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ヘヴンズフォール : 第2話-③


仕事とドラクエに忙しく、ちょっと日が空きましたが、
長編オリジナル話の更新です。


タイトルは『ヘヴンズフォール』。
本日は、第2話‐③の更新です。


まあ、読んでやってもいい、という方は「つづきを表示」からどうぞ。



『ヘブンズフォール』:
 第2話「私の務めは果たします」- ③
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 フィアルカが騎士隊に頼みたいと思っていたこと…とは、「王領地への侵入口に案内してほしい」というものだ。アンファングが王領地にある【前時代の遺物】を持ち出していたなら、当然、出入り口があるはずだ。そして、フィアルカは『今後、騎士が不祥事を起こさないように監視すること』を国王から命じられている。「見ておかないと、と思って!」と弾んだ声でフィアルカが頼んだところ、ノヴァは快諾をした。
「本部がアンファング隊の騎士を尋問して、侵入口の場所は把握しました。」
 街を歩きながら、ノヴァは経緯をフィアルカに説明する。その説明に淀みはない。ノヴァとフィアルカ(と足下のエアリアル)が先を行き、その後ろをラファルとイングワズが付いていく。さっきまでの子どもっぽい口調と打って変わって、しっかりしたノヴァの話し方を聞きながら、ラファルは教え子の成長に安堵した。低さと柔らかさが同居する声で、説明は続く。
「…騎士団アイロット支部の敷地内にトンネルを掘って【王領地】に侵入していました。警察の調査も済み、そのトンネルを塞ぐ作業を進めています。」
「まあ。騎士団の敷地内に侵入口をつくるなんて、肝が据わっていたのねえ。」
 妙な方向に感心するフィアルカに曖昧な相づちを打って、ノヴァは石造りの橋の前に立った。そこは街の北側に位置しており、橋の向こうは広い公園らしい。芝生や広葉樹の下でくつろぐ街の人が見える。橋は街灯付きの立派なもので、二頭立て馬車がすれ違える幅があった。橋の下は水路で、水路も橋と同じぐらいの幅があった。エアリアルは橋の欄干に、ぴょん!と飛び乗り、水路をのぞき込む。
「鯉が泳いでおりますよ、姫様!」
「まあまあ!立派な鯉ね!お水も綺麗。素敵な公園ねえ。」
 そんな感想を口にするフィアルカに、ノヴァはぱちくり、と瞬きをした。それを見たラファルが、周りに人が居ないことを確認してから、
「ここが【王領地】になる前に、姫さんは王宮を離れてる。」
 と、簡潔に説明をした。ノヴァは得心がいった、というように頷き、フィアルカは「まあ。それじゃあ、ここが?」と公園を見た。
「あらあら、恥ずかしいわ。私、この街に【王領地】があることはラファルから聞いていたし、この街の地図も見ていたのよ。あらまあ…、王家の土地にやって来たのに気が付かないなんて。私、本当に何も知らないのねえ。」
「姫様は、こちらにいらしたことがないのです!お気づきにならなくても当然ですよ!このエアリアルも、ここが【王領地】だなんて気づきもしませんでしたよ!」
 エアリアルが欄干の上で跳ね、フィアルカを擁護する。落ちたら危ないわ、とフィアルカはエアリアルを抱き上げた。
「この【発掘都市(アイロット)】は私が王宮を離れてから作られた街だものね…。私、この街のこと、もっと勉強しないといけないわね。」
「さすが姫様、勉強熱心でいらっしゃいます…!」
 感心するエアリアルに、ありがとう、とフィアルカは笑いかけ、ノヴァを見上げた。
「ノヴァ、この先が【王領地】なのね?公園のようだけど…、どのように使われているか教えてくれる?」
「は、はい!勿論です!」
 ノヴァは、こくこく!と素の様子で頷いてから、咳払いを一つして、
「ええっと……、ここは、街の北側の区画になります。【王領地】とされているのは、この橋の先の『地下』です。この【王領地】の発掘は禁止されており、地下1メートル以上を掘る際も行政と騎士団への届け出が必要になる区域です。」
 ノヴァは水路を手で示し、
「この水路は外堀として、【王領地】をぐるりと囲っています。つまり、この橋を渡った先から【王領地】の上となります。堀の内側の一部は公園として街の人へ開かれています。公園はこの街の自治体が管理しています。公園が綺麗なのは、街の人の手入れのおかげですね。」
 と、説明しながら橋の先にある公園へ手を向ける。それから、公園に向かって右手側を示す。塀が見えた。
「あちらは堀と塀で囲われていますが、その内側は、A級発掘品の申告と税金の手続きをする税務局になります。国税局の管轄なので僕たち【騎士団】が立ち入るには許可が必要です。」
「ああ、そうねえ。」
 この国に王はいるが、王は政治には関わらない。主権は国民にあり、政治は議会や各省庁や地方自治体で行われている。この国の王は、国土を『護る』ために存在していた。そして、そのための『力』として【騎士団】があるのだが、騎士団を王政復古の力に使われないように、騎士が国務機関に入るときには許可がいる。
 ノヴァは、もう一度公園を指した。
「公園の奥に、騎士団・アイロット支部の敷地があります。ええっと…、そうだな、堀の中については、三分割されているお弁当箱を想像してください。ご飯を詰める大きな部分が騎士団支部、おかずを詰める二つの小さな部分が公園と税務局になります。」
「うふふ、可愛らしい例えね。」
 フィアルカが楽しそうに笑うと、ノヴァはあうう…と呻いて頬を掻いた。
「ええっと…、でも、あの、僕はすごい工夫だと思ってるんです。」
「すごい?」
「はい。公園はこの街の自治体が、税務局は国の機関が、騎士団支部は王家が管理してます。【王領地】を堀り起こされないために、いろいろな立場の『目』を入れたんだなって思ったんです。誰かに見られるかもしれないと思うと、悪いことはしにくくなるから。……だからこそ、騎士が【王領地】に踏み入って【前時代の遺物】の『密売』を行ったことは、その…残念だ、と思います。」
 我が事のように、しょんぼり、と肩を落とすノヴァを見て、フィアルカは「ノヴァは本当にいい子なのねえ」と嬉しそうに微笑んだ。イングワズが「そうでしょうとも!」と我が事のように胸を張る。ノヴァは肩を落としたままで、フィアルカを見た。
「あの、僕、24なんですよう…?」
「あら。私は60よ?おばあちゃんからしたら、24歳は『いい子』ですよ?」
「お、おばあちゃんだなんて!フィアルカ様はお若いですよ!お綺麗だし!」
 ぶぶぶぶん!と首と一緒に手も振るノヴァに、フィアルカは微笑んだ。いつもならエアリアルが「姫様に色目を使うんじゃないですよ!」と、きー!と声を上げるはずなのだが、ノヴァには「姫様のお褒めの言葉ですよ!子どもらしく素直に受け取りなさい!」と、きー!と声を上げている。白ウサギにも「子ども」認定されたらしい。
「と、とにかく!侵入口にご案内します。少し歩きますけど…、よろしいですか?」
 ノヴァは最初は強く話を戻し、後半は弱々しく問いかけた。フィアルカはにこやかに頷いた。
 橋を渡って、公園に入る。手入れの行き届いた広い公園だ。芝生が広がり、堀沿いには並木が植えられている。奥には林らしきものが見える。公園内の広い道を歩きながら、あそこに見えるのが支部です、とノヴァは道の先に見える赤煉瓦の建物を指した。
「この先に内堀があって、その中が騎士団アイロット支部の敷地になります。あの建物が支部庁舎で、奥にある建物が騎士の宿舎です。敷地のほとんどは訓練所で、他の支部の騎士隊が訓練を行いに来るぐらい、広いんですよ。【龍討伐部隊】の演習に使われることもあります。」
「姫さん、ノヴァは【龍討伐部隊】にいたんだよ。」
 ラファルが、フィアルカに伝えた。「まあ!ノヴァは強いのね!」とフィアルカは感嘆の声を上げてから、
「危険な任務を請け負ってくれていたのね、ノヴァ。龍から国を護る役目を負う王家の一員だった者として、御礼を言わせてください。」
 丁寧に頭を下げる。ノヴァは、はわわわ…!と妙な声を上げて、ぱたぱたと腕を振った。
「そ、そんな!僕はお仕事をしてるだけですから!危険手当ももらってますし!だ、だから!あの!今は、今のお仕事をさせてください!説明を続けてもいいですか?」
「あらあら。ノヴァは真面目なのね。」
「よいことですよ!励みなさい!」
 エアリアルが偉そうに褒めると、ノヴァは「はい!」と頷き、王領地の説明を続けながら歩き出す。ウサギ相手に素直にも程があるだろ…とラファルは小さく嘆息しつつも、自分の顔を横一文字にすっと撫でた。そこは、ノヴァの顔面にある横一文字の傷と同じ位置だ。
「あれは、龍の爪によるひっかき傷だそうですよ。顔に傷を負う覚悟で踏み込み、龍を討伐したそうです。」
 イングワズがラファルの動きに気が付いて、解説をする。「そうかい。」とラファルは頷いてから、
「…気が小さい割に、肝が据わってるんだよなあ。」
「だからこそ、隊長が【龍討伐隊】からこの街に異動になって、良かったと思います。隊長は、恐れつつも迷いなく死地に踏み込める、そんな騎士です。それは立派ではありますが、死亡率4割の部隊の、その4割の一員に早々になってしまいそうで。」
「…随分とノヴァを大事にしてくれてんな、イングワズさん。」
「なにせ隊長は可愛いので!可愛がった分だけ懐いてくれる子犬のようで!とにかく可愛い!」
 それは分かる。何せ昔からそうだった…とラファルは思いつつ、フィアルカに説明を続けているかつての教え子の背中を見た。教え子は、内堀にかかる橋のわずかな段差の前で、フィアルカに手を差し出している。確かに女性へのエスコートについても自分が教えたが、実際に目の前でやられると腹立たしい。
「隊長に八つ当たりしたら、ケリードーンに言いつけますよ。」
 その腹立たしさに気づいたらしいイングワズがぼそりと脅す。この世で最も頭の上がらない相手の名前を口にされて、腹立たしさは最高潮に達したものの、ぐう…と唇を曲げるだけにした。ラファルの腹立たしさを余所に、ノヴァの解説は続いている。
「この内堀の中が、騎士団アイロット支部の敷地になります。敷地のほとんどは訓練所になっていて、その一画にこの土地の地下の【王領地】に入るための階段があります。立ち入るには5重の鍵で封じられている門を開ける必要があります。最後の一本の鍵は、国王陛下がお持ちです。」
 ノヴァは、その5重の封印がされている門と階段は左手に進んでいった先にある、と説明しつつも内堀沿いに右手に向かう。
「アンファングさんが、【王領地】への侵入につかったトンネルはこちらにあります。緊急時の連絡・避難用に税務局と騎士団支部の敷地を結ぶ橋があるんですけど、その手前に小屋があるんです。跳ね橋の上げ下ろしを行う小屋で、そこの床板を外して、地下へのトンネルを掘りました。そして、密売仲間の騎士が小屋で見張りをする夜に、「遺物」を持ち出して近くにある厩舎に隠し、支部からの荷物に紛れて外にだしたとのことです。厩舎の前には、不要品を外に持ち出すための荷台も置いてあって……、あ、あの建物が厩舎です。」
 ノヴァが指す先に、木造の厩舎と囲いがあった。囲いの中では馬たちがのんびりと草を食んでいる。広い草っぱらの中の厩舎は、そこだけみれば牧場のようだった。訓練中なのか、馬具を付けた馬を柵の中で歩かせている支部員が、ノヴァを認めて、頭を下げた。敬礼ではないので【騎士】ではなく、支部での業務を行う【従士】と呼ばれる人々だ。ノヴァが「お疲れさまです。」とやっぱり丁寧に頭を下げた。囲いの中で草を食んでいた馬がトットットとノヴァに近づいてきて柵越しに、べろん、と顔を舐めた。
「隊長は、馬にもモテモテで。」
 イングワズによる重要でない説明の間にも、ノヴァはべろべろに顔を舐められ「あうう、だめだよう」と情けない声を上げていたのだが、
「あ、隊長!」
 べろんべろん!に顔を舐められているノヴァに対して、馬の足音と少年の声がかかる。イングワズが馬を宥めながらノヴァから離しつつ、ハンカチをノヴァに差し出した。離された馬にはフィアルカが近づいて「いたずらっ子ねえ」と鼻面を撫でる。馬は大人しくなり、フィアルカはラファルに「私、30年ぶりぐらいに馬に触ったわ!」と嬉しそうに報告した。
「ベ、ベルカナくん。どうしたの?トンネルを塞ぐ工事の方にいたんじゃ…。」
 イングワズのハンカチで顔を拭いたノヴァは、馬に乗って駆け寄っててきた少年…見習い騎士のベルカナだ…に問いかける。ベルカナは、ちらりとラファルとフィアルカに目をやった。視線の意味に気づいたイングワズが「報告を聞かれても大丈夫ですぞ。」と伝えると、ベルカナは頷いた。馬上から失礼します、と一言挨拶してから
「トンネルを塞ぐ前に、イサとウルズが内部の確認をしたんだけど…。奥の方から音がするって言うんだ。…虫の羽音みたいな音って。それで、このまま作業を進めるか、隊長に確認したくて。」
「羽音。」
 ノヴァは呟き、一人で頷いてから、素早く指示を出した。
「イサさんにはトンネルの入り口に結界を張るように伝えて。業者さんには作業を待ってもらって。もしかしたら、今日の作業は中止になるかもしれない。そのときの代金の交渉は任せるって、グリシナちゃんにこっそり伝えておいて。僕もすぐに行く。それまではトンネルの外で全員待機を。」
 なぜ、そのような指示を出すのかはノヴァは説明しなかったが、ベルカナはノヴァに敬礼をして、馬の腹を蹴り来た道を走って戻っていく。
「……なんだ、すっかり隊長だな。」
 即決した上に、見習い騎士に丁寧に指示を出したノヴァに、ラファルは感心して呟いた。
「ノヴァは信頼されているのねえ!あの子、ノヴァが決めたことに何の疑いも持ってないわ。」
 フィアルカは見習い騎士の様子の方に感心して、楽しそうに声を上げた。
 一方のノヴァは先ほどまでの無邪気さを消して、馬の世話をしていた従士に馬を三頭準備してほしいと告げながら、イングワズに告げた。
「イングワズさん。僕はトンネルを見に行くから、フィアルカ様たちを支部にお連れして。」
「了解しました。」
「あらあら…。何もないといいけれど…」
 フィアルカがそわそわと両手をさすりながら、ベルカナの向かっていた方角を見る。ノヴァは、そんなフィアルカに穏やかに告げた。
「安全が確認できましたら、お迎えにいきます。それまで、支部で待っていてください。」
 物腰の柔らかさとお願いのような言い回しのため感じにくいが、それは警告だ。言い回しの裏にある強い調子を感じたフィアルカは頷き、気をつけてね、と伝える。
 頷いたノヴァに従士が馬の手綱を渡したところで、ベルカナが向かった方角から人の悲鳴が聞こえた。一同はその方向を見る。大きな青い火花が、ばちん!と跳ねたのを見て、
「「「…龍…!?」」」
 ノヴァとラファルとフィアルカが、声を上げた。ノヴァは馬に飛び乗り、火花の方へ轡を向けた。
「イングワズさんは至急、支部長へ報告を!税務局への跳ね橋の方角で、龍現出の火花が出た、と!ラファルくん、フィアルカ様を支部へお連れして!支部長は事情を知ってるから!」
「了解しました!フィアルカ様。火急の知らせです。お先に失礼いたします!」
 返事は聞かずに馬を走らせていくノヴァと、ノヴァとフィアルカにそれぞれ応えて馬に飛び乗り駆けだしていくイングワズを、それぞれ見送る形になったラファルの手を、フィアルカが引いた。
「ラファル!エアリアル!私達も行かないと!」
 と、フィアルカはラファルの手を引く。ノヴァが向かった方向に。
「そっちじゃない!姫さん!庁舎へ!」
「そうですとも、姫様!避難を!」
「いいえ!こっちですとも!」
 フィアルカは振り返り、自分の正しさを確信している面もちで、
「今、龍が現れた場所に、王の祝福を受けた武器を持っている騎士はどれだけいるの!?私が行けば、武器が作れる!龍を倒せなくても、武器が有れば守れる命は増えるわ!業者さんもいるって言ってた…!民間人もいるのよ!」
「姫さんはもう王族じゃないんだ!そんなことは、考えなくても…!」
「王族ではなくなっても、助けになるかもしれない力はそのままよ!ならば、私の務めは果たします!」
 私一人でも行きますよ!とフィアルカは宣言し、ラファルの腕から手を離そうとし…、そうなる前にラファルはフィアルカの手首を掴んだ。
「…わかった。行こう。そのかわり、武器に祝福を授けたら、すぐに避難をする。いいな?」
「…それは状況を見て決めます。」
 フィアルカはそんな返事を返し、ラファルは「ああ!もう!」と呻きつつ、従士から手綱を受け取った。
 


第2話‐④へ続く》


-----------あとがきのようなもの---------------

鉤括弧の使い方が、統一されない……。
この話の用語を【 】、含みがあるときが『 』にしようかなと思います。

以前から、名前だけは出てくる『ケリードーン(またはケリー)』は、
ラファルの見習い時代の教育係で、イングワズさんの元・同僚です。
こちらの話には出てきませんが、こっちのシリーズ(?)では司祭様として登場してます。


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