まよらなブログ

41章4話。


「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。

更新日が不安定で申し訳ありません。
次回は……今度の土曜日に更新できるといいな…と思うんですが
あまり日数がありませんね……頑張ります。



それでは、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。




41章4話
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 アヴィーは、コロネからお菓子をたくさん持たされて、宿への帰路についていた。アヴィーが抱える紙袋とは別に、飴の詰まった小さい手提げ袋も持たされて、スハイルがぴよぴよ鳴きながら運んでいる。
「スハイル、重くない?」
「ぴ!」
 器用にも飛びながら胸を張るスハイルは、得意げに否定した。
「スハイルは飴舐められないのにねえ。」
「ぴ!」
 舐められなくても構わないらしく、スハイルは機嫌良く否定する。(スハイルは飴を転がして遊ぶことが好きだった。食べ物で遊ばないように、と叱られるが。)
「こんなにたくさんのお菓子、食べきれるのかなあ…。駄菓子も多いし…。レグルスは王子様だけど、こういうの食べるのかな。」
「ぴ?ぴぴーぴ、ぴよぴよ?」
「確かに、カリーナはこういうお菓子もおいしいって食べてたけど…。」
 と、アヴィーは袋から一本飛び出ている麩菓子を見て呟く。アヴィーは、レグルスよりカリーナの方が庶民的だと考えている。それは、アヴィーがそれぞれに抱く距離が感じさせるイメージに過ぎなかったが。
「ぴよ!ぴぴぴえ、ぴよぴよ!」
「オリヒメも駄菓子好きなの?甘いもの好きみたいだけど。」
「ぴよ!ぴぴぴえ、ぴんよぴぴ、ぴよぴよ!」
 オリヒメの好きな菓子の名前をスハイルは言ったようだが、アヴィーは正確な名前を思いつかず、そうなんだ、とだけ相づちを打った。
「オリヒメが好きなお菓子も入ってる?」
「ぴよ!」
「じゃあ、喜んでくれるね。」
「ぴよ!」
「…オリヒメ、少し元気になったかな。」
「ぴよ!ぴぴぴう、ぴよぴよ!」
「うん。エラキスさんが励ましてくれてるかな。…そうだ、お礼にお菓子をあげにいこう。ミラやミモザが食べるかもしれないし。」
「ぴよ!ぴぴ!ぴぴ!」
「一緒に来るのはいいけど、エラキスさんにあんまりべたべたしないでよ。そんなんじゃ、スケベフクロウって言われちゃうからね。」
「ぴーー!ぴぴ、ぴぴよぴぴよ!」」
「蹴らないでよ!」
 と宿の玄関前でいつも通りのやりとりをしながら、アヴィーは扉を開ける。
「おかえりなさーーーい!アヴィー!」
 と、アヴィーにミツナミが抱きついてきた。
「声が聞こえたから出迎えてみましたぁ!」
「わ、分かったから離れてよ!」
「ぴうぴぴ!ぴええ!ぴええ!!」
 べたべたしたらスケベと言われる、と言われたことをスハイルはミツナミに応用しているようだが、ミツナミは意に介さずに、
「スハイルは何を持ってるんですかぁ?」
 とアヴィーに抱きついたままスハイルに問いかける。
「ぴ?ぴえ!ぴえ!」
 スハイルはミツナミに袋の中身が見えるように高度を調節した。ミツナミは袋をのぞき込み、 
「飴ですかぁ?」
「コ、コロネさんから、貰ったんだよう!」
 とアヴィーはミツナミの腕から逃れて、ほら!と自分の袋を見せた。
「わあ!懐かしい!駄菓子ですぅ!」
 ミツナミの声が明らかにはしゃぐので、アヴィーはちょっと嬉しそうにして、
「ミツナミ、駄菓子好きなの?」
「はい!子どもの頃、よく食べてましたよぉ!麩菓子とか兄様たちと分けて食べてましたぁ!」
 美味しいというより楽しいですよねえ、とミツナミは言う。アヴィーは、あ、と声を出してから
「そうだね、駄菓子ってそうだよね。」
「安いですしねぇ!」
「そういえば、カリーナと一緒に駄菓子を買いに行ったとき、たくさん選んじゃったからカリーナはお金をすごく心配してたんだよね。安くてびっくりしてたな。」
「それは素敵なお買い物でしたねえ!」
 と、ミツナミはいつも通りのテンションだが、笑みからは明るさよりも優しさがにじみ出ている。アヴィーは、うん!と頷いてから、
「セルファやレグルスはどうかな?駄菓子、食べたことあるかなあ?」
「どうでしょうねえ?でも、面白がって食べてくださると思いますよぉ。レグルス様は、ご自分の知らないものが大好きですからねえ。…あ、でも、」
「?」
「セルファは几帳面ですから。駄菓子とか縁日のお菓子とか衛生的じゃないって言うかもしれませんねえ。まあ、それはそれでスハイルが持ってきた飴を楽しめばよろしいのでしょう。この飴、綺麗ですねぇ。」
「ぴよ!」
「セルファの具合はどう?」
「痛みは随分引いたようですぅ。今は部屋にいますよぉ。レグルス様もいらっしゃるので、お菓子持って行きましょぉ。」
 アヴィーは、うん、と頷きかけて、
「オリヒメは?」
「オリヒメは、先ほどまで庭でシェリアクさんと手合わせしてましたねえ。まだ、庭にいるかもしれません。」
「じゃあ、ミツナミ。この荷物を持って、先に部屋に行ってて。僕、オリヒメを呼んでくるよ。」
 アヴィーはミツナミに袋を手渡し(スハイルはその袋の上に、自分が運んできた手提げ袋を載せた)、もう一度玄関に向かう。(スハイルもアヴィーに付いていった。)ミツナミは、はあい、と返事をして袋を抱えて階段を上がっていく。アヴィーが玄関を開けて庭に出て行くと、ちょうどオリヒメがこちらに向かってくるところだった。トレーを持ったエラキスも一緒で、二人は談笑しながら庭から戻ってくる。
 スハイルがエラキスに…というより彼女の胸元に飛び込もうとするのを、アヴィーは尾羽を素早く掴んで止めながらオリヒメに声をかけた。
「オリヒメ、ただいま。」
「おかえりなさい、アヴィー。スハイルも。」
「ぴぴぴぴ!」
 オリヒメは、いつも通り……、少なくとも、いつも通りに『見えた』。アヴィーは、エラキスに視線を移し、
「エラキスさん、ありがとうございました。」
 と、礼を言う。礼を言う理由をオリヒメに尋ねられたらアヴィーはどう答えるつもりなのだろう?とエラキスは思わず苦笑したが、「お礼を言われるようなこと、したかしら?」と、とぼけることはしなかった。どういたしまして、とだけエラキスは答え、オリヒメは複雑な表情でアヴィーを見つめた。
 アヴィーは、オリヒメのその表情を不安がっていると取ったらしい。おずおずと、オリヒメに切り出した。
「…、オリヒメ。あのね、お菓子をいっぱい貰ってきたんだよう。みんなで食べようよ。」
「ぴよ!ぴんよぴぴ、ぴよん!」
 やはり食べ物を食べると元気になると思っているらしい。オリヒメは少し微笑んで、はい、と素直に頷いた。アヴィーはあからさまにホッとした表情を浮かべた。
「そうだ。エラキスさん、駄菓子なんですけど食べますか?本当にいっぱいあるから、ミラやミモザも好きならお裾分けしたいなって思ってて。」
「あら、駄菓子なんて久しぶり。いただこうかな。小さいお菓子は、探索に持って行くのにも便利よね。」
 と、エラキスは冒険者らしいことを言う。アヴィーはそれに同意しつつ、
「そういえば…『ファクト』も六層に入ってるんですか?」
「ええ。でも、ちょっと難しい依頼が入ってきてね。今はそっちに取りかかってるから、本格的な探索はまだなんだけど…」
 第六層ってあんまり長居はしたくない場所ね、とエラキスが呟き、アヴィーもオリヒメも同意した。あの淀んだ階層の空気を街の中で思い出したくなかったエラキスは、気楽さを装って続けながら話題を変える。
「でも、あなたたちが拓いた道の後を行くんだから、私たちは楽なんでしょうね。…そうだ、知ってる?五層までたどり着いてる新ギルドも、いくつかあるそうよ。あなたたちや私たちより、ずっと短い時間でね。」
 エラキスは思いだしたかのように、くすりと笑い、
「それを聞いて、ミラが怒り出してねえ。あなたたちや私たちが作った地図や集めてきた素材で作り出した道具を使って、私たちより短い時間で五層までたどり着いたって何にも自慢にならない!って。」
「ミラの言い分はもっともだと思います。」
 と、オリヒメが大まじめに反応し、スハイルが「ぴよ!」と同意だけをした。オリヒメちゃんも負けず嫌いね?とエラキスはおかしそうに聞いてから、ぽかんとして立ち止まったアヴィーに気づいた。
「どうしたの?アヴィーくん。」
「アヴィー?」
 オリヒメもアヴィーを振り返る。アヴィーは、「あ、うん。」と頷いてから、
「僕たちより短い時間でたどり着いたギルドは、僕たちの探索を元にしてたってことですよね?」
 とエラキスに聞く。エラキスは少し考えてから、そうなるわね、と答えた。アヴィーは、そうか、と呟いてから、
「そうかあ…!」
 と満面の笑顔を浮かべた。
「アヴィー?どうしたんですか?」
「だって!」
 不思議そうにアヴィーの顔をのぞき込むオリヒメに、アヴィーはぱっと顔を上げる。
「だってねえ、オリヒメ!僕、言ったよね!『いつか誰かが【魔】に勝つためにも、僕は【魔】と戦いたい!』って!」
 オリヒメは、ほんの数日前のことを思い出す。「何があっても一緒にいる、オリヒメにだけに辛い思いはさせないよ!」と言って、手を差し出したアヴィーは、【魔】と戦う、と宣言した。自分は逃げ出したくない。『負けた』ら、自分が『負けた』ことを誰かが生かして、樹海や【魔】に『勝って』くれるかもしれない。だが、『逃げた』らこれから【魔】と戦う人が、自分たちと同じ目に会う。だから、
 ―― もし僕が【魔】に負けたとしても、僕の戦いがいつか誰かが【魔】に勝つための足場になるように、僕は【魔】と戦いたい!――
 と、そう言った。
「同じだよう!僕らの探索を元にして別の人がもっと短い時間で五層までやってきてるのと、同じだと思うんだよ!だから、僕の言ったこと…、僕らかいつかの誰かが分からないけど、【魔】を倒すってことは難しいことかもしれないけど出来ないことじゃないと思うんだ!」
 アヴィーは、拳を握ってそう力説し、
「だから、僕、【魔】を倒しにいく!そのつもりで行く!そうすれば、後に続いてくれる人がいる!大丈夫だって、思ったんだ!」
 と笑顔の理由も力いっぱい説明した……が、全く理には適っていなかった。
「…アヴィーが『大丈夫』と思うのなら、きっと大丈夫なのでしょう。」
 とオリヒメも穏やかに返した。穏やかに返しながらも、アヴィーの言い分を否定しないというよりも、アヴィーの言い分を聞くだけで「きっと大丈夫だ」と思う自分がいることに気づく。アヴィーは本当に【魔】を倒しに行き、【魔】は倒されるのだ。それがアヴィーによってなのか、別の誰かによってなのか、いつなのかは、アヴィーにとっては些末なことだった。ただ『倒される』という事実だけを確信して、「大丈夫」と言っている。
 それは、まったく理にも適わず確証などない中で「俺は帰ってくるよ」と、そう決まっているのだと、言い切ったマルカブにも似ていた。それでいてどことなく違う。ただ、二人に同じものがあるのだとすれば、自分が絶対にやらなくてはいけないことを、定めたという点だ。マルカブはアヴィーを後悔させないという目的のために『帰って』きて、アヴィーは【魔】を倒すという目的のために逃げずに『進む』。
 いつか【魔】が倒されることが決まっていて、その時を確信しているアヴィーが一緒にいるのなら、負けても【魔】の餌になっても大して恐ろしくはない、とオリヒメも理に適わないことを思いながら、「お菓子食べにいこう!早くしないとミツナミが全部食べちゃうかも!」と言って手を引くアヴィーに付いていった。
 オリヒメは、まだ大きくはないが、女である自分の手とは明らかに違う少年の手を見つめながら、自分が絶対にやらなくてはいけないことを定めた。この手は何があっても絶対に自分を離しはしない、と。アヴィーの約束と宣言を、信じ続けることだ。
 

(41章5話に続く)

---------------あとがきのようなもの------------------

『ファクト』は、エルヴァル氏からクラーケン退治依頼を受けていると思われます。
脚を確実に縛れるキャラがいないので、いろいろ調整中のようです。

どうでもいいような駄菓子の話の中に、
ミツナミが麩菓子を分けて食べた兄はリョウガンとか、
オリヒメは初老の師匠に育てられてるので渋い茶請けが好きで駄菓子はあんこ玉が好き、とか
書こうと思ったけど書いてなかったアヴィーがカリーナを駄菓子屋に連れて行った話とか、
表沙汰になってない設定や書き損ねたエピソードを、そっと忍ばせ満足です。




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