まよらなブログ

【深夜の真剣文字書き60分一本勝負】に参加してみた・27


Twitterの「深夜の真剣文字書き60分一本勝負」に参加してみました。
(企画についてはこちら )


書いた話は追記に記載します。
推敲してないので、いつにもまして誤字脱字激しいと思いますが大目に見てください。
興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。

使用お題は、
・「唇と頬」
    「キスの格言」に基づくオリジナル話です。恥ずかしいです。




【第139回 フリーワンライ企画】
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  手の上なら尊敬のキス。
  額の上なら友情のキス。
  頬の上なら満足感のキス。
  唇の上なら愛情のキス。
  閉じた目の上なら憧憬のキス。
  掌の上なら懇願のキス。
  腕と首なら欲望のキス。
  さてそのほかは、みな狂気の沙汰。
            ―― グリルパルツァー 「接吻」――




 ―― どこであっても狂気の沙汰よ。

 
「……キスの格言って知っている?」
「……、今、その話をするタイミングではないってことは分かっている。」
 ……と、彼はより本質的な返しをしたつもりなのだが、彼女は聞かなかったことにしたらしい。彼女はぐいっと顔を逸らしながら、
「22か所もキスの場所の意味を述べる方がなんか有名になってるけど、私はオリジナルの詩の方が好きなんだよね。」
「オリジナルも何も、今、その話をするタイミングなのかな?」
「オリジナルは8か所ね。手の上なら尊敬、額の上なら友情、頬の上なら満足、唇は愛情、瞼の上は憧憬、掌のうえなら懇願、腕と首なら欲望。―― さてそのほかは、みな狂気の沙汰。…そういう詩なんだけど、」
「…………、!あ、分かった!腕と首にして欲しいってこ」
「違うっての。」
 彼女の掌が、ぐいっと彼の顎を押し上げた。彼は上を向かされて、彼女は横に顔を逸らしている。顔同士は向き合わず、唇は程遠い。
「8か所…というか、7つの意味で、最も幸せだって思えるのはどこなのかって考えない?」
「……キスの格言よりも、『考えるな感じろ』って言葉を知っててほしいんだけど?」
「満足感って、一番幸せだと思わない?」
「……。」
 顎をぐぐい、と押し上げられたままの彼は、しばし沈黙してから、
「…あの、」
「うん。」
「僕ら、付き合ってるんだよね?」
「……まあ、そうなるんだけど。」
「これでデートは何回目?」
「10を超えた後から、いちいち数えてはいないよね。」
「うん、10は超えているよね。」
「まあ、そうなるけど。」
「…僕、結構待ったと思うんだよね?」
「………、まあ、それは認めるんだけど。」
「そろそろ、いいんじゃないかなって思うんだよ。」
「…………。」
「……沈黙したってことは、どこかで認めてるってことだよね?」
「ま、待っててくれてることは、その、感謝してるの。」
「それは良かった。じゃあ、そろそろ態度で示してほしいんだ。」
「それとこれとは別なんです。」
「君は、都合が悪くなると敬語になる。」
「今、その話をするタイミング?」
「僕は、最初からそう言ってる。」
 と、彼が彼女の肩を両手でわしっと掴むと、彼女は顎を押し上げる手に反射的に力を込めた、ごきゃ!という音が、彼の顎というか顎と首の付け根から、した。
「もう少し、キスの格言の話をしよう!?」
「あ、首、首が、」
「満足感って一番幸せだと思うの!」
「首、首が…!?」
「だって、満足してるんだよ!?尊敬されてても友情を感じてても愛情を抱いて抱かれていても、満足し合えるかって、そんなことないじゃない!?そう思われていたり、そう思っているからこそ、欲求不満なこともあるじゃない!」
「い、今の僕、みたいにね…!あと、あの、手を顎から離し…」
「ごめん!訂正する!尊敬し合っても、友情を抱きあっても、愛情を抱いて抱かれても、そうであることで哀しいことや満たされないことってあるじゃない!」
「まさに、今の僕みたいにね!」
 と、彼は彼女の腕を掴んで、自分の顎をその腕から外した。ごきごき、と音を鳴らしながら首を捻り、彼女を見る。
「愛情をもって唇にキスをしようとして避けられるばかりか、顎まで押し上げられて、僕は欲求不満を通り越しているね!?首が痛い!僕の骨が曲がったらどうするのかな!?」
「わ、分かった。整形外科で見てもらおう?早い方がいいよね、受診しに行こう?」
「そういう話じゃないってこと、分かってるよね!?」
 きゅっと、彼に手首を掴まれて、彼女は「はう」だか「ひゃう」だか、とにかく短く小さい悲鳴を上げてから、
「く、唇にするのはもうちょっと待ってほしいなあ、なんて…」
「いつまで待てばいいのかな!?」
「そ、それは、私も分かんないんだけど、」
「何というか、思い切って飛びこんじゃったほうが早いと思うんだけど!?」
「そ、そんなことない……、と思う。」
「そんなことある!絶叫マシーンに、そう言って乗せられた僕の気持ちも考えてほしい!」
「そ、それは、その、……あの時はごめんなさい。」
「うん、許すから唇にキスさせてください。」
「だから、ちょっと待ってほしい!」
「普段は思い切りがいいのに、こういうことになるとなんで奥手になるのかな!?」
「恋人的に、その方がいいんじゃないかな!?ほら、浮気とかしなそうだし!?」
「大丈夫!させないよ!」
「その自信はどこから…」
「……え…、する気なの?しそうな感じがあるの?」
「……ないけど。」
「よし、じゃあ、いいよね。」
「だから、良くないっていうの!」
 と、彼女は手首をつかむ手を振り払い、今度は彼の唇を両手で塞いだ。彼は、きょとんと眼を丸くしてから、……おかしそうに眼を細めて、…細めただけで何もしない。彼女は逃げだすことも出来るはずな彼女は、彼女はこの後どうすればいいのか、きょときょとと瞳を宙に浮かせてから、
「……ほ、頬ならいいんだけどね?」
 彼は何も言わなかった。口を押えられながら、面白そうに彼女を見る。楽しみつつ待っている…という様相に、彼女は再び口を開いた。
「だって、満足感だよ?」
 僕は満足はしてないからね、と彼は口にはしなかったが、まあ、そういうことを言いたい様子で彼女を見る。彼女は話題を逸らすことにした。
「ええっと……、さっきも言ったけど、私は、オリジナルの方が好きなのよ。最近のは、22か所も意味をあげているけど、そうじゃなくて、8か所のオリジナルの方が好きなんだよね。だって、その、この8か所以外って、狂気の沙汰じゃない?違う?だって、その8か所以外の場所って、その、…慕情か劣情しかないと思わない?べ、別にそれが悪いっていう気はないけどさ、そのときの精神状態って普通じゃないと思うんだよね。それって、狂気の沙汰じゃない?そうしたらさ、オリジナルの方がよっぽど、その、正しく言い得てると思うんだよね。意味なんかもう、ないよ。だって、そんな余裕もないし。意味なんか飛んでいくよ。」
 だって、そんな余裕もないし。と彼女はもう一回繰り返した、余裕がないのは誰なんだ、と彼は思う。
「わ、私はその。そういうの苦手で、あの、分かってると思うけど。い、嫌ではないんだけど、その、やっぱり苦手で。恥ずかしい?っていうか、その、変だな自分って、変に冷静になっちゃって。あの、めんどくさいって思われても仕方ないと思うんだけど、その、でも、あの、……できれば嫌わないでほしいなって、我儘だよね、分かってる、分かってるんだけど。」
 話を逸らすつもりだったのに一人で勝手にドツボにハマっていく彼女の言い分に、彼は掌の下で「ぶふう」と吹き出した。ひゃ、と彼女は声を上げて思わず彼の口から手を離す。
「ちょ、ちょ、ちょっと!へ、変な感じ……、えっと、くすぐったい!」
「だって、あんまりおかしくて。」
 彼女の普段の冷静っぷりを知っている彼は、唇の端を震わせた。余裕など、どっかに飛んでいる。彼女も自分も、余裕などどこかに飛んでいる。
 まったく、どこに口づけようと狂気の沙汰。どこに口づけなくとも、狂気の沙汰。意味など、野暮にも程がある。
「そうだね。お互い余裕なんかない。意味なんか要らない。格言なんか、必要ない。唇と頬。僕らにとっては、きっと、どっちだって同じだな。」
そして、彼女の頬に手を添えて、
「―― どこであっても狂気の沙汰。オリジナルより、シンプルに行こう。」
 どこならいい、と言わせる隙も与えずに、彼は顔を近づけた。



--------------あとがきのようなもの------------------

…………は っ ず か し い わ ! 
ビール2缶飲んだ後に書くもんじゃねえわ!

私は、「キスの格言」よりフランツ・グリルパルツァーのオリジナル版の方が好きなんです。
『さてそのほかは、みな狂気の沙汰』…ってオチが、効いている感じが好きなんです。
そういう主張を込めてみました。

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