まよらなブログ

一章 第一話。

先走った志水の「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮?」妄想話です。
本日から、「第一章」です。章のタイトルは『掌に月』ですが、
章ごとにタイトルなんて、なんか恥ずかしいので書かない!(笑)


やっと海都・アーモロードに上陸しました。
では、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。




では、アーモロード上陸後の三人の様子から。
街を歩くカリーナ(プリ子)が書きたいので、樹海に潜るのはいつになることやら。

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一章 一話:

「さあ、ついた。」
港の片隅にボートを付けて、マルカブは陸に飛び移った。彼の手には膨らんだ包みがある。続いて降りたアヴィーは憮然とした表情で、よろめきながら降りたカリーナの頭には髪飾りはなかった。アヴィーはカリーナに手を貸しながら、マルカブの持つ包みを見る。その中身はカリーナの髪飾りだ。
「あの、やっぱり、それ、カリーナに返してください。」
「あのな、アヴィー。これは俺と嬢ちゃんの取引だ。」
「お釣りが来ると思います。」
「残念。俺に、釣りはねえ。」
 軽口を叩くマルカブに、アヴィーは何か言おうと口を開いたが、
「ええ。私は了承しました。それは貴方のものです。」
 カリーナがきっぱりとマルカブに告げ、マルカブは、ほらな、とアヴィーに肩を竦めて見せた。
アヴィーは唇を尖らせたが、それ以上、口を開かなかった。
「じゃあ、ここまでだ、お二人さん。」
 マルカブは帽子を外し、わざとらしく礼をしながら、
「折角、助けた命だ。元気でな。」
「ええ、ありがとうございました。」
 カリーナはぺこり、とお辞儀をし、アヴィーはぷん!とそっぽを向く。マルカブは笑って帽子を被りなおし、じゃあな、と言って、あっさりと立ち去った。港に残された二人は、少し困った様子でその背中を見送った。
 港の人ごみにマルカブの背中が消えた途端、くううう、とカリーナの腹の虫が鳴いた。
 カリーナは真っ赤になって腹を押さえ、アヴィーはそうだ!と何かを思いつき、
「カリーナ!せめてのお礼にご飯を奢らせて!」
「え。」
「ちゃんとしたご飯も食べてないし、丁度いいよね。あ、でもその前に、定期便の船を探して、船長に無事だったって伝えないとだな・・・。うん、その後、ご飯食べに行こうよ。・・・カリーナの髪飾りには、全然足りないけど・・・」
「ティアラのことは気にしないで。」
「でも、僕、宝石のことはよく分からないけど、高価なものでしょう?」
「いいの。値段が問題ではないから。」
「・・・うん・・・」
「アヴィー、食事をご馳走になるわ。」
 あまりにアヴィーが申し訳なさそうにしているので、カリーナは自分から誘いなおした。
「私、この国にどんな食べ物があるか、楽しみだわ。」
 カリーナがそういうと、アヴィーは笑顔になって、うん!と頷いた。



 後部甲板が焦げた定期便が港に停まっている。カリーナは少し離れた場所にある港の階段に座って、それを眺めている。まず、船長に無事を伝えてくるね、とアヴィーは定期便に向かったのだ。カリーナは、密航のことを正直にアヴィーに話し、定期便には向かわず港で待つことにした。
 カリーナは、昨夜の額に傷のある男のことを考えた。彼があの爆発を起こし、騒ぎに乗じて自分を殺そうとした、と考えるのが妥当だろう。だとしたら、あの船の火事も自分の所為なのだ。
(・・・怪我をした人がいなければいいな・・・)
 カリーナは小さく溜め息をつき、顔を両手で覆った。定期便の人たちも、あの騎士も、無事だといい。でももう、祈ることぐらいしか出来ない。カリーナは顔を手で覆いながら、祈ろうかと思ったが、どこに向かって祈ればいいのかすら分からずに、もう一度溜め息をついた。
 丁度そのとき、自分を呼ぶ声を聞く。カリーナは顔を上げて、声のした方を見た。
アヴィーが走ってやってくる。
「カリーナ、具合悪いの?」
 息を上げながらアヴィーは聞く。カリーナは頭を振って、
「少し疲れただけ。」
「大丈夫?」
「ええ。・・・船はどうだった?」
「小火で済んだって。それに僕以外で船から落ちた人もいないみたい。船長、とっても喜んでたよ。」
「そう、何よりね。」
「ただ、・・・あの突風の後、救命ボートが一隻なくなったって。」
「・・・それって・・・まさか。」
「うん、マルカブが乗ってたボートだと思う。妙に保存用の水と食べ物を持ってるなって思ったんだけど・・・ボートに積んであった救命用具の中身だったんだ。・・・あと、」
「うん。」
「爆発の原因、ランプの火が運んでた薬品に引火したんじゃないかって。それが火薬に伝わって、爆発して。あの船、大砲とかはないけれど、火薬で緊急信号を打ち上げることもあるし・・・。その火薬と薬品が化学反応を起こしたかもしれないっとも言ってたけど。」
「どうかしら。」
「ねえ、カリーナ。あの時、君を海に落とそうとした人が・・・」
「アヴィー、私もよく分からないの。船長たちには悪いけれど・・・」
「・・・うん。確証もないし・・・、それに怪我をした人もいないんだしね。」
 アヴィーは気持ちを切り替えて、
「じゃあ。カリーナ。何か食べに行こう。」


 港から大通りを歩き出す。島のどこからでも見えるらしい世界樹に向かって伸びる大通りだ。
 カリーナは、魚が大きな箱に積まれて運ばれていく様や、海の男たちが荒い言葉使いで仕事をしている様や、異国の服を着た人達や、肌や髪の色が異なる人々が同じ言葉で(たまに通訳を介していることもあるが)話している様をキョロキョロと見回している。アヴィーは世界樹を興味深そうに見上げながらも、そんなカリーナをたまに振り返って、声を掛けながらゆっくり進んでいった。
 ふと、人ごみの中から香ばしい匂いがしてきた。匂いに誘われたカリーナが、屋台で焼いている肉の串焼きを不思議そうに見ていると、アヴィーは串焼きを二本買って、一本をカリーナに手渡した。きょとん、としているカリーナの前でアヴィーは串焼きの肉にかぶりつき、
「あち・・・!」
 と、言いながら満足そうに目を細め、ハフハフ言いながら肉を噛む。そして、驚いた様子で自分を見ているカリーナに気がついて、首を傾げ、
「食べないの?熱いから気をつけてね。」
「・・・このまま、食べるの?」
「え?何で?」
 今度はアヴィーの方がカリーナを不思議そうに見てから、ああ、と頷いた。
「カリーナ、お嬢様なんだね。」
「え・・・、・・・ま、まあ、そういうことになるのかしら。」
「こういう食べ方、行儀悪く思うんだ。でも、いいんだよ。ゴミだけちゃんと捨てれば。」
「・・・そうなの?」
「うん。熱いウチの方が美味しいよ。」
 食べてみなよ、と言外に勧められてカリーナは串焼きを見た。フォークもナイフもなければ、皿すらない食事は初めてだ。茶色く照り照りとしているタレで焼かれた肉は、端が焦げていて、苦そうだし固そうだし熱そうだった。けれども、美味しそうに食べるアヴィーを見て、カリーナはそろそろと肉に噛み付く。と、じゅっと肉汁が出てきて、口の中で甘辛いタレと絡まった。カリーナは噛み付いたままの格好で目を輝かせた。
「おいしいでしょ?」
 アヴィーの問いに、カリーナはもぐもぐ口を動かしながら頷いた。もぐもぐごくん!と咀嚼して
「どうしてこんなに美味しいの?」
「屋台の食べ物って美味しいよね。」
 アヴィーも肉の塊を頬張って、口の中でモゴモゴさせながら(口に食べ物を入れたまま喋るのはマナー違反のはずなのだが、カリーナにはそれはとても美味しそうな食べ方に見えた)、
「きっと、外で食べるからだよ。」
 アヴィーの言葉に、カリーナは南国の空を見上げる。空には太陽、まばらな雲、そして、この街だからこそ見える世界樹。
 そうか、ここは『外』なんだ。カリーナは改めてそう思い、
「・・・きっとそうね。」
 と、肉を少し口の中に頬張り、それを口に入れたままで同意した。
 そうだ!とアヴィーが声を出し、
「カリーナ、市場に行ってみる?食べ物もたくさんあるだろうし、そこで食べるのも楽しいかもよ!」
 アヴィーが楽しそうに思いつきを提案する。邪気のないアヴィーの様子に少し気圧されながらも、
あまりに素直な彼の空気に当てられて、カリーナも素直に「うん。」と頷いた。


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食べ物が美味しそうな作品は問答無用で名作!!
と思っているので、串焼肉の描写には真剣になりましたが、
真剣になりすぎても駄目ですね、難しいなあ。
ちなみに、王族が最初に食べる庶民料理→ノギ屋の弁当(精霊の守り人)→肉の照り焼き風、
という発想で、肉の串焼です。焼き鳥よりもちょっと大きいぐらいのイメージです。
どうでもいいですね。


次回は、市場の話です。今度は赤パイ・マルカブがメインです。いつになったら樹海(以下略)。

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