まよらなブログ

【深夜の真剣文字書き60分一本勝負】に参加してみた・14


Twitterの「深夜の真剣文字書き60分一本勝負」に参加してみました。
(企画についてはこちら )


書いた話は追記に記載します。
推敲してないので、いつにもまして誤字脱字激しいと思いますが大目に見てください。
興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。

使用お題は、
 ・溶けてしまったもの
 ・なくしたとき(なくした、は変換自由)
 ・孤独恐怖症
 ・会えた
 ・パステルカラーの涙   の全部です。

オリジナル話です。少し説教臭いです。(笑)

 




【第88回 フリーワンライ企画】
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「涙の色がカラフルで、面白い絵を描く子だなあ、と思った。」
 と、スケッチブックを広げながら、【先輩】は言った。開かれたスケッチブックの中にはクレヨンで描いた女の子の絵があって、その女の子はいくつものパステルカラーの涙を零していた。
 その絵をかつて描いた【後輩】は、ピンで留めた前髪を撫でながら、
「それ、小学生の時の絵です。」
 と、恥ずかしそうに言う。【先輩】は感慨深げに絵を眺めてから、【後輩】へと視線を投げて、
「……大人になったよね。」
 と、笑いながらも眉を寄せる。泣きそうでもあった。
 【先輩】は、スケッチブックを閉じ、そして部屋の中にあるカンバスを見つめる。そこには泣いている女の子の絵があったが、クレヨンではなくて油絵で描いてあった。少女は涙を零していて、それはやっぱり色とりどりだ。
 絵のタイトルは、『夢』だった。
「……『夢』かあ。」
 と、【先輩】は囁いて、【後輩】は「はい」と頷いた。
「【先輩】、前に言ってたじゃないですか。『夢』って、きっと溢れるぐらいに思ったときに叶うんだって。自分の中で、いっぱいになった時に、漏れ出すように、叶うんだって。その溢れたのを涙にして描いてみた。」
「…………、うわ、昔の自分、詩人か、恥ずかしい。」
「…そうかな。私もそうかもって思ったから、描いたんだけど。」
 と、【後輩】は『夢』と名付けた絵を眺めて、首をかしげる。唇の端は少しだけ上がっていて、この絵は彼女なりに自信作らしかった。【先輩】は絵の評価はしない。その労力を称えることはあったが、出来はいつも評価しなかった。【後輩】が、描くことに意味があるとずっと考えて、それを支えることが自分の役目だと決めていたからだ。
「……『夢』かあ。」
 と【先輩】はもう一度、囁いた。【後輩】は【先輩】を見た。
「……4月から、君は新しい生活に身を置くわけだけど、」
 と、【先輩】は唐突に話題を変えた。
「それは、夢への一歩だよね。」
「はい。」
 と、【後輩】は頷いた。そう、『夢』の一歩だ。自分の中で憧れと希望と不安でいっぱいになって、なりたい気持ちが溢れて、そして努力をして、選ばれた。そのことが誇らしくて、【後輩】は【先輩】に向きなおった。
「はい。私、頑張りました。」
「うん。それは私も誇らしい。あんなに堪え性がなくて、上手くいかないとすぐ拗ねた子が、本当に最後の1年、よく頑張ったと思う。」
「私は、変わったもの。」
「そうだね。すっかり大人になった。」
 そして、これからも君は大人になっていく、と【先輩】は囁いたが、そこにあまり喜びはなかった。【先輩】は、【後輩】が悲しんでいるときに無理に励ますようなことをしないが、喜んでいるときは一緒に喜ぶ人だったので、【後輩】は不思議そうに【先輩】を見る。
 その視線に気付いた【先輩】は眼鏡のツルを押し上げた。少し感情が昂っているときに、この【先輩】は眼鏡を上げる。泣きそうなときにも眼鏡を上げる。【後輩】はそれを知っているので、やはり不思議そうに【先輩】を見た。
「…希望に満ち溢れている君に、こんなことを言うべきじゃないと思うんだけどね、」
「…また意地悪を言う。」
 と、【後輩】は唇を尖らせるが、聞かない、とは言わなかった。すっかり優しくなったなあ、と【先輩】は微笑んだ。
「…あんなに、大事に大事に抱えていた夢なのにね、ある時、無くなってることに気付いたりする。」
 と、【先輩】は、溜息を吐き、宙を見る。そこには何もなかったが、確かに何かがあるようだった。
「なりたくて仕方がなかったものになっても、やりたかったことができなくて、こんなはずじゃなかった、と言いながら生活をしたりする。でも、いつか、自分が夢を見たことが出来るだろうから、と思っていても、毎日の仕事や課題に追われてさ、…そのうち、その仕事や課題をこなすために生きるようになる。そして、そのとき気付くんだ。『夢』を無くしてしまった、と。」
 まるで溶けてしまったかのように、あの大事な『夢』が消えてしまうんだよね、と【先輩】は手をひらひらと振る。
「なんで、その『夢』を抱いたのか、それを見失わなければ、追ってくる仕事や課題に『夢』の欠片を見出せるんだろうけど。大体の人間は、そんなことも忘れてしまう。何かを為すための進んだ道なのに、こなすためのベルトコンベアーになってさ。そのうち、それを、会社のせいにしたり、自分の才能の所為にしたりする。会社が効率を求めるのは当然なのに、それを間違ってると言ったりさ。才能なんか最初からなかったのに、今更気が付いたかのように言う。」
 【先輩】は眼鏡をまた上げた。【後輩】は、【先輩】が何を言っているのかは正直分からなかった。まだ、少し、早かった。
 でも、この【先輩】の一生懸命さには好感を敬意を持っていたので、耳だけは傾ける。この【先輩】は全く役に立たないが、耳だけは傾けようといつも必死だったからだ。
「誰も分かってくれないと、嘆いたりもする。最初から一人なのに、孤独が怖い、と言ったりする。孤独恐怖症みたいなふりをしているけど、孤独なんじゃないよね。道が見いだせなくて迷子になっていただけなのに。」
 少しだけ、語尾が変わったので、【後輩】は尋ねた。
「…【先輩】は、そうだったんですか?」
「うん。そうだった。」
 と、【先輩】はあっさりと認めた。認められたということは、それを過去のことにできている、ということだ。
「『夢』なんて、見出すものだと思ってるんだ。今の私は。目の前に与えられた仕事、望んでもいないのにやってきたトラブル、自分の人生に意味なんかなさそうな出来事……、そういうものに、『夢』を抱こうとした私の動機を見つけられたら、どんなに厄介な出来事でも、想像した生活とどれだけかけ離れていても、誰に何を言われても、それは正しく『夢』を叶えている。」
「……動機?」
「そう。」
「【先輩】の動機は、何だったんですか。」
 と、【後輩】に聞かれ、【先輩】は口を開いたが、
「…………恥ずかしいから、言わない。」
 と、はにかむように笑って、口を閉じる。ここまで言っておいて、それはないだろう、と【後輩】は思ったが、
「でもねえ、それをもう一度取り戻せたのは、君たちのおかげなんだよね。」
 と、【先輩】が続けたので、【後輩】は思ったことを口にするタイミングを逃してしまった。
「……私たちの?」
 うん、と【先輩】は頷いた。
「私は、君たちが一生懸命生きていることを知っている。そんな君たちの側にいて、君たちの話を少しだけ聴くことが出来た。君たちがどんな子なのか、時々ちゃんと理解することもできた。君たちは、本当に一生懸命生きている。……そんな君たちに、ふさわしい人間で在りたいな、と思ったときに、私はもう一度、『夢』に会えた。」
 そう、会えた、と【先輩】は囁いた。
「私は、ちゃんと一生懸命になりたかったんだよ。」
「…………、よく分からないし、私もそんなに一生懸命生きてないと思う。」
「うん、まあ、そうかもしれないよね。」
 と、【先輩】は微笑んでから、両腕を広げる。
「きっと、君の『夢』もしぼむよ。」
「また、意地悪を言う。」
「きっと、『夢』は涙で流れてしまうんだ。でも、覚えておいて。何にもなれなかったとしても、無意味のように思っても、」
 【先輩】は宙に向かって手を広げ、
「『夢』なんてねえ、何度でも見出せるんだ。それだけは、信じておいて。」
 【後輩】は「よく分からない」と呟いた。今はそれでこそだ若者よ、と【先輩】は苦笑した。



---------------あとがきのようなもの------------------

「自分の『夢』に対する自分の動機」を書いてしまい、
「そういう話にしたいんじゃない!」と我に返って削ったので
その部分が分かりにくい話になってるとは思いますが、
ワンライはそれでこそだと思ってるので、このまま行きます。




4月から新生活に進む ある女の子へ。
いつまでも半人前の心理士から、感謝を込めて。



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