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ヘヴンズフォール : 第2話-④


長編オリジナル話の更新です。
戦闘シーンに入りそうで入らないので、モダモダしてる。

タイトルは『ヘヴンズフォール』。
本日は、第2話‐④の更新です。



まあ、読んでやってもいい、という方は「つづきを表示」からどうぞ。




『ヘブンズフォール』:
 第2話「私の務めは果たします」- ④
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 青い火花は、トンネルの奥で起きた。
 火花は地中から外に向かうように、破裂する。土を盛り上げ、土を弾き、土を空中へ舞わせ、トンネルを崩し、そして、地中から火花と共に長く透明な生き物が空中へと躍り出た。
 一目見て、それは蛇を連想させた。続いて連想するのは、足のない百足だった。細く長い蛭を連想した者もいるかもしれない。透明な体の中には、赤い球体が数珠繋がりになっており不規則に点滅している。頭(と呼んでいいのかわからないが)の方には、4本の触手があった。5メートル程度の長い触手が2本、その半分程度の短い触手が2本。その触手を含まない長い体は10メートル程度だろうか。体の幅は1メートルもない。ひょろりと長い透明な生き物は空中……、といっても高くは飛べないらしく地面から2メートルも無い高さに浮かび、駄々をこねるように尾(なのかどうかも不明だが)を激しく振った。
 トンネルを塞ぐために現地にいた作業員と、彼等にトンネルを塞ぐ仕事を依頼した騎士たち……、ノヴァの部下たちは、突然地中から現れた生き物に一度言葉を無くしたが、
「……龍だ!!」
 と、誰かが声を上げた。声に我に返った作業員は逃げ出した。ノヴァより少し年上の黒髪の青年騎士は逃げる作業員たちを背中に庇うようにして龍の前に立ち、ノヴァより少し若い赤毛の青年騎士はサーベルを抜いて龍に向ける。その行為に意味がないことは分かっていたのだが、とにかく武器を向けた。眼鏡をかけた女性騎士は作業員たちを支部庁舎に誘導するため声を上げた。そして、『龍』と呼ばれた透明で巨大な生き物は、長い尾をバットのように振るい、トンネルの入り口でもあった小屋をその一撃で壊すのだ。
 壊れた小屋の瓦礫が、宙に飛ぶ。小屋の柱であった太い木材が、逃げる作業員の頭上に向かった。その木材を作業員は避けきれないと悟った女性騎士はせめての生存率を上げるため、頭を覆って伏せろ、と叫び、
 ……落ちてきたはずのその木材は、宙にふわふわと浮いた。
 馬の足音がして、ベルカナが転げ落ちるようにしながら馬から降りる。木材が宙に浮いている間に、女性騎士が作業員を立たせ、庁舎へと向かわせる。地面から起きあがったベルカナが、両手を振り上げ、龍に向かって振り下ろすと、浮いていた木材は龍に向かって飛んでいく。念動力。それが、ベルカナの【妖精返り】の力だ。
 木材は龍の細長い体の中央にぶつけられた。そのぶつかった場所が切断され、龍は半分の大きさとなって分裂する。全く同じ形の龍がニ体。左右対称に半円を描くように宙に登り、二体が交差するとまた一つの龍になる。
 『龍』は打撃・斬撃・突撃…では傷つけられない。燃えないし、溺れもしない。しかし、『龍』を倒す方法は、3つある。【妖精返り】の力を使うこと。『天使』と『悪魔』と呼ばれる存在の力を借りること。王から祝福を受けた武器で祓うこと。
 ここには、3つのうち一つの方法しかない。この場に【妖精返り】はベルカナしかいない。ベルカナは一体になった龍に掌を向ける。騎士たちが逃げるように命じる中、ベルカナは、龍を念動力の力で捕らえようとする。
 しかし、その力を易々と跳ねのけて、龍はベルカナに向かってきた。力の差は歴然であっても、この場で己を傷つけられるのはこの見習い騎士だけだ、と龍は嗅ぎつけたのだろうか。透明な体の中で数珠繋がりになっている赤い光を激しく点滅させて、龍はベルカナにまっすぐと向かい、ベルカナは効かないことを理解しながらも、己の【妖精返り】の力でその突進を止めようとする。逃げないのではない。目を見開いて、奥歯をがちがちと鳴らすベルカナは、逃げられないのだ。逃げる、という発想も思い浮かばない。思考が停止している。
 女性騎士と赤毛の騎士が、ベルカナに向かって駆けだした。抱えて逃げるしかない。しかし、低い位置を飛ぶ龍は人の脚より早かった。
「止まって!」
 という男の声に、脚を止めたのは女性騎士と赤毛の騎士だ。声の直後に、騎士たちの間を這うように炎が走る。そこに導火線があるように火種が走ってから、龍の前に炎の壁が立ち上がった。龍は、3メートルはある炎の壁の前で止まり、壁の前でゆらゆらと漂った。
 炎の壁の前まで、馬が駆けてくる。その馬からノヴァは飛び降り、自分の腰に下げているサーベルを抜いた。炎の向こうの龍を見る。【妖精返り】の力で発した炎が消えるまで、1分と少し。その間に、ノヴァは隊長としてやるべきことをした。
「ベルカナくん!怪我はないね!?」
「は…はい!」
 背中越しに聞くと、見習い騎士からはしっかりした返事が返ってくる。よかった、という感想は心の中だけにして、ノヴァは命令を口にした。
「グリシナちゃんとベルカナくんは業者さんの避難誘導を!支部までついたら、支部長の指示に従って!」
「隊長!誘導は私が行い、ベルカナくんを支部に向かわせます!避難警報を出すように支部長に伝え…」
 女性騎士の言葉に被せるように、警鐘の音が鳴り出した。すでに報告済み(イングワズが報告したのだろう)と知った女性は、胸をどん!と叩いた。
「了解しました!お任せを!」
 一方のベルカナは、震えた手をぐっと握りしめた。
「隊長!おれも戦うよ!【妖精返り】じゃないと龍は…」
 ベルカナの言葉を遮ったのは、女性騎士だ。彼女は、ベルカナの襟を掴み、
「いいから私とおいで!見習いは龍退治できない規則なの!君がよくても、隊長が叱られるの!」
 震えている手のことには触れず、女性騎士はベルカナの襟を引っ張った。腰が抜けている作業員を指し「あの人を支部まで連れてくよ!」とベルカナに伝えると、ベルカナは渋い顔をしつつも迅速に作業員に駆け寄っていく。ノヴァは指示を続けた。
「イサさんは結界を張って!小川を超えないようにしながら、できるだけ広く!」
「了解でーす。久々に【結界師】の仕事だー。」
 黒髪の騎士は暢気な調子で言いながら、敷地を流れる小川の縁に駆けていく。
「ウルズくんは僕のサポート!……っごめん!危険な役だ!」
「…かまわない。全力を尽くす。」
 ベルカナと黒髪の騎士の背中を見送った赤毛の騎士は、龍の方へ目をやり、サーベルを構えた。そのサーベルは、ただのサーベルだ。龍を傷つけられる武器ではない。
 『龍』を消す方法は、3つ。【妖精返り】の力を使うこと。『天使』と『悪魔』と呼ばれる存在の力を借りること。王から祝福を受けた武器で祓うこと。この場にあるのは、そのうち二つ。ノヴァの持つ、王の祝福を受けたサーベルと、【妖精返り】のノヴァの『発火』の力だ。
 炎のごく近くに立っているのに、ノヴァが乗ってきた馬は逃げずにノヴァの隣に駆け戻ってきた。ノヴァは馬の首を軽く撫でてから、馬に問いかけた。
「…ウルズくんを手伝ってくれる?」
 馬は、おそらく、ノヴァを手伝うつもりで戻ってきたのだろう。不満そうに鼻を鳴らしたが、ウルズと呼ばれている赤毛の騎士へと駆けてくる。馬たちからも(物理的にも精神的な意味でも)ナメられまくっているノヴァだが、同じくらいに馬たちからも大事にもされていた。
「……、隊長を放っておけないのは分かる。が、今回は俺を手伝ってくれ。」
 ウルズが、己の元にやってきた馬の鼻面を軽く叩きながら呟くと、馬は了解したように鼻を鳴らした。ええええ…とノヴァは呻き、一度だけウルズたちを振り返った。
「…僕、そんなに頼りない?」
「俺たちが、頼られたいということだ。」
 ウルズが馬に乗りながら答え、馬は「ぶひひん」と短く嘶いて同意した…らしかった。ノヴァは鼻の頭を掻いてから、「ありがとう」と言って前を向く。
「…騎士団の敷地に龍がでたのは、幸いだ。ここから、龍を出さない。市街戦の演習場に、龍を誘導する。」
「了解した。」
 ノヴァが発した炎の壁が低くなっていく。あと、十数秒で消え失せる。
 ウルズは手綱を握りしめ、馬の腹を蹴った。低くなった炎の壁を馬は臆することなく飛び越えて、その向こうの龍の真横を駆けていく。
 龍は触覚を揺らしながら、自分の真横を駆け抜けていった馬の方へと頭を向けた。体内の数珠繋がりの球体が、一度ぎゅっと密集する。圧縮する力を反動にして、龍はバネのように飛び出した。
「―― 嘘!そんなに早く飛べるの!?」
 ゆらゆらと漂う動きとベルカナに向かっていた速さから、馬の脚であれば追いつかれることはない…と推測していたノヴァは驚きに声を上げた。見誤った、と心の中で叫びながら、ノヴァは龍の向かう方向へ指を向けて、指し示した位置に炎の柱を立ち上げた。龍は直角に上空へと向きを変え、空中で宙返りをしてから角度を変えて馬を追い直した。
 ノヴァは、ベルカナが乗ってきた馬が落ち着きなくもその場に残っていることに気がつき、「僕を助けて!」と呼んだ。それで馬が呼べるのも考えものだが、馬はすっと首を伸ばしてからノヴァの前に駆け寄ってきた。ノヴァは礼を言って馬に飛び乗り、
「龍を追うよ!頑張ってもらっていい!?」
 いつでも駆けられる、というように馬は脚を踏みならした。

*****

 結界を張れ、と命じられた黒髪の騎士・イサは、敷地内の小川の縁に立ち、サーベルで自分の手の甲に一筋の傷を付けた。指先を小川に向かって垂らし、甲から垂れた血が水面に落ちるのを待つ。彼も【妖精返り】だ。見えない壁を作り出す、『結界』の【妖精返り】。
 見えない壁を作り出せる【妖精返り】たちはある程度の人数がおり、特別に【結界師】と呼ばれている。力の程度は様々だが、他の【妖精返り】の力を防いだり、現出した龍の移動を止めることができるため、警察・消防・軍隊・警備員に用心棒、と様々な場で、その力を使っている。
 ノヴァは「小川を越えないようにしながら、できるだけ広く!」と命じた。小川は、この騎士団・アイロット支部の敷地を二分割するように流れ(水源である池が敷地内にあるのだ)、騎士団支部と税務署・公園の敷地を分ける内堀に注ぎ、そこから王領地を囲む円形の外堀に注ぎ、さらに【発掘都市】へと流れていく。ノヴァの命令はつまり「小川と内堀の内部…騎士団支部の敷地だけを戦場とせよ」というものだ。つまり、街に被害を出さないための命令だ。
 結界を手早く設けるには、もともとある『道』を使った方が良い。今回は近くに川があったから、それを使え、ということだ。広い分、結界の強度は減るが、速さを重視。支部庁舎から応援が来たら、また結界を張り直せばいい。それまでなら、イサの結界も自分たちも耐えられる、という判断だろう。
「…とはいえ、それなりの時間はいただきますよ。」
 と、イサは呟きつつ、水面を見た。あっという間に水に溶けた己の血液は、もう『見えない』。だが。イサには、小川に沿って散っていく小さな粒子が『見える』のだ。血液の中にあった【粒子】が、今度は水を媒介にして散っていく。この粒子は本人にしか見えない。ノヴァが力を使うとき彼にしか見えない粒子が炎を起こす場所に収束される…らしい。ベルカナが力を使うときにも彼にしか見えない粒子が、動かそうとするものを押すらしい…のだ。つまり、【妖精返り】とは【粒子】使いなのだ、とイサは考えている。その粒子で『世界をほんの少しだけ書き換える』。
 粒子は物理法則に従わない。川の上流下流問わず、散っていく。川の流れよりも速く散っていく。それでも、小川と内堀に行き渡るまでには時間はかかる。イサは、傷をハンカチで押さえながら、散っていく粒子の行く先を見つめる。
 毎度、この時間が嫌だ。粒子は吹き飛ばされるように散ってはいくのだが、それでも「一瞬」とは言えない。その間も、隊長と隊員が龍と対決しているのだ。「一瞬」で粒子が行き渡ってくれればどんなに気が楽だろう。
 速く、と念じても速くなるものではない。イサは奥歯を噛みしめて、粒子の流れる先を見つめる。そして、馬の足音を聞き、支部庁舎からの援軍か、と顔を上げ…、顔を露骨に陰らせた。
「やっぱ、龍か…!」
 馬に乗って、現出した龍を遠くに見やり、少年が呻いている。その少年の後ろには初老の女性が乗っていて、やはり龍を見つめている。そして、馬の頭の上に白いウサギが乗っており、鼻をヒクヒクさせながらやっぱり龍を見つめていた。
 避難しなさい、と命じようとして、すぐにイサは思い至る。自分の隊長が、誰に会いに行っていたか。しかし、その人たちであれば、なおのこと、
「フィアルカ様とお見受けします。」
 イサは、馬から下りようとしている女性に声をかけた。女性は動きを止めてイサを見る。(その間に、少年とウサギが馬から飛び降りた。)
「龍が現出し、現在、ノヴァ隊長と隊員一名が戦闘中です。避難をお願いします。」
「その隊員の方とあなたは、龍討伐の騎士ですか?」
 フィアルカは、自分の疑問だけをイサに問いかけた。イサは、いいえ、と首を振ってから、もう一度「避難を」と伝える。だが、フィアルカは少年の手を借りて馬から降りて、
「騎士。お名前は?」
「…イサと、呼ばれております。」
「イサ。あなたのサーベルを貸してください。王の祝福を授け、龍と戦闘中の騎士に使ってもらいます。ラファル、届けてもらっていいわね?」
「勿論。だが、祝福を授け終わったら姫さんは庁舎に戻ってくれよ。」
 少年(ラファルだ)の言葉にはフィアルカは答えない。ラファルは「頼むよ…」と呻きながら、イサからサーベルを受け取り、ラファル自身が持っている短剣を抜いた。そして、跪きこそしなかったが恭しくフィアルカに短剣の柄側を差し出すと、フィアルカは素早くも鷹揚さを感じる動きでそれを受け取った。そして、その短剣でフィアルカは自分の掌に一筋の切り傷をつけた。
「そんな派手に切らなくても。」
 と、ラファルは言いつつ、サーベルを横にして両手で掲げ、フィアルカに前に差し出した。フィアルカはその刀身に、血が流れ出した掌をすっと這わせ、
「護国の騎士に、祝福を。」
 と囁くのだ。刀身についた血は、青い火花を一瞬散らして消える。
 ラファルはそのサーベルを鞘に納めた。ハンカチをフィアルカに渡し、代わりにフィアルカから短剣を受け取る。そして、片手にサーベルを持ち、もう片手には手綱を持って、馬に乗った。
「姫さん、おれも龍討伐を手伝ってくる!姫さんはすぐに支部庁舎に避難するんだ!エアリアル、頼むぞ!」
「あなたに頼まれなくとも!」
 エアリアル(白うさぎだ)が胸を張る。一方のフィアルカは、ラファルの頼みには応えず、ただ「気をつけて」と伝えるだけだ。
「絶対、支部に行くんだぞ!」
 とラファルは叫んで、馬の腹を蹴った。フィアルカはラファルのハンカチで掌を押さえながら、
「イサ。結界が張れるまで、どれぐらいですか?」
「はい。あと、3分程度です。」
「エアリアル、それまでイサと私を守ってちょうだい。」
「姫様!?避難をいたしましょう!」
「いいえ。しません。私がイサからサーベルも借りてしまったから、結界が張れる間での間、イサを丸腰でこの場にいなきゃならなくなった。私の命令で、騎士が危険にさらされるのよ。ならば、騎士の安全は我々で確保しましょう。」
「詭弁!それは詭弁ですよ!姫様の忠実な僕であるこのエアリアル、今回ばかりはご命令に従えませんよ!」
「いいえ。これは国王の命令です。私が国王であるお兄様から命じられたことは、この街の騎士を監視しながらも協力し、街の方々の信頼を取り戻すように尽力すること。龍を街に出してしまっては、その信頼も遠のくばかり。まずが結界師が無事でいること。支部から応援の騎士が来るまで、ここでイサを守ってちょうだい。」
「………うう、姫様はお耳を貸してくれないのですよ…。かくなる上は……、そこの騎士!あなたのことも守ってやりますから、早く結界を張るのですよ!」
 エアリアルが後ろ足を踏み鳴らすが、イサは粒子が流れて行く先を見てから、
「そうしたいんだけど、ごめんね、うさぎさん。もうちょっと掛かりそうだなあ。」
「きーーー!!根性見せなさい!!」
 エアリアルはさらにずだんずだん!!と後ろ足で地面を踏みならした。



第2話‐⑤へ続く》



-----------あとがきのようなもの---------------

前に【妖精返り】は超能力…と書いたけど、設定を整理し、ちょっと違う設定に変える予定です。
まあ、「不思議力」であることには変わりない。

ノヴァの【妖精返り】の力が『発火』な理由なんですが、
「主人公の協力者である組織の人間」で「世界観や国のシステムの説明を担う」役どころが
「鋼4話辺りのマスタング大佐だな」と思ったので、「じゃ、炎使いで」といい加減に決めました。
いい加減に決めたので、「空気を操れるエアリアルとなら、この龍を一瞬で倒せるのでは…!」
と気付いたのは、話を書き上げてからでした。

 

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