まよらなブログ

【深夜の真剣文字書き60分一本勝負】に参加してみた・11


Twitterの「深夜の真剣文字書き60分一本勝負」に参加してみました。
(企画についてはこちら )


書いた話は追記に記載します。
推敲してないので、いつにもまして誤字脱字激しいと思いますが大目に見てください。
興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。

使用お題は、
 ・「春遠からじ」
 ・「しゅうえん」 です。

ゲームっぽいファンタジーな世界でラスボス直前という感じの、オリジナル話です。


【第83回 フリーワンライ企画】
使用お題:
  ・「春遠からじ」
  ・「しゅうえん」 
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 The trumpet of a prophecy ! O, Wind,
 If Winter comes, can Spring be far behind ?

  予言のラッパを吹き鳴らせ!おお西風よ、
  冬来たりなば、春遠からじ。

  ――パーシー・ビッシュ・シェリー 「西風に寄せる歌」より




 階段を上がり切った先は、最悪の舞台の上、だと思った。
 【終焉】というタイトルで、一人芝居を続けている舞台。その舞台を【終演】に向かわせるために、広間に上がる。
「…これは、また、なんというか、」
 と、低い声で驚きとも呆れともつかない呟きをするのは、背の高い眼鏡を掛けた中年男。暴風のように吹き散らかす怨嗟の声を聴きながらも、呟きには恐怖の色はない。いつも機嫌のいい男だが、この時だってそれは失われもしていない。
「…すごいな。」
 でも、感想は馬鹿みたいだった。馬鹿だから、いいけど。
「……なにそれ、馬鹿みたい…」
 と、その隣で呟くのは小柄な少女。13歳の少女は、癖のない黒髪を、怨嗟の声が呼び起こしている風にはためかせて、いつものように、不機嫌に、気怠そうに、ウチの父さんはなんて馬鹿なんだろう、と、慣用句のように呟いた。彼女も、いつもとあまり変わらない。
「こんな、濃い呪いの中で、そんなことしか言えないなんて、馬鹿みたい。っていうか、馬鹿だよね、父さんは。知ってた。」
「知ってるなら、それでいいな!よし、それでよし!」
「知ってるから、余計にがっかりなんだけど。」
「じゃあ、父さん、怖がればいいのかな!?」
「知ってる以上に馬鹿だった。」
 …………父子はいつも通り過ぎた。
 でも、私はいつも通りにもいかない。恨みと悲しみを吐き出しながら、この世のすべてを呪っている中心を見る。黒い靄がかかって見えるのは、私の霊感のせいだ。私以上に霊感が強い…というより霊媒体質の少女の目には、靄はもっとはっきりした形に見えているのだろう。靄のせいで、呪いの中心がよく見えない。そこに本当に、何があるのかが、よく見えない。
「カルヴァリス、」
 と、父親の方を呼んだ。娘に向かって「知ってる以上に馬鹿だなんて!父さん、まだまだこんなもんじゃないぞ!」と言ってた父親が、視線を私に落とす。
「あそこに、何が在るの?」
「あ、見えないんだ。」
 と、父親は娘にも視線を向けた。娘の方は靄の方を見て、頭を振り、
「……大きなネズミの化け物がいる。キモチワルイ。」
 と目を閉じて呻く。その背中を父親は擦ってやりながら、
「そうか、あの子が吐き出している呪いは、相当なものだな。」
 あんな小さい体で可哀想に……と、父親が哀しそうに囁いた。霊が見える娘とは真逆に、父親は霊が全く見えない。彼が見るものは実体で、そして彼が聴くものは、呪いを吐き出す化け物の、本当に本当に言いたいことだ。
「独りは嫌だと、言っているよ。7歳ぐらいの女の子が、だ。」
 私が尋ねる前に、父親は答えた。もしかしたら、私の言いたいことも彼は聴きとったのかもしれない。ふん、と鼻を鳴らして靄の方を向く。あまり強く願うと、カルヴァリス……父親の方に聞こえてしまう、注意しなくては。
 ……本当はここで終演を迎えたくはないんだって、そんな願いを聴きとられないようにしなくては。
 何百年と生きてきて、…というより生かされて、何故小さな女の子がこんな呪いを吐き出すことになったのか、とか、一度はそれを止めようとした人がいた、とか、でも止められず自分自身を犠牲にして女の子を72年間封じた、とか、その人を助けようと仲間たちが方策を探し続けたこと、とか、知っている。その沢山の人の涙や嘆きや決意や諦めた挫折や、それでも諦めきれなくて戦い続けた時間を、私は傍で見てきている。おそらくその戦いも、今日で終わるだろう。この、空気読めないくせに人の本音は聞こえてしまう男と、口を開けば皮肉しか出ないくせに人一倍寂しがり屋な少女と……、そして、精霊が宿った猫の私によって。
 それは、とても正しいことだ。この72年。いや、その前の72年も。人間たちは、ささやかな欲で小さな女の子を変貌させた罪を、どうにか贖おうと努力してきた。それでも報われない結果の積み重ね。どんな発見も発明も、この終焉を呼び込む舞台にまで上がるに至らないその過程。小さな女の子に救いの手すら差し出すことが許されない、その時間。その時間があるからこそ、吹き混んでくる怨嗟も、溢れだす呪いも、滲む闇も、振り払える今がある。
 救いたいと願いながら、救えなかった冬の時代。無力に耐えて、それでも繋いできた冬の時代。その冬の時代があるからこそ、春はすぐそこ。今、ここに。
「……父さん、クロネコ。」
 と、少女が目を開けて、持っている杖をぐっと握りしめた。独りは嫌だ、とかつて泣き喚いた少女が、同じように叫んでいる(らしい)女の子(らしい)をぎゅっと黙視する。
「終わらせよう。曾おばあちゃんとも約束した。」
 杖から、ひゅっと青い光が出て、鎌状の刃が形成された。少女は、本気だ。72年の時間を知らないはずなのに、誰よりも理解している。
 うん、さすがわが娘、と父親は満足そうに頷いて、私に視線を落とすのだ。
「…………それで、いいかな。」
「女が口に出してない願いを、聴くもんじゃないわよ。昔から言ってるでしょう。」
 と、私は言い、彼は苦笑した。そうだね、とだけ言って、拳を作る。
 こちらが武器を持ったことで、呪いはこちらを認識した。呪いは黒い腕に形を変え、潰れろとばかりに振るわれた。その腕を避けることもせず、カルヴァリスは真正面から拳を打ち込む。それは、冬を終わらせるラッパのように呪いを祓う音がする。黒い腕はちぎれ、粉になり、霧になり、消えていく。
「上出来ね。おじいさま譲りだわ。」
 懐かしさに思わず、昔のように褒める。と、もう父親になっている男は、昔のように無邪気には笑わずに、寂しそうに微笑んだ。分かって、いるのだ。この戦いに勝てば、私がただの猫に戻るということを。そして、それを私自身も寂しく思っているということも、だからこそ私は昔を懐かしむように褒めてしまったことも。
 でも、彼はいつも通りに、昔の通りに、すぐに明るく笑って見せた。
「そうか!でも、いずれ、おじいさんも超えるから!」
 だから、とカルヴァリスは宣言に続けた。
「それを見てくれ、クロネコ。」
 うん、と答えるのが精いっぱいだ。でも、きっと伝わっている、私が本当に本当に言いたいことは、もう十分に十分に伝わっている。
 だから、終らせようと思う。この最悪の舞台を。
 【終焉】という名の演目を、【終演】に向かわせるため。
 春のような結末は、もうすぐそこ。

 

---------------あとがきのようなもの------------------

前回のワンライ参加話で書いた
、ちょっと今、考えているお話……
さらに73年後の話……の設定を元にして、書いてみました。(笑)

私の悪い癖なんですが、
お話の着地点(つまり最終回)を考えてから話を作りだした結果、
最終回後の展開も一緒に考えてしまって、すげえ長い年表が出来てしまいます。
その一部を切り取ってます。勢いだけで書きました。
説明不足で申し訳ないんですが、まあ、仕様ということで。




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