まよらなブログ

三章3話。

先走った志水の「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮?」妄想話です。
「先走った」という枕詞は必要ない気がしてましたが、お約束的に残すことにしました。



本日の話を書くために、銃の構造を調べてきました・・・国際子ども図書館で(爆)。
変なお姉さんが、子ども達に混ざって一心不乱にメモを取っていてごめんなさい。
(しかも、調べた内容は全く生かされてなくてごめんなさい。)


と、いうわけで興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。



では、三章3話を。

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 自分に向かって振りおろされる刃の光に、もうカリーナは目を瞑ることしか出来なかった。耳の奥で、祖父の声がする。
 ――、私のために産まれたのだから、私のために生きるのだ――
 ・・・じゃあ、お祖父様がいない今、私は生きていけないんだ。
 耳の奥でぐるぐる周り始めた同じ声と同じ思い。それを打ち払うように、
「この馬鹿!」
 そのカリーナの耳に、別の声が飛び込んできた。
 怒気もはらんだ男の声に、カリーナは目をあける。目の前で、赤毛の男が覆面の暗殺者に飛びかかっている。彼は暗殺者の顔を腕で抱えるようにして地面へと倒し、抜いた銃で暴発の怖れも構わずに、その頭を殴りつけた。
「立て!」
 赤毛の男――、マルカブは男の顔を押さえつけながらカリーナへと告げる。
「逃げろ!!」
「でも・・・!」
「早くクー爺に見ても・・・!」
 暗殺者の腕がマルカブの喉笛を狙って伸びてくる。マルカブはとっさに後転し、それを逃れた。マルカブの背中がカリーナの目の前に来る。その背中ごしに「くそ、殺し慣れてんな・・・!」と毒づく声を、カリーナは聞いた。
 そうだ、相手は暗殺者だ。そして、彼はマルカブを殺しにきたんじゃない。自分を殺しにきたのだ。
「マルカブ、逃げて!」
「お前が先だろうが!!」
 思わず叫んだカリーナに、マルカブは間髪いれずに怒鳴り返した。背中はこれっぽっちも動かない。
 暗殺者の男はこめかみから血を流しつつ立ち上がり、苦無を構えた。マルカブは銃を男に向け、カリーナは「ぶん・・・!」と低い音を立てて機械が発動した音を聞く。
 カリーナの背後から、ちかり、と光が瞬き、男に向かって雷光が走る。男はさほど驚きもせず、木の背後へと跳び退いた。ほんの数秒前まで男がいた場所に雷が落ち、マルカブは銃撃で逃げた男を追撃したが、木々がそれを防いでしまう。
「・・・アヴィー!」
 カリーナが振り返ると、星術の発動器を担いだアヴィーがぐっと唇を噛んでいる。彼は再度エーテルを集め始めたが、戦い慣れていないアヴィーでも分かるのだろう。あの男は、次の星術を発動させるよりも先に動いてしまう。
 そして、ざざざざ・・・!と茂みが動いた。マルカブが茂みに向かって発砲する。だが、そこには手応えはなく、全く明後日の方向から男は飛び出してきた。
 男は苦無を抜いてマルカブに殺到する。マルカブは、カリーナを背中に隠す。彼は避けることはしなかった。カリーナの頭に、目の前の背中の向こうで飛び散る鮮血が浮かぶ。
「・・・いやだ!!」
 カリーナの叫びと、アヴィーが息を飲む音と、ギン!!と響く衝突音。カリーナは耳を塞ぎ、イヤだイヤだと泣きじゃくる。そうだ、また誰かをこんな目に合わせるなら、私は確かにさっき死んでしまったら良かったんだ!
「泣くな!馬鹿!!」
 耳を塞ぐ手の向こうから声がする。
「俺は死んでねえぞ!」
 カリーナは、しゃくりあげながら前を見た。やはり目の前には、揺るがない背中がある。その背の持ち主は、苦無を銃口で受け止めていた。暴発を畏れた暗殺者は苦無から手を離し、背後へ飛ぶ。相手との間が出来たのを知ったマルカブは、腰のベルトに下げたポーチから掴めるだけの弾薬を掴み、暗殺者へ向かって投げつけて、
「アヴィー!!!」
 占星術士の少年の名を呼んだ。
 ほんの火種を起こす程度のエーテルしか集められていないアヴィーは、その声を聞き、宙を舞う弾薬を見、マルカブの真意を知り、そして星術を発動させた。
 マルカブは体を捻り、カリーナを抱えながら地に伏せる。
 その二人の頭上を光が伸び、直後、小さな火花が走る。ほんの火種にしかならない、頼りない火。火は暗殺者に・・・いや、暗殺者に投げつけられた弾薬へと向かう。アヴィーは暗殺者など見ていない。その猛禽の目と同じ色の目で見つめるのは、地面に落ちていこうとする弾薬だ。
 彼らが何を狙ったのか、察した暗殺者の目が大きく開かれるのと同時に、弾薬に炎は届く。炎は小さな弾薬の火薬を爆発させ、その爆発は他の火薬を包み込む。弾丸をまき散らしながら、連鎖するように数発まとめて爆発した。
 火薬の爆発による大火炎は暗殺者を一瞬で包む。それでも、その影は炎と黒煙から飛び出して、地面を転がることで炎を消す。
 ・・・今度はない。ここであの人が倒れなかったら、僕の次の手は何も間に合わない。そう思ったアヴィーは、カリーナとマルカブの前まで走ってきて、ばっと腕を広げた。ぜーぜー、と息を吐く暗殺者がゆるりと立ち上がったのを見て、アヴィーは両腕を広げながら、びく!と肩を振るわせた。アヴィーは必死に養母の立ち姿を思い出す。盾を構えて魔物の前に立つ母のように、凛と立っていなければ。怯んではいけない!
 アヴィーは、そして、男の両の腕の皮膚が焼け、赤い血を流しているのを見た。あれは、火傷だ。火傷を与えたのは炎だ。それは自分の炎だ。
 人を焼いた、ということを急激に自覚したアヴィーは、く、と喉の奥で声を漏らした。
「・・・ご、ごめんなさい。」
 思わずそう告げてから、泣きそうな顔で唇を噛み、それでも、きっ!と男を見た。今は、今だけはそれは置いておく。
「・・・でも!カリーナに酷いことするな!」
 だらり、と両腕を垂らした男は、ひゅー、と細い息を吐いて、アヴィーとマルカブを見、それから大粒の涙をこぼしているカリーナを眺め、
 舌打ちを一つして、大きく背後に跳んだ。木々の間に消えてしまう男に、あ!とアヴィーは声を上げたが、
「追うなよ。」
 マルカブに鋭く告げられ、分かってる、とうなづいた。それから、アヴィーははくるっと振り返り、カリーナの腕に刺さっている苦無を見て、
「僕、クーおじいちゃんを呼んでくる!」
 すぐに野営地へと駆けだした。マルカブもその苦無を見て、眉を寄せる。幸い出血はひどくはないが、苦無が栓の役割をしているかもしれないことを考えれば、クー・シーが来るまでは抜かない方がいい、と判断する。
「クー爺が来たら、コイツを抜こう。」
 マルカブは出来るだけ静かな声で伝えた。
「それまで我慢出来るな?」
 問いかけにカリーナはこくり、と頷いて、それから怪我のない腕で自分の肩を抱いて、しゃくり上げ始めた。マルカブはカリーナの背中をさすりながら、
「大丈夫だ、もう大丈夫だ。あんな怪我したんだから、アイツはしばらく来ねえ。こんなナイフまぶっ刺さってんのによく耐えた。」
「・・・・・・っ・・・違う・・・っ、違うの・・・!」
 カリーナは何度も涙を拭いながら、
「怖いのは、・・・私はいなくていいってことなの・・・・・・!!」
「・・・どういう意味だ?」
 カリーナは首を振り、問いかけの答えなのか独白なのか分からないことを口にする。
「だって、私がいる意味が、もう無いもの・・・!!」
 マルカブは、何故か胸がすっと冷えるのを感じ、それからすぐに頭に血が上るのを感じ、
「バカなこと言うな!」
 思わず怒鳴りつけたが、カリーナはその声すら聞こえていない様子で首を振る。でもね、でもね、と繰り返し、
「・・・・・・でも・・・!」
 カリーナはマルカブのシャツを掴んで、その胸にしがみついた。
「私、いなくなったりしたくない!」
 そして、しゃくりあげるカリーナに、マルカブはいたたまれなさで一杯になるのだ。
 カリーナが感じているのは、あの暗殺者に命をねらわれた恐怖じゃない。『死にたくない』じゃなくて、『いなくなったりしたくない』、命の話じゃなくて「存在」の話で、暗殺者が与える恐怖とは別のものだ。彼女にここまで言わせた存在は別にいる。昨日の夜まであんなにはしゃいでいたこの娘を、一瞬で暗闇に突き落としたのは別にいる。
 マルカブは奥歯を噛んで拳を握り、それでもそんなことは今は全く意味がない、ということはよく分かっていたので、
「・・・そうだよ、」
 拳を開いてカリーナの背中をさすり、出来るだけ静かに呟いた。
「・・・俺もお前に居てほしいよ。」
 それだけ言うのが精一杯だった。



******


 結局、一行はカリーナの傷の手当をした後、すぐに街へと戻ってきた。カリーナは宿の一室で塞ぎ込んでしまったし、アヴィーはアヴィーで、自分の星術が人に火傷を負わせたことにショックを受けてしまっていた。
 マルカブは、そんな二人をディスケとコロネに任せて宿の庭へとやってきた。(コロネは治療院の窓から帰ってきた一行を見て、様子を伺いに来たらしい。)昼の庭で、鳩なんかに囲まれて、クー・シーがぼーっと空を眺めている。声を掛けたわけでもないが、クー・シーはマルカブが来たことに気がついたようだった。空を見ながら、独りごちる。
「はー・・・いい天気だねえ。」
「・・・クー爺、ちょっと聞きたいことがある。」
「はーー・・・・・・、いい天気だよお。」
「蝶亭で奢るから、来い。」
「おや、わしをナンパかねえ?照れちゃうねえ。」
「・・・気色悪い冗談言ってんじゃねえよ、ジジイ。」
「おやおや、ご機嫌斜めだね。」
 宿の庭のベンチに座っていたクー・シーは、よっこらせ、と立ち上がった。鳩がぱさぱさと飛び立った。
「姫様のことだろう?」
「そうだよ。アイツが国でどんなだったか聞きたい。」
「わしも全部を知ってるわけじゃないんだけどね。姫は王宮に暮らしてはいたけど、祖父君によって一区画に閉じこめられてたから。」
「・・・・・・どうしてだ。」
「話せば長くなるような。でも短くまとめられるような。」
 クー・シーは肩をすくめ、
「続きは酒でも奢って貰いながらにしようか。そうでなくては、胸クソ悪くなるだけの話だからね。」




(三章4話に続く)

----------あとがき、のようなもの----------

フリントロック銃の構造を調べた結果、
「連射は出来ない。」ため「白兵戦では一発撃ったら、棍棒として使うしかない。」
という一文に出会いました。「それだーーー!!」と思いました(笑)が、
「クイックドローやラピッドファイアやチェイスは何故複数回の攻撃になるのか?」
という疑問が生じてしまうので、細かい構造は無視することに決めました。


そして中二病くさい設定発症中です、もうちょっと続きます。あーやだやだ、恥ずかしい。



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