まよらなブログ

三章2話。

先走った志水の「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮?」妄想話です。
そろそろ「先走った」という枕詞は必要ない気がしてきました。
発売前から書いてるのに、もはや周回遅れっぽいYO!


本日の話、
前半は「フォーチュン・クエスト」のお料理メモ・・・っぽい感じを目指してみました。(笑)
深沢作品の一番の見所はレシピだと主張する。

と、いうわけで興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。



では、三章2話を。



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 材料は、いつも携帯している乾パン、干し肉、干し葡萄。後は、野営地の周辺に生えていた木の実に香草。ついでに、先ほどアヴィーが焼いてディスケが甲羅を割ったノコギリガザミの身の部分。
 大きめの葉を皿にして、並べられた「食事」に、カリーナは顔を輝かせるのだ。その隣で、アヴィーが小さな鍋一つと限られた材料で調理をしている。青い瓜のような実を千切りにして香草と砕いた乾パンを散らせたサラダ。ちぎった干し肉と干し葡萄を一緒に煮て甘辛く味付けをしたもの、ノコギリガザミの身を塩コショウで炒めたもの。それを乾パンに載せて食べられるようにしてみたり。途中で採ったアンラの実を氷砂糖とその辺で採ったハーブと一緒に、冷たい水に浮かべたデザートまである。カリーナはそれを感心しきって見ながら、
「アヴィーは料理が得意だよね。」
「家でも料理作ってたからね。」
「お母様が作ってたんじゃないの?」
「僕の母さんは仕事が忙しかったし、あと、料理が壊滅的に苦手なんだよね。」
「そうなの。でも、お父様はそれをお許しになってたんでしょう?」
「・・・あー、えっと、僕、母さんと二人暮らしだったんだよね。」
「・・・ごめんなさい。」
「ううん。知らなかったんだもんね。」
 アヴィーは慣れているのか、さらりと流して鍋を振う。残りのノコギリガザミの身を軽くほぐしながらさっと炒めると、フォークで身を少し掬い、
「はい。」
 カリーナに差し出した。カリーナは瞬きをして、
「なあに?」
「味見。」
 アヴィーはにこっと笑ってそう言った。カリーナはフォークを受け取りながら、アヴィーがさりげなく話題を変えたことに気づくのだ。アヴィーはすごいなあ、とカリーナは思う。私より二つも年下なのにしっかりしてるし、何でも出来る。
 尊敬と同時に微かにちくり、としたものも感じつつ、カリーナはノコギリガザミの身を口に運んだ。ふんわり、と甘い味がする。
「・・・美味しい。」
「とれたてだもんね。・・・ええっと、倒したてっていうのかな。」
「いい匂いだなあ!」
 と、薪代わりの木の枝を拾ってきたディスケが、たき火の側にやってきて鍋の中をのぞき込んだ。
「何を作ってんだ?」
「うん、スープにしようと思って。香草を最後に入れるといい匂いだと思うんだ。」
「そりゃ、すげえなあ!アヴィーはいい嫁さんになれるぞ!」
「・・・せめて、いいお婿さんになれるって言ってくれる?」
「あっはっはっは!家事万能で気立てがよくて可愛い顔してるのに、嫁じゃないなんて間違ってる!」
「だから、僕は可愛くないッ!!」
 禁句を言われてムキー!と怒るアヴィーだが、ディスケはわはははは!と大笑いして流してしまった。アヴィーは、ぷう!と頬を膨らませ、「僕は可愛いんじゃないのに・・・!」とぶつぶつ抗議している。しっかりしている、と思った少年のこういうところは子どもっぽくて、カリーナは「可愛いなあ。」と思うのだが、そんなことは絶対に口にしない。
「ガキんちょ共。ご所望のテントを張ったぞ。」
 と、背後で声がかかる。カリーナが振り返ると、張ったテントが倒れないか、軽く揺らして確かめているマルカブがいた。カリーナはぱっと立ち上がり、テントまで走っていて中をのぞき込んだ。
「あ!カリーナだけずるい!」
 と、アヴィーは鍋を持ったまま移動して、テントをのぞき込む。
「結構広いんだ。」
「一応、5人用ってことなんだろ。お前ら、中で寝ろ。俺らは外だ。」
「わしもかね!?わしも外なのかね!?」
 クー・シーがそれを聞き、ぷんぷん、とわざとらしく拳を振りながら、
「わしも頑張ってテントを張ったのに!?老人を労るつもりはないのかね!?」
「わざと杭を抜いたりしたのはどこのどいつだ。年頃の娘が優先だろ、こういうのは。」
「・・・あの、マルカブ。じゃあ、何で僕も中なの?」
「お前は子ども枠。」
「僕はもう子どもじゃないよ!それにカリーナだって僕とじゃ困るでしょう!?」
「え?何で?」
「・・・何でって・・・・・・あのね、カリーナ、僕も男子だからね、」
「あっはっはっは!別にいいんじゃねえ?カリーナんこと、やらしい目で見てるわけでもねえんだろ?」
 ディスケが大笑いしながらそんなことを言い、アヴィーは慌てて、
「み、見てないよッ!僕、カリーナは『妹』みたいだって思って・・・」
「・・・ど、どういうこと、アヴィー!!私の方が年上なんだけど!!」
 アヴィーの一言に、すごい剣幕でカリーナに詰め寄った。
「あ、あうう・・・、あのね、でも、だって、・・・・・・・・・」
「私より背も低いのに!!」
「僕はこれから伸びるんだよう!」
 アヴィーは意味もなく鍋をかき回しながら精一杯抗議して、それからマルカブを見上げ、
「とにかく、僕も外で寝るからねッ!!」
「・・・折角、張ったのになあ。」
 マルカブは笑いを必死にこらえている様子でそう言い、
「わしも頑張ったのにねえ。」
 クー・シーも便乗して首を傾げた。
「もういいんだよ、その話は!もうすぐご飯出来るからね!」
 アヴィーはそう言ってたき火の方に戻り、鍋の中に水を注ぐ。おお、ご飯!!とクー・シーは並べられている料理に駆け寄り、一口つまみ食いをして、アヴィーに叱られた。
「アヴィー、すごいの。ちゃんとお料理になってるの。」
 テントの入り口に座って、カリーナはマルカブに言う。マルカブは腕を組みながら、
「へえ。本当に女の子ならいい嫁になれるのにな。勿体ねえ。」
「聞こえてるよ!!」
 マルカブの呟きに、アヴィーが過剰に反応した。



*****


 周囲が薄ぼんやりと明るくなっていることに気がついて、カリーナは楽しい気分のままで目覚めるのだ。しばらく、ぼうっとしたあとに、野営地で泊まっているんだっけ、と思い出す。そして、昨夜の即席とは思えなかった食事の味や、仲間たちとくだらない話で笑ったことなんかを思い出して微笑んだ。カリーナは、一度伸びをして起き上がり、そっとテントから外に出た。
 テントの外、たき火を囲むように仲間たちが横になっている。結局、全員一致で「女の子がテントを使うべき。」という意見なのだから、紳士な仲間たちだと思う。まだまだ深く眠っている仲間たちを起こさないように、カリーナはもう一度伸びをした。空・・・というか地下三階の天井を見上げる。枝葉に覆われた樹海の空でははっきりとは分からないものの、夜明け直前のようだった。緑の葉と赤い花の向こうから、淡く光が見える。
 ・・・ああ、今日もきっと楽しい日になる!
 そんな確信を持つカリーナの頭上を、白い綿毛のようなものがふよふよ、と風に流されていった。
「・・・?」
 時々黄金色にも見える綿毛だった。珍しさにカリーナは綿毛を追う。綿毛は木々の間に入っていき、途中で木の枝に引っかかって、ぱたぱたと、もがいている。あ、生き物なんだ、とカリーナは気がつき、
「今、取ってあげる。」
 声をかけて、綿毛に近づいた。もうすぐ綿毛に触れる、というときに風が吹いて、綿毛は枝からするりと抜けて、風に任せて飛んでいった。
「・・・あ、」
 もう草葉に紛れて見えなくなってしまった綿毛。カリーナは、残念、と呟いて、
「みんなに見せたかったのにな。」
 がっかりとため息を吐き、野営地に戻ろうと方向転換をしたのだが、何かが背中を駆け抜けて、ぱっと後ろに跳び退いた。
 カッ!と音を立てて、カリーナが直前までいた場所に一本のナイフが刺さる。カリーナはそのナイフがどこから飛んできたかなどは確認せずに、身を低くして前へと駆けだした。『だから、お前らしい娘を探してる奴がいるらしいんだよ。』と、以前マルカブが言っていた言葉を思い出す。見つかった、見つかってしまった!とにかく、仲間たちのところへ――、
 いきなり髪を掴まれ、そのまま後方へと投げ出された。カリーナは木々の根にぶつかりながら、地面を滑るように転倒する。その首を、誰かがぐっと掴んだ。
「・・・!」
 カリーナは自分の首を掴む誰かの顔を見た。額の傷、口元を覆う布、額当て、忍装束、自分を見る黒い目。あの定期便で同じように首を掴んだ、あの男だ。
「・・・・・・誰の、命令・・・!?」
 咳き込みそうになるのをこらえながら、カリーナは問いかける。
「国王に、命じられ・・・!」
「・・・依頼人を教えるわけにはいかない。」
 男は、意外なことに、言葉を発した。
「それが、死に向かう者であっても。」
 男の左手、首を掴んでいない手の中に、光るものを見る。カリーナはとっさに地面を掻くようにし、手にした土を男の顔面に向かって投げつけた。男が一瞬目を閉じるのと同時に、カリーナは光る刃が向かう先――、自分の首を己の腕で庇った。腕に、痛みではなく熱を感じた。小さなナイフ・・・苦無とか言ったか、その刃はカリーナの喉ではなく彼女の腕に突き刺さっている。
「・・・。」
 男は自分の腕を盾にして、それでも自分を毅然と見上げる姫を見つめ、
「・・・人形のような姫だと聞いていたが、」
 感心したように呟いた。
「生き抜くことに躊躇いはないか。」
「生きることに躊躇う人などいません。」
 カリーナの言葉に、男は苦笑を浮かべたようだった。
「躊躇え、姫君。貴女にはその責務がある。」
「何を・・・」
「貴女が生きることで、要らぬ動乱が起こるかもしれぬ、と。」
 男の言葉にカリーナの鼓動が一つ大きく鳴るのだ。
「貴女の国は、骸が鎧を着ることで形を保っているにすぎん。その骸が崩れたときに、国の形は消えてしまう。」
 男は言葉に反して、カリーナの首に込める力を緩める。
「王位継承と、それに伴う権力の争いは骸に過ぎ足る動乱を呼ぶ。その引き金は、貴女にあるやもしれぬと、貴女は自覚をしなくてはならない。」
 カリーナの胸がすっと冷たくなる。それは、事実だった。そして、自分の存在によって、命を奪われる者がいることもカリーナは知っていた。身をもって、知っていた。冷える胸に反して、目には熱い涙がじわじわと浮かんでくる。
「・・・私は、」
 カリーナは瞳に涙をためながら、それでも答えた。
「私は王位などいらない。二度と国になど帰らずとも構わない。だから、動乱など呼ばない。」
「責務を果たせ、姫君。それはただの逃げでしかない。それでは、貴女は今でも変わらないのだ。祖父の人形であった頃と、甘い蜜に流される今と、何が違うと言うのだ。」
 違う、だって私は。
 カリーナは咳き込みそうになりながら、その言葉に反論しようとした。だが、何故か心の奥の奥の方から、忘れかけていた声が蘇ってくる。
 ――何も考えるな――
 耳の奥に声が響いた。権力を正当化するために自分を利用した祖父、祖父の権力のために自分を産んだ母、そして、祖父によって死地に追いやられた褐色の肌の騎士。忘れていた顔が浮かび、もう一度声がした。
 ――何も考えるな。お前は私のためにいるのだから。そのためだけに、いるのだから――
「・・・・・・そうだとしても!」
 声をかき消すように、カリーナは叫んだ。
「どうして、居てはいけないの!?」
「生きてもいない人形姫に、そんな問いかけは必要ない。」
 男の声は冷淡で、腰からさらに苦無を抜きカリーナに向かって振り上げた。

(三章3話に続く)


----------あとがき、のようなもの----------------

次回の「樹海でわくわくクッキング!」はナルメルの天ぷらをお届けします。(嘘予告)

ノコギリガザミを炎で攻撃したら焼きガニ・・・!(じゅるり・・・)という発想から始まり、
そうだシノビ出さなきゃ、と思って出来た話です。調理シーンの方が重要です。


なお、二階では野営しなかったようです、このギルド。
実はモン爺が、ぎっくり腰(ただし自称)で宿で休んでいた時期で、
あんまり長居すると爺さんウルセェだろうな、と思って
野営せずに帰った、という裏設定があります。


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