まよらなブログ

ヘヴンズフォール : 第2話-②


長編オリジナル話の更新を再開してます。


この2話をアップしている期間で、
3話を書いていくつもりだったのですが、一向に書き始めません。
………そう、ドラクエ11に夢中だからです。
まあ、だらだらとやっていきます。


タイトルは『ヘヴンズフォール』。
本日は、第2話‐②の更新です。


読んでやってもいい、という方は「つづきを表示」からどうぞ。




『ヘブンズフォール』:
 第2話「私の務めは果たします」- ②
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 【発掘都市・アイロット】にある小さな金物屋【ロカ商店】は、発掘された金属の類も扱っており、それらの加工や研磨にも応じている。また、【発掘都市】というだけあって街では常に土木作業が行われているため、作業員からの大量注文も多い。店主一人で切り盛りしていたので配送までは請け負えなかったが、2ヶ月前からラファルたちが住み込みで働き始めたことで台車で運べる大きさまでの配送を開始した。そのため、結構忙しい。
 店の方が忙しいので、フィアルカは家事を自分の仕事と決めていた。とはいえ、姫として生まれ、身に備わった『時間操作』の力のせいで18歳からはほぼ幽閉されていた身だ。できないことの方が、まだ多い。不器用に階段の掃き掃除を終え、廊下に取りかかろうとしたところで、既に10時を過ぎていることに気が付いた。
「あらあら。お茶を煎れましょう。」
 と、箒を壁に立てかけて、台所に入る。フィアルカはこの時間に、店で仕事をしているラファルと家主であるアンテスにお茶を煎れることにしていた。店自体は30分前に開いたが、開店の準備や加工作業で8時前から働いている。一息入れてもいい時間だ。
 家事の腕前は未熟で料理は壊滅的な腕前のフィアルカだが、お茶を煎れることは上手かった。世話になっている家主と自分を守ろうとしてくれているラファルに、自分の力で何かを返せるとしたら日々の美味い茶ぐらいだった。フィアルカは、その非力さを卑屈には思わない。出来ることがあるのならそれに全力を尽くし、全力を尽くしている限り恥じることはない。…それは、彼女に身についた信念だった。
 台所で大切にお茶を煎れる準備をしていると、足下でエアリアルが不満そうに鼻をひくひくさせる。
「姫様、お家に置いてくださるご主人にはともかく、ラファルにお茶を出す必要なんかありませんよ!飲みたければ自分で煎れればいいんですよ!わたしが飲めない姫様のお茶を、あの男が飲むなど…!きーー!腹立たしい!腹立たしいですよ!」
 不満というよりも茶を飲めないウサギの嫉妬らしい。フィアルカは、あらあら、と苦笑した。
「そうだわ。お庭のお野菜の葉っぱが伸びてきたの。エアリアルはその葉っぱで、私のお茶に付き合ってくれる?」
「よ、よろしいのですか!?姫様のお育てになっているお野菜を…誰よりも先に口にしてよろしいのですか!?このエアリアル、身に余る光栄ですよ!」
「もう。エアリアルは大げさねえ。」
 そんな話をしながら、フィアルカはポットからマグカップに紅茶を注ぎ、鼻歌交じりに店の方へと運んでいった。自宅と扉一枚でつながっている「ロカ商店」は、この家の主であるアンテス・ロカが営んでいる。店では、無口な主人がレジの奥で帳簿をつけていた。
「家主さん、お茶をどうぞ。」
 フィアルカがカップを机の上に置くと、アンテスは短く礼を言い、さっそく一口口にした。感想は言わずに、帳簿付けに戻る。フィアルカは、感想がないことは特に気にしない。アンテスは、どんなに忙しいときでも茶を受け取るとすぐに啜る。人がしてくれたことを無碍にしない人なのだと、フィアルカは考えている。
「ラファル。」
 レジの置かれたテーブルにカップを置き、店の在庫を数えているラファルに声をかけた。ラファルはメモを取った後で、フィアルカを見た。
「お茶、ここに置いておくわね。」
「ありがとう、姫さん。」
 ラファルは早速、お茶を堪能しようとカップの方へやってくる。カップを持ち上げるのだが、店の扉が開く音がした。ラファルは茶に口を付けないままカップを机の上に置き直し、「いらっしゃい」と口にした。店に人が来れば客だと思うし、客が来れば休憩している場合でもない。当然のことだ。
「ラ、」
 しかし、店にやってきた人は客ではなかった。ラファルの姿を見て、感極まった様子で、
「ラファルくん!」
 と、叫んだ。
 ラファルは店の客ではない客の姿を見て、「げ」と声を上げた。フィアルカは「あら」と声を出した。アンテスも眉を寄せて顔を上げる。店に入ってきた人間は、黒い「騎士」の制服を着ていた。
「わああ!本当にラファルくんだあああ!」
 と、その騎士はラファルまで駆け寄ってきて、抱きついた…のだが、長身の騎士と小柄なラファルだったので、ラファルを抱きしめる様な形になった。ラファルは騎士の胸に顔をうずめる…というよりも、大胸筋に圧迫されるといった方が的確な状態になった。ぎゅう、と圧迫されながら、くぐもった声でラファルが問いかける。
「………お…お前…、ノヴァか…?」
「うん!そうだよ!久しぶりだね!あれ?なんだか小さくなった?」
 ラファルはぼすん!と大胸筋から顔を抜き、騎士を見上げ、
「お前がデカくなってんだ!ノヴァ、お前、いくつになった!?」
「24だよ。えっと…16歳の正式入隊のとき以来だから……、8年ぶりだね!」
「そっちじゃない!身長!」
「背?えーっと、ひゃくはちじゅう……、」
「いい!言わなくていい!言うな!聞きたくない!!」
「あ、目線が合いにくいよね。屈んで話した方がいい?」
「やめろッ!!」
 ラファルが本気で嫌がる様子に、別の笑い声が起きた。騎士の腕から抜け出たラファルは笑い声の方を見る。店の入り口に初老の男性がにこやかに立っている。
「お久しぶりです、ラファルくん。相変わらず小さいですな!」
「よりによって、イングワズさんだと…!」
「はいはい。イングワズさんですぞ。団長からの直々の指令でノヴァ隊に配置されました。それより…、」
 同じように黒い「騎士」の服をきた初老の男性は、ラファルからフィアルカに視線を移し、
「……お初にお目にかかります。」
 と言って、神妙に頭を下げた。フィアルカは、目礼を返した。
 ラファルは溜息を吐いてから、アンテスの方を向き、
「…すまない、親父さん。ちょっと休みもらってもいいか?あと客間を借りても?」
「構わんぞ。今日は配達もないしな。…フィアルカさんも。一日ぐらい家事をしなくてもどうってことないからな。」
「まあまあ。お気遣いありがとうございます。」
 フィアルカは明るくアンテスに礼を言い、それから来客二人を見て、
「ラファルと私にお客様ね!私にお客様だなんて、何十年ぶりかしら!お茶を煎れるわ!奥へどうぞ!」
 と楽しそうに客間へ案内し始めた。警戒心のない主の様子に、ラファルは額を押さえて、エアリアルは鼻をヒクヒクさせながら、溜息をはいた。

*****

「…アンファング隊の後任が一週間前に赴任したってのは聞いてたんだが、」
 客間で目の前に座るノヴァを見つめて、ラファルはむうっと腕を組んだ。
「姫さんのとこに挨拶に来るのが遅すぎるだろ。」
「ラファルくんったら、嫌われる先輩の典型みたいなことを言いますなあ。」
 ノヴァの隣で隊長以上に悠々と座っているイングワズが声を上げ、彼等の前に茶を出しているフィアルカが「あらあら。気にしなくていいのよ。」と騎士たちに言い、エアリアルは「いいえ!わたしもラファルと同意見ですよ!」と足下で床を踏みならした。
「うう…ごめんなさい…。」
 この中で一番上背があるノヴァが小さくなって恐縮している。お茶を並べ終えたフィアルカはラファルの隣に座り(その膝の上にエアリアルが飛びのった)、
「いいのよ。他にもお仕事があるんだもの。それより、改めてお名前を聞いてもいいかしら?」
 と、やんわりと話題を変える。(イングワズが「お優しいですな!」と囁き、得意げにラファルとエアリアルが鼻を鳴らした。)
 ノヴァは「は、はい!」と上擦った返事をしてから立ち上がり、
「は、初めまして!第12小隊を預かっていますノヴァと言います!誠心誠意、フィアルカ様にお仕えさせていただきます!」
 と、勢いよく頭を下げ……勢い余って、ごすん!!とテーブルに額をぶつけた。
「あ、あらあら!大丈夫!?」
「………う、」
 ノヴァはテーブルに額をつけたままで、
「……うう…、僕、カッコ悪いぃぃ……」
 そう呻いた。変わってねえな…とラファルは溜息を吐き、ノヴァはぐすんと鼻を鳴らす。イングワズは軽やかに笑って、フィアルカの視線をノヴァから自分に向けさせた。
「フィアルカ様、私、第12小隊隊員のイングワズと申します。ご挨拶に伺うのが遅くなり申し訳ございません。遅くなった理由を、言い訳しても?」
「ええ。」
「ノヴァ隊長が、「ラファルくんがついているならフィアルカ様は安全だよ。だから、僕たちが最初にしなくちゃいけないのは、街の人に謝ることだ。」と仰いまして、フィアルカ様への着任のご挨拶よりも先に、アンファング隊が害した方々への謝罪に回っておりました。」
「まあ。的確な判断でしたね。騎士・ノヴァ。」
 そう言われて、ノヴァは額を押さえて顔をあげた。「光栄です!」とまた頭を下げ、テーブルに額を打ち付けそうになる…前に、イングワズが上着の背中の裾を掴んで、その前傾を止めてやる。そうしながら、
「ノヴァ隊長は、この2週間、盗掘された遺物の保護とともに、行政や警察、ご迷惑をおかけした発掘会社、そして、遺族・被害者の方々にお会いしておりました。」
「そう…。辛い思いもしたでしょう?あなたのしたことではないのに…ごめんなさいね。」
 フィアルカの言葉に、ノヴァはぶんぶん!と首を振った。イングワズは軽い口調で、
「被害に遭われた方々が、我々に辛い言葉をぶつけてくるのは当然のこと。真摯に受け止めます。実際、隊長は真摯に誠実に受け止めておられます。誠実に謝罪をしながら、頭を勢いよく下げて机にぶつけるというドジっこ気質を遺憾なく発揮され、その微笑ましさと一生懸命さに場を和ませております。」
「まあ!今みたいに?」
「そう!今みたいに!」
 ノヴァは真っ赤になって「忘れてください…」と打ち震えているが、イングワズは気にも止めず、続ける。
「隊長の甘いマスクと静かに話せば色気のある声と、それに反した子犬のような性格に、ご婦人たちはメロメロでございます。その素直な性格と持ち前の好奇心で、職人の親方衆にもすっかり気に入られました。「あんたも大変だよな…。これから協力してやっていこう」って言われております。ご安心を!」
「まあ!すごいわ、ノヴァ!」
「そ、そんな!街の人が優しいんです!」
 そう言って、ノヴァはぶぶぶぶん!と首を振る。確かに、仕草は子犬というよりも…躾の行き届いていない無邪気な大型犬のようだった。フィアルカはおかしそうにノヴァを見やる。
「これからも、街の方々の信頼を取り戻せるよう全力を尽くしてくださいね。期待していますよ、ノヴァ。」
「はい!」
 ノヴァの素直な返事を聞き、フィアルカはにっこりと微笑んだ。ノヴァの素直さが気に入ったらしい姫君の様子を見て、ラファルはノヴァを睨み、「ちょっとラファルくん、隊長にメンチ切るのやめてもらえますか?」とイングワズにテーブルの下で足を蹴られた。
「そう言えば…、ラファルは二人と知り合いなの?」
 フィアルカはテーブルの下で足を蹴り合い始めたラファルに尋ねる。ラファルはイングワズの足を踏んでから、
「ああ。ノヴァの見習い時代の教育係をやってたんだ。イングワズさんは…、まあ、本部の事務方だったんでな、いろいろと手続きで世話になることもあった。」
「おやおや、私と君の仲はそんなもんじゃないでしょうに。君が見習い時代からの付き合いですぞ?制服の特注SSサイズを発注したのも私ですぞ!」
「あらあら。私もラファルの見習い時代は知ってるわ!昔から可愛らしい騎士だったのよ!」
「…か……、可愛くないぞ、おれは。」
「そのラファルが、見習い騎士の教育係をするようになったのねえ…。すうごいわあ!」
 フィアルカの口調は「小さい頃を知っている叔母さん」めいている。「
ラファルくん、今も男扱いされてませんな!」とからかってきたイングワズの足をラファルは踏み込んだ。ノヴァは「そんなことを言っちゃだめだよう」とイングワズを窘めてから、昔を思い返すようにカップの紅茶を眺めて、そしてフィアルカに向かって視線をあげた。
「…僕からしたら、ラファルくんは昔からカッコいい憧れの騎士ですよ。」
 と邪気なく笑う。ラファルはイングワズの足から足を離して、背もたれに寄りかかり、フィアルカに告げた。
「…昔から、こうなんだよ。素直っていうか…」
「いい子なのね!」
「そうなんだよ。」
「いい子って、あの、僕、24歳になったんだけど…」
 ノヴァの抗議は聞き入れられそうもなく、隣のイングワズはフォローをする気もない様子で茶をすすっている。フィアルカは身を乗り出すようにして、ノヴァを見つめて目を細める。
「よかった!あなたみたいな騎士が来てくれて!きっと街の方々も信頼してくださるわ!ノヴァは、この街の人のことを第一に考えてお仕事してね?」
 姫君そのもののたおやかな微笑に、ノヴァは舞い上がった様子でこくこく!と頷く。フィアルカと出会ったばかりの自分を見ているようで、腹立たしくなったラファルは、(見た目は)成長した教え子の向こう脛を蹴り飛ばした。
「な…なんで蹴るの、ラファルくん!?」
「姫さんに見惚れてたから。」
「姫様に見惚れたですって!?姫様に見惚れて当然ですが、許しませんよ!きー!」
 しれっと答えたラファルの理不尽な回答とエアリアルのヒステリックな叫びに、ノヴァは「ええええ…」と声を上げながらオロオロするだけだ。 フィアルカは二人を窘めてから、ノヴァを見上げた。
「ね、ノヴァ。お願いしたいことがあるの。新しい騎士隊が着たらお願いしようと思ってたのよ。私ね、お兄様から勅命をいただいているの。」
「え、ええ。僕たちが二度と犯罪を犯さないように監視をされることと、騎士団と街の人との信頼回復のための協力をいただける、と聞いてます。」
 そうなのよ、とフィアルカは両手を合わせて嬉しそうに頷いて、
「だからね、まずは盗掘と密売が二度と起きないようにしないとね。案内してほしいところがあるの。いいかしら?」
 ウキウキと聞く。その弾んだ声に、ノヴァは頷くしかなかった。


第2話‐③ へ続く》

-----------あとがきのようなもの---------------

もしかして、今の子って「金物屋」を知らないのでは…と思いながら書きました。
金物屋さん、見ないよね、最近…。

うちの世界樹3話の焼き直し、という側面を持つこの話ですが、
ノヴァは「アヴィーがあの性格のままでイケメンに育った」がコンセプトのキャラ、
イングワズさんはいつもの通り「テンション高いおじいちゃん」枠の人です。
この二人のおかげで、ラファルがうちの赤パイ化し、しまったなあ、と思ってます。


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