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まよらなブログ

【深夜の真剣文字書き60分一本勝負】に参加してみた・29


Twitterの「深夜の真剣文字書き60分一本勝負」に参加してみました。
(企画についてはこちら )


書いた話は追記に記載します。
推敲してないので、いつにもまして誤字脱字激しいと思いますが大目に見てください。
興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。


使用お題は、
  ・ホルマリン漬け
  ・滅んだはずだったのに
  
     ファンタジー世界観なオリジナル話です。





【第147回 フリーワンライ企画】
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 結局、共存などは出来なかったので、どちらかが、あるいは、どちらともが、滅ぶしかないのだった。

 炎、というものは便利だなあ、と燃える都の上を飛びながら、『竜』はぼんやりと思うのだ。ふうっと溜息のように吐いた息は、空中で一瞬の炎となった。そして、一瞬で消える。しかし、一度、火が付けば。その火種が、物に結び付けば。炎は簡単に消えたりはしない。
 可燃物があり、風次第で広がり、消すことも間に合わない。地表を舐めとるように這っていき、『鬼』たちも、『鬼』が作り出した街も道具も家畜も全て消してしまう。それが、炎だ。逃げ道さえ塞いでしまえば、「可燃物」はそこに大量に存在する。季節は風を絶やさない。火種は自分たちが持っている。炎が全てを呑み込むのも、もう時間の問題だ。

 結局、竜と鬼は共存などできなかったので、どちらかが滅ぶしかないのだ。
 竜は鬼の、鬼は竜の、それぞれが致命傷になる病原菌の保菌者だった。星の上では、出会わずに生きてはきた。とはいえ、それぞれが知能を持っていたがため、その文化文明を発展させ、生活圏を広げていった。結果、生活圏がぶつかり合い、それぞれに疫病が発生する。そのまま種が減れば、生活圏も狭まるのだろうが、それを良しとはできないのがある程度の文明を築いた知的生命体だ。自分たちの生活圏の確保と、そして、自分たちの命を脅かすものへの恐怖から、彼らは相手を滅ぼすことに決めたのだ。

 長い年月をかけて、双方は戦って、結果、どちらも数を減らしながら、今や竜の勝利は目前だ。この都を燃やし尽くし、都の周囲の森も燃やせば、万が一逃げている鬼も燃え尽きるだろう。鬼の文明は、竜にとっても魅力的ではあったので、その文明が生み出した道具や工芸品も燃やしてしまうのは惜しい。鬼が、空飛ぶ自分たちに向かって発射してきた砲弾など、燃やしてしまうのは非常に惜しい。その砲弾を遠くまで吹き出す砲台の設計も詳しく知りたい。当たったとたんに氷漬けになるそれで、食料の保存もできるだろうに。高く砲弾を吹き出せる砲台を改良すれば、地上から空を飛ぶ仲間に向けての合図も可能になる。…だが、仕方がない。道具にも病原菌が付いている。上空から燃やしてしまうしかない。
 竜は、ただただ道具のことだけを惜しんで、空を飛ぶ。竜たちは確実に勝利する。一先ずは、種も安寧だ。だが、最盛期の五分の一に減った人口(竜口というべきか)や荒廃した土地のこと、何よりも失われた秩序を思えば、安堵などできはしない。これから、長い年月をかけて復興する必要があるのだが……、そのための力が自分たちに残っているのか。
 竜は勝利には酔いしれず、陰鬱な気分で空を飛び、時々、地上に向かって火種を吐き出す。そのたびに起こる呪詛の言葉は、聞こえない。竜にとって鬼は「病原菌」だ。その言葉が竜の耳に届くことなどありえない。
 未来を思って飛ぶ竜の、遥か下で最後の抵抗として、砲台から砲弾が打ち出された。実際、最後の抵抗でしかなかっただろう。その一撃では一人の竜しか倒せない。他にも竜は飛んでおり、彼らの炎が街を焼く。
 だが、陰鬱に溜息を吐いた竜に砲弾は当たり、竜は一瞬で氷漬けにされて、地表に落ちた。竜たちが吐いた炎では溶けない氷に閉じ込められながらも、竜は自分たちの勝利を確信していた。鬼は必ず滅ぼされる。
 竜は、その確信を最後に、意識を失った。



 ……一体、どれだけ気を失っていたのか。
 目を覚ました竜は、目の前にいる小さな生き物を見つける。かつて、自分たちが滅ぼした鬼のように二本の脚で立ちながら、あの鬼たちよりも貧弱で角もない生き物たちは、自分を見て何やら話している。
 竜は動けない。動けないが、周囲のものに意識を向けることは可能だった。竜は、目で物を見る生き物ではないからだ。
 竜は、自分の前に飾ってある札のようなものに文字らしきものが書かれていることに気が付いた。そこで、小さな生き物たちが話す言葉を覚え、自分の周りに同じように「固められて」飾られているものたち(竜とは異なり、それらは死体だったが)の前に飾られた札を読み比べ、たまに小さな生き物たちのより小さな者たちに向けて年長者らしい生き物が話すことをよく聞き、何年もかけてその「言葉」と「文字」を解読した。
 それによって分かったことは、ここは「博物館」と言われるところで、自分は何万年と前の地中から掘り起こされ、「ホルマリン」というものに漬けられて、超古代の生物として展示されているらしい、ということだった。鬼の最後の抵抗で、氷漬けにされたまま、何万という年月を越えてしまったらしい。あのまま死ぬと思っていたのだが、なんの偶然が重なったのか、眠るだけで済んだらしい。
 代わりに、今は「ホルマリン」というもので体の変性が止められ、とじこめられている。これは死後変化を起こさせずに保存するものらしいが、竜は他の生き物と異なり過ぎていて、「死」の概念が違うため、「閉じ込める」という結果になっているのだった。
 長い年月を生きる竜は、その閉じ込めらている生活に耐えられる程度には、変化のない生活への耐性があった。ただ。ただ哀しいのは、自分たち一族はとっくの昔に滅んだということだ。そうでなくては、超古代の生物としてこのように展示もされまい。永久凍土の下から発掘された死骸として、展示はされまい。結局、あの後、すぐに一族は滅んだのか。それとも、再度の繁栄を起こして、時の流れの中で滅んだのか。その答えも分からない。答えをいつかこの小さな生き物たちが掘り起こしてくれることに期待するしかなかった。

 そうして、竜はぼんやりと「博物館」での生活を送った。時折、他の博物館や研究所に貸し出されることもあった。
 その貸し出された先で。
 竜は、一つの道具が展示されているのを見た。
 『超古代の謎』とかいうタイトルで、未だ謎の生き物や道具を一堂に展示するという企画展だった。自分の前に、同じだけ前の地表から見つけ出されたという道具が飾られている。それは、かつて、惜しい、と思った道具で。自分たちが燃やしたはずの道具で、自分を氷漬けにした道具だった。当たったとたんに氷漬けにされる砲弾を吹き出した、あの砲台。
 確かに滅ぼしたはずなのに。総てを燃やし尽くしたはずなのに。鬼はもういないのに。砲台は、掘り起こされていた。そして、今は。用途不明の謎の道具として展示されている。

 竜は、笑った。声など出なかったし、表情も動かせないが、笑った。
 自分たちも、お前たちも、生き残るために相手を滅ぼそうとして、結局どちらも滅んで。
 けれども、こうして残っている。
 滅ぼしたはずだったのに。滅んだはずだったのに。結局、残っている。

 「お互いに、しぶとすぎるだろう。」
 と、ホルマリン漬けの竜は、軽快に笑った。





---------------あとがきのようなもの------------------


博物館で「何に使われてたか不明」という展示に出会うと、そこにお話を作りたくなる。


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