まよらなブログ

44章4話。

「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。


更新遅くなって申し訳ありません。
時間がとれないことが主な原因ではありますが、
キャラがどーでもいい会話を繰り広げすぎて収集がつかなくなった…
というのも、更新が遅くなった原因の一つです。
(その、どーでもいい会話はがっさり削りました)

ただ、これからクリスマスの辺りまでが
職場的に忙しい時期になるので、もうちょっとのんびり更新が続きます。
計算では、年内で最終回を迎えるはずだったんですが、
今年度内に最終回を迎えられればいいかな、と思ってます。



それでは、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。





44章4話
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 予測は勿論、予想もしていなかったことが起きている。
 【世界樹】は【昏き海淵の禍神】を抑え込みながら、現状はもはや自分の予測を超えていったことを理解した。その理解のきっかけが、今の自分が【昏き海淵の禍神】を抑え込めるという事実だったのは皮肉としか言えない。千年前の【昏き海淵の禍神】には、【世界樹】が抑え込んでいてもはるか北方の大地に天変地異をもたらすエネルギーがあった。今は、それをしない。【世界樹】の根を灼き、戦いに向かってくる人間たちに牙を向く。今、ここで戦っていること以上のことをしない。しないのではなく、できない。
 千年前より【昏き海淵の禍神】は弱体しているのか。あるいは、自分の方の回復が上回ったのか。または、餌から十分なエネルギーが得らていないのか。もしくは…、何らかの奇跡が起きているのか。
 原因は何でもよかったが、たった一つの予測…期待と呼ぶ程度の予測が生まれた。今が最も、勝率の高い瞬間だ。
「ヤライ博士。私は、計画を変更する。」
 空間に、【世界樹】は声を響かせた。
「【昏き海淵の禍神】は…千年前より弱体化している。倒せるとしたら、今だ。あの少年と共に戦うことにする。」
 ヤライは、答えなかったが批判も非難もしなかった。お前の役目を考えればそうなるだろうな、と呟いてから、道を阻む4人の大人に刀を向ける。
「それぞれが己の役目を果たして【魔】を倒すのならば、私はやっと私の役目にだけ集中できる。あの子を救う役を負えるのは、もう私しかいないのだから。」
「……役目の重さは同じだなあ。」
 と、マルカブの背中を見ながらディスケが呟いた。自分がアヴィーを守る役を負っていることを自覚しているマルカブは、敢えてそんなことは言わなかった。ただ、考え続けている。孫を救うことが、この男の目的だ。そこは絶対に変わらないだろう。ただ、取ろうとしている方法は……
 …こいつが言っているとおりに、オリヒメを身代わりにすることなのか?
 奥から、雷が落ちる音がした。アヴィーが星術を放ったのか、【昏き海淵の禍神】が雷撃を落としたのか。いずれにせよ、戦いは始まったようだ。そして、【世界樹】はそちらに加わるつもりらしい。積年の宿敵を片手間で扱うとは思えないから、【世界樹】も【昏き海淵の禍神】も今この場のやりとりなど聞いていないはずだ。
「……真意は?」
 と、マルカブは端的にヤライに尋ねた。端的すぎて、ヤライは瞬きをした。このタイミングでそんなこと聞くなんてアヴィー以上に空気読まないな、とディスケは呆れつつも照準をヤライから外さない。エラキスが、溜息をついたが、そこには呆れ以上に羨望が込められているようだった。羨望は…、なぜかヤライの方に向いていた。
「…何のだね?」
 ヤライが静かに問いかけて、マルカブは鼻を慣らした。
「【世界樹】も【魔】も聞いてなければ、答えると思ったんだけどな。」
「真意など、言ったとおりだ。」
「…そういうことにしておくべきか。」
「同情をしてくれているのなら、そこを退いてほしい。【魔】……【昏き海淵の禍神】が私の孫を食いきる前に、私はあの子を救いにいく。」
 この男は、口で言っている通りの行動しているとは思えない。思えないのだが、ここでの戦闘は絶対に必要なようだ…と、マルカブはヤライの目を見て理解した。ヤライは闘志どころか殺意を明確に宿していた。一方のマルカブたちは、死ぬ気もないし死なせる気もないし殺させる気もないので、その殺意には抗わなければならない。
 マルカブは毒づきながらも腹は括った。それを見て、ヤライは目を細め、口は開いた。
「最後に私に対峙した人間が、」
 ヤライは満足げに息を吐いた。
「私と同じような重さを背負っている人間で、嬉しいよ。」
 かすかな微笑みも浮かべて、ヤライは床を蹴った。一刀目の攻撃でシェリアクの盾を誘い出し、その盾を蹴るように乗り越えて、後衛にいるエラキスへ二刀目を振りおろそうとする。しかし、ヤライが宙にいるうちにディスケが矢を撃ち出し、ヤライはその矢を切り裂くために二刀を振るう。狙いより手前に着地したヤライの背に向かって、マルカブの突剣が伸びてきた。それを振り返りながら刀で払い、そのまま来た道を戻るようにして刀を振るう。今度はマルカブの方がその刀を避けながら後退する。後退させられていくマルカブの胴を狙って薙払われた刀を、突剣で払う。
「駄目だ!」
 シェリアクが思わず叫んだ。一本の刀を剣ではじいても、二本目がある。一本目の攻撃を剣で弾いてしまったら、盾のないマルカブには二本目の攻撃を弾く術がない。その予測通り、ヤライは二本目の刀を横薙ぎに振るい……
 マルカブは右足を振り上げて、その刃を義足の臑で受け止める。そして剣を握らない手で作った拳で、ヤライの顎を打ち上げた。体を傾がせたその一瞬へ剣の一撃が入る前に、ヤライはとっさに間合いをとる。着地のバランスなど考える暇もなかったので、思わず姿勢を崩したヤライにシェリアクが盾ごと突進した。そのまま吹き飛べ、とばかりの勢いで。
 エラキスが発砲し、ヤライが左の指を銃弾が掠めていった。左に持つ刀が落とされ、そこへシェリアクの盾が迫る。ヤライは右に持つ刀でそれを受けるが、一本の刀では押し負ける。ずず…と、今度はヤライの踵の方が後退した。
 ディスケが容赦なくヤライに照準を合わせる。押し合いをしている横から、砲撃を撃ち込むつもりだ。徹底的に冷徹で、しかも自分の狙撃の腕には絶対的に自信がないと出来ない判断に、ヤライは舌を打ったかと思うと……、
 左腕を振り上げて、その爪で引き裂くように盾を迎え撃った。固い衝突音がして、シェリアクの突撃が止まる。
 ヤライの左腕は、黒く、鋼のような、人の腕ではないものになっていた。鉤爪のような指先と、…肘からは刃のようなものが伸びている。その形状よりも、先ほど以上の力で押し返されることにシェリアクは目を見張る。シェリアクが息を飲んだ一瞬で、ヤライの腕はシェリアクを盾ごと後方に吹き飛ばした。
「!」
 シェリアクの体はマルカブの方に飛んできて、マルカブを巻き込むようにして地面に落ちる。そのどさくさで、マルカブは剣を取り落とす。シェリアクは咳こみながら身を起こそうとするが、強く身を打ったのか思うように起きあがれない。その背からどうにか這いだしたマルカブの目に、ヤライがこちらに向かって床を蹴った様子が映った。
「マルカブ!」
 エラキスの声がして、彼女の銃が投げられた。マルカブは床を滑るようにスライディングして、それを受け取り、ヤライの足下に向かって発砲。照準を合わせる隙もなかったので当たりはしなかったが、ヤライの脚をわずかに止めるだけの時間はあった。その銃声にかぶせるように、ディスケが弩から矢を撃ち出して、マルカブの突剣のわずか数センチ横に当て、突剣をマルカブの方へ押し出した。マルカブはエラキスに向けて銃を放り投げながら、自分の元へ押し出されてきた突剣を取り、そのまま両手で床を押すようにしてヤライに向かって駆けだした。
 単純な剣技であれば、ヤライの方が絶対に上だ。受けて立って、切り捨ててしまえばいい。そのつもりでヤライは速度を上げ…、剣が交わる瞬間に把握した。自分の頭部に照準を合わせるエラキスの気配を。剣を交わらせた一瞬に素早く引き金が引くつもりの、殺意をだ。
 こちらが、本命…!
 ヤライはとっさに身を屈めて、マルカブの剣を受け流しながら彼とすれ違う。エラキスの盛大な舌打ちが聞こえて、その舌打ちにマルカブが苦笑したのも聞こえた。ざざざ!と床を滑りながら、ヤライは己の向きを反転させる。
 先ほど絶好の射撃の機会を逃して舌打ちをしたばかりのエラキスだったが、ヤライが向きを反転させたときには、すでにシェリアクの元へと駆け寄っている。頭を打っていないかを確認し、その可能性がないことを見ると、彼に肩を貸して立ち上がらせる。その切り替えの早さは、戦いなれている人間のものだった。
 立ち上がったシェリアクが、マルカブに「すまない、巻き込んだ」と謝った後で、
「…それにしても、君たち、戦いなれていないかね?」
 と、エラキスとの連携を指して、聞く。エラキスは肩を竦めただけだったが、
「まあ、あれだ。昔取った杵柄的な、何か。」
 と、マルカブは顎に伝ってきた汗を拭いながら、そう答えた。『昔』って時点で微妙に負けを認めているよな…とディスケは思いつつ、マルカブが肩で息をし始めているのを眺めた。慣れない義足で走り回っているのだ。体への負担は大きい。
 …と、いうよりも。慣れない義足だというのに、初めからその脚だったかのように走り回れている。そのこと自体が、奇跡のようだ。
「……マルカブ、どれだけリハビリ頑張ってたの?」
 と、ディスケが矢弾を装填しながら、自分の作った義足のあるマルカブの右足をちらりと見た。アンドロの技術を応用して作った義足を自在に動かせるようになるには、相当の年数をかけてリハビリをする必要があるのだが……、義足の手術をしてから半年も経っていない上に、彼は数ヶ月船の上にいた。船の上では木で出来た一般的な義足を使っていたはずだ。(海に落ちたときに金属製の義足では沈むからだ。)
「死ぬほど。」
 とマルカブは息を整えつつ素っ気なく答えた。素っ気ないが、自分の努力を他人に伝えることなどほとんどない男(何せ照れ屋だからだ)が「死ぬほど」と答えたことに、ディスケは笑い、
「頑張り屋なんだからー。」
「お前が本気で作った物なんだから、最高に使えるようにしておきたいだろ。」
「わー、おとーさん、大好きー、愛してるー。」
 いつも通りにヘラヘラ笑いながら、ディスケはヤライに照準を向けなおす。
「分かってるよ。俺もだよ。」
 と、マルカブからはいつも通りではない答えが返ってきた。ディスケは、照準を揺らさないままで三回瞬きをし、「俺、頑張ろう。」と呟いて真顔になった。一方でマルカブも息を整えて、一度長く息を吐きながら、ヤライの変貌した左腕を見つめる。
「…姫さんの腕とは、違うよな……。」
 フカビトの力を宿して人の形を持たなくなったグートルーネの腕とは、形状が全く異なる。ヤライは鼻を鳴らして、「やめてくれ」と呟いた。
「この腕を、【魔】やフカビトと一緒にしないでほしい。」
 ヤライは、その左腕を掲げる。黒い腕。鎧のようにも見えるのは、黒い筋肉のようなものが、黒い鋼のような表皮をまとっているからかもしれない。
「これは、1000年前の後悔が生み出したもの。我々が生み出した世界樹に抱かれた町と世界を陰で守ってきた技術。私の同志であった人の研究成果だ。」
 そして、ヤライは一瞬だけ目を閉じて、目を開けてマルカブを……彼の義足である脚を見た。
「同志の想いを身に宿している、という点では、君の脚とそう変わるまいよ。」
「そんなこと言われたら…、負けたら気持ちで負けたってことになるだろうが…。」
 とマルカブは呻き、ヤライは「違いない」と苦笑した。


(44章5話に続く)


---------------あとがきのようなもの------------------

ヤライの左腕は、新世界樹2のファフニールの応用で変形してます。
腕の形状については、新世界樹2の公式サイトを見てほしい!(笑)

新世界樹2ED後、主人公かベ(ネタバレ規制)の腕から細胞を採取して研究…
それから、自分に移植したのかもしれません。ほら、南の方角に来てるっぽいし。
まあ、それはともかく、この話で書きたかったのは「分かってるよ。俺もだよ。」の辺りです。
大人たちも、書いてないところでいろいろあるので、
ちょっとだけ性格変わってきて、受け答えがちょっとだけ変わってます。


次回更新は、26日前後になると思います。不定期更新続きますが、ご了承ください。



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