まよらなブログ

一章第6話。

先走った志水の「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮?」妄想話です。
一章の最後の話です。

ところで、アップした話より三話先ぐらいを書いているんですが、
二章からが書いてて楽しくて仕方なくなってきました。目指せ、学級会ギルド!

では、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。

では、前回の続きから。宿題の解答編です。

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一章 6話

 三人は、フェイデンに一通り街を案内してもらい、夕方にフェイデンとマリアの家であるフィニック家に戻ってきた。マリアが腕によりをかけて料理を作っており、家の中にはいい匂いが漂っている。アヴィーは匂いに釣られて台所に行ってそのまま手伝いを始め、カリーナもそれを見習って辿々しく手伝いをし、マルカブとフェイデンは早速酒を空け始めた。(といっても、フェイデンは下戸らしく呑んでいるのはマルカブだが。)魚も器用な手つきで捌いていたアヴィーだが、酒の肴を要求するおじさん二人にピクルスとチーズを持っていったところ、まあお前も飲め、と酒を勧められるのだ。アヴィーは、ぷ、と頬を膨らませ、
「飲まないよ、美味しくないもの。」
「ガキだなあ。」
「子どもだなあ。」
 下戸のフェイデンさんに言う資格があるのかな、とアヴィーは彼の持っているオレンジジュースの注がれたグラスを見ながら思うのだ。「フェイデンは飲めねえしマリアさんは飲まないし(マリアは大酒飲みらしいが妊娠中のため控えている)、つまんねえなあ。」と愚痴りながら、マルカブはチーズを摘んで口に放り込んだ。「まあ、飲めなくたって楽しめるぞー。」とフェイデンは言いながらピクルスをかじり、アヴィーを見上げる。
「アヴィー。ベクの宿題は解けそうか?」
「えっと・・・考えてはいるんですけど。」
「マルカブも考えてたから、一緒に考えるといいと思うぞ?」
 親切な人に冒険に誘ってもらえてよかったな、とフェイデンは言い、親切心じゃねえよ、とマルカブは呻くように言う。マルカブはどうも否定しがちだが、彼が全く善良な部類の人間であることはアヴィーも(カリーナも)薄々気付きだしていたので、否定も肯定もしないでいた。
「それより、フェイデンはいいのかよ?」
「何が?」
「アヴィーに何かあったら、アヴィーの母ちゃんに蹴りとばされるんだろ?だったら、樹海を冒険するなんて止めた方がいいんじゃねえのか?」
 マルカブが半ばからかうように聞くと、フェイデンはにこやかに、
「ああ、うん。シルンは心配性で親馬鹿だけど、アヴィーが選んだことならとやかくは言わないよ。それに、僕はアヴィーは樹海に潜っていくべきだと思うんだ。」
 フェイデンの答えに、アヴィーが不思議そうに問い掛ける。
「・・・どうしてですか?」
「アヴィーは言ったじゃないか。自分は、この世界がどうしてこう出来てるのか知りたいって。」
 答えてから、フェイデンは、ほんの一瞬、痛みをこらえるような表情をした。その顔に、アヴィーは見覚えがあった。養母や友人の冒険者が、かつてエトリアをまとめていた執政院長を語るときと同じ表情だ。高いカリスマと志で街を治めていたというその長と、養母たちの間で一体何があったのかまでは語ってくれなかったが。フェイデンはぼんやりと、自分の掌を見つめながら、
「そういうの、樹海に潜ると、ほんの一部、分かる・・・ような気がするんだよな。」
「・・・樹海で、ですか?」
「うん。・・・あのな、僕は植物のことを調べていて、今は図鑑を編纂中なんだ。いろんな国を回って調べたことをまとめてる。どこの国も、土も水も空も綺麗で、そこに生きる草木はどれも生き生きしてた。それがどれだけ価値があることか、どれだけの時間が必要か、・・・どれだけの想いがそこにあるのか、僕は樹海に潜って分かったから、」
 フェイデンは少し考えてから、一つ頷いた。
「僕は、植物学者として一番知らなくちゃいけないことを知ったんだと思う。」
「・・・頭のいいヤツの話は分かんねえな。」
 とマルカブが酒の入ったグラスを回しながら、
「真実とかそういうのってことか?小難しいこと抜きで、今必要なことが分かればいい気がするけどな。」
「マルカブ、そういうことをいうのは失礼だと思うわ。」
 そこへ、大皿に盛られたサラダを持ってきたカリーナが、唇を尖らせてたしなめる。
「私たち、お客なのに。」
「ああ、いいんだ。別にかしこまっていてほしいんじゃないからな。」
 フェイデンがパタパタと手を振ると、「だってよ。」とマルカブはカリーナに言い、カリーナは憮然とした様子で皿をテーブルにおいた。サラダの上に乗っているくし切りのゆで卵は不揃いだった。カリーナが切ったものだろう。フェイデンはテーブルに置かれた小皿にサラダを取り分けながら、
「マルカブが言ったことも大事だと思うぞ。もちろん、僕の意見も大切だと思う。問題はバランスだ。一人でバランスがとれないなら、他の人とバランスを取ればいいんだ。」
 そして三人に言い聞かせるように、
「パーティも、そういうものだぞー。」
「あらあら、ギルド長みたいな物言いよね。」
 とマリアが刺身の盛り合わせを持ってきた。アヴィーはその皿を受け取り、テーブルに置く。マリアは空いた両手で大きなお腹を抱え、
「そうそう、ギルド名も考えないとねえ。」
「ぎるどめい?」
「そう。樹海に潜る冒険者は冒険者ギルドに登録されるの。あなたたちのグループ名っていうのかしらね?」
「ちなみに、あんたらのギルドは何て名前なんだ?」
「『アンシシ』。」
 マルカブの問いかけにはフェイデンが答え、
「古い異国の言葉で、花開く、という意味らしいぞ。シルン・・・アヴィーのお母さんがつけたんだ。綺麗な名前だよな、そういうところは女の子らしいんだよな。血みどろの盾を持って、倒れた竜を踏んづけるような騎士なのにな。」
「・・・お前の母ちゃん、どんな人なんだ?」
 小さな声でマルカブに尋ねられたアヴィーは「きれいな人だよ。」とだけ答えた。「強くて凛々しくて、すてきな人よねえ?」とマリアもいい、台所に戻っていく。カリーナも戻ろうとしたが、お手伝いしてほしいときは呼ぶからゆっくりしてね、と言われて、その場に残った。ふと、カリーナは外が暗くなっていることに気づき、
「ねえ、アヴィー。もう月はでているかな?」
「え?」
「月を見たら、『月を手中にする方法』が分かるかな、と思ったんだけど・・・。」
「まだ、月が出る時間じゃないよ。でも、うん、そうだよね、月が昇ったら見てみよう。」
「意外と、『そんなことかよ。』って思う答えだと思うんだけどな。」
 と、マルカブは新たに酒瓶の栓を開けながら呟くように言う。それに悩んでるのは事実だけどな、と言いながら、瓶の中身をグラスに注いだ。濃い紫。葡萄酒だ。トクトク、と注がれる液体を見て、アヴィーは昼間見た風景を、何故か思い出す。大きな穴に向かって、落ちていく幾つもの滝・・・光を反射して光る水飛沫。
「反射・・・?」
 アヴィーがぼそりと呟き、マルカブはなみなみと葡萄酒を注いだグラスを持って、何だ?と聞き返した。その紫の液体が注がれているグラスの中に、アヴィーは白みがかった黄色い光を見た。
 アヴィーは、ぱっと視線を動かす。どうしたの?とカリーナが聞くが、彼は答えずに天井から下げられたランプを見上げている。
「そうか・・・光の反射・・・」
 アヴィーは呟き、テーブルにおいてあった陶器の椀に葡萄酒を注ぎ込んだ。
「アヴィー?どうした?」
「分かりました。」
 アヴィーは、葡萄酒の注がれた椀を両手でくるむように持ち、その椀を三人に見えるように向けて、
「月を手中にする方法。」
 アヴィーはもう一度、ランプを見上げる。
「光が、お椀の中に写ってるでしょう?」
 三人はランプを見上げ、そして椀をのぞき込んだ。椀の葡萄酒がランプの光を照り返している。
「・・・あー・・・なるほど。」
 最初に声を上げたのはフェイデンだ。
「お椀の液体の中に、月を映すわけだ。」
 言われて、カリーナとマルカブはもう一度、椀をのぞいた。液体の表面は静かに平らになって、ランプの光を丸い形のまま反射している。もし、濃い色の椀の中に澄んだ水をいれて月灯りの下に持っていけば・・・
 鏡のような水面は、月を映し込むのだろう。
「なるほど・・・月を手に入れろ、じゃなくて、『手中にする』のか。」
 マルカブが髭をなでながら、アヴィーの手の中・・・の椀の中に映っているランプの灯りを見ながら呟く。確かに、月の姿は『手の中』にある。小さな手鏡なら、同じことが出来るだろう。
「きっと正解だと思う。月が出たら早速見せに行こうよ、アヴィー。」
 カリーナはぽん!と両手を合わせて、笑顔を作り、
「アヴィーの先生になる人に。」
 と、そう言った。



 ――、丁度その頃。
 二人の人物がそれぞれ別の場所で手紙を書いていた。
 一人は昼間マルカブが髪飾りを売ろうとした商人だ。彼が座っている机には、様々な文献が広げられている。その中の一冊に、髪飾りの図があった。それはカリーナの髪飾りと全く同じものだった。その髪飾りの図の下には、解説文が添えられている。異国の王家に伝わる髪飾りで、王家の姫に伝わる髪飾り。それが王宮から出ると災いが起こるという言い伝えがあること、そのため王宮の外の人間で実物を見たものはほとんどいないこと、宝石の部分は隕石からとれた石という言い伝えがあること、しかしその組成はガラスとほぼ同等であること、偽物の宝石で作られた髪飾りなので王宮から出さずに隠しているのでは、という推測、などが書かれている。ティアラの名前は『プレアデス』というらしかった。
 商人は、手紙を書きながら、果たして客の情報を売るようなことをしていいか、と一瞬考えたものの、しかし金儲けが商人の正義だ、と考えを改めた。
 異国の姫君が行方不明になっている、と、とある情報筋から商人は聞いていた。そして、その国の貴族連中がその姫を真っ先に見つけたがっており、莫大な報奨金を用意していることも知っている。
 商人は、その報奨金狙いだった。そして、行方不明の姫君が持っているはずの髪飾りを見たと、手紙を書いている。このことを教えてどうなるかなど、商人は知らない。所詮は異国の話。この海都とは関わりのない話なのだから。

 もう一人、手紙を書いてる人物がいた。
 アヴィーに宿題を与えた、ベクルックスだった。彼もまた、『プレアデス』の髪飾りを見た、という手紙を書いている。しかし、その宛先は商人と同じ相手ではなかった。手紙の相手は古い友人だ。
 ベクルックスは、このことを教えてどうなるか薄々気がついている。異国の話ではあったが、全く無関係とは言いがたかった。なぜなら、手紙の相手である友人にとって、髪飾りの持ち主は危険な存在になりうるからだ。
 この手紙の結果、あの髪飾りをしていた少女が不幸な目に合うかもしれない、ベクルックスはそれを知りつつ、書き上げた手紙に封をした。しかし、それでも古い友人を助けることこそ、彼が・・・彼らが20年程前に誓ったことなのだ。
 ふと窓をみると、欠け始めた月がある。同時に、呼び鈴が鳴った。ベクルックスは立ち上がり、おそらく宿題の答えを出してやってきた少年を迎えることにした。





(二章に続く。)


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「月を手中にする方法」ですが、これがたった一つの正解ではないと思うんですよ。
ただ、どういう発想でこの問題を解くかを知りたかっただけだと思います。
で、この宿題ですが、
『せっかく占星術士だし天文に関係する話にしたいな、星とか月に関係するネタないかな・・・
 月といえば「月光密売人」の話が素敵だったな・・・ よし、月を杯に映し込む話にしよう!』
というわけで出来上がりました。「月光密売人」は、
クラフト・エヴィング商會の「じつは、わたくしこういうものです」で書かれてます


あと、それとなく世界樹?の話も匂わせてみました。
今後も、ちょこちょこ匂わせていきたいなあと思います。匂わせる程度ですが。


話が動き出してきた感じで、二章へ入ります。
さらに登場キャラを増やしながら、学級会ギルドを目指したいです。


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