まよらなブログ

プロローグ:第三話

先走った志水の「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮?」妄想話の3話目です。
(プロローグ一話目は2月8日の記事、2話目は2月15日の記事へどうぞ。)

本日は、赤パイレーツの話です。
赤髪の海賊、と書くと凄そうなのに、まったくヘタレな辺りに自分の限界を感じます。
興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。




では、赤パイがアーモロードに向かっている途中の話を。
ちなみに、冒頭の会話の相手はデコソド。ハイラガの樹海を踏破したあと、
「運命の王子様探し」という絶対に終わらない放浪の旅をしています。


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プロローグ?:


「表に出なさい!」
 頬を思いっきりぶん殴られて、びしっと指まで指されて、
「その腐った根性、わたしが叩き直します!」
 ついでにそんな叱責を受けた。
 吹っ飛ばされて酒場の丸テーブルを倒しながら床に倒れる。ふらふらする頭と、ビリビリと染みるように痛む頬。眩暈の中で前を見る。自分に指を突きつける女剣士(腰に剣を下げているものの、メインの武器は傍らに立てかけてある斧らしい。どちらも使う気はないようだが。)と、騒ぐ客と逃げる客とこれ幸いと勘定も払わずに去る客と、それを追いかける店員と今さっき自分が殴りそうになった酒場の娘とそれを引き寄せて背中に隠すように立つ店の主人。
 とりあえず、あの子を殴らなくて済んで良かった、とは思う。
 だからといって、いきなり自分が殴られていいはずはない。目が回るが、女剣士を睨みつける。淡い茶色のくせっ毛を一つにまとめた若い・・・といっても20の半ばは過ぎているだろうが、小柄な女だ。彼女は拳を固めて、ファイティングポーズ。
「・・・いきなり殴ってくるったあ・・・」
 よろよろと起き上がりかけたが、がくんッ!と膝が落ちた。顔にかかった赤毛を払いのけながら、何とか踏ん張って立ち上がる。
「・・・いい度胸だな、姉ちゃん。」
「そんなボロボロで立ち上がるほうがいい度胸してると思います。」
「口の方もいい度胸だ。」
 ぶッ!と口の中の血を唾と一緒に吐き出した。少しハッキリしてきた視界で、店をもう一度捉えなおす。さっきまでいた奴らが、いない。
「・・・逃げられた!」
 叫び、剣士をぎっと睨む。 
「奴ら、逃げたじゃねえか!事情も知らないのに手え出すからだ!」
「事情なんか知りませんよ!どんな事情にせよ、お店のお嬢さんを殴ろうとしていいはずがありません!」
「知るか!俺は・・・」
「知るかで済むか、」
 声は意外にも近くからした。剣士は床を蹴って、一瞬で自分に殺到してきたらしい。やばい、このねえちゃん、相当の使い手だ、と思ったときには、身を低くしてきた剣士は拳を下から伸び上げる。
「この馬鹿モンがああああああッ!!!」
 そんな怒号とともに、剣士の拳は顎を打ちあげた。
 ごわん・・・!という鐘のような衝動を感じながら、赤毛の海賊は後ろに倒れていく。薄れる意識の中、事の顛末を走馬灯のように思い出した。
 そもそも酒場の娘を自分が殴ろうとしたのを見たこの女が、止めに入ったのがキッカケで、酒場の娘を殴ろうとしたのは、娘が自分の邪魔をしたからそれを払いのけようとしたからで、娘は俺が他の客の首を絞めようとしたのを止めに入ったのであって、俺が奴らの首を絞めようとしたのはどうしても奴らが許せなかったからで、なんで許せないのかっていうと、奴らがガーネットの遺品を並べて彼女を殺したときのことをゲラゲラ笑って話していたからで、ガーネットはそいつらに錘をつけて海に沈められたらしくて、その理由は元締めの上前をハネた見せしめだったからで、ガーネットが上前をハネた理由はアイツが金のためなら何でもやる女だからで、そんな女と仲間だった俺は一度役人に売り飛ばされたこともあるわけで、
 じゃあ、なんでそんな女の死を知って俺は暴れたのかっていうと、そんなのはよく分からない。
 ただ思い出すのは、海に浮かんで気持ちよく笑うあの笑顔と、『あたし、赤が好きなのよ。』といって自分の髪に触れてくるあの指先だ。
 ・・・・・・なんで死んだんだ、馬鹿。
 赤毛の海賊はそこまで思って、そしてダウンした。


 赤毛の海賊・マルカブは目を開けた。夜風に当たって、じりじりと痛む頬と顎。視線を動かすと、酒場の前の道に転がされているらしかった。外は夜で、空には満月には僅かに欠けた月がある。
「あ、起きました?」
 声は頭の上からした。マルカブは目線を上に上げる。自分が横たわっている頭の先、酒場の入り口に腰かけて先ほどの女剣士がいた。マルカブは溜め息をつき、よろよろと身を起こした。
「・・・いいパンチだった。」
「どうもありがとうございます。」
 ぺこり、と剣士はお辞儀をする。別に誉めたわけじゃない、と思いながら、マルカブは道の上で胡坐をかき、剣士に向き直る。剣士はちょこん、と酒場の入り口の階段に座っている。そうしていると、先程の鉄拳が嘘のようだ。
「・・・俺はどれくらい寝てた?」
「一時間ぐらいですかねえ?」
「・・・店の娘はどうしてる?」
「お店を片付けています。呼びますか?」
「馬鹿言うな。」
「それもそうですねえ。」
 のんびりと剣士は答え、
「今日はもう店じまいだそうですよ。片付けをしないと、と。」
「・・・悪いことしたな。」
「本当ですよ、折角美味しいお料理だったのに。大振りの牡蠣を食べるところだったのに。」
 ぷう、と剣士は頬を膨らませた。意外と子どもっぽいらしい。
「そりゃあ、悪かっ・・・・・・痛・・・ッ」
 マルカブは謝罪の途中で顔をゆがめ、顎を押さえる。やりすぎましたね、と剣士はいい、傍らにあった荷物から粉薬を取り出した。
「巫医もやってるウチの爺が作った痛み止めです。良かったら使ってください。」
「・・・そりゃどうも。」
 マルカブは受け取るだけ受け取って、
「巫医・・・って聞いたことねえな。ねえちゃん、旅のモンか?」
「はい。ハイ・ラガード公国から来ました。」
「そりゃずいぶん遠くから来たな。」
「そうですねえ、もう何年も旅をしています。ああ、そうそう、ハイ・ラガードには『世界樹の迷宮』っていうのがあるんですけど、」
「?」
「先程、あなたが喧嘩をしていた人たちがこんな地図を忘れていきました。」
 と剣士は荷物の上に置いておいた羊皮紙を取り、膝の上で広げた。マルカブが首まで絞めようとしたあの男達が、ゲラゲラ笑って戦利品のように広げていた地図だった。あの馬鹿女の持ち物にこんなモンがあったんだ、と奴らは言っていて、マルカブもその地図を見たことがあった。『きっとココには凄いお宝が隠されているのよ!』とガーネットが目を輝かせて見せてきた、そんな地図だった。それを見た瞬間にアイツらに殴りかかったそんな一枚の地図だった。
 剣士は丁寧に地図の皺を伸ばしながら、
「ハイ・ラガードの樹海の地図に良く似ています。」
「・・・は・・・?」
「ですが、ハイ・ラガードの地図ではないようです。エトリアの樹海の地図とも違うようです。・・・場所的にも、アーモロードの樹海の地図ではないかと思います。」
 剣士はマルカブを見て、
「赤い印がついています。あなたの髪と同じ色の。」
 マルカブはほとんど泣きそうな顔で剣士を見返した。剣士は一言、
「大切な方の物ですか?」
「ああ。元・仲間のな。」
「・・・だからといって暴れていいわけではありませんよ。」
「分かってる。」
「暴れてしまうと泣けなくなります。私は、誰かを失って慟哭する人を見たくはありませんが、慟哭すら出来ないことは悲しいことだと思います。」
 そして剣士は地図を両手で持ってマルカブに差し出した。
「あなたはここに行くべきです。」
「・・・何だって?」
「そこで泣くといいと思います。ここに印を付けた方を思いながら。思い出すことが弔いになるのだと、私の姉は言っていました。」
 そして剣士は少し寂しそうに微笑んで、
「姉を見ていて思いました。その慟哭の先に、人はそれでも誰かの手を取れるのだと。」
 差し出された地図をマルカブは見た。俺が見たときは、こんな赤い印なんかなかったよな?ここに何を見つけたんだ?お宝だったのか?それともこれから向かうところだったのか?
 ・・・なあ、どうだったんだよ、ガーネット。
 問いかけながら、マルカブは両手で地図を受け取った。




 マルカブはボートの上で目を開ける。彼は今はゴザに覆われたボートの中。正確には、定期便の船べりに括りつけられた救命用の小船の中に横たわって潜んでいるのだ。
 マルカブは寝そべったまま一度大きく伸びをして、ぼりぼりと頭を掻いた。
「・・・あのときの夢か。」
 欠伸をしながら呟き、懐から受け取った地図を取り出した。あの剣士の名前も聞かなかったし、あれっきり
会うこともないのだろう。あの出来事自体、夢だったのかもしれない、と思う。
 けれども地図はここにあり、マルカブはあの剣士が言ったとおりに、アーモロードに、この印の場所を確かめに、向かっている。・・・そこで泣くかどうかは分からないが。
 マルカブは地図を仕舞いなおし、傍らに置いた剣を掴んだ。アーモロードの樹海に行くことになれば、新たな仲間を探すことになるだろう。何となくそれは気が引けた。一度、仲間に裏切られた経験があるから、ということもあり、また失うのではないかという不安の所為もあり、何となくガーネット以外の人間を仲間にしたくない、というような気持ちもある。
「・・・俺らしくないよなあ。」
 マルカブは呟いて、軽く目を閉じた。まあ、そんなことはアーモロードで考えよう、今はともかくその街に向かうことが重要だ――、そこまで思い、目を開ける。そして剣を抜いて、横になった姿勢のまま一閃。
 ゴザごとボートを船に括りつけているロープを切る。ふわ・・・と体が浮く感覚のあとに、水飛沫。ボートが船から落ちて着水したのだ。マルカブは起き上がり、オールを掴んでボートをこぐ。海流に乗るまでは定期便の忍んで、海流に乗ってからはボートで逃げる、と考えた通りにいった。あの定期便が大砲などを積んでいないことも確認済みだ。一度、船から逃げ出せば、追われることも追撃されることもない。この風と潮に乗れば、寝ていてもアーモロードに着く。
 マルカブが余裕の笑みでボートを漕ぎ出したときだ、彼の耳に炸裂音が飛び込んできた。



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いやー、難産だったわこの話ー。


ハードパンチャーなデコソドですが、
プロローグ1話で名前だけ出てくる「ヴィッタちゃん」「ヴィオレッタ」は彼女のことです。
なお、師匠パラ子、デコソド、マグ子、ショタパラは姉弟です。
上から、飛び蹴り、正拳突き、歯に衣着せぬ毒舌、が必殺技となっており、
末っ子のショタパラはフルガード専門です。


次回は3人が会う話ですよ。

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