まよらなブログ

【深夜の真剣文字書き60分一本勝負】に参加してみた・23


Twitterの「深夜の真剣文字書き60分一本勝負」に参加してみました。
(企画についてはこちら )


書いた話は追記に記載します。
推敲してないので、いつにもまして誤字脱字激しいと思いますが大目に見てください。
興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。

使用お題は、
 ・結晶になる
 ・幸せになりますようにと、ただ、それだけを    オリジナル話です。




【第116回 フリーワンライ企画】
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   きみのバラをかけがえのないものにしたのは、
      きみが、バラのために費やした時間だったんだ。
                                   ―― 『星の王子さま』より




 ある日、隣に引っ越してきたのは、父と母と姉と弟の一家だった。再婚同士の夫婦で姉と弟は血の繋がりがなかった家族だったが、それはこの話において、些細なことなので置いておく。その時、姉が小学5年生、弟は小学3年生。その姉弟がまったくまったく子どものときに出会ったのだ。
 天真爛漫すぎて馬鹿なんじゃないか…と心配になるほどの天真爛漫な弟と先に知り合い、その弟が家に遊びに来るようになり(というか、勝手に上がりこんでいた)、迎えに来た姉と知り合い、そのうちその姉も一緒に遊びに来るようになった。年の離れた友達か、年の離れた兄のつもりか。いずれにせよ、仕事の忙しい親を持つ子どもたちが、隣に住む在宅ワークで暇そうな大人を遊び相手に見つけただけだったのだと、思う。そして遊び相手にちょうどいい、と思われた大人の方も始めたばかりの仕事が行き詰まっていた中だったので、いい気晴らしになると思って相手をしてやっていただけなのだ、と。そう思う。
 そうではなくなったのは、何時のころなのか。明白に線を引けるわけでもない。中学に上がり高校に入り授業時間も伸び部活も始まり友達と出かけることも増えれば、その子どもたちと会う時間は減った。減ったのだが無くなったわけでもなく、休日に家に上がり込んきたこともあるし、親とケンカして「家出してきた!」と上がり込んできたこともあるし、「学校に行きたくない」といって上がり込んできたこともある。ここはお前らの爺ちゃんの家じゃないんだぞ、と言ったが、「おじさんの家みたいなもんでしょう」と言って居座った。(親も近隣住民も公認だから始末が悪かった。)ここはお前らの爺ちゃんの家ではないし、勿論、叔父さんでもなかったのだが、だが、ただ寂しさの時間をつぶすための遊び相手ではなかったし、行き詰まりの中の気晴らしの道具でもなかった。もう、そんなものではなかった。
 大事な、大事な。友達…?妹と弟…?子ども……?どの関係でもピンとこないが、大事な大事な何かであった。大事なものになっていた。
 長い時間だった、と思う。長く、かけがえのない時間だったと思う。

 出会ったときから、14年。出会ったときの自分と同じ年になった姉の方は、久々の里帰りなのに隣の家に上がり込み、窓に並んだ多肉植物の小さな鉢植えを指先でつついている。あんまりイジメるなよ、と言って、コーヒーの入ったカップを渡した。インスタントコーヒーの一口すすった姉の方は、苦い、と舌を小さく出して、「だから。粉はスプーンで掬いなって言ってるじゃない」と文句を言う。その文句も織り込み済みなのでコーヒーフレッシュを投げて渡して、自分は机の前の椅子に座る。
「お前、ここに来てていいの?」
「なんで?邪魔?」
「そうじゃないけど。お父さんが泣くだろ。もうじき嫁に行く娘が久々に家に帰ってきたのに、家にいないなんて。」
「うちの親は放任だから平気だよ。それに、お父さん、出かけてるし。」
「お前の家が放任主義なのは、俺が一番よく分かってんだけど。顔と口に出さないだけで、心配はしてんだよ。」
「それは私たちがよく分かってるよ。」
「それもそうか。」
 ほったらかしで全員が我が道を行くようで、実はお互い同士を思い合ってる家族だということは、自分が一番よく知っている。10年以上、隣の家で見てきたし、子どもの反抗期には子どもだけでなく親も家に上がり込んで愚痴を吐いていったからだ。(本当に空気とか人の事情とかお構いなしな家族だった。特に弟の方。)本人がそれでいいなら、口を出すことでもない。姉の方は、多肉植物の鉢に置かれた茶色くひだのついた小石を小突いて、
「これ、砂漠のバラってやつ?」
 と、聞いてきた。
「ん。そう。」
「化石みたい。」
「結晶だけとな。」
「知ってる。」
 と、言いながら指先で小石を転がそうとする。指、薬指には石のついた指輪がはめられている。それを見ながら、背もたれに寄り掛かり、聞いた。
「お前さ、」
「うん?」
「マリッジブルーってやつじゃないだろうな?」
「違うよ。まあ、今度、相手の家に行くんだけど。それはちょっと緊張してる。」
「そうか。エプロン持って行けよ。相手のお母さんを手伝う…ふりだけはしろ。」
「たまにものすごく所帯じみたことを言うよね。」
「心配なんだよ、一応。」
 兄的なものとして、と言うと、姉の方は首を傾げてから
「子どものころは、私がみんなのお姉ちゃんだと思ってた。」
 弟の方には「僕の弟みたいなもんだからね!」と胸を張られて言われたことがあるが、この流れでは割とどうでもいい話なので黙っておく。姉の方は首を傾げ続けたままで、
「最初は、変な大人に出来たばかりの弟が取られちゃう、と思ってた。」
 と、まったく隠す気もない調子で告げてくる。まあ、初めて会ったときのことを思い起こせば「知らない人の家に入ったらダメでしょう!」と弟を叱っていたので意外にも思わないが。
「でも、悪い人じゃなかったから良かったけど。」
「それはどうも。」
「今は、家族だもんねえ。」
 と、姉の方は砂漠のバラをつまみあげて掌に載せた。「家族みたいなもの」ではなく、「家族だもんね」ときたもんだ。
「いつから、そうなったのか分かんないんだけど。」
「俺も分かんないな。」
「でも、今は特別なんだよ。私の家族や彼と同じように。」
 ―― ああ。この子は。俺に、嫁に行く挨拶をしにきたのだ。ただの隣人に過ぎないが、ただの隣人と呼ぶには親しく付き合ってきた自分に、律義にも、父親よりも先に、「今までお世話になりました」的なものを言いに来たのだ。
 そう確信をするのと一緒に、「そんなことを言わせてたまるか」という思いも湧いた。だって、これからもお世話したいし、夫婦喧嘩をして「家出してきた!」と上がりこんできてもいいし、子どもが生まれたら見せに来てほしいし、その子にお年玉だってあげるつもりだし。…とにかく。ここで終わらないのだ。この子に費やす時間は、終わらないのだ。
 だから、言わせなかった。
「それ、やるよ。」
「え?なに?」
「砂漠のバラ。お前にやる。結婚祝いだ、持って行け。」
「…………、しょぼくない?」
「式ではお祝儀も持って行くから。」
「式、来てくれる?」
「お父さんと一緒に泣いてるのを見てウザいって言わないなら。」
「だって、ウザいよ。」
「お前な、俺には言いけど、お父さんには言うなよ。10のころまで男手一人で育ててくれて、気のいい義理の母と弟を見つけてくれてんだから。」
「まあ、お母さんと弟はね、うちのお父さんにしては良い仕事をしたと思ってるけど。」
 父親本人が聞いたら喜ぶだろう一言だと思う。愛娘が今の家族の中で育って、良かった、と言ってくれているのだから。そう言ってやれよ、と言うよりも先に、車の音がした。隣の家のガレージに入る、車の音。
「あ、お父さん、帰ってきた。」
 何年か家を離れていても、父の車の音は忘れてないらしい。帰ってやれよ、と言うと、うん、と頷いて姉の方は立ち上がった。
「招待状、出すから、式に来てね。」
「ああ。楽しみにしてる。」
「あと、これ、貰っていくね。お守りにする。」
 砂漠のバラを握りしめた手を振って、姉の方は「ありがと」と言って、出ていった。
 何とは無しに、勢いであげてしまったが、あげたものが結晶であることは、何か意味がある様に思えてきた。
 長い年月をかけて出来上がる結晶は、まるで自分たちのようだ。土が費やしてきた時間が結晶を作る様に、その人のために費やしてきた時間が、その人をかけがえのないものにしているのなら。その人を特別にしているのなら。
 これからも、幸せになりますようにと、ただ、それだけを祈ろうと思う。
 


---------------あとがきのようなもの------------------

お隣に住むお兄さん(おじさん)と女の子の友愛のような兄妹愛のようなもの。


うちの世界樹3話のプリ子と赤パイがもうちょっと一緒に居られたらこうなっていた…
というイメージで書いてます。(なので、弟はアヴィーのイメージです。)
あの二人、半年(のつもりで書いてた)で別れるから、25年後まで未練引きずっとんねん。





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