まよらなブログ

【深夜の真剣文字書き60分一本勝負】に参加してみた・25


【深夜の真剣文字書き60分一本勝負】に参加してみた・25



Twitterの「深夜の真剣文字書き60分一本勝負」に参加してみました。
(企画についてはこちら )


書いた話は追記に記載します。
推敲してないので、いつにもまして誤字脱字激しいと思いますが大目に見てください。
興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。

使用お題は、
・「分かり会えると私は信じよう」

   ……ゆるーいSFなオリジナル話です。




【第134回 フリーワンライ企画】
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 この美しい『存在』の考えを、その想いを、その在り方を、真の意味で理解することはないのだろうな、と女性は思う。
 ―― だが。
だが、それがなんだと言うのだ。人間同士だって本当の意味で「分かり合う」ことは絶対にない。もし、完全に分かり合えたのだとしたら、それは「自分」と「他者」の境が曖昧で、混ざり合った状態で、もはや同一で、それは「分かり合う」こととは大きくかけ離れている。
 それでも、近寄っていくことは出来る、と女性は考えている。だから、彼女は、
「―― どうせ、分かってもらえないでしょうけど。」
 の枕詞にも、「だから、それがなんだと言うのだ。」と向き合っている。


 さて、女性の隣に座っている存在はもはや滅んだ前時代の文明が作り出した人工物だ。綺麗な顔立ちの、中性的な男性のカタチをした、人工物だ。鮮やかなブロンドを垂らした人工物の横顔は、憂いを帯びていて、どうしようもなく絵になった。しかし、この人工物に「憂い」を帯びさせているのは自分の問答だ、と女性は理解はしていた。でも、止めはしないので、なおさらこの人工物は……、――「彼」が言うには「昔の人間は、『ロボット』とか『アンドロイド』とか呼んでいました」とのことだが――、ますます沈鬱そうに息を吐く。
「どうして、嬉しそうにするんですか。」
 と、「彼」は尋ねた。女性は「彼」を見た後に、えへへ、と笑い、
「私が、嬉しそうってのは分かるんだ。」
「感情の読み取りはプログラムされています。僕は、対人サービスに従事するロボットでしたので。」
「……ウェイターとか?」
「発想が貧困。」
 ざっくりと「彼」は断じた。人(と言っても、もはや滅んだ前時代の人間たちにだが)に作り出された割に、なかなか人に対して手厳しい。そこが愉しくて、女性はふふふ、と笑い、
「君は毒舌。」
「なんで嬉しそうなんですか。」
「反抗期の弟…?息子?ま、そんな感じで。」
「息子って。あなたは35歳でしたよね。僕は一応、25歳前後の設定らしいので、弟程度にしておくべきです。」
「君は毒舌だけど、いい子。」
「なんでそうなるんでしょうか。」
 と、「彼」は眉を寄せ、溜息を吐いた。
「……本来、こんな『毒舌』は、許されないはずなんです。冗談や諧謔を言うことはプログラムされています。必要であれば、相手にとって耳が痛い言葉を発することもプログラムされています。しかし、僕たちは「人間」を傷つけることはできない。」
「肉体的にも、心理的にも?」
「そうですよ。」
「じゃあ、君、『ぷろぐらむ』のままだよ。だって、私、愉しいもの。」
「……そうだとしても、あなたを貶める発言は出来ないはずなのですが。」
「はあ。貶めてるんだ。」
「あなた、鈍すぎませんか?」
 この呆れた一言も彼にとっては私を「貶める」発言なのだろうな、と女性は思いながら、ふむ、と腕を組み、
「私、君のこと、好きよ。」
 突然、そう言った。「彼」は、長いまつげの生えた(付いた、というべきなのか)瞼を数回瞬かせた。
「僕は、」
「うん。」
「あなたのことは嫌いではないですが、正直、煩わしいと。」
「ふむ。正直ね。」
 女性は、ただ頷くだけで、「彼」は頭を抱えた。
「ですから、こういうことも本来言えないはずなんです。僕は、『僕たち』の規格から外れている。おかしくなっている。」
「まあ、規格外ってあるんじゃない?私も昔は『変わった子』って、よく言われていた。」
 という女性に対して、「彼」はコメントをすることもなく、
「おかしいんですよ。あなたが喜んでいる『僕』の言動は、本来、『僕たち』の規格からはおかしいんです。…今の文明・文化にいるあなたに分かってもらうことはできないかもしれない。でも、おかしいんです。」
「私に、毒舌を放つことが?」
「そうですよ。」
「兄弟機の行方を気にすることが?」
「……そうですよ。」
「そうなのかな。兄弟機を気にすること自体、別におかしくなくない?だって、「君たち」は、人間を傷つけず従うこととともに「自分たち」を守ることも大原則として「ぷろぐらむ」されてるんでしょ?そう、君が言ってたじゃない。だったら、兄弟機を心配することの何が…、」
「おかしいんですよ!」
 と、「彼」は女性に向き直った。ああ、泣かせてしまっている、と女性は「彼」の乾いた目を見ながら反省した。反省はしたが、…それだけだった。
「「僕たち」を守ること、は、大原則の一つです。でも、それは「僕たち」であって、僕たちの中の特定の機体ではない。目の前に二体、危機に瀕したロボットがいたら、確実に助けられる方に手を差し出す。同じ製作者によってつくられた兄弟機であっても、共に同じマスターの下で働いていた「同僚」であっても、確実に助けられるのであれば全く無関係のロボットへ手を差し出す。そういう大原則です。」
「……人間は、そうであっても家族や友人や恋人を選ぶことが多いだろうね。」
「それをあなたたちは当然と考える。尊いとも考えている。…確実に助けられる方を選び、特別な個人を見捨てたときには、あなたたちは後悔する。後悔をするからこそ、その理論的な正しさを『正義の行為』と正当化する。」
「うん。よく分かっているじゃない。私たちのことを。」
「しかし、『僕ら』は、そうではない。そうではない。そうであってはならないんです。それなのに、僕は同じ製作者に作られ、同じマスターに従事した兄弟機を気にかけている。「発掘」される機体は、すべて等しいはずなのに。……この、居心地の悪さ。あなた方なら、胸がざわつくというのでしょうね。」
「君たちは何て表現するの?」
「どうせ、分かってもらえないでしょうけど。思考回路の出力が6割までしか出せない、と表現した方が正確です。」
「そう。さっぱり分かんないな。」
「でしょうね。僕が大原則から外れだしていることの恐怖も、あなたには分からない。」
「そうね。君が大原則とやらから外れだしていることを喜んでいる私のことも、君はきっと分からないんでしょう。」
 おあいこじゃない?と女性は言い、「彼」はぎゅっと唇を噛んだ。人間的だな、と女性は思う。
「では、あなたは僕に苛立っているのでしょうか?」
「それって、君は私に苛立っているってことかな?」
 女性の質問返しに、「彼」はまた唇を噛んだ。そして、
「……僕とあなたは違う存在なのだな、と何度も何度も思わされることに、僕は苛立ちを感じています。」
「それって、哀しいってこと?」
 女性が再度質問を返し、「彼」は少し考えてから、「そうかもしれない」と…同意をした。初めてだった。
「君は、優しいな。」
 と、女性は微笑んだ。どうしてそうなるんですか、と「彼」は苛立ちも隠さずに問い返す。
「分かり合いたいと思ってくれてるんだな、と思って。」
 女性は微笑を濃くして、そう言った。
「でも、分かり合えないようです。」
「そうね。私と君は別の生き物だし。」
「僕は生き物ではありませんが。」
「ああ、そうね。別の『存在』だし。君が思っているように、私は思うことはないし、私が思うように、君が思うこともない。そもそも、そんなことは不可能だし、そんな必要もない。」
 と、言いながら女性は立ち上がった。
「でも、いいじゃないの。君は、私を『君が大原則から離れていくことを愉しんで、嬉しそうにする』存在だって、分かっている。私は、君を『大原則から離れていく自分を不安に感じ、それを私が分かってくれないので哀しんでいる』存在だって、分かっている。分かり合えてはいないけど、分かっている。それって、」
 と、女性は「彼」に手を差し出した。
「『分かる』ことには近づいているじゃないの。」
「……近づいても、同一にはなれないですよ。」
「私は、同一になる必要はない、と考えているんだけど、ま、私がそう考えているからといって君もそう考える必要もないしね。分かり合うことはなくても、近づいていって、『ああ、あなたの考えはこれなのね。』って、君の考えや君の想いや君自身に『出会う』ことは出来るからさ。」
 だから、と女性は微笑んだ。それは、哀しそうな微笑みで、「彼」は、もしかしたら泣かせてしまっていたのかもしれない、と急に反省した。
「だからさ、ホントに私のこと嫌いになるまで、側にいてよ。自分が『ろぼっと』としておかしくなってるって言って、壊されようとしないでよ。私のことを傷つけたくなったら、そのときはちゃんと壊してあげるから。それまで、私と『分かり合えない』話をしながら、私に君のことを教えてよ。」
 「彼」は、一つだけ安心した。彼女は、分かってくれている。自分が最も恐れているのは、このまま自分がおかしくなって「人を傷つけてしまう」ことだということを。だから、その時は「壊してあげる」と言ってくれているのだ。それは彼女にとって、もっとも理解できない「ロボットの矜持」だろうに。
「……分かりました。」
 しかし「彼」は「毒舌」だったので、素直に感謝などしない。それでも素直に、差し出された手を取って、
「これからも、あなたと『分かり合えない』話をしましょう。そして、私にもあなたのことを教えてください。…僕のことをあなたが知るだけなんて、それはズルいですよ。」 
 と言うと、女性はふふふ!と楽しそうに笑ってから、
「君は、いい子!よろしくね!」
 と、その手を引っ張り、「彼」を立たせた。
 

 
---------------あとがきのようなもの------------------

「分かり合う」が正しい表記だと思うんですが
「分かり会う」になっていることに、なんらかの意味を生じさせたい、と思って、書きました。



ちなみに、今、せこせこと書きはじめているお話(目次はこちら)の
100年~200年先の未来…という設定でネタだけは存在している構想をベースに書いてます。


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