まよらなブログ

【深夜の真剣文字書き60分一本勝負】に参加してみた・20


Twitterの「深夜の真剣文字書き60分一本勝負」に参加してみました。
(企画についてはこちら )


書いた話は追記に記載します。
推敲してないので、いつにもまして誤字脱字激しいと思いますが大目に見てください。
興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。

使用お題は、
・「最期の○○ (○○内は自由)」 です。  一応、オリジナル話としてお読みください。



【第103回 フリーワンライ企画】
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 ** 『最期』の書き換え**


 かつての少女は40を超え、かつての青年も50の半ばも過ぎていた。
 20年以上経た再会は、かつての少女に羞恥を抱かせる。恋い焦がれ続けて会いたくて仕方がなかった相手と、偶然なのか運命なのか再会して、喜びだけではない感情が心の中に影を落とす。彼に出会ったのは人生で最も美しい時だった。今の自分には、若さも美しさも程遠いもの。こんな姿を見せたくはなかったという羞恥と、こんな姿を見て彼がどう思うだろう、という不安が、のっそりと影を落とす。
 とはいえ、少女はもはや大人だった。もう十分すぎるほど、大人だったのだ。不安を冗談に変えてしまえるぐらいに、彼女は経験を積んでいた。かつてのように、「どうして分かってくれないの!」と言ったりはしないし、しくしくと泣き出したりもしない。(最も、彼女は少女のころから結構な大人だったので、彼女本人が思っているほど、彼を困らせたこともなかったが)
「…嫌だなあ。」
 と、かつての少女は苦笑した。すっかり細く…、もう皮しかないんじゃないか、と思えるほどの首に筋を浮かべて、苦笑した。
「すっかりおばさんになっちゃったとこ、見られるの、恥ずかしい。」
「……お互いさまだろ。」
 と。彼は、静かに言った。テンパると妙に小言が増える彼ではあったが、本当に大切な言葉は静かに伝える男でもあった。だから。これは、本当の本心なのだ、と彼女は理解し、微笑んだ。その微笑を見て、男は、ふん、と鼻を鳴らした。
「すっかりいい女になったなって思うけどな。」
「ありがとう。」
 かつての少女は微笑を濃くする。ああ、その言葉は、あの20年以上前の私が一番愛らしかったときに聞きたかったのに、と思う。
 かつての青年はぎこちなく微笑した。ああ、その言葉をもう少し早く掛けてやれればよかったのに、と思うのだ。

 かつては妹のように思われていた少女と、かつては初恋を奪ってしまった青年は、出会った土地とは全く別の土地で邂逅している。あの地にあった木とよく似た木が窓から見えるが、この土地はあの懐かしい海の匂いがする土地とは違う。匂いは草原の、山の匂い。まるで遠くい土地で、まるで時間も過ぎ去って、でも出会ったときに「彼だ」「彼女だ」と気付ける程度には、二人はそれぞれに違う道を歩みながら、それでもずっと近くまで心を寄せていて、でも、また遠くへ別たれる時間は静かに近づいている。
 コチコチ…と時計の音が異様に耳に付く。時間は……彼女の方に無い。
 彼は、彼女の手を見た。ほっそりとした白い手は、相変わらずほっそりとしているが、骨が浮き上がるほどに痩せこけている。小柄で細身の少女のころも片腕で抱えられるほど軽かったが、きっと今はその時よりも軽いのだろう。…その空想が男の鼻の奥を突く。泣いてしまってもいいような気がしたが、さすがにそれは憚れた。かつての少女の前で、泣くことは憚れた。
 かつての少女はベッドの上。かつての青年はその枕もとの椅子に座る。かつての少女の体は、かつて飲まされた毒に蝕まれている。かつての青年の髪にも白いものは混ざっているが、かつての少女のきれいだった髪に混ざる白い本数の方が多かった。もう、骨と皮だけだ。ゆるると死に向かう小さい体がそこにあり、邂逅を恥じらい、喜び、不安に思っている。
 自分より15も年下の少女だったのに、彼女の方が自分より15年も早く逝くのだろう。
「…………泣かないでね。」
 と、かつての少女が言った。かつての青年は
「泣いてない。」
 と言った。かつての少女は、
「変わらない。」
 と笑った。かつての青年は、
「変わったよ。」
 と、不服そうに言った。そして、少女は
「そうね、」
 と微笑んで、
「私のことを「いい女」って言える程度には、きっと変わったんでしょうね。」
 青年は、一瞬言葉を詰まらせた。ほら、やっぱり変わってない、と少女は思ったが、口にはしなかった。彼の妙な不器用さが、少女のころから大好きだった。声を詰まらせた彼は、ゆっくりと主張した。
「……それは、お前が変わったんだよ。」
「そう?」
 と、かつての少女は手を組んで、
「でも、あの時に言ってほしかったな。」
 と、演技っぽく頬を膨らませて見せた。
 やっぱりお前が変わったんだよ、とかつての青年は思った。そんな風に拗ねる真似なんかできなかったくせに。本気で拗ねていたくせに。
「……いい女になったよ。」
 と、ぽつりと、…というよりも、ぽろりと、かつての青年は漏らした。かつての少女は瞬きをした。かつての青年は口を押えた。少女は、ふふっと笑った。
「出会うのが5年遅かったら、私、あなたと恋人にになれたんじゃないかって思うの。」
「…………、否定はしない。」
「そしたら、私の方からのキスじゃなくて、あなたの方からしてくれた?」
「…………、蒸し返すなよ。あれは…その…何というか、」
「一方的にキスされたんだから被害者は自分の方だって言われた。」
「忘れろよ。」
「少女だった私は傷ついたんだけど。」
「忘れろって。」
「今も、被害者だと思ってる?」
 少しだけ、身を乗り出して少女は聞いた。やっぱり変わったよ、と男は思いながら、視線を逸らし、
「今では、……役得だとは思ってる。」
「じゃあ、今度も、」
 と、彼女はベッドの縁に手をついて、さらに身を乗り出してきた。
「役得だと、思ってね。」
 そう言って、男の唇とも頬ともつかない微妙な位置に、己の唇をそっと押し付けた。男は一瞬目を開き、しかし振り払いもしなければ、体を引くこともせず、その唇を静かに受けた。……そうすべきだと思った。
 女は、困ったように笑いながら身を引いて、けれども彼の袖を掴んで、覚えていて、と囁いた。
「私の、最初と最期のキス、あなたにあげる。」
 覚悟さえ伴って、彼女はそう囁いた。俯いて囁いた。これが最後。最後の自分の我儘で、最後の自由で、最後の恋で、後は、後は。
 ―― 私の幕を引くだけだ。
 あなたで終れることを、これ以上ない幸いだと信じて幕を引くだけだ。
「…………、違う、」
 と、男は呟いた。俯いていた彼女の肩を、男は掴み、女の名前を呼んだ。
「違う……!」
 何が?と問いかけながら顔を上げた女の唇を、男の方が奪ってみせてから、見開いた女の目に言葉をしっかり叩き込むように、はっきりと告げた。
「……今ので、さっきのは、『最期』じゃなくなった…!」
 分かるな?と彼は彼女に言い聞かせた。
「最期なんて、いくらでも何回でも書き変わるんだよ……!!」
 だから、最期だなんて、最期だなんて言わないでくれ。
「諦めるようなことを、言うなよ…!!」
 かつて恋をした少女で今や死に向かうだけの女で、大切に想い続けてきた人に『生きてほしい』と心から願われる幸福な彼女は、かつて少女だったころと同じように、ぽろりぽろりと涙を零しだし、
「……うん…!」
 さっきまで彼の唇があった己の唇を抑えて、頷いた。
「言わない…!言わないよ…!だって…だって……!私、生きるもの…!ギリギリまで生きるって思いながら、生きるもの…!」
 だから、とその細い、細すぎる指で、男の濡れて出した頬に触れ、
「だから、何度だって書き換えて…!」
 泣きじゃくりながら、懇願した。
 


 
---------------あとがきのようなもの------------------

えっと、
昔、恋人未満だった男女が20年後に再開したお話、として読んでいただけたかと思います。
そう読んでいただければ十分です。十分です………



……
…………が、
このブログで書いていたウチの世界樹3話をお読みいただいている方に向けて、
以下の設定を暴露します。
・これは、ウチの世界樹3話から25年後、タルシス(世界樹4)での話です。
・女性はウチのプリ子・カリーナ、男性はウチの赤パイ・マルカブです。
・廊下には、気を利かせて入ってこないアヴィーがいます。
・心に秘めておくつもりでしたが、折角「書ける」お題がきたので書いてしまいます。

この設定を知り、「あの男……グーで殴るッ!!」と思っていただけたら、大成功です。
殴りに行こうかーーー(「YAH YAH YAH」を歌い 釘バットを素振りしながら)




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