まよらなブログ

43章2話。

「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。


更新遅くなって申し訳ありません。

ちょっとパタパタしてるのと
道化師を追ってて気が付くと朝になってたりするので(ドラクエ8をプレイ中)、
次回の更新は12日(土)前後にさせていただきます。申し訳ありません。



それでは、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。




43章2話
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 地面が揺れるというよりも空間が揺れている。遠くから聞こえる唸るような音は、地響きなのか暴風の音なのか。【白亜の森】の空気を吸い込むように、五階層から六階層に続く大鳥居の前では強い風が吹いている。
 魔物の気配が先ほどから見あたらない。魔物たちは、より上層へ……、六階層から少しでも遠のこうと、逃げ出したようだ。転移装置である大鳥居の中を覗き込みながら今の六階層に踏み込むか、『ファクト』は逡巡していた。
「……エーテルが…、動いてます。」
 ミモザが転移装置越しでも感じられるエーテルの圧縮と爆発に、腕をさする。
「……これは、アヴィーのエーテルの使い方です。でも……、戦っている相手はエーテルを作りだしてる……。こんなの……無理のはずなのに……。」
「アヴィーが、最下層に続く階段と思われるものを見つけたようです。そう、ディスケから聞いています。」
 とディアデムがシェリアクを見上げた。シェリアクは、じっと大鳥居の先を見つめ、
「……つまり…、『アルゴー』は【魔】と戦っているのか。」
 と低く呟いた。言ってくれれば手伝ったのに、とエラキスが言うと、シェリアクは苦虫を噛み潰したような顔をした。一方でミラが、
「……過去形、ですの?」
 と、エラキスに尋ねる。エラキスは、ミラに向かって微笑んで、
「何だかんだ言って、あなたは『アルゴー』に協力的よね、ミラ。」
「ち、違いますのよ!ただ、『アルゴー』だけに任せるより私たちも戦った方が、勝算があると思いますのよ!」
「あ…あたしも、そう思います…!これだけエーテルが動いてるってことは…星術が効果があるのかも…!だったら…、あたし、役に立てます…!」
 ミモザがぎゅっと拳を握りしめ、必死に主張した。ディアデムは淡々と、
「ミラの主張に賛同します。数の暴力は一つの真理だと、聞きました。」
「……誰にだね?」
「ディスケが言ってました。」
「……、そうかね。」
「違うのですか?」
「まあ、ある側面では真理だが……」
「余計なことをディアデムに教えないでってディスケに抗議しないとね。」
 と、エラキスは肩をすくめ、真顔になった。
「…幸い、十分に道具も用意してあるし……、この調子だと、六階層の魔物も私たちを相手するどころじゃないでしょう。今なら、最下層まで戦わずに進める。」
 それは体力も気力も道具も消耗せずに【魔】のところまでたどり着ける、ということだ。強大な敵と戦うには、これ以上の好条件はない。シェリアクもそれは分かっているし、彼一人だけであれば進むところだ。ただ、彼が預かっているのは少女たちだ。保護者代わりでもあるギルマスとして、生還の確率が見えない相手に「好機だから」という理由で戦いを挑むことには二の足を踏む。
「……分かった。ただし、ここから先に進むのは私だけに…」
「「「数の暴力は一つの真理です。」」」
 仲間たちは街に帰そうとしたシェリアクだったが、少女たちは一斉にそう反論され、ぐっと言葉に詰まるのだった。
「やっぱり、余計なことを教えないでってディスケに抗議しないとね。」
 とエラキスが苦笑をしてから、
「でも、今更よ、シェリアク。私たちは、もう、十分すぎるほど冒険者なんだから、生きるか死ぬかは結果の一つだって分かってる。だったら……、勝てる可能性が高い方か、『全員』で生還できる可能性が高い方を選びましょう。」
 『全員』が、『ファクト』だけを指すのではないことは明白だった。いや、もしかしたら『世界の全員』かもしれなかった。
「……、一つ約束を。」
 シェリアクは低い声をいっそう低くして、
「私が君たちを守るが、もし私が倒されたときは、私と『アルゴー』を置いて即刻街へ帰還するように。…約束、できるかね?」
 少女たちは顔を見合わせた。すぐには返事はしなかった。「調子を合わせておいて約束を破るマネをしないのよね、この子たち。」とエラキスは感心しながらそれを眺める。君にも聞いているんだがね、とシェリアクに問われて、エラキスは「できるわ」と即答した。それは適当に調子を合わせたわけでもなく、彼女が本当にやるつもりでいることだった。
「私が、この子たちを街に連れて行きます。あなたを置いてでも。それが、あなたが倒れたときの私の役目でしょ。」
「…心強い。」
 シェリアクは苦笑をし、少女たちを見る。真剣そのもので見つめられて、少女たちは渋々と頷いた。一番、渋々としていたミラが急に顔を上げ、気配を探るように耳を澄ます。
「誰か…来ますわ。」
 と、彼女が囁くのと同時に、
「うわ!俺ら、運がいいな!ここで『ファクト』に出会っちゃう!?」
 と弩を担ぎ上げたディスケが上の階から降りてきて、『ファクト』を見つけて陽気に笑う。そして、シェリアクを見上げて、
「な?六階層に行くつもりなら、俺たちも一緒に連れてってくれない?」
 と、陽気に頼んできた。ディスケが弩を軽く掲げるのを見て、
「暴力の数が増えました。」
 とディアデムが言い、ディスケは「そうそう!数の暴力ってのは一つの真理だからさ!」と言って、シェリアクに何か言いたそうな顔をさせた。


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 ヤライがやってきたことで、【魔】の行動パターンが多少変わった。ヤライは、自分がアヴィーを斬る、という目的があるためか、【魔】が『アルゴー』に攻撃を向けるときにはそれを阻むように【魔】に斬りつける。【魔】はヤライに斬られることを警戒して、攻撃を『アルゴー』に向けることは減っていた。それほどヤライを恐れているということなのかもしれないが……、
(技量は確かにオリヒメ以上ですが……)
 レグルスはヤライの隙をついて飛んでくる【魔】の触手に腕を切られつつも、冷静にヤライを観察した。その触手にはスハイルとミツナミが触手の目玉に攻撃をして、怯んだところをレグルス自身が刈り取った。
(……【魔】の手数と威力の前では、オリヒメとヤライ殿の間に差などないでしょう。むしろ、己を知っている相手を先に討とうとするのでは…)
 では、技量以外に恐れることがあるのだろうか、とレグルスは考えつつ、セルファにはアヴィーの護衛を命じる。レグルスの負傷に気づいたセルファはわずかに躊躇ったものの、主の命に従った。
 アヴィーはヤライの刀を避けながら、【魔】のエーテルによる攻撃を打ち消せるように先見術の準備も同時に行っている。刀を避ける方に集中しているので、先見術の準備はほとんど勘で行っているようだが、【魔】が作り出すエーテルの揺らぎを敏感に察知し、セルファの盾やオリヒメの刀がヤライの刃を弾くなり受け止めるなりしたときに、先見術を発動させて【魔】の術を打ち消している。
 セルファに刀を弾かれたヤライは間合いをとってから、先見術を使ったアヴィーを感心しながら眺める。
「君ほど速く確実に星術を扱う星詠みを、1000年生きた私でも知らないよ。」
「……、ありがとうございます…!」
 アヴィーは息を上げながら、礼を言った。その礼は皮肉だろうか、とレグルスは思ったが、アヴィーはどうやら本心で礼を言ったようだった。誉められたから応えた、という単純なやり取り。ヤライは一瞬驚いた後に、
「……面白い子だ。」
 と苦笑して、アヴィーではなくアヴィーの後方……、触手に足を取られ苦無でどうにかそれを切り落とそうとしているミツナミに刃を向けて駆けだした。ミツナミの足から触手を引き離そうと手伝っていたスハイルが、ヤライの動きに気づいて甲高く鳴いた。
 罠だ…!とレグルスは気づく。それは、アヴィーを誘い出すための罠だ。セルファに攻撃を弾かれたときに、ヤライは後方ではなく右側に間合いを取った。その位置が、アヴィーを間に入れて、『アルゴー』の誰かに攻撃を向けられる位置だったからだ。そして、セルファが防御をする対象を咄嗟に変える際に、ブランクが生じることも気づいての位置取りだった。セルファの細身で小柄な体格では、鎧を着込んでの咄嗟の体重移動の際、どうしても体を支えきれないことがある。彼女はミツナミの防御に向かおうと強引に床を蹴ったが、無理な姿勢に体が傾いでしまい、たたらを踏んだ。
 ミツナミとヤライの間にはアヴィーがいて、アヴィーには間に入ってヤライの突撃を阻むだけの時間は与えられていた。アヴィーは、その間に入らないはずがない。そこを見越しての攻撃……罠だ。
 仲間を見捨てられないから、アヴィーはアヴィーなのだ。だからこそ、弟子はこの少年を大切に思っている――、…ヤライはその一点を理由にアヴィーを罠に誘い出す。駆けながらの最短の攻撃を繰り出す。突きだ。
 肘を引いた動きを、アヴィーは見逃さなかったのだろう。突きが来ると読んだアヴィーは、発動機を担ぐ右肩を向けながらヤライに向かって自ら飛び込んだ。発動機を盾代わりに使うのか……と思い、ヤライは発動機を斬り落とそうとした。発動機が壊れてしまえば、どれだけ才能のある星詠みでも星術は使えない。だが…、発動機にはエーテルが蓄えられていた。それを、ヤライの刀が触れる…という直前でアヴィーは雷に変換させた。発動機を盾にするつもりではない。狙いは…、
(感電狙い…!)
 ヤライは咄嗟に剣筋を僅かに変えた。発動機の真横を刀は通りすぎ、アヴィーの頬に一筋の傷を付けた。アヴィーは真横に向かって小規模の雷を発生させる。バチン!という音を立てて、ヤライの体に電気が走る。一瞬の痺れの隙に、アヴィーは転がるように横合いに飛び退き、セルファが護衛に入った。ミツナミの足に絡んでいた触手はオリヒメが切り落とす。
 ヤライは荒く息を吐きながら、アヴィーを見る。驚異的な早さで星術を精製する星詠みだとは分かっていたが、…殺しに行った一太刀に向かって飛び込みながら雷を作り出すとは思わなかった。徹底的に攻めてくる姿勢を見せてきた少年に、ヤライは己の認識を改めることにした。これはもう、少年ではない。戦士だ。
「……君は、本当に、…死なないつもりなのだな…。」
 ヤライが息を上げながらの一言に、アヴィーは瞬きをして、
「僕はオリヒメにそう言いましたけど……。」
 と、何で今更そんなことを聞くのだと、心底分からないという表情でヤライを見つめた。ヤライの方も理解できない生き物を見るようにアヴィーを見つめ……
 そのヤライの手首に植物の根が巻き付いた。
「…何だ…【世界樹】…!」
問いかけに答える声は、頭上からする。【世界樹】の本体が、空間を震わせて答えている。
【 私とあなたの目的は同じようで、異なる。こうなったら、私は、『アルゴー』に協力をする。彼らには【魔】と戦ってもらう。】
「……お前の魂胆など分かっているぞ、【世界樹】…。お前は、自分が回復するまでの時間稼ぎがしたいだけだ…!『アルゴー』を【魔】と戦わせて【魔】を消耗させ、最後は【魔】の餌として【魔】に放り込むつもりのくせに…よく言う…!」
 ヤライの手首に巻き付く根に、ぼっと火がついた。根は素早く手首から離れ、宙に逃げる。声が再び空間に響いた。
【……何故、私を攻撃したのだ、少年。ヤライ博士は君を殺そうとしている。】
「それは君もでしょう、【世界樹】。」
 アヴィーが響いてきた声に答え、
「オリヒメの先生……ええっと、ヤライさんが動けると、【魔】はあまり攻撃してこないみたい。だから、君がヤライさんを倒しちゃうのは……、僕、困るよ。僕らが【魔】を倒すまで、ヤライさんには生きててもらいたい。あ、【魔】を抑えてる君にもだよ。」
 アヴィーはぐるりと首を回してから、言い放った。
「君たちは、僕らを利用するんだから、僕が君らを利用しても文句言う資格は無いよね?僕らとしても、僕らが利用しあった上で【魔】が倒せればそれでいいしさ。僕としては、僕がオリヒメに言ったことさえ守れればそれでいいんだ。」
 この単純さだ、とレグルスは苦笑を浮かべてしまうのだ。アヴィーの強さは、この単純さ。他の思惑などひとまず置いておく。言ったことを実行するし、約束は守る。それだけに邁進できるその単純さが、今は底知れなさを生み出していく。
 ―― この少年は、絶望しないのかもしれない。
 と【世界樹】も考えた。絶望しないということは…、感情を【魔】の餌にできない、ということだ。そして、絶望しない生き物など【世界樹】も【魔】も知らなかったので、彼らは初めて感情を抱くのだ。それはこの少年の前から、逃げ出したくなるような感情だった。


(43章3話に続く)


---------------あとがきのようなもの------------------

アヴィーが強すぎるような気がしますが、まあ、最後だしいいよね!


セルファが「細身で小柄な体格」と書いてますが、今の『アルゴー』の体格イメージは、
アヴィー:以前から少し伸びたよ!153センチぐらい。細いようで実は骨太。
オリヒメ:160センチぐらい。実はボインちゃん。(だからスハイルはオリヒメに抱きつく)
レグルス;アヴィーより低い。145センチぐらい。これから伸びます。
セルファ:オリヒメより少し低い。158センチぐらい。スレンダー。
ミツナミ:5人の中では一番高い。165センチぐらい。ウエストが締まってメリハリのある体型。

となってます。アヴィーはいずれ178センチぐらいの身長を手に入れます、大丈夫。

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