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ヘヴンズフォール : 第2話-⑤


長編オリジナル話の更新です。
だらだらやってます。やっと戦闘シーンを書けました。

タイトルは『ヘヴンズフォール』。
本日は、第2話‐⑤の更新です。


まあ、読んでやってもいい、という方は「つづきを表示」からどうぞ。




『ヘブンズフォール』:
 第2話「私の務めは果たします」- ⑤
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 騎士団・アイロット支部には、演習場がある。広い演習場には、市街を模した煉瓦の壁が並ぶ区画がある。それは、『龍』が市街に現れたときを想定して行う訓練用の施設だ。
 この国において、騎士団は軍隊も警察でもない。国防を担う軍隊は別に組織されている。法の遵守と秩序の守護を担う警察も別に組織されている。この国の騎士団は、王家のものだ。王家を守り、王家とともに国土を『護り』、そして、その国土で生まれ国土を荒らす謎の存在である『龍』を狩る。それが、騎士団の仕事だった。
 だから、騎士団の演習場は「対龍訓練」用に作られている。市街に『龍』が現れ、その討伐とともに市民の避難を消防と連携して行う…、そんな状況を想定した訓練を、煉瓦の壁や柱(建物や木を模しているのだ)や石畳の道や井戸が意図的に置かれた演習場で行う。
 ノヴァは馬を走らせ、その演習場へ向かった。今、この騎士団支部に現れた龍は、漂い、時には猛スピードで追撃する。細長い体と、細長い触手を振ることで凪ぎ払い、細かい牙が生えた口でかみついてこようとする。攻撃手段は単純だ。入り組んだ場所であれば、移動も攻撃も封じやすい。
 龍は【妖精返り】であるノヴァを追う。演習場に向かって行くノヴァの背中をめがけて龍は突進しようとし、体内の数珠繋ぎの球を縮めている。龍は、斜め後ろから己に接近するウルズを気にする様子はない。ノヴァを追っているのは、自分を傷つける力を持っている相手を怖れているのか、それ以外の理由があるのか。それも分からないのだ。龍について、分かっていることなどほとんどない。分かっていることは、龍を傷つける方法だけだ。――龍が動きを一瞬止めた隙に、ウルズは馬を跳躍させて龍の体に着地させた。
 龍を傷つける方法は3つしかない。だから馬に踏まれても、龍の体は傷つかない。龍が馬に踏まれた部分から、分かれるだけだ。その様に、ウルズは子ども時代の粘土遊びを思い出す。よくこねた粘土のかたまりを、引っ張って二つに分ける。そんなことを思い出す。
 細長い体の真ん中の位置を馬で踏みつけたせいか、龍はそこから分裂し、同じ大きさのニ対になった。分裂とともに、尾の先端であった場所に頭と触手が出来上がり、分裂した箇所は2対とも尾になる。やはり粘土遊びと同じだ。二つに分けた粘土のそれぞれを整形して、同じ形を二つ作るそんな粘土遊び。そして、分かれた二つを一つにまとめることも粘土は可能であるように、ニ対に分かれた龍は頭同士を空中でぶつけ、その接点から結合した。もとの大きさの龍に戻る。
 龍は、3つ以外の方法では傷つかない。それ以外の方法では分裂と結合を繰り返し、元に戻る。そんなことは分かっているので、ウルズが馬で踏みつけたのも攻撃ではない。分裂と結合の時間を生み出す、時間稼ぎだ。
「ウルズくん!ありがとう!」
 前を行くノヴァからの礼が聞こえた。ノヴァは演習場について、馬から飛び降りる。「君もありがとう」とノヴァは馬に告げ、手綱を手放した。
馬は、演習場から遠ざかるように走り出す。同時に、演習場の先に光の壁が立ち上がった。
「結界も張れたみたいだ。君も避難を!」
「だが、隊長、」
 龍は再度、ノヴァに向かう。ノヴァは演習場に並ぶ煉瓦の奥へと走り出し、
「大丈夫!もうじき龍討伐隊の援軍も来るだろうし!援軍が来たらここまで案内して!」
 龍と戦うことができるのは、騎士団長より認められた討伐員、と定められている。有効な攻撃手段が限られている龍相手に、必要以上の犠牲を出さないための騎士のルールだ。討伐員ではない騎士たちは、討伐員のサポートと一般人の保護が任務となる。ウルズは討伐員ではない。文言化はされていないが、【妖精返り】ではない騎士は討伐員にはなれない。その身だけでは龍への攻撃手段がないのだから、当然といえば当然だが。
「…っ、了解した!」
 ウルズは叫んで応えて、来た道を馬で戻る。その返事を聞きながら、ノヴァは演習場の細い道を身を低くして走っていく。
(あの龍の攻撃は、あの長い体での凪ぎ払いや突進。ここの入り組んだ道なら動きを封じられる。)
 路地裏を模した造りになった細い道で、時折、炎を頭上に打ち上げながらノヴァは走る。
(あの龍は高い位置を飛べない。上空から襲ってくることはない。入り組んだ道に誘い込めば…前に進むことしかできないし…)
 死角…といっても、あの龍に目があるのかは疑わしいが。しかし、龍
が向かっている方向とは異なる方向から、攻撃を仕掛けることはできる。ノヴァは打ち上げる炎で自分の位置を龍に知らせながら、疑似路地裏をぐねぐねと駆けていく。ある通路の入り口までノヴァはやってきて、一度立ち止まった。その背後に龍がやってきたタイミングで、その通路の中へと走る。龍もそれを追い、通路の中へとやってきて…そして、触手で周囲の壁をなぞり出した。その触手の先で通路の幅を確認したのか、龍は通路に頭をつっこんだ。尾であれば通る隙間だが、頭はぎりぎり通るか…という隙間だった。ずるりずるりと壁を削るように進む龍の前方で、ざ!と音がした。通路を抜けた先で、ノヴァは龍に指を向ける。この演習場へ龍を誘導してきた理由こそ、この状態を作り出すことだ。
(遮蔽物がある方が、僕の炎の威力も強まる!)
 ノヴァは横凪ぎに指を振るった。彼にしか見えない粒子が、細い通路を走り抜け、龍の頭に達する。粒子が龍の頭にぶつかった瞬間に、炎が破裂するように巻き起こった。壁が左右にある通路では、炎も分散されず熱も逃げない。その通路内の空気も熱されて、炎だけではなく高温の空気も龍の体を灼く。龍の頭は消し炭になり、ぼとりと通路の地面に落ちた。そして、炭化した頭は青白い光の粒になって空中に霧散する。
 龍を傷つけることができる三つの力で龍を傷つけた場合は、その傷の周辺の細胞は分裂と結合の力を失う…とされている。これがマッチで起こし油で燃やした『ただの』炎であれば、龍は焼けたところから分裂と結合を繰り返し、炎が消えるまでやり過ごすのだろう。
 ノヴァはサーベルを抜き、通路に向けた。龍討伐の多さから、ノヴァは龍の生体を知っていた。龍の体は全て通路に入っていない。灼けなかった尾の方は、無事だろう。であれば、龍は、尾を切り落とす。トカゲがしっぽを切るように己の尾を切り落として分裂し、そちらに頭を生やして一回り小さな龍として向かってくる。通路に充満する煙の向こうから小さくなった龍が飛んできたとき、先ほどのように頭が通路に引っかかることはない。高速で飛ばれたら、炎をぶつけることは難しい。なれば、通路の入り口で剣を構えて待ちかまえるべきだ。そのサーベルは【王の祝福】を受けており、龍を傷つけられる力の一つだった。
 ノヴァの予測通り、小柄になった龍は弓矢のように通路を飛んできた。思っていたよりも小さい…、と思いながら、飛んできた龍の頭をサーベルで突く。頭から体まで龍はサーベルに突き刺さり、
 そして、もう1体の龍がさらに通路を飛んできた。
(波状攻撃!?)
 龍は無事であった尾を切り離し、複数の龍として分裂したらしい。ノヴァのサーベルには、柄元まで龍の体が突き刺さっている。サーベルに刺さった龍は光の粒に変化していくが、龍の追撃までにサーベルから消え失せるには間に合わない。龍の一部が刺さったままのサーベルでは攻撃もできない。ノヴァは間に合わないことを理解しながら、左手の指を龍に向け……
「退け!隊長!!」
 なぜか頭上から。さっきまで聞いていた声を聞き、疑問に思うよりも先にノヴァは地面を蹴って背後に跳んだ。通路を龍が飛び出してきたところに、赤毛の騎士が飛び降りてきて、その頭を真上からサーベルで一刺しにした。攻撃を受けた箇所が分裂をしない…ところを見ると、そのサーベルは【王の祝福】を受けた武器だ。
 龍は、サーベルの攻撃を受けていない体を、5体に分裂させる。その内の一体は、身を低くして駆けてきた少年の短剣で、腹開きの鰻のように切り裂かれた。残りの4体が少年に向かおうとするのを見てノヴァは駆け出し、龍の体が光の粒になって消えたばかりのサーベルを横凪ぎに振るい追い払った。同じように龍の頭が光の粒になって消えたことで、再びサーベルを正眼に構える赤毛の騎士と、三人で背中合わせになっている。龍4体は一度間を取り、2体ずつの結合を始めた。
「ウルズくん!どうしたの!?その武器!」
 赤毛の騎士はウルズで、龍討伐員ではない彼は【王の祝福】を受けた武器を持ってはいない。ノヴァの疑問に、ウルズは端的に答えた。
「その子から受け取った。」
 その子、と呼ばれた少年にノヴァは視線を移し、
「ラファルくん!避難してって言ったでしょ!?」
「何言ってんだ。おれとその兄ちゃんがこなかったら、お前やられてたぞ。」
 短剣を構えて涼しい顔で答えるのはラファルだ。ノヴァは、ラファルの役目を問いただした。
「フィアルカ様はどうしたの!?」
「逃げてる、と思う。」
「『思う』って何なの!?ラファルくんは護衛なんでしょ!?仕事してよ!」
「耳が痛いなあ。」
「…!まさか、ウルズくんの剣に祝福をくれたのは…」
「ああ。結界師の兄ちゃんの剣に姫さんが祝福を授けた。で、おれがそれをそこの兄ちゃんに届けたわけだ。」
「フィアルカ様も何やってるの!?ホントは国王様以外が祝福を授けたらいけないんでしょ!?ラファルくん、止めなきゃダメじゃないか!」
「ああ見えて姫さんは思い切りがいいんだ、昔から。いい女だよ、昔から。」
 言い合い…というより、ノヴァが一方的に騒いでいるのだが、ウルズはそれを全て聞き流し、ただ自分が構えた剣を見つめた。騎士に支給されるサーベルで、勿論、質は保証されているが、ごく普通の武器だ。ウルズが腰に下げている彼自身のサーベルと何も変わらない。
 しかし、龍を刺すことができた。
 討伐員ではなく【妖精返り】でもない自分でも、龍に有効な攻撃を与えることができたのだ。ウルズは、一度ぐっと唇を結んだ。
「隊長。」
 ウルズは、静かに隊長を呼んだ。「反省してよおおお!」とラファルに向かって叫んでいたノヴァだが、その静かな囁きもちゃんと拾って口を噤み、ウルズへと視線を向ける。
「俺もこのまま、戦っていいか?」
 ノヴァから反対の声はあがらなかったが、許可の言葉もでない。ラファルもウルズに視線を投げた。
「…俺でも、龍と戦えるんだ。」
 ウルズは淡々と呟いて、剣の背に沿って視線をあげていく。切っ先の先には、一体にまとまった龍。
「戦ってみたい。」
「……、もーーー…」
 ノヴァの溜息がすぐ横でした。
「一般戦闘員に龍との戦闘許可を出したら、僕、始末書書かなきゃいけないんだよ…。」
「何だ、兄ちゃん。涼しい顔して戦狂いか?」
 ラファルの、声は少年で口調が中年の笑いも、すぐ横でした。
 溜息も笑い声も一瞬で止み、ノヴァが状況を総括した。二人はウルズの両隣に立ち、刃を龍に向けている。
「…でも、今の最善手だね。よろしく頼むよ、ウルズくん。」
 一体になった龍は、再び数珠繋ぎの球を圧縮させ始めた。
「散開!あの攻撃は僕が受ける!二人は分裂した龍の撃破を!」
「「了解。」」


第2話-⑥へ続く》

-----------あとがきのようなもの---------------

龍との戦い描写は絵コンテ作りました。(笑)

ノヴァ隊の隊員たちの過去まで手が回んないため
今回のウルズの言動が説明されることはないと思うのですが、
まあ、書いてないところでいろいろあるんや、といういつものザックリ感でお届けします。

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