まよらなブログ

【深夜の真剣文字書き60分一本勝負】に参加してみた・21


Twitterの「深夜の真剣文字書き60分一本勝負」に参加してみました。
(企画についてはこちら )


書いた話は追記に記載します。
推敲してないので、いつにもまして誤字脱字激しいと思いますが大目に見てください。
興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。

使用お題は、
・「飛べない鳥」   オリジナル話です。





【第105回 フリーワンライ企画】
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** 飛べない鳥と託された子 **


 鶏が、鳴いた。立て続けに、三度。
 のそのそ…と寝台から冬の朝に這い出す。朝を告げる鳥は朝を告げることが仕事なのだから、夜明けに甲高く鳴くことに文句など言えないが、
「もう少し、のんびり鳴いてくれないもんかね…」
 と、ボヤキながら、支度を整えようとし……、鶏たちが妙に騒がしいことに気付く。
 野犬でも来ているのなら大変だ、と、寝間着姿のままで外へ向かう。聖堂の重い扉を開けて、…そしてその前に置かれている籐の籠に気付いた。
 籠の中には赤ん坊。慌てて抱き上げると、赤ん坊らしい高い体温が伝わってくる。すやすやと寝ている。冬の早朝、外に置かれていたというのに、とても温かく、とても穏やかに、何も疑いもせずに、すやすやと寝ている。
 赤ん坊を抱いたまま、十数歩前に駆けだして、周囲を見回す。この子は、今さっき、置かれたばかりなのだ、と確信して周囲を見回す。
 しかし、周囲に人影はなく、一日で最も静かな空気だけがそこには在った。
 それでも、赤ん坊を抱いた中年の男は…、その聖堂の司祭は、確信を抱いて、赤ん坊を抱いたままで頭を下げた。
「……確かに、」
 この子の親か保護者かが、必ず見ていると確信を抱いて、
「お預かりしました。」
 安心していいと、頭を下げた。

 *****

 そんな冬の朝から10年ほど経って、初老になった司祭は裏口が開く音を聞いた。
「……む。『ただいま』を言わないなんて、珍しいね。」
 聖堂の掃除をしていた手を止めて、台所に向かう。台所の勝手口から10歳ほどの少年が、こそこそと入ってきた。
「アレク、おかえり。」
 と、声を掛けると、少年はびくッ!と肩を竦めた。肩を竦めたまま固まって、こちらに顔を向けない。司祭は、ふむ、と唸ってから、
「ケンカしたの?」
「い、いいえ!」
「じゃあ、決闘?」
「…………。」
「お前は正直だなあ。」
 司祭は苦笑して、こっちを向きなさい、と柔らかく言った。おそるおそると少年は、司祭に向き直る。大きな青い目が、困惑した様子で司祭を見上げる。そして、その顔にはひっかき傷と擦り傷と、ぶたれたのか赤くなっている。
 男前度が上がったじゃないか、と司祭は笑い、台所の食器棚の上に置いてある救急箱を取り出した。そして、おいで、と手招きをする。少年は素直に従って、司祭の前までやってきた。司祭は椅子に少年を座らせて、救急箱のふたを開ける。開けながら、聞いた。
「誰と、決闘したんだね?」
「………、ないしょです。」
「じゃあ、これは教えてくれる?なんで、決闘したんだね?」
「…………。」
「秘密かね。」
「秘密です。」
「そうかね。まあ、話したくなったら話してよ。」
 と、司祭は事もなげに言って、脱脂綿に消毒液を含ませた。それを、少年の傷にちょんちょん、とつけていく。
「で、勝ったの?」
「はい。相手が逃げました。」
「そうか、それはよくやった。」
 と、司祭らしからぬことを言う。少年は少し得意げに、背を伸ばす。
「3対1でした。」
「お前が1?」
「はい。ぼくは、一人を大勢でやっつけるようなヒキョウなことはしません。」
「そうだな。それもそうだ。」
 司祭は少年の頭をわしわしと撫でる。少年は、歯を見せて笑ってから、あとは黙って手当てを受ける。
 司祭には、この少年が街の悪ガキとケンカをしてきたのは明白だったので、さて、今度の礼拝のときに何人が顔に傷を作ってくるのやら…と考えだす。一方的にやられたわけでもないのだし、男の子のケンカなどいちいち仲裁もしてられない。
 ささっと手当てを終えて、水に濡らしたタオルを赤くなった箇所に当ててやる。そうしながら司祭も椅子に腰かけた。向き合うような形だが、「痛い?」と聞いただけで、あとは司祭は何も言わなかった。
「…………、あの、」
「うん?」
 沈黙に耐えられなくなったのは、少年の方だった。
「司祭様、きいてもいいですか?」
「うん。」
「……、ぼくは、………『捨て子』なんですか?」
 司祭は「それが決闘の理由?」とは聞かなかった。この少年は、本当に嘘やごまかしが下手なのだ(たまに、「馬鹿なんじゃないか、まあ、そこが可愛いんだけど」と思うぐらいだ。)。それが決闘の理由であることは、どこからどう聞いても明白だった。
「わしは、そう思わないけど。」
 お前はどう思うの?と司祭は聞き返す。傍に誰かいれば、残酷な聞き返しにも聞こえただろう。だが、少年はそうは思わない。司祭はいつもこんな調子だ。「お前はどう思うの?」それは、司祭のいつもの問いかけで、自分の答えもよく聞いてくれることは知っている。誰よりも知っている。10年、この人に育てられた少年が一番よく知っている。
「……ぼくが、赤ちゃんの時に聖堂の前に置かれてたのは、本当…ですよね?」
「うん。まあ、昔から話してるけどね。」
「………じゃあ、やっぱり、『捨て子』なんですか?」
「わし、なんで『やっぱり』なのか分かんないよ?」
「だ、だって、聖堂の前に置いていったってことは…、要らないってことですよね…?」
「わしは、そう思わないけどなあ。」
 と司祭はのんびりと呟いた。どうしてですか、と少年の方が問いかけた。
「捨てることと、置いていくことは違うんじゃない?確かにお前は、聖堂の前に『置かれて』いたけど、『捨てられて』たわけじゃない。」
 置いてあるなら捨てたのと同じなら、外に置きっぱなしにしてるお前の7つ道具(と言う名のガラクタだ)も片づけないとかねえ?と苦笑する。少年はぶんぶんぶん!と首を振った。
 司祭はタオルを少年の頬に当て直し、
「折角の機会だ。お前と初めて会った時の事、もう少し詳しく教えるよ。」
「初めて会った時の事……。」
「この聖堂が、毎朝、鶏の声で起きること、知ってるね?」
「はい。ぼくも起きます。司祭様はたまに寝坊します。」
「うん、まあ、それは置いておこう。昔のわしは、毎日ちゃんと起きてたの。お前と会った朝の前の日も、その前の日も、わし、鶏の声で起きてたの。」
 それはいつも通りのことだったの、と司祭は念を押す。
「お前と会った朝も、鶏の声で起きたんだよ。寒い冬の朝だった。鶏たちが何だか騒がしくてね、外に出てみた。そしたら、そこに赤ちゃんのお前がすやすや寝ててさ。わし、びっくりだよ!で、抱っこしたら暖かいんだよ。おまけに、お乳の匂いもしてさ、さっきまでお母さんのにお乳もらってたんだろうなって思ったわけ。」
 寒い冬だったのにお前は暖かかったんだよ、と司祭はまた念を押した。だからね、と
「お前のお母さんは…お父さんかもしれないが、わしが鶏の声で起きることを知ってたんじゃないかと思う。だから、鶏が鳴いたそのときに、お前を聖堂の前に置いたんだ。その瞬間まで、お前を抱いていたんだよ。お前が寒くないように、抱いていたんだと思うよ。鶏が鳴いたからお前を聖堂の前に置いたのは、鶏の声で起きたわしがすぐにお前を見つけることを知っていたからだ。それは、赤ちゃんのお前が寒い思いをしないようにっていう精一杯の工夫だった。それは親の愛情だ。」
 わしは、そう思ってる!と司祭は自分のことのように胸を張る。
「そんな愛情でもって置かれた子どもが、どうして『捨て子』だなんて言えるんだい?お前は、『託された子』なんだよ。お前のお母さんとお父さんが、わしに『託してくれた子』なんだ。」
 わしはそう思ってるよ、と司祭はもう一度、告げた。少年は、大きな青い目を大きく開いてから、こくこくこく!と頷いた。
「よく覚えておくんだよ、アレク。アレクトール。お前は、確かに愛された子だ。鶏が朝を告げることを、そしてその声を聴いてわしがお前を見つけることを、信じてくれていたご両親に確かに愛されていた子なんだよ。だから、わしは、お前をアレクトールって名付けたんだ。朝を告げる鳥の名前を付けたんだよ。それが、始まりだったから。」
 司祭はアレクトールの頬からタオルを外し、代わりにもう一度少年の頭を撫でた。
「飛べないけれど朝を告げる鳥もいる。親と一緒に暮らしてなくても親に愛されてる子どももいる。空を飛べないことを羨んでも、両親を知らないことを嘆いても、いい。羨望も悲哀も当然だ。けれど、そこに思いと使命があったことは、よく覚えておくんだよ。」
 少し難しい話に思えたが、朝を告げる鳥の名前を持つ託された子どもは、確かに「はい」と頷いた。

 

 
---------------あとがきのようなもの------------------

人物設定だけは作ってある話から、引っ張ってきました。
(聖職者が登場してますが、キリスト教に似た感じの架空の宗教です。)
アレクトールっていうのは古いギリシア語で「鶏」のことらしいですよー。


なお、この司祭様は、先日ツイッターで呟いた
『急な雨が降ってきたので傘を持たずに出掛けたあの人を、傘を二本持って迎えにいこうとしたら
 「ホントに気が利かない!」ってテンション高い爺ちゃんに傘を一本へし折られる』話の
テンション高い爺ちゃんの15年ぐらい前の姿です。テンション……高くない。(笑)

なお、15年後ぐらいに傘を折られるのが、この話のアレクトール少年。
彼の未来の姿はこちらの話等で、すでに書いちゃってます。




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