まよらなブログ

42章1話。


「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。

この章で裏ボスが出現する予定です……
が、実は志水は裏ボス倒してません。(実は神竜も倒せてない)

…新世界樹3がでることを期待して、この話の中で【魔】は倒せなくてもいいんじゃないか…
…この話の真のラスボスは「人間の諦め」だから、それを越えられればいいんじゃないか…
そんなことを、考えては、います。


それでは、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。

42章1話
-----------------------------------------

 ここが、最奥だ。
 魔物の猛攻と淀み湿った空気と、奥に進むほどに精神を浸食してくる『何か』。それらのものと戦いながら、己の信念を杖にして、階段を下りた先で、『アルゴー』は確信した。
 確信できるだけの理由が、そこにあった。広間の先に、巨大な銀色の鉄の壁がそびえている。その周りを覆う蛸足は、木の根によって動きを押さえ込まれている。木の根の先端が見える。それは、世界樹の根の先端であり、世界樹の最も地中奥深くまで潜った部位だ。ここから先に、道はない。
 その世界樹の根の先端が抑えこむ蛸足は【魔】であり、【魔】が絡みついている銀の壁は天井(と呼べるのかどうか)を突き破っている。壁ではなく大地に落ちてきて地中に潜った巨大な建造物だと、一行は理解する。つまり…、これが移民船の外壁だ。
 一歩、進もうとする。…と、前方から、風も立てずに衝撃が飛んできた。急に体が重くなる。血液が鉛になったようだった。
 アヴィーの肩の器具に留まっていたスハイルが、思い切り息を吸い、長く「ホーーーーウ」とフクロウらしい声を出した。体の重さが軽減される。
「…スハイル…、術を打ち消してくれたの?」
「ぴよ!」
 アヴィーの問いかけにスハイルは得意げに胸を張り、それから「ぴよぴよ?」と問いかけてきた。楽になったよ、とアヴィーが伝えると、スハイルは満足そうに体を揺らした。
「…スハイルの声で打ち消せた、ということは…、空気の振動によってボクらの体に干渉してきたんでしょうけど…、」
 レグルスは前を睨みつけて、
「【魔】と【世界樹】、どっちがやったことなんでしょうね?」
「意外と、第三の勢力ってのがあるかもしれませんよお?」
 とミツナミが肩を竦める。オリヒメは真顔で「【魔】と【世界樹】の他に師匠様がいるので、第四の勢力ですね。」と冗談にもならない返答をして、ミツナミを若干困らせた。
「…あの壁が移民船なら…、中には眠ってる人がいるんだね。」
 アヴィーがぽつりと呟いてから、
「移民船って、つまり船だよね。どこかに乗り口があるのかな。」
「入り込むつもりですか、アヴィー。」
「だって、中にいる人を放っておけないよう。助けられるなら早い方がいいでしょう?」
 アヴィーが唇をとがらせた。移民船に絡みつくあの巨大な蛸足とそれを押さえ込む太い根を見てよく言えるものだ、とレグルスは呆れと感心を半分ずつ滲ませた。そのやりとりを聞いていたセルファが盾を構えながら、スハイルを呼ぶ。スハイルは、アヴィーの肩の器具からセルファの鎧…甲殻類を思わせる肩当てに器用に留まった。
 セルファは、一度レグルスを見てからアヴィーに言った。
「あの壁に近づくのなら、私の盾の影に。【魔】や【世界樹】が攻撃をしても弾きます。」
 それからセルファは、微妙に困ったままのミツナミの方は見ずに、
「第3の勢力や第4の勢力があろうが、気に病む必要はありません。もし、【魔】と【世界樹】以外の存在からの攻撃があっても、第6の勢力ぐらいまででしたら私が弾きます。」
 と、オリヒメの冗談にもならない一言を受けて、彼女なりの冗談らしい一言を付け加えた。冗談であるのと同時に、本当に攻撃があれば全て弾くつもりでもあった。実際、6撃は弾かなければならない、とセルファは常に考えている。『アルゴー』は5人と一匹。その全員に攻撃が向かっても、その全てを弾くことを理想であり義務とするならば、…最低6撃は弾かなければならないと、彼女は常に考えている。
「セルファ、かあっこいいぃ!」
 ミツナミが、歓声を上げてセルファに抱きついた。離れてください!とセルファが慌て、彼女の肩に留まっていたスハイルが「ぴうぴぴ、ぴええ!ぴええ!」と抗議している。(数日前に、「ベタベタしたらスケベフクロウと言われる」と言われたことを覚えていて、ミツナミに同じように言っているようだ)
「セルファが冗談を言うなんて、珍しい。」
 とレグルスがくすくすと笑い、
「では、セルファが弾いた後で、私が相手を斬りますね。」
 とオリヒメが物騒な物言いをしながらも、自分の笑えない冗談に対する気遣いに感謝をして頭を下げた。
 アヴィーに至っては、ニコニコしながら、
「うん!よろしくね、セルファ!」
 と言って、6撃弾くことを疑いもせず、セルファの盾の影になるように移動した。その無邪気な様子にセルファもさすがに鼻白んだが、任せてください、と短く応えた。そして、肩のスハイルに向かって、お願いをする。
「もし先ほどの攻撃がまたあったら、スハイルが打ち消してください。」
「ぴよ!」
 スハイルは胸を張って返事をした。その間も、前方の壁の向こうから気力を削ぐような衝撃が数回打ち込まれていたのだが、『アルゴー』には届かなかった。
 お互いに護られていることを知っている『アルゴー』には届かなかった。


*****

 巨大な壁のような移民船の側面に、太い丸太のような蛸足が絡まっており、その蛸足も何本もの【世界樹】の根に絡みとられて押さえ込まれている。蛸足の先端がセルファの盾に向いたが、根が強く締め上げて何も出来ないでいる。
 【世界樹】が蛸足…【魔】の一部を押さえ込んでいるため、【魔】からの直接攻撃の可能性はなさそうだ。【世界樹】の方が何か仕掛けてくることも考えられたが、蛸足を押さえることで精一杯に見える。攻撃はなさそうなので、セルファから離れても大丈夫だろう、とレグルスは判断する。それに、第3から6の勢力が登場するとしたら、それは目の前の移民船からではない。少し離れて全体と後方を見ておいた方がいい…と考え、ミツナミを連れ少し距離をとって移民船を眺めた。ミツナミは苦無を両手に4本ずつ持って、いつでも投げられるようにしながらレグルスと共に移民船全体を見る。
「…この足…」
 レグルスが上を見上げて、目を凝らす。
「移民船の中から、出てますね…」
 移民船の高い位置に穴があき、そこから何本もの足が四方にむかって飛び出している。
「体は中にあるようですねえ。」
 ミツナミも一緒に目を凝らしながら、穴から出てきた足の向かう先を視線で追った。何本かは、移民船から離れて周囲に向かっている。(外に出た足も【世界樹】によって押さえ込まれ、蛸足と世界樹の根が絡まっての壁ができていた。)【魔】の体が移民船の中にあるなら、【魔】を倒すためにその中に入らなければならないが…
「ねえ!レグルス!」」
 セルファのすぐ横で移民船の壁に触れていたアヴィーが、レグルスを振り返った。
「これ、扉に見えない!?」
 アヴィーが壁を撫でながら、聞く。壁には一本、まっすぐな亀裂が入っている。少し距離をとって眺めると、大きな壁に四角い線が入っている。
「ええ。…扉か窓のようにも見えます。馬車が二台通れそうなほどの。」
 レグルスが頷き、アヴィーは「この隙間、広げられないかな…」と亀裂に爪を立てる。
 アヴィーの隣にオリヒメが歩みより、壁の亀裂……ほんの僅かな隙間をなぞってから刀の切っ先を差し入れてみる。刀は半分も差し込めず、切っ先は固い壁に当たった。
「…二重扉でしょうか?」
 と、オリヒメは呟き、差し込んだままの刀にぐっと力を込めて、扉をこじ開けようとした。
「だ、ダメだよう!オリヒメ!刀の方が折れるかもしれないよう!この船、鉄じゃないもので出来てるかもしれないんだから!」
 アヴィーが慌てて止める。そんなに柔な刀ではないですよ、とオリヒメは言いながらも、素直に従った。アヴィーはほっとしながらも、困った様子で移民船を見上げる。
「でも…どうやって開けるんだろう…?」
「鍵穴も無いようですね。」
 と、レグルスがアヴィーの隣まで来た。そして、オリヒメを見て、
「しかし、開ける方法か…もしくは【魔】を引きずり出す方法があると思います。オリヒメの先生が、それを知っているのかもしれません。」
「…確かに。師匠様は、この状況を知っているのでしょう。その上で、私に【魔】のもとにたどり着け、と言いました。」
 オリヒメは表情を変えずに頷いた。無理に感情を隠す様子はなく、普段の淡々としたオリヒメの顔だ。レグルスはアヴィーの方へ視線を戻し、
「左右に、進める道があるようです。まずは、そちらを探索しましょう。開ける方法や別の進入口が見つかるかもしれません。」
「うん…。」
 アヴィーは移民船を見上げながら、頷いた。
「そうだね。まずは、行けるところに行こう。セルファ、ありがとう。一度下がろう。」
 周囲からの攻撃を警戒し続けていたセルファに、アヴィーは声をかけ、セルファは頷いた。盾の構えは解かないままで後退し、階段の前まで戻ると、ほうっと息を吐いた。何も起こらなかったが、気を張り続けたセルファの疲れは目に見えた。
「手前の左奥は、野営地になりそうですぅ。少し休んでいきましょうかあ?」
 と、仲間たちが戻ってくる間に簡単な周囲の探索をしていたらしいミツナミが、セルファの肩を抱きながら聞く。(二人の間に挟まれて潰されそうになったスハイルが抗議をして、セルファの肩当てから飛び降りた。)セルファが「大丈夫」と答える前に、レグルスが「一度、野営地を見ておきましょう。重要なポイントになるでしょうから」といって左奥に進むことを提案した。
「でも、出来れば、ここで野営はしたくないねえ。」
「…何となく生臭いですしね。」
 アヴィーとオリヒメが言いながら、レグルス一行が先に向かった左奥へと進む。セルファの肩当てから地面に着地したスハイルは、移民船を見つめ……
「…ぴ…?」
 扉と思われるものの上部に、小さな四角の線が入っていることに気づいた。
「ぴ!」
 スハイルは、ばさっと翼を広げて見つけた四角のところまで飛んでいってしまう。アヴィーが「あ!戻っておいで!」と呼び止め、その声に気づいたセルファが盾を抱えてスハイルを追い、アヴィーはそれに続いた。
「…ぴー?」
 スハイルはほんの10数センチの四角の亀裂の前まで飛んでいき、ぴ!とつついてみた。…と、亀裂から金属が剥がれて落ちる。扉についていた小さな四角い亀裂は、とれかかった蓋だったらしい。
「スハイル!危ないよ!戻っておいで!」
「ぴぴぃー!ぴぴ、ぴぴよぴぴよ!」
「ちっともいい子じゃないよ!こんな勝手なことして…!……、」
 アヴィーはスハイルを叱りながら、スハイルが落とした蓋の内側を見た。
「……なんか、ボタンが、いっぱいある…?」
「ぴよー?」
 蓋の内側には、かすれた文字の書かれたボタンと灰色の数センチの小窓があった。ボタンの下には、細かい穴がいくつもあいている。1000年前の人が見れば、『画面』『文字入力ボタン』『音声入力装置』と呼ぶのだろうが……、当然ながらアヴィーはそんなことは知らない。
「…あれが、もしや鍵穴ですか?」
 セルファが呟き、アヴィーはううん、と首を傾げ、
「そうかもしれないね…。でも、使い方が分からないのは変わらないな……」
「ぴぴ!ぴぴ!」
 スハイルが自己主張しているのを聞き、アヴィーはきっぱりと叱った。
「試しに押してみるつもりでしょう!?だめ!何が起こるか分からないいんだから、だめ!」
「ぴー…。」
 きっぱりと叱られたときには言うことを聞くスハイルは(基本的に甘く緩い『アルゴー』が、それでも叱るときは絶対にダメなことだからだ)、しょんぼりとしてからアヴィーまで飛んでいき、肩の器具に留まる。アヴィーはスハイルを撫でながら、
「大発見だよ、スハイル。でも、何でも触りたがるのはダメだよ。使い方を間違えて、魔物が出てくることもあるんだから。」
 そう言い聞かせると、スハイルは神妙に返事をした。アヴィーはスハイルを慰める…というよりも、自分のために
「使い方も、先に進めばヒントがあるかもしれないんだから。まずは野営地を見てみよう?」
 と、先の長い提案をした。スハイルは「ぴよ!」と返事をし、戻っていくアヴィーとセルファについて行った。


(42章2話に続く)

---------------あとがきのようなもの------------------

ちょっと前まで率先してボタンを押すタイプのアヴィーが、
スハイルを止めていることに成長を感じてしまう志水の目線はほぼ赤パイと同化。

最下層25階のE-4の扉前……が今回の舞台です。
ゲームでは25階の中央部の広間が
この話では移民船内部に当たると思って読んでいただきたい。
そして志水のマイ設定なので原作ゲームにそんな描写は無いことにもご理解いただきたい。


24階の描写を一度も書くことなく最下層に入ってしまったので、
24階タイトルである「己が信念を杖に立つ者たち」だけ、冒頭に使いました。
床ぐるぐるギミックと、青パサランを書けなかったのはちょっと心残りです。

スポンサーサイト

PageTop

コメント


管理者にだけ表示を許可する