まよらなブログ

【深夜の真剣文字書き60分一本勝負】に参加してみた・19


Twitterの「深夜の真剣文字書き60分一本勝負」に参加してみました。
(企画についてはこちら )


書いた話は追記に記載します。
推敲してないので、いつにもまして誤字脱字激しいと思いますが大目に見てください。
興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。

使用お題は、
    ・冷たい方程式
      及び
    ・割れたガラスの上

オリジナル話です。






【第101回 フリーワンライ企画】
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 タイトル:『 問∞.「カルネアデスの板」が割れたガラスで出来ていないことを 証明せよ。』



「随分、古いSF小説なんだけど、」
「うん。」
「『ギリギリの燃料しか積んでいない宇宙船に密航者がいた。その宇宙船は疫病のワクチンを運んでいるが、密航者を放棄しなければ燃料が足りない。多くの患者を救うために密航者を宇宙空間に放棄すべきか?』そういう問いかけがされている、話。」
「ああ、うん。」
「その話は、密航者が納得して宇宙空間に…………『旅立っていく』。」
「そんな言い方しなくてもいい。」
「うん。そうだね。」
「それにしても、大昔のSF作家は性善説に立ってるんだな。これが一つの冴えたやり方だって信じた女の子たちが『旅立って』いく話のことは知ってるけど。」
「まあ、人間、フィクションの世界でぐらい性善説を信じていたいんじゃないの。リアルの世界で見つからないものは、せめてフィクションの世界で見出さないと、心は折れる。」
「まあ、それもそうだ。」
 そして、二人の青年は黙り込んだ。心が折れる。そんなリアルが目の前に迫っている。
「……で、そういう話を、『方程式もの』っていうんだよ。」
「うん。」
「解答なんて出ないのにね。」
「いや、出てるんじゃないの?ほら、密航者が納得して犠牲になるわけだし。」
「ああ、まあ、そうだな。」
 話を始めた方の青年―― 二人は兄弟で彼は弟だった――は、深いため息を吐いてから、
「一人が納得して、哀しくも理由のある死を選んだとして。それは『冷たい』式の解答なんだろうかって。」
「どういうこと?」
 と、聞くもう一人の青年は、兄だった。弟は、うん、と頷いて、
「本当に、冷酷な解答は………、答えが出ないことじゃなくて、『0』になることじゃないかって。」
 つまり、と弟は囁くように、弱音を吐いた、
「密航者が、自分が死ななきゃ患者が救えない、と納得して……死んでいったのに、宇宙船が惑星に着いた時には、患者は全員全滅してたとか。ウィルス性の疾病で、そのウィルスの進化が早すぎて、そのワクチンでは遅すぎた、とか。」
 兄は、僅かに言葉に詰まってから、肩を竦めて、
「まあ、前提からオカシイ小説だとは思うけどさ。密航者のチェックぐらいしろよ、とか。」
「きっと、そのパイロット、帰ったら業務上過失致死の罪に問われそうな気もするけど。そういうことじゃなくて、」
「そういうことに、しておこうよ。」
 と、兄は力こそなかったが、笑った。。兄は、弟の前で弱音を吐かない。兄は『兄』だからだ。最後までそのつもりでいるらしい、と弟は感じ、こんな時までそうでなくてもいい、と思いながらも、『兄』でいようとする兄に安心もする。
 兄は静かに、促した。
「答えが『0』である可能性なんて、そんなこと、考えないでおこうよ。」
「…………『0』で済めばいいな、っていうのも、希望的観測?」
「そこは希望を抱いておこうよ。」
 と、兄は溜息を吐いて、壁に背中を預けた。分厚い壁の向こうでは、まさに飢えと疾病と絶望感が渦を巻き、人は生き残る可能性を求めて自分以外の存在を殺した。土壌の汚染が進み、天変地異が起こり、人がシェルターでの生活を余儀なくされ、そこでの生活も破綻した。食い扶持を減らすための虐殺が起こり、最後の賭けで遺伝子を弄る研究も解禁され、汚染を取り除くために大地を作り変える準備さえ始めている。最悪だ。最悪だ。人間は、もう人間でなくなっている。この星はこの星でなくなっていく。それだって、最後の選択だったのに、その選択が上手くいくかという保証はどこにもない。
 海に浮かんだ舟板に助けを求めてしがみつき。同じようにしがみ付いたもう一人を突き飛ばして、生き残れるなら、まだいい。
 人を突き飛ばしてまで手に入れたその舟板が、割れたガラスで出来ていない、などという保証などどこにもない。しがみ付けば己の傷つき、その上に乗っても傷つき、しかも沈んでしまうかもしれない。人を犠牲にしてまで得た命が、無事に生還を果たせる確証など、どこにもない。
 すべてが『0』という答えだって、確かに答えの一つなのだ。
 弟は、頭を抱えて息を吐いた。その隣で、兄は顎を撫でながら、
「――『0』は確かに、希望的かもしれない。」
 と、囁いた。弟は顔を上げ、え?と聞き返す。
「答えが『1』だったとしたら、最後に残った一人は、それまでに消された何人かを背負って生きていくわけだ。それしかなかった、と思いながら、しかし、自分は罪人だと思いながら。それこそ、割れたガラスの上をずっと裸足で歩いていくみたいに。」
 兄は静かな瞳で床を見つめる。瞳の色は静かすぎた。波一つ立っていない。
「でも、答えが『0』なら、誰も罪を背負わない。人が死んでしまえば、それでお終い。皆が犠牲になって、それでお終い。」
 こんなに『冷たくない』答えもないと思うけどね、と兄は床から弟へと視線を向けた。うん、うん、そうかもね、と弟は頷きながら、
「だから、兄さんは…答えを自ら『0』にするつもりなの?」
 と、問いかけた。兄は、溜息を吐き、
「―― 兄ちゃんさ、そんな度胸すらないんだよ。」
 そもそも方程式を解く度胸だってないんだよ、と力なく笑う。責任も取りたくないし決断もしたくない、と、平時ならダメ人間にもほどがあるようなことを言う。―― この期に及んで人間らしいことを言っている、と弟は思った。
「全てを『0』にする度胸はないけど、『100』にする賭けならやってもいい。」
 よっこらせ、と兄は立ち上がった。
「まあ、賭けだから、負けたら『0』なんだけど。賭けだったらさ、方程式の答えを出すより、諦め、つかない?」
 そう言って、悪戯を思いついた子どもの顔で笑うのだ。この期に及んでそんな顔するなよ、と弟は思い、思うのと同時に視界が霞み、鼻の奥がつんっとする。兄が「泣くなよー」とからかってくる前に、弟は、うん、と頷いた。
「うん。どうするの?」
「浮かんだ舟板に縋るんじゃなくて、海を泳いでいくんだよ。」
 と、兄はこともなげに言う。弟は、分が悪すぎるだろう、と呻いたが、
「同じ『0』でも、人が殺し合うよりよっぽどいいよ。夢見て、海に沈んだ方が。」
 と、やっぱり事もなげに答える。
 海に浮かんだ舟板が、割れたガラスで出来ていない、とは証明できない。舟板で浮かんだ先の道が割れたガラスの上にない、とも証明できない。答えが『0』になる可能性も、『0』以外になる可能性も、証明できない。
 だから、
 欲しい答えが出ない方程式は投げ捨てた。



---------------あとがきのようなもの------------------

『冷たい方程式』……
オールドSF好きとしては「やるしかねえだろ…」なお題が来ましたな。


このブログで書いていた『世界樹の迷宮3』話でも、このタイトル使ってますが、
1000年前の話で登場してた人物たちのその後の話として書いてますが、
まあ、そのつもりで書いてるだけです。

なお、「世界樹シリーズ関係なくね?」レベルで好き勝手に書いていた、
『世界樹の迷宮3』話、目次はこちら



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