まよらなブログ

二章第1話。

先走った志水の「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮?」妄想話です。
本日から、二章です。キャラが多いので、顔見せ話が続くなあ。

いきなり「あれ?一体いつの話なの?」というシーンからスタートしますが、
あまり深く考えないでお読みください。


では、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。


二章一話、というよりも、第0話のような扱いの話です。


ところで、一章6話で井藤さんからツッコミが来たんですが、
「パラほん。」(井藤さんとの合同誌・正式名「パラディンのほん。」)
と、この妄想話は、確かにぼんやり繋がります。
でも、妄想話を読む上で「パラほん。」を読む必要はないが、
「パラほん。」を読んだ人はこれを読まないと真相は分からない、ようにしたいです。



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「セイリアス!」
 誰かが自分の名前を呼んでいる。
「セイリアス!起きろ、セイリアス!!」
 それは懇願のようだった。
 だから、というわけでもないが、目をあける。ぼうっとした視界はまず海底の青を、それから珊瑚の赤を捉え、そして仰向けに横たわっている自分をのぞき込む血色の悪い顔を捉えた。いつもは無駄にキツい赤い目と視線が合うと、その目は安堵に緩むのだ。心底心配をさせてしまったらしい。
 何かを口にしようとして息を吸い、そしてむせた。咳き込むと、腹の辺りが引きつるように痛んだ。
「無理に喋るな。」
 と、赤い目と淡い金色の髪をした血色の悪い占星術士が、背中に腕を回してゆっくりと身を起こしてくれる。体勢を変えると、少し呼吸が楽になった。
 そして、気がついた。自分の鎧がかけ、その下の服にはべったりと血がついている。長い金髪の根本の方まで血が付き、乾いて固まりだしている。
「・・・な・・・」
 ありえないほどの出血量だ。これだけの出血なら、死んでいてもおかしくない・・・というより確実に、死ぬ。慌てて、腹に触れてみる。服の布地が破れ、湿り気がある。大量の血を布が吸っていたが、そこに傷はなかった。いや、腹だけでなく、どこにも傷がないのだ。
「何があった?ピックはどうした?」
 占星術士の問いかけに、ゆるゆると記憶が蘇り・・・、目を見開いた。
「・・・ピック!」
 仲間の名を呼んで、周囲を見回した。誰も、いや、魔物すらいない。あるのは、深い青の地面と赤の珊瑚、遠くから差し込んでくる淡い光。ここは海の中の迷宮。アーモロードの樹海、地下6階。そこで、仲間とはぐれ・・・古代魚の群に襲われて・・・駆けつけた仲間の一人と戦ったのだが・・・
 そこから先の記憶がない。
 辺りを見回す。ここは、違う。古代魚に襲われた場所じゃない。
「ベク!ピックはきっとこの先だ!」
 占星術士の腕を掴んで、叫んだ。
「この先で、魔物に襲われたんだ・・・!ピックがまだ戦っている・・・!助けに・・・!」
 そこへ、足音がした。
「ピ・・・!」
 きっと仲間が戻ってきたのだ、と思って振り返るが、そこにいたのは確かに仲間なのだが、もう一人の仲間だった。長い髭を顎に蓄えた気功師の老人は、こちらを見て安堵の息をついた。
「・・・クー・シー。・・・ピックは・・・」
 占星術士は現れた仲間に問いかけたが、気功師の手に握られたものを見て、言葉を止める。
 気功師は、動物の牙を連ねた首飾りと、そして桃色のような赤毛を一束、持っていた。
「・・・ピック・・・?」
 赤毛を見て、呆然と呟く。そして、なんと伝えていいか思案している老人に、噛みつくように尋ねるのだ。
「クー・シー!ピックは・・・!ピックはどうしたんだ!?」
「・・・この先の小部屋、」
 老人は普段の口調とはまったく異なり、重々しく呟いた。
「そこで、見つけた。ピックの装備と・・・」
 言うか言わざるべきか、老人は迷ったが、それでも冒険者らしく告げるのだ。
「あの子のものだと思える、髪の束・・・それと・・・血と肉片。」
 簡潔さは、逆にグロテスクだった。
「・・・ま・・・、待ってくれ。じゃあ、何故、私は生きて・・・ここにいる?」
 そうだ、古代魚に襲われて、そしてピックが、あの桃色のような赤毛の戦士が助けにきて、そしていつものように天真爛漫に「さっさと倒して、クーおじいちゃんとベクんとこ戻ろう!」と笑って、けれど古代魚は強すぎて、自分は腹に一撃を受けて、血が飛び散って・・・・・・
 ・・・あの後、どうなった?
 霞む記憶の中で、刃が見えた、ような気がした。そして、ここでのことは忘れなさい、という少女の声・・・、が聞こえたような気がした。生きて帰るだけで満足しなさい、そして二度と迷宮の奥へ進もうと思わぬよう――、そんな声だ。
「・・・・・・。」
 けれどそんな声も、すぐに記憶の奥へと身を隠す。ただ、呆然と、自分たちが戦っていた場所へと続く通路を見、立ち上がろうとした。
「・・・ピック・・・!!」
「待て、セイリアス!お前は動ける身体じゃない!また魔物に襲われたら・・・!」
「離してくれ!ピックが死ぬはずあるものか!彼女一人で戦わせて、私がこんなところにいるはずがない!」
 這ってでもそちらへ向かおうとした自分の首の後ろに、気功師が手刀を入れて、
 そしてもう一度、気を失った。



「・・・。」
 アーモロードから届いた手紙を見て、ベッドの上でセイリアスは息を吐いた。
「・・・20年近く経つ話のか。」
 若いころ・・・19歳のころの話だ。アーモロードで得た仲間、戦士と気功師と占星術士。年齢もそれぞれで、育ちもそれぞれだったが、一年程ともに冒険した。それはとても楽しい日々だったが、あの事件でピーコック・・・「ピック」と呼んでいた戦士が死に、それからギルドは解散した。
 セイリアスは、それからずっとじくじくとした思いを抱えている。古代魚と戦った場所から少し離れたところに、何故自分が倒れていたのか。その記憶が全くないのは何故なのか。もしかしたら、自分はピックを見捨てて逃げたのではないか。そしてその記憶を自ら封じているのではないか。
 おかしな点は他にもある。なぜ、あれだけの出血をしていたのに死ななかったのか。仮に、ピックを見捨てて逃げたとしても、あれだけの出血量ならばあの場でそのまま死んでいたに違いない。仲間が自分を見つけたときには、血こそ残っていても傷はなかったらしいのだ。もしかしたら誰かが助けてくれたのかもしれない、と仲間は言っていたが、だったら何故ピックを助けてくれなかったのか。そして、記憶の澱に残る、刃の煌めき、少女の声――。
 もう答えなど出ないことだ、分かっている。けれど自分は生きて、彼女は死んだのだ。あの、彼女の一族を虐げてきた一族の一人である自分に対して、復讐も考えず、仲間として受け入れた明るい笑顔の娘は死んだのだ。
 セイリアスは息を吐き、そして、喉に絡みつくような咳をした。咳は日毎にひどくなる。体力を奪い、呼吸を奪い、ゆっくりと命を削っていく。
「・・・セイリアス様。」
 女性の声がして、重い咳をくりかえす自分の背中を誰かが擦る。落ち着いた声と淡々としながらも優しい手つきに励まされ、出来るだけゆっくりと息を吐こうとする。咳は徐々に治まり、セイリアスは口を覆っていた手を話した。掌の中に血が滲んでいる。
 横から女性がナプキンを差しだし、セイリアスはそれで手のひらと口元を拭った。その後、ナプキンと交換するように水の入ったコップを渡され、一口、口に含む。再び咳をしないように気をつけながら水を飲み込み、そしてコップを女性に返した。
「・・・ありがとう、フロレアル。」
「いえ。お薬のお時間ですが、飲めますか?」
「ああ、飲もう。君の薬は効くからね。」
 そうセイリアスが言うと、フロレアルと呼ばれた女性は露骨に眉を寄せた。その表情は無視して、セイリアスは紙に包まれた粉薬を彼女から受け取り、中身を口の中に落とす。そして苦みのある薬を、水で胃の中に流し込んだ。セイリアスも知っている。この薬は痛みを和らげる効果ぐらいしかないことを。この国一番の医者も、異国から呼んだ治療士も、ハイ・ラガートにまで行って巫術を学んできた彼女でも、この病は治せないのだ。
 早速効いてきたよ、とセイリアスがフロレアルに言うと、彼女は「そんなはずはありません。」と言うのだ。冗談も気休めも通じない、と以前文句をいったところ、「人の病に関わることで冗談も気休めも言いません。」ときっぱりと返された。その真面目さと厳しさ故に、彼女は信頼出来る医者だと思う。そしてだからこそ、この薬は自分にはすぐに効くのだ。例えそれが、信頼からくる思いこみであったとしても。
 そんなことを言っても納得しないんだろうな、と思うので、セイリアスは肩をすくめるに留めた。そして、フロレアル――、金色の巻き毛の女性に読んでいた手紙を差し出した。
 フロレアルは「失礼します。」といって、それを受け取り目を通す。そして、一通り目を通して、顔をあげた。
「私の古い友人からの手紙でね。」
 セイリアスは背もたれ代わりにしているクッションに背中を預け、
「どうやら“プレアデス”がアーモロードにあるらしい。」
「・・・つまり、姫様がアーモロードにいらっしゃる、ということですか?」
「そうなのだろうね。だが、その髪飾りを持っていた者がカリーナエかどうかは分からないね。よく似た誰かかもしれないし。カリーナエは“プレアデス”にご執心でもなかったから、どこかで誰かにくれてやっているかもしれない。」
「“プレアデス”は国の秘宝ですが。」
「たかが国の秘宝だ。」
「・・・セイリアス様。それで、どうなされるのですか?」
「どうって?」
「姫様をお探しになるのか、ということです。」
「ああ、そうだな、とりあえず確認には行ってもらおうと思う。もう一人、アーモロードに詳しくて我が国の事情も知っている友人がいる。彼に頼もうと思う。」
「・・・この情報は保守派貴族にも伝わっているでしょうか?」
「さあ、どうだろう。どちらにせよ、早急に確認が必要だな。」
 セイリアスはため息をつき、
「しかし・・・アーモロードか。樹海に潜っているのだろうか。」
「そうかもしれません。姫様はあれで好奇心旺盛ですから。」
「・・・そうだね。・・・樹海の中なら、存在を消さねばならない場合も好都合だ。」
「そうでしょうね。」
「止めないのか、フロレアル。君の弟が片手を犠牲に守った姫だ。アウグストの右手に意味がなくなるぞ。」
「・・・セイリアス様は、いつかは必ず死ぬ人間に、治療を施すことは無意味だ、と仰るおつもりでしょうか?」
「・・・そうだね、確かにそれではおかしな話になる。」
「アウグストは己の騎士道を貫いただけです。その後、姫がどのような道を歩むか考えて、姫様を助けたわけではありません。私も、その患者がいつ死ぬかなどと考えて、治療は施しません。我々の出来ることは、我々の信じた方法で、目の前の誰かを放り出さないことぐらいです。」
 ですから、とフロレアルは眉一つ動かさず淡々としながらも、決して突き放しはせずに伝えるのだ。
「貴方様も、信じた方法で己の王道をお進み下さい。」
 セイリアスは、苦笑を浮かべてため息をついた。己の侍医であるこの女性の揺るぎなさを目の当たりにする度に、彼女が王族であれば、と思うのだ。いっそ、妃として迎えてしまおうか、とも思う。そんなことを本人に言ったら、鼻で笑われて一蹴されそうだが。
「・・・そうだな、Dr.フロレアル。君はいつだって正しいよ。」
 セイリアスは笑い、咳き込みそうになって、口を押さえた。慌てるフロレアルに、手を軽く上げて「大丈夫。」と伝える。ゆっくりと呼吸し、咳を治めてから、セイリアスは溜め息混じりに告げるのだ。
「・・・進んでみるよ。」
 どこまで自分の命が続くか分からないけどね、とは、さすがに言えなかった。



(二話につづく)
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「ますます世界樹かんけーねえ!」なようで、関係ある話になるのは、
霞む記憶の中で思い出す声は、どこかの機兵の女の子の声、と書けばこそ。

セイリアスの若い頃は長髪プリンスです。
当時19歳で、今は37・8歳の王様です。
フロレアルは世界樹2のマグ子が成長した姿で(25歳ぐらい)、
一章2話に登場した騎士の双子の姉です。


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