義足を作ったんだけどさ、それは横の繋がりだよな。」
 人は繋がるものだからさ、とディスケは囁いた。
「研究は積み重なって、人は繋がる。違うようで似てるのかな、と思ったんだよなー。一人じゃどうにもできないっていう点でさ。」
 アヴィーは「横」と呟いてから、
「『アルゴー』は横の繋がりだよね?」
「そうだなあ。」
「そして、僕らの探索は、縦の積み重ねだ。」
 アヴィーは少し考えてから、瞳を上げてディスケを見た。
「どっちも無かったら、今の僕たちはいないね。」
 それってすごいことだよね、とアヴィーは聞き。ディスケは頷いた。アヴィーは両手を広げて、
「縦と横が重なったら、すごいことが起きるんだろうね!」
「…もう、起きてるんじゃないのかな。」
 ディスケは少しだけ笑い、
「探索を振り返ってみろよ。深都を見つけて、まるでおとぎ話みたいな過去の船がある階層までたどり着いた。それはさあ、俺らが出会って、時間を重ねてきた結果なんだろう?」
 だから、とディスケは続ける。
「この後も、きっとすごいことが起きると俺は思うんだよ。」
 それが励ましであることはすっかり分かっていたので、アヴィーはうん!と頷いた。


(41章3話に続く)

---------------あとがきのようなもの------------------

アヴィーが見てるスケッチはダ・ヴィンチの「ウィトルウィウス的人体図」の複製画です。
1000年前に誰かが死守して残した遺産の一つで、模写も難しくないため、
この世界でも一般的に知られている絵の一つのようです。
本物はミズガルズ図書館にあるんでしょう。便利だなあ、図書館の存在。(笑)

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