まよらなブログ

42章4話。


「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。


えー、今回から、裏ボスである【魔】(昏き海淵の禍神)が登場してくるんですが、
志水は、【魔】こと裏ボスを倒してません。
この話が終わる頃には倒せるさ……と思ってましたが、倒せてません。
資料集と攻略Wikiは見てるので、姿形と技だけは分かってます。(爆)
っていうか、wikiの撃破法を見て倒してくるレベルはあるので、やる気がないだけです。
(なお、エルダードラゴンも倒してない。)


そんなわけで、かなり「マイ設定」率が上がってきます、
なんか今更ですが、ご了承ください。
そして裏ボス退治は、
いつか発売されるかもしれない新世界樹3のストーリーモードでやろうと思います。


それでは、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。



42章4話
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「さっき、僕の頭の中に、いろんな記憶がなだれ込んできたんだよ。」
 アヴィーは幾分しっかりした口調で、話し出した。通路に戻った『アルゴー』は、休憩を兼ねてアヴィーの話を聞く。通路の入り口と出口側にはセルファとミツナミがそれぞれ見張りについている。(そして上空はスハイルがぴっぴっ!と鳴きながら飛び回り、魔物を追い払っている……ようだ。)頃合いを見てオリヒメは見張りを代わるつもりだが、今はアヴィーの話を聞きながら一口水を飲んだ。その水筒をアヴィーに差し出し、
「アヴィー、気分が悪くなったり目眩はないですか?脳震盪を起こしたように見えましたし…、記憶がなだれ込んできたというのも、脳に何らかの影響を受けたのではないか…と思うのですが。」
 アヴィーは水筒を受け取って、うーん、と首を傾げ、
「さっきから僕たち、昔のイヤな記憶を無理に思い出させられているでしょう?その応用だと思うんだよね。僕の中からイヤな記憶を思い出させるんじゃなくて、人の記憶を見せるっていう…。よく分からないんだけど、でも、イヤな記憶を見せられて気分は悪くなるけど、体の方は何もないでしょう?それと一緒みたいだよ。」
「直接、今、体に影響はでていないでしょうが…、」
 と、見張りをしながらミツナミが言った。
「アヴィーが被ったのは高純度のエーテルです。それが人体に今後どう影響するかは…分かりませんよ?」
「そうだよね。あんな密度のエーテル、誰も生み出せないもの。誰も体験してないんだから、どうなるかは分からないよね。」
 アヴィーは苦笑し、
「そしたらね、ミツナミ、僕の具合が悪くなったらよく診察してね。人間の体に高純度エーテルがどう影響するかって、星詠みにとっては結構重要な話だし、もしかしたら医療に使えることになるかもしれないよ。」
「なんで、そんな暢気なんですかぁ…」
 ミツナミは間延びした口調に戻った。理由は分からないが、彼女の緊張は解けたらしい。だが、オリヒメの方がきっ!とアヴィーを見つめ
「アヴィー!本当に、それは暢気が過ぎます!そのせいで、何らかの病気になったりするかもしれないんですよ!」
「それも分からないんだよう。あんな高濃度エーテルは、本当はこの世にないはずなんだから。エーテルを圧縮しても100パーセント純粋なエーテルって出来ないんだよ。純粋なエーテルがあるとするっていう前提の理論があるんだけど、その理論って実際に確かめられないから、……えーっと…机上の空論じゃなくて……、なんとか実験…」
「思考実験?」
「そう、それそれ。」
 レグルスの助け船に、アヴィーは指を向けてから笑った。レグルスは一瞬考えてから、
「アヴィーが『机上の空論』という言葉を知ってることに驚きました。」
「前から思ってたんだけど、レグルスは僕をバカだと思ってるでしょ。」
「いいえ。天才馬鹿だと思ってます。」
 レグルスの指摘にアヴィーはぷっと膨れた。オリヒメがアヴィーに詰め寄った。
「アヴィー!話がずれています!アヴィーが馬鹿でも天才でも構いませんが、体の内側が病気になっているのだとしたら見過ごせません!」
「ああ、ごめんね。ありがとう、オリヒメ。でもね、何も分からないんだからしょうがないし、星詠みとしては純粋に近いエーテルを人が浴びたらどうなるかって確かめられるのは、嬉しいなあって思うんだよう。」
「それは狂気の沙汰です!」
「うん。だから、他人では確かめられない。僕自身で良かった。」
 だからそれが狂気の沙汰だ、とオリヒメは叫ぼうとして、レグルスに止められた。
「科学者でも武道でも、一つの道を極めようとする人種は狂気の一本道を渡るものでしょう?……1000年生きた、あなたの師匠も。」
「…レグルス、オリヒメをいじめないでよう。」
 ぐっと唇を噛んだオリヒメを見て、アヴィーは唇を尖らせてレグルスを非難した。失礼しました、と答えるレグルスにアヴィーは水筒を渡し、
「ええっと、本当に話がズレたよね…。なだれ込んできた記憶は…多分、移民船に乗ってる人の記憶だと思う。中には、移民船を作った人もいるみたい。」
 そして、アヴィーは上空を飛び回っているスハイルを呼んだ。スハイルは、ぴよ!と返事をして、アヴィーの腕に留まる。
「スハイル。移民船の扉の上にさ、小さな蓋を見つけたでしょう?」
「ぴよ!ぴぴん、ぴよぴよ!」
「そう、蓋が外れたら、ボタンがついてたやつ。」
 アヴィーは一度瞼を閉じて、
「あれと同じ物を見てる記憶を、僕は見たんだよ。」
 その一言に、あ、とレグルスが息を飲んだ。アヴィーが見せられた記憶が1000年前の当事者たちの記憶なら、そこには移民船や【魔】の実体に関する記憶も当然ある。アヴィーはポケットからくしゃくしゃになったメモと小さな鉛筆(すでに数式が書いてある。勉強用に持ち歩いているのだろう。)を取り出して、意味は分からないんだけど、と言いつつ、文字と数字を書きだした。
「多分、こういう字が書いてあった。」
 アヴィーが書き出したのは、16個の文字と数字。文字は今も使われているものに近いが、その羅列に意味はない。もしかしたら、意味のない文字列なのかもしれないが。
「あのボタンを押すと文字が窓に浮かび上がってた。そして、扉が開いたんだよ。」
「…合い言葉、ということでしょうか?」
「同じことをやってみたら開くんじゃないかな、と思って。スハイル、僕がどのボタンを押すかは教えるから、飛んで押してくれる?」
「ぴよっ!」
 スハイルは胸を張り、了解した。アヴィーは、それと、と続ける。
「移民船の人たちが【魔】に襲われた時の記憶も、見た。」
 アヴィーの顔から血の気が引く。だが、アヴィーは唇を噛んだ後に顔を上げ、上空で揺れている蛸足のような【魔】の一部を指した。
「あの蛸足。あれが人を捕まえて、中身を吸ってしまうんだ。【魔】は大きすぎて形がよく分からないけど、何人かの記憶をまとめると、移民船の奥に進んでいったみたい。奥の方に進んでいって機械の中で寝てる人を見てる記憶も、見たよ。」
「……と、いうことは?」
 アヴィーは見せられた記憶の中から、必要と思われる情報を選んで話している。だから、この話には意図がある、と考え、レグルスは問いかけた。
「【魔】が移動してなければ、だけど。【魔】の体の中心は、移民船の奥にいる。でも、大きくて、移民船から蛸足が出てるくらいだ。移民船の中に入ったらすぐに【魔】と会うことになるんだけど……体の中心…トドメをさせるようなところはずっと奥にいる。僕たちは、【魔】と戦いながら【魔】の体をかき分けて奥に進まないと行けない。その間、ずっと戦うことになる。」
「消耗しそうですね。」
「うん。…だから、準備をしておいて。心の準備。」
 アヴィーはそう言って、交代しよう、とセルファに声をかけた。オリヒメがミツナミと交代を申し出る。
「アヴィー、もう少し休んでください。ボクがセルファと交代します。」
「レグルスが休まなかったら、ミツナミとセルファは休みにくいでしょう?それに、」
 アヴィーは前を見て、
「僕はもう、【魔】がどんなに記憶を呼び起こしてきても、怖い思いを思い出しても大丈夫。」
 だから僕が見張りをするよ、とアヴィーは宣言する。それは逆を言えば、これからも恐怖の記憶の呼び起こしが続くとアヴィーは知っているということだった。
 まだ続くのか、とレグルスは溜息を吐き、地面に座り込む。飴舐めますかぁ?と、ミツナミが声を掛けてきたが首を振った。


*****


 来た道を戻り、25階の階段前……、移民船の扉と思われる壁の前に立つ。その扉の上部にある、小さな窪み…蓋がとれたことで窪みになったところにスハイルは飛んでいき、その中をのぞき込んだ。窪みの中にはボタンの羅列と小窓、小さな穴の集合。アヴィーは荷物の奥に入っている簡易望遠鏡でボタンの位置と掠れた文字を見ながら、メモと記憶を照合してスハイルに指示を出し、スハイルはアヴィーの言うとおりにボタンを押す。ボタンを押すごとに、小窓に黒い文字が浮かんでいる。
「スハイル、それで最後。一番、大きなボタンを押して。押したらすぐに離れて。」
「ぴよ!」
 スハイルは、嘴で指示されたボタンを押し込む。すると、ピーという音が鳴り、驚いてそこから離れてオリヒメの胸に飛び込んだ。ボタンのあたりから『認証しました。ゲートより離れてください。』という声がして、一行は後ずさった。
 扉は横から開いた。移民船が先端から地面に突き刺さるように逆立ちしているので、本来は上下に開く扉なのだろう。ぷしゅ…っと空気が漏れる音と共にわずかに隙間が開き、それからゆっくりと、アヴィーたちの方向へ…つまり移民船の外側に向かって、扉は開く。開くのと同時に、周囲の根や蛸足をなぎ払っていったが…、まあ、見なかったことにした。
 重い音を立てて扉は開き切り、固定される。
「…1000年前の物が、まだ動くんですね…」
 とレグルスが感心を通り越して感動して呟くのと、内側から何本もの蛸足が溢れてくるのは同時だった。そのうち一本が何かを探すように地面を這いずってきてレグルスに届きそうになったので、セルファが盾で素早く弾く。
 盾に弾かれたことで、蛸足は「そこに何かがいる」と認識をした。溢れてきた足は移民船の中に下がっていく。
「…逃げた…わけはないでしょうけど…」
 オリヒメがすでに二刀を抜刀して、囁いた。この六階層を形作る周囲の根と蛸足が揺れだした。
「……『アルゴー』…!」
 迷宮内に声が響く。世界樹のものだ。声は震えており、何かに耐えながら話している。
【【魔】が、目覚め、戦闘態勢に入った…!私の抑えが…効かない…!お前たちが、【魔】を、目覚めさせたのだ…!何も、準備が整ってないというのに…!】
「君の準備なんか知らないよ。でも、僕たちが【魔】と戦うつもりでいることは、君も知っていたでしょう?」
 アヴィーが静かにそう答え、移民船に踏み込んだ。金属の床を踏む音が響く。
「世界樹、【魔】を抑えることは止めないで。僕らが【魔】を倒せたら、君にとっても最高の結果でしょう?もし倒せなくても、僕らが【魔】の餌になれば、また【魔】は眠ってしまう。そうしたら君はまた【魔】を抑え込める。君にとってはどちらでも構わないはずだよ。……君が【魔】を抑えている限り、アーモロードへの被害は最小限で済むよね?」
【……その、目覚めた【魔】を抑えるエネルギーの消費により、私の力の回復が数百年遅れるのだ…!私が回復しきれば…、【魔】を倒す光も見えるのだぞ…!】
「数百年はないよ。」
 アヴィーははっきりと答えた。
「僕らは勝てなくとも【魔】の力を削ってくるから。君が回復しきれてなくても、【魔】が傷ついていれば勝算はあるでしょ。少なくても五分だ。」
 落ち着いて述べるアヴィーに、『アルゴー』の方が恐ろしくなった。アヴィーは仲間の視線に気がついたのか、息を吐き、
「……僕は怒ってるんだよ、世界樹。君は、【魔】が移民船に取り付いたとき、移民船の人達を助けなかった。君の根が、囮にするように人を【魔】に放り込んだところも、見せられた。君が、たった一本でもその根の中に人を庇ってあげれば、何人かはこの星まで生きて帰ってこられたんだ。」
 もし、そうであったなら、神話のユグドラシルの再現だな、とレグルスは思った。終末の日に、ユグドラシルに匿われ、すべてを焼き尽くす炎から守られた男女。古代の神話をレグルスは思い出す。世界樹は反論をした。目覚めた【魔】を抑えるために力を使っているためか、声に焦りと苛立ちと苦痛があった。
【たった数人を守るのであれば……、全力で【魔】を叩くべきだ…!】
「何を言ってるんだよ。全力で叩いても、オリヒメの先生たちや深王様を頼って利用しても、1000年もかけても、君は【魔】を倒せないでいるじゃないか。」
 アヴィーとは思えない皮肉が発せられた。本当に…本当に、彼は怒っているのだ。
「その数人が、オリヒメの先生や前の執政院長さんをどれだけ救ったか、君には分からないでしょう?あのとき救われていれば、執政院長さんは別の物になってまで生きようとはしなかった。その人を、シルンやハルが辛い思いをしてまで倒すこともなかった。オリヒメの先生がオリヒメを餌にしようなんて、辛いことを考えなくても済んだし、オリヒメが泣くことだってなかったんだ。だから、僕は、今までの全部を助けるつもりで戦いに行くんだよ。」
 ―― 君と違う形の『全力』で。そう、アヴィーは宣言をした。その全部に、自分も含まれているのだとオリヒメは理解した。
 一瞬訪れた無音の後、「まあ」とミツナミが間延びした声を発し、
「それに、もう目覚めちゃったんだから、仕方ないですよねえ。」
「ぴよ!」
 セルファの肩当てに留まっていたスハイルが飛び降りて、セルファがアヴィーの前に出る。移民船の奥から来るであろう【魔】からの攻撃に対して、警戒に入る。
「アヴィーは顔の割に思い切りがいいですよね。」
 レグルスはセルファの隣に立ち、剣を抜いた。顔の割にって何だよう、とアヴィーは膨れたが、それを無視して、レグルスは続ける。
「君は、1000年続いた悲劇を終わらせる…、…せめて、断ち切るつもりだと理解しました。断ち切るものは、世界樹や先人が『仕方がない』と言い続けた諦めと妥協の連鎖…でしょうか。……やりましょう。誰もしなかった選択を。」
 アヴィーは頷き、固く白い合板の床に立つ。
 その広い廊下の奥から、ずるりずるりと鉤爪のついた触手が這い寄ってきた。



(42章5話に続く)

---------------あとがきのようなもの------------------

記憶のなだれ込み(むしろ、自分の中の記憶の呼び起こし)によって、
アヴィーは一気に大人の階段を登っており、少しだけ受け答えが変わってます。
ガッカリするよね…無邪気なアヴィーが好きな人は……、あ、それ、私と赤パイだ!


レグルスが思い出してる「ユグドラシルの神話の再現」というのは
ラグナロクから逃れる男女の話のことですね。
汚染によって文明崩壊した後の世界のため、失われた知識や文化も多いものの、
神話や物語、歌は残っている率が高い……ようです。
口伝できるし、汚染が酷い場所での娯楽は特別な道具が必要ない語りや歌だったと思うんで。





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