まよらなブログ

45章1話。

「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮Ⅲ」妄想話です。


更新遅くなって申し訳ありません。
本日から、45章。やっと最終章です。
あと数話、お付き合いください。

次回の更新は、13日(日)のつもりではいますが、ちょっと自信ない……。
変更の時は、日記でお知らせします。



それでは、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。




45章1話
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【私と【魔】には、あらゆる物質・エネルギーを別のエネルギーに変えるシステムが付随している。】
 と、【魔】と戦いを続ける中で、【世界樹】が突然切り出した。アヴィーはミツナミから投げ渡されたアムリタを口に含み飲み込んでから、
「なんだかよく分からないけど、そうなんだ。」
 と、答えた。【世界樹】は理解を得ようとはせずに説明を続けた。
【我々が人の記憶や感情を食い、己のエネルギーとして蓄えられるのも、そのシステムがあるためだ。人の感情というものは、人がいれば必ず起きるものであり枯渇することはない。無感動にさえ、虚しさが底にある。この星で活動する際に『感情』を使うと決めたのも、効率と持続性を考えれば当然の選択だった。】
「まあ、僕は気に入らないけど、君たちがそう生き物だって事は理解したよ。」
 と、アヴィーは意外とすんなりと受け流す。兎が狼に「食べるなんてひどい」って言う権利はあるかもしれないが、狼だって食事が必要だから禁止はできない、という理解を以て、アヴィーはすんなり受け流す。
【効率性と持続性から人間の『感情』が、エネルギーの源として選択された。瞬間的で爆発的なエネルギーが必要であれば、異なるものを源として選択していただろう。】
 と、【世界樹】は含みを持たせた。
【つまり、我々は感情以外の物でもエネルギーとして変換できる。そして、エネルギーであれば熱・速度・電気・光・原子核・音……。あらゆるものに変換できる。実際、1000年前は汚染物質を、主に電気エネルギーに変換した。】
 知らない単語もでてきたが、そこは聞き流す。
【君たちが言う『エーテル』にも、だ。】
 反応すべき単語は、ここだった。アヴィーは、はっと表情を改めた。
 【世界樹】は、いっそ愉快そうに続ける。
【私は、このエネルギー変換システムを用いて、君が扱える『エーテル』を作り出す。それは、この星で存在したことのない量になるだろう。君がそれを扱えるかは、私は知らない。だが、君は、それを使って【昏き海淵の禍神】に星術を撃ち込め。それが、今できる……おそらくは今後もない、最大の攻撃手段だ。】
「僕が扱えるかは知らないって……、本当に賭けだなあ。」
 アヴィーはそう言いながらも、即刻質問を返した。
「何を元にして、エーテルを作り出すの?」
 それ次第ではこの賭けには乗れないよ、とは言わなかったが、アヴィーの言いたいことは【世界樹】にも分かった。
【私自身だ。】
 と【世界樹】は即答した。アヴィーは目を開いてから、
「それは、犠牲、」
「ぴ!」
 スハイルがアヴィーの近くまで飛んできて、ぶんぶんと首を振る。
【犠牲ではない。本能だ。】
 と、スハイルに代わる様に【世界樹】が答えた。
【君に、分かりやすくするなら……、母蜘蛛が子である蜘蛛に食べられるという蜘蛛の一種と同じだ。それが彼らの本能であり生き方だ。種としての生存が、その蜘蛛の正義だからだ。そして、私の種としての正義は、【昏き海淵の禍神】を倒すことだ。】
 アヴィーは頷くことができないでいる。【世界樹】の『犠牲』で済むならむしろ好都合ではないか、とレグルスは思う。そもそも、【世界樹】と【魔】の戦いに人間を巻き込んだのは【世界樹】だ。(実際には人間は巻き込まれもしたが【世界樹】を利用もしたので等価交換ではあったが、その事情をレグルスは知らない。)今後も巻き込まれるかもれないのだったら、【世界樹】には消えてもらった方がいい、ともレグルスは考える。何より、この事態に最も責任がある存在が身を持って責任を果たすべきだ。……と、レグルス個人は考えるのだが、口にせずにアヴィーが答えを出すのを待つ。答えが出ずとも先に進むのを待つ。アヴィーはすべてを救うことを諦めたくない。レグルス自身はその考えに賛同は出来かねるものの、そんなアヴィーには協力を惜しまない、と決めたのだ。諦めたくないアヴィーの葛藤を待つのが、自分の責任だ。
 アヴィーの逡巡に、【世界樹】は冷たく言い放った。
【母蜘蛛の行動を母性愛や尊い犠牲と呼ぶのは、人間の解釈だ。母蜘蛛は彼女にとって正しい選択をとっているだけだ。私の行動を犠牲と呼ぶのも、君の解釈だ。だが、私の『幸福』は【昏き海淵の禍神】の打倒だ。】
 冷たく言い放ちながら『幸福』を語るアンバランスさはあったが、【世界樹】が嘘も偽りも誤魔化しも虚勢もなく、本当の本心を言葉にしたことはアヴィーは理解できた。
 彼は、一度大きく息を吐いて、それから吸い込んでまた吐いた。そして、分かった、と口にした。
「やっぱり、僕は君とは分かり合えない。」
【私もそう考える。】
「でも、君の考えや感じ方は、少し解れた…と思う。」
【私も、そう考えている。】
「君と僕は違う。君と僕らも違う。でも、君の理想とか信念みたいなものは解ったような気がする。それは僕の理想や信念とは絶対に違うものみたいだ。だから、僕の幸福や正義を押しつけない。……押しつけて君にそれを聞き入れさせたら、それこそ僕の正義のために君が犠牲になるってことだ。」
 こんなのは言い訳だ…とアヴィー自身も感じながら、それでも口にした。【世界樹】の感じ方は、自分のそれとは全く異なっている。だから、共感も出来ないし、共感されることもない。理解し共感できる、と思ってしまったから、深王は【世界樹】を友として接した。親しみはあったのかもしれない。お互いの存在が支えになったのかもしれない。だが、そこに理解は存在しなかった。
 もし、理解も共感も出来ない相手の理想や信念の中身を知ることが出来るのなら。それは少なくとも『解った』ことになり、友以上の理解者とも言えるんじゃないだろうか……
【……ああ、】
 【世界樹】が、溜息のようなものを漏らした。感嘆の……溜息のようだった。
【たった1000年で、私を理解した人間と会えるとは考えてもいなかった。】
 ……アヴィーはそれで良しとした。自分にとっては最高の結末ではないが、【世界樹】にとっては紛うことなき最高の結末を迎えるらしい。勝手だな、と思ったが、それで怒るのも勝手な気がした。アヴィーが頬を膨らませるのをやめるのを見て、レグルスは戦いに集中し、スハイルはまた飛んで触手を攪乱する。
 アヴィーは、もう!と息を吐くように声を出してから、吐き出した息とともにそれまでの逡巡を捨て去った
「【世界樹】、それは今すぐできるの?」
【【昏き海淵の禍神】への抑え込みを全解除する必要がある。もう少し、あの体力を削ってほしい。そうしないと、抑え込みをやめた途端に暴れだし、君たちが瞬殺だ。】
 【世界樹】の言葉には返事こそしなかったが、オリヒメが駆けだし、レグルスがそのオリヒメを鼓舞するように声を発する。先が見えたのだ。持久戦のための力の温存はもはや必要ない。オリヒメは一気に【昏き海淵の禍神】に肉薄し、一度は刺しこんだ刀を水晶体から引き抜いた。今から、攻撃だけを考える。ショーグンは二刀を構えてこそ、最大の攻撃力を発揮する。心のどこかで掛けていたリミッターを外して、二刀が十にも見える速さでオリヒメは【昏き海淵の禍神】を斬り刻む。レグルスはアヴィーとミツナミに己での防御を命じ、セルファにはオリヒメを重点的に守るように命じた。
 アヴィーは触手の攻撃から距離をとれる位置へ駆けながら、小さな氷の術を用いて肩の発動機を冷やす。エーテルの扱いに長けた今なら発動機を暴発させることはないが、使い続ければ損傷する可能性が高くなるのが道具だ。万全の状態にして、賭けに挑まなければならない。
(というか、確実に倒さないといけない。)
 アヴィーは唇を噛んだ。【魔】を押さえつけている【世界樹】がいなくなるのだ。失敗したら【魔】はずるずると移動を開始し、世界を食い尽くすだろう。
 正直自分には荷が重い、という思いが、疑問を【世界樹】に投げかけた。
「【世界樹】…、今までこの方法を試そうとは思わなかったの?」
【どういうことだ?】
「僕も星術は得意な方だけど(その技量に自分とヤライを感心させておいて「得意な方」とは随分と謙虚なことだ、と【世界樹】は思った)、僕の先生とかミモザとか、僕よりすごい星詠みはいる。今までもいたと思う。自分自身じゃないものでも、君は物をエーテルに変換できるんでしょう?だったら…、波の力とか太陽の光とかをさ、エーテルに変換して、星詠みと協力して【魔】を戦ってくれば……、ちょっとずつ【魔】を弱くさせていけたんじゃないの?」
 そうしてくれたら僕たちは楽だったのに、と呟いたのは、ただのグチだ。【世界樹】からは、
【それは、私の失策だ。認めよう。】
 と、意外にも素直な返事が返ってきた。
【君は、さきほど、言った。道を作っておけば誰かが来る、と。私にはその発想が欠けていた。私が【昏き海淵の禍神】を倒さなくとも、誰が【昏き海淵の禍神】を倒したとしても、あの者を倒せれば私の目的は達成される。私は【昏き海淵の禍神】を倒すために、存在している。なれば、誰かが【昏き海淵の禍神】を倒すために必要な土台を私が作れば、私の目的は達成される。そう…!】
 【世界樹】の声は、アヴィーにも分かるぐらいに喜びに溢れていた。
【神が私に与えた使命は、やっと、達成されるのだ…!】
「君、…どれくらい【魔】と戦ってきたの?」
 アヴィーは感情を乗せないように注意しながら尋ねる。1000年を大したことのない年数と考えている【世界樹】が、「やっと」と言った。おそらく、年月という表現では足りないほどの時間を、【世界樹】も【昏き海淵の禍神】も戦ってきたのだ。
【表現することができない。それを表す言葉がない。】
「そうなんだ。たった一人で?」
【そうだ。】
「……君の神様は、随分と厳しいね。」
 アヴィーは一言だけ囁いて、自分の頬をぱちん!と叩いた。
「……僕、君のことは大嫌いだけど、君が今まで戦ってきたことはすごいなって思うよ。」
 アヴィーは頬から手を放し、拳を作った。【魔】に斬り込んでいくオリヒメの背中を見る。触手を斬り捨てその体液を刀が吸う度に、切れ味があがっていくのか、それとも触手を切り捨てていく度にオリヒメ自身の箍が外れていくのか……、彼女は攻撃をするごとに鬼神のような戦いぶりを発揮していく。
 そして、オリヒメは残った最後の一本である触手を斬り落とす。同時に、【世界樹】のすべての根が、赤い水晶体を有する【昏き海淵の禍神】の中心に降り注ぎ、【昏き海淵の禍神】を移民船の床に押しつけた。床が崩れ、【昏き海淵の禍神】の体が沈む。その反動で飛び上がるように、【世界樹】のすべての根が【昏き海淵の禍神】から離れた。
【少年、準備を。】
 【世界樹】の声は、ここに来て淡々としている。アヴィーは発動機を唸らせながら、
「【世界樹】、」
 と、【世界樹】がエーテルになってしまう前に、呼びかけた。
「僕は、君が戦ってきた時間に見合うだけの星術を放つから。」
【了解した。】
 【世界樹】の返答には感動もなかったし、感謝も口にはされなかった。だが、アヴィーの言葉に対する疑念もなかった。そんなものは、これっぽっちも無かった。
「だから……、うん、そうだな、…お疲れさま。」
 アヴィーは迷った後に、そう一言告げる。【世界樹】は苦笑したようだったが、もう次の瞬間にはその声ごと消え去った。移民船の床や壁を這っていた根は消え去り、そこには朽ち果てた移民船と、体の中心しか残ってはいない【昏き海淵の禍神】とその水晶体に捕らわれた少女と、『アルゴー』がある。
 そしてその周囲を満たす物は、さっきまで【世界樹】だったありえない量のエーテルだ。


(45章1話に続く)

---------------あとがきのようなもの------------------

分かり合えなくても理解は出来るんじゃないかなあ、という話です。

私には【世界樹】たちは昆虫に近い生き物…というイメージがあって
思考や感情があるというより、システムに沿って生きてる感じで書いてます。
この話では、協力(?)関係になって【世界樹】とは折り合いを付けましたが、
新世界樹3では、【禍神】とともにラスボスやってほしいです。ぶっとばしたい。(笑)


オリヒメは「五輪の剣」を使いながら、「血染めの朱槍」が発動してるようです。
オリヒメはゲームでも五輪まっしぐらに育てたので燃費がめっちゃ悪かった…浪漫優先だった…




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