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ヘヴンズフォール : 第2話-①


長編オリジナル話の更新を再開します。

書き直したり設定考えなおしたり大逆裁2をやったりドラクエ11をやったりしてて
時間がかかってしまいましたが、またぼちぼち続けていきます。



タイトルは『ヘヴンズフォール』。
本日は、第2話‐①の更新です。

まあ、読んでやってもいい、という方は「つづきを表示」からどうぞ。





『ヘブンズフォール』:
 第2話「私の務めは果たします」- ①
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 30年と少し前の、あの日。自分がどこにいたのか、フィアルカは知らない。18歳のときに階段から落ちた侍女の落下を『止め』たことで『時間操作』の【妖精返り】の力が発現したことが分かってから、ずっと軟禁されていた。公式には死んだものとされ(当時、王孫の姫だったので空の棺が国葬されたらしい)、軟禁状態で幾つかの場所を転々と回っていた。30年と少し前のあの日もそんな生活の中にあったので、あのとき自分がどこにいたのか知らないままだ。
 『時間操作』の【妖精返り】が見つかることは、本当に珍しい。その力自体が珍しいのだ。だから、だったのだろう。フィアルカの体は徹底的に調べ上げられた。妙齢の…しかもつい先日までは姫君であった娘には酷すぎる体験もあったが、彼女は全てを受け入れた。歯を食いしばってでも、受け入れた。己の力について調べられることで、『時間操作』の力を打ち消す力や技術が見つかるかもしれない。そうすれば、『時間操作』の妖精返りが禁忌の存在とはならず、今後見つかった『時間操作』の妖精返りは自分のように存在を消され、軟禁生活を送らずに済む。いずれ見つかるかもしれない・見つからなかもしれない【妖精返り】のために、フィアルカは自分の体を調べ尽くされることを受け入れた。それは、「王族とは国民の安寧のために尽力するものである」と祖父に言い聞かせられてきた姫君の、もはや姫君ではなくなったからこその、矜持だった。
 30年と少し前。……正確には32・3年前で、フィアルカが27か28になったころ。実験動物のように扱われることに、残念ながら慣れてしまったころに。ある騎士と騎士見習いが彼女の護衛(という名の監視)役として彼女の前に現れた。明るく気のいい二人だったが、特に騎士見習いの少年はフィアルカを喜ばせようと必死だった。花を摘んできてくれたり、街で買った菓子を持ってきたり、祭りで見つけたというトンボ玉を贈ってくれたり、少年はできる限りでできるだけのことをしてくれた。姫さん姫さん、と彼女を呼んで慕ってくる少年は愛らしかった。だから、フィアルカは少年のためにも日々を愛することにした。
 相変わらずに辛い実験と調査の日々ではあったが、フィアルカは確かに楽しかったのだ。騎士たちは数年ごとに任地替えがあるから、いずれ彼等は自分の護衛ではなくなるが。…だからこそ。この日々を手放したくないと思うほどに愛していた。
 ―― だからこそ。当時、居た場所に『龍』と呼ばれる脅威が出現し、その『龍』によって少年の胸が貫かれたとき。彼女は、使うまい、と決めていた己の力を使ったのだ。
 愛しい日々をくれた少年を、生かすために。

 愛しい日々をくれた少年を、生かすために……
 ……と、いうのは名目にすぎなかったのではないか、とフィアルカは今でも考えている。32年ぶりに出会った当の少年は14歳当時の姿のままだ。彼は何も言わないが、『時間操作』の【妖精返り】として自分がされた数々の実験や調査を考えると、『時間停止』の術がかかっている人間として彼も辛苦を味わってきたに違いなかった。
 もしも、そうなら。もしも、彼が、自分の時間が進まないことに絶望をしているのなら。どうか私を殺して、術を解除してほしい。そう言って32年ぶりに出会った元・少年に、短剣を渡した。王宮を出る際に、兄がくれた短剣だ。これから妹の身に起こることを予測していたらしい兄が、せめての慈悲にくれた自害用の短剣だ。元・少年は「他の全てを貫いたって、姫さんだけは貫かない」と言って短剣を受け取り、それを使って自分の護衛をしている。
 32年間、彼がどんな日々を送ってきたかを彼は口にしない。自分の時間を止められたことは、助けてもらった、と口にする。自分を生かすために力を使ってくれたんだ、と確信を持って口にする。
 しかし、フィアルカは。フィアルカ自身は、分からないのだ。少年を生かすために力を使ったのかどうか。ただ、自分が愛しい日々を留めておきたかっただけではないか…と、32年経った今でもフィアルカは分からないでいる。


 *******


「『龍』って一体何なのか、実はよく分からないんだよね。」
 と、若い騎士が言い、見習いの少年が首を捻った。
「でも、ノヴァ隊長は【龍討伐隊】で『龍』を退治してきたんでしょう?それでも、分からないの?」
「うん。退治の仕方は分かったんだけど、それ以上のことは分からないんだあ。」
 と、答える若い騎士は、初老の騎士にネクタイを締めてもらっている。ネクタイがまっすぐに締まらない…と嘆いている騎士に、初老の騎士が手を貸したのだった。
「退治の仕方が分かっても、退治しきれない『龍』もいますからなあ。結果、結界の中に封じるしかないわけで。」
 と初老の騎士が、ネクタイをぴしっと締めながら相槌を打った。
「私の友人がその封印の守りをやっておりますが、おかげで彼はその村から外に出られません。『龍』がなんであるのかが分かれば、他にも方法が見つかるかもしれませんから、『龍』について調査が出来るといいのですが。…はい、隊長、出来ました。まっすぐですぞ!男前がより男前でございます!」
「わあ!ありがとう、イングワズさん!」
 初老の男性に「隊長」と呼ばれた騎士は無邪気に礼を言い、イングワズと呼ばれた初老の男性は「どういたしまして!」と言いながら、さっと鏡を取り出して、騎士の姿を映してやる。騎士は、きれいに締まっているネクタイを見て、もう一度「ありがとう!」とイングワズと呼んだ初老の騎士に礼を言い、むんっ!と胸の前で小さくガッツポーズを作った。
「これで、自信を持って、ラファルくんに会いに行けるよ!」
「まあ、ラファル君は繊細そうな顔をしておいてガサツですから、ネクタイが曲がっていようと寝癖が付いていようと、気にしないと思いますが。」
「うーん…。そうなんだけどね。昔ね、自信がないならせめて身だしなみをビシッ!としておけって言われたんだ。」
「ラファル君に?」
「うん。」
 頷く騎士のシャツには、ぱりっと糊が効いている。かつて言われた一言を忠実に守り続けてきた結果か、不器用な男だがアイロン掛けだけは妙に上手い。
「ノヴァ隊長は元がカッコいいんだし、そこまでしなくてもいいと思うんだけどなあ。」
 と、見習い騎士の少年が頭の後ろに手を回しながら、言う。イングワズが、「何を言います」と少年の言葉に反論した。
「いいですかな、ベルカナ君。隊長のようなザ・男前が、一部の隙も見せないことがよいのです。この甘いマスクに寝癖は似合わないでしょう。」
「…そんな顔をしておいて、何もないところで転んでる方が似合わないと思うんだけど。」
「ああ!もう!青い!青いですぞ、ベルカナ君!一見、隙のないイケメンがドジっこだから、可愛いのではないですか!?ギャップ萌えというものです!実際、街の方との協議の際、お辞儀をして勢い余って額をテーブルにぶつけたのを見たご婦人方の微笑みと言ったら!母性疼かせ過ぎですぞ隊長!寝室に連れ込まれますぞ!少し気をつけた方がいい!」
「え…えっと…、よく分からないけど分かったよ。気をつけるね。」
 騎士は素直に頷いた。言動が素直すぎるところも気をつけた方がいい、とベルカナ、と呼ばれた少年は思う。
 「ノヴァ隊長」と呼ばれている若い騎士は、見習いの少年から見ても初老の騎士から見ても、完璧な容姿の持ち主だった。すらりと伸びた手足で、長身の背の上には小さな顔が乗っている。鼻筋が通った顔も、各パーツがバランスよく配置されていた。ぱっちりとした金色の瞳は柔和に細められるので、穏やかそうな人柄が滲み出る。(実際、穏やかな気質の持ち主で、穏やかすぎてナメられがちであった。)黒髪も艶があり、やや癖があるもののよく櫛を通してある。『騎士』として鍛えられた体には筋肉がつき、『騎士』として叩き込まれた所作のせいで動きも洗練されている。
 完璧な容姿に一つだけ。異物とも映る特徴があった。鼻の上から両の頬へと、顔を横切る一直線の斬り傷だ。しかしその傷も男の欠陥にはならず、優男に雄々しさという魅力を付け加えている。
 その『容姿の優れた』男に素直に頷かれて、イングワズは大きく頷く。
「身だしなみも完璧、もともとの素材も完璧、そして性格は素直で愛らしい。…完璧ですな!胸を張って、ラファル君に会いに行くとよいでしょう!その180センチを越える身長で、昔からマセていた生粋のマセガキを見下ろしておやりなさい!」
「た、たまに思うんだけど、イングワズさんはラファルくんのこと、嫌いなの…?」
 おずおず、と聞く騎士に、イングワズは「ふふん」と鼻を鳴らしただけだった。ベルカナと呼ばれた少年は、軽く手を掲げながら、
「ねえ、隊長にイングワズさん。その、ラファルくんって一体何者なの?おれたちは、国王様の妹君の護衛に来たんじゃないの?」
「……ああ、そうだね。ちゃんと、説明してないよね。」
 騎士は頷いて、ええっとね、と口ごもってから、
「ラファルくんは、僕の見習い騎士時代の先生なんだ。」
「ベルカナ君にとってのノヴァ隊長のような人ですな。」
「…隊長の先生ってことは騎士だよね。今、妹君の護衛をしてるのがその人ってこと?」
「ベルカナくんは頭がいいなあ。」
 と、騎士はにこにこしながら頷いた。一方で、ベルカナは納得できなくなった、と首を捻る。
「もう護衛がいるのに、さらに護衛が必要なの?隊長の先生なんだから、その人、強いんじゃ?」
「そのラファル君も護衛対象なんですな。」
 イングワズが説明を買って出た。
「ま、実際に会えば分かると思いますが、ラファル君はちょっと特殊体質でしてな。その彼の秘密を守ることも、我々の任務ですな。」
「ふうん。…まだ全部を話してもらってないのも分かるけど、とりあえず、分かった。」
「ご、ごめんね。まだ極秘事項なんだ。もうちょっとしたら、隊のみんなにもちゃんと伝えるからね。」
 騎士は両手を合わせてベルカナに謝ってから、未だにイングワズが出している鏡の中の自分を見て、前髪を摘んだ。
「僕も大人になったんだし、ラファルくんも頼ってくれるといいんだけど。」
 そう言って溜息をつく。イングワズは微笑んだ。
「隊長はお優しいですな。」
「僕は、優しくしてくれた人に優しくして返したいだけだよ。」
「それが出来ない人の方が多いのですよ。恩は忘れるが、恨みは忘れない。そんなもんです。」
「そうかな?恨みは忘れて恩を覚えていた方が、幸せな気分でいられるよ。」
 心の底からそう思っている様子で、ノヴァ隊長と呼ばれている騎士は首を傾げた。それを見て、13歳のベルカナが、
「…隊長はやっぱり素直すぎるよ。騙されないように気をつけた方がいい…。」
 と溜息をつき、イングワズは吹き出しながら同意した。

 *******

「っくしょい!」
 フィアルカとともに朝食の皿を洗いながら、ラファルは大きなくしゃみをした。
「あらあら、ラファル、風邪?」
「あー……、誰かが噂をしてるんだよ、きっと。」
「あらあら。ラファルは人気者ねえ。」
「悪い噂じゃないといいけどなあ。」
 苦笑を浮かべて、最後の一枚の皿をフィアルカに渡す。それに合わせたかのように、時計が9回、鐘をついた。
「悪い、姫さん。おれ、店の手伝いにいかないと。」
「ええ、あとは私とエアリアルでやっておくわね。」
 悪いな、とラファルは言って、台所の扉に向かう。そのついでに、扉の横に貼られたカレンダーを見て日にちを確認。
 アンファングによる密売が発覚し、自分が正式にフィアルカの護衛として任命されて、2週間が経っていた。
 ラファルは扉から外へ出て、「二週間。」と囁いてから、
「…いい加減、そろそろ来るよなあ…。護衛か監視かの騎士たち……。」
 折角の姫さんとの蜜月なのになあ……と実年齢通りの親父臭いことを呟きつつ、ともあれ、今日の仕事にむかった。 


第2話‐②へ続く》

-----------あとがきのようなもの---------------

書いてる私もまだ慣れなくて、文章の座りが悪い。

新キャラが一気に登場して混乱したので、登場する人物を絞って書き直した2話になります。
2話は全6回になると思います。よろしくお願いします。

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