まよらなブログ

プロローグ:第四話

先走った志水の「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮?」妄想話の4話目です。
(プロローグ一話目は2月8日の記事
 2話目は2月15日の記事
 3話目は2月28日の記事へどうぞ。)

本日は、黒ゾディ、赤パイ、金プリ子が出会う話です。
では、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。



では、三人が出会う話を。
かなり視点がゴチャゴチャしますが、あえて区切らないで書きました。
途中で唐突に登場するのは、頭領シノビです。
いわゆる「命を狙ってきたのに途中から仲間になるキャラ」です。(ネタバレネタバレ!)

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プロローグ?:


 夜に響く炸裂音。
 アヴィーは音に振り返り、カリーナは天井の扉を跳ね上げ、マルカブはオールをこぐ手を止めた。そして、定期便の後方から火の手が上がっているのを見た。
 カリーナは甲板に出て、辺りを見回す。もしかしたら追っ手かもしれない。船倉に隠れていたほうがいいかもしれないが、見つかったときには逃げ場がない。ならば、密航がバレても人がいるところにいた方がいい――、カリーナは危険を感じつつも、焔の影が見える船の後方に向かって走ろうとした。そこは消火のため、間違いなく船員が集まっているからだ。
 カリーナが木の床を蹴って走り出しかけたとき、急に伸びてきた手に襟をつかまれ、船の前の方向に向かって投げ飛ばされた。そして、船前方から後方へと走ってきたアヴィーと激突し、二人はもつれるように甲板を転がった。
 アヴィーが咳き込みながら身を起こしたときには、カリーナは彼女を投げ飛ばした誰かに首筋をつかまれていた。
カリーナは首を掴む腕を掻き毟り、足をバタバタと動かすが、その誰かは動じずにそのまま船縁へと静かに歩いていく。そして、船縁よりも高くカリーナの体を持ち上げた。
 月光の下、一人の男が少女を海に投げ飛ばそうとしているところをマルカブは見、カリーナは自分を海へと落とそうとしている男の顔を見る。男は顔の半分を布で隠し、額当てのある皮の帽子をしていた。目許しか見えないが、額の×印の傷を、月明かりはありありと照らし出す。
 カリーナは奥歯を噛み、男の腕に爪を立てる。マルカブは少女の頭にきらきら光る髪飾りが載っているのを見て、静かにボートを船に向ける。アヴィーはよつん這いの姿勢のまま、ぽかんと少女と男を見たが、――その鼻が空気の変化を感じ取った。
 「ダメだ!!」
 アヴィーは咄嗟に叫んだ。
 その声に、カリーナを海に落とそうとしている男が彼をちらりと見たが、無視をしてカリーナを掴む手を離そうとした。
「ダメなんだよ!!中に入って!!」
 アヴィーの叫びは、男に対する制止の言葉ではなく、もっと切羽詰った忠告だった。
「風が来る!」
 その声をボートを漕いでいたマルカブが聞く。マルカブは天頂を見、西の空を見、そして、遠くの空気が微かに震えているのを感じた。さああああ・・・!という波の音が少しずつ増幅されている。音はこちらに向かっている。いや、音だけではない。音の本体が、こちらに来る!
 マルカブは鳥肌を立てて、身を沈めボートの縁を掴んだ。だが、船上の男は少女の首を掴んでいるだけだった。
 そして、突風が西から大砲のように殺到した。
 突然の暴風に、船の帆はぼん!と膨れ、船は大きく傾いた。男は思わず船縁を掴み、カリーナは宙に放り出され、アヴィーは傾く甲板を蹴って宙に飛び出し、少女に向かって手を伸ばす。転覆しかけるボートの上で、少年少女が月を後ろに宙に飛び出したのを見たマルカブは、意味を見出せないまま自分から海に飛び込んだ。
 三人はほとんど同時に海に落ち、風に煽られた高波はマルカブのいないボートをひっくり返し、アヴィーとカリーナがいない定期便を大きく揺らしていき、
 そして海は再び静かになった。


 ――。
 ――、掴まなければ。
 あの手を掴まなければ。
 きっと、僕は、私は、俺は、後悔する。



 暗い海に飛び込んで、前も見えないというのに、それでもアヴィーは少女の腕を確かに掴んだ。少女は応えるかのように、アヴィーの手首を掴み返す。良かった、と思い、安堵と一緒に意識が遠のく。ダメだ、と思いながらも意識が遠のく。
 ――ごめん、ごめんね。折角飛び込んだのに、無責任だよね。
 分かっていながら、意識は遠のく。遠のく意識の中で養母の声がする。「元気に帰ってくるのだぞ。」
 ――ごめん、ごめんね、シルン。僕は約束破るかもしれない。シルンはいつも約束を守ろうとしてくれたし、果たせなかった時はいつも謝ってくれたのに、僕は謝ることすらできない。
 アヴィーは泣いたようだった。海の中ではそれが涙なのか海水なのか分からなかったし、薄れる意識の中では自分が泣いたかどうかも定かではなかったが。
 それでも、手は離さなかった。


 黒い波に飲まれて、思わず意識が遠のきかける。それを誰かが引き戻す。誰かがカリーナの手首を掴んで、彼女を現実に戻すのだ。暗い海の中、カリーナはその誰かは先程の少年だと、何故か確信するのだった。
 ――このままではあの少年も巻き添えにしてしまう。
 そう思って、自分の手首を掴む誰かの手首を掴み返した。耳の中で、あのときの騎士の声が響く。「走ってください、姫。」
 ――ああ、そう、そうだ、進まないと。前へ、上へ、浮上して!!
 必死にもがき、海上に顔を出そうとする。それでも波打つ海ではどちらが上なのかすら分からなかったし、泳いでいるのか流されているのかすら分からなかった。カリーナ手足をバタつかせ、圧し掛かってくる水圧と戦う。
 ――でも負ける!きっと負ける!この海に、私が勝てるはずなどない!!
 海に負けるということは死んでしまうということだ。カリーナはそれを知りつつ、もがきながらも、圧倒的な力の差を認識するのだ。
 あの時、騎士は続けた。「今の貴女にはそれが出来る。そうして生き延びるのです。」
 ――、そんなの無理よ!!
 カリーナは泣いたようだった。海の中ではそれが涙なのか海水なのか分からなかったし、焦る意識の中では自分が泣いたかどうかも定かではなかったが。
 それでも、手は離さなかった。


 暗い海に飛び込んで、少年少女が落ちる辺りに検討をつけ、マルカブは腕で水をかく。知りもしない誰かのために、何でこんなことをしているのか全くもって分からなかった。きっとあの娘が身に着けている装飾品が欲しくて、礼代わりにふんだくってやろう、とか、恩を売ってあいつらの親から謝礼金を受け取ろう、とか、後から適当に理由をつけて、荒ぶる海を進むのだ。でも、そんなものはきっと本心じゃない。
 そう、本心ではない。知らないガキどもでも、誰かが海に沈んで死ぬのは嫌なんだ。きっと、今だけは嫌なんだ。ガーネットの地図を持っている今、彼女と同じように海に沈んで死ぬ誰かがいると思うことが嫌なんだ。
 ――だったら、手を伸ばしてしまった方がいいじゃねえか!
 酸欠で意識が霞む。だからこそ、夢の中のように本心や思い出が溢れるのだ。そんな中で、今そこで語られたかのように、あの時の女剣士の声がする。「その慟哭の先に、人はそれでも誰かの手を取れるのだと。」
 ――、ああ、そうなら。そうであることをもう一度信じていいのなら!!
 指の先に何かが絡まる。女の髪だ、と思った途端、マルカブは腕を回し、そこにあるだろう誰かの体を抱きかかえる。右腕に一人、左腕に一人。確実に二人を抱える。
 マルカブは泣いたようだった。海の中ではそれが涙なのか海水なのか分からなかったし、混沌とした意識の中では自分が泣いたかどうかも定かではなかったが。
 それでも、手は離さなかった。


 突風も高波も去り、嘘のように静かになった海を月が照らす。白い月明かりの下、ざぶん!と音を立てて、三人分の頭が海から上がった。赤毛の男は頭を振り、両腕に抱えた二人の子どもを揺さぶった。ぐったりとしている子ども達だが、黒髪の少年は咳き込んでからまた気を失い、金の髪の少女は男にしがみついて嗚咽を漏らした。男は二人が生きていることに安堵の溜め息をつき、ぐるりと周囲を見回した。
 黒い海の中、灯りがみえる。定期便の船上で、船員達が爆発と突風と高波の被害を確かめようと慌しく動いているのだろう。
 男はさらに周囲を見渡して、近くに転覆したボートを見つけた。男は少女が泣き止むまで少し待ち、意外と早く泣き止んだ少女に「一人で泳げるか?」と声を掛けた。
 少女はびく!と身をすくめ、自分の身に何が起きているのか把握仕切れていない様子ながらも、こくり、と頷いた。付いて来い、と男はいい、ゆっくりと少女の体を離す。支えを失った少女は一度沈みかけたが、足を動かして海面に頭を浮かべた。
 男は少年を担いで、転覆しているボートへ向かう。少女はそれに続きながら、本当に私は生きているのかと疑問さえ浮かぶ浮遊感の中にいた。



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どこで区切るか迷ったけれど、ここまで一気に。
私の話は三人称と一人称が混ざりがちなんですが、まさにその悪癖バリバリの話だと思います。

もうちょっとプロローグが続きます。いつになったら街につくのやら。(笑)

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