まよらなブログ

インターバルな番外編。

先走った志水の「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮?」妄想話ですが、
ちょっと行き詰っているので休憩。今日は『その頃のエトリア』の話を。
黒ゾディの養母(師匠パラ子)と友達(メディ子)の話です。

井藤さんとの合同誌『パラディンのほん。(通称:パラほん。)』の設定と
繋がりはあるんですが、まあ、そんなの読まなくてもどうでもいい話なので。



では興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。



番外編: 「その頃のエトリア」

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 さくさく、と薄く積もった雪を踏んでやってくるのは、本を小脇に抱えた19の娘だ。
 彼女は白い息を吐いて、澄んだ空を見上げる。故郷のハイ・ラガードより、エトリアの冬は温度も高いし雪も少ない。それでも、乾いた風は耳に痛い。
 彼女は赤くなった耳を手袋をはめた手で擦りながら、ふと、自分と入れ違いのように南の国に旅立った友人のことを考えた。幼い頃から、毎年ハイ・ラガードへバカンスに来ていた5つ年下の男の子。自分の父とその子の母が知り合いで仲良くなって、そのうち自宅を彼らのステイ先に提供するようになった。素直で泣き虫で母親が大好きの甘えん坊だが、彼も勉強のために南の国に向かったらしい。南の国は、冬でもやはり暖かいのだろうか?ホームシックになっていないだろうか?そんなことを、姉のような気持ちで考える。
 彼女は白い息を吐き、それから故郷にいる父のことを考えた。お父さんはちゃんと食事をしているだろうか?毎週毎週手紙を送ってきては「悪い男にだまされないように」と一言添えるのはどうにかならないのか。大体、医術を勉強しようとエトリアに留学しているのだから、悪い男に騙される暇もないのだ。お父さんこそ、師匠をとっとと嫁に貰っていけばいいのに。
 そんなことを考えながら、下宿先であるこじんまりとした一軒家に帰ってきた。日の当たる玄関でひなたぼっこをしていた大きな犬が(彼女はそれを狼だ、と思っているのだが、飼い主は犬だと頑なに信じていた)のっそりを首をあげ、尾を振って彼女を出迎える。
「ただいま、カーラちゃん。」
 彼女は犬に挨拶をし、門を開けようとして郵便受けに手紙が入っていることに気がついた。郵便受けを開けると、中に2通の封筒と小包が入っていた。
 封筒を取り出して、宛名を見る。一通は自分宛て、もう一通はこの家の主宛て。どちらの手紙も同じ人が書いている。差出人は同じ人。彼女の父だ。
「お父さんも、私に手紙を出すついでに師匠に出すのんじゃなくて・・・師匠にだけ出せばいいのに・・・」
 ぶつぶつ言いながら今度は小包を取り出した。宛名は、この家の主と自分の連名になっている。いぶかしんで差出人を見る。彼女の足下でカーラと呼ばれた犬がふんふん、と小包を見上げて鼻を鳴らした。
 差出人を知った彼女は、だっと家の中に駆け込んだ。


「師匠!!!」
 その娘が居間に飛び込むように入って、声をかけたのは長い金髪の女性だ。年は30を越えたくらいで、菫色の瞳をあげて彼女を見た。手にしていた新聞を畳みながら女性は、
「何だ、フレドリカ。いきなり大声で入ってくるものではないぞ。」
「大変なの、大変なのよう!!」
「何だ?落ち着け。」
「アヴィーくん、アヴィーくんから小包!」
 そして差し出された包みを、女性は見、そしてばっと立ち上がって、その包みを取り、ええい封などめんどくせえ!とばかりに包みを破く。中には細長い小さな小箱と小さな包み。それと手紙が入っている。女性は手紙を取り出して、便箋には広げた。フレドリカ、と呼ばれた娘もそれをのぞき込んで手紙を読み始めた。

 ――シルンとフレドリカちゃんへ。

   お元気ですか?僕は元気です。
   無事にアーモロードに着いて、フェイデンさんとマリアさんにも会いました。
   星術の勉強も始めています。・・・    ―――

 男の子の少し角張った字で、しかし丁寧に手紙が書かれている。素直な文体で近況を綴る手紙に、
「アヴィー・・・・・・!なんて素直で愛らしい手紙を書くのだ・・・!」
 女性はそう呟いて、おおおお・・・と泣きながら便箋に頬ずりをした。
「師匠!手紙が読めないよ!」
「何を言うのだ!アヴィーの手紙だぞ!私がこれをどれだけ待っていたか・・・・・・・・・うう・・・アヴィー・・・・・・・・・・・・」
 と、シルンというらしい女性は、よよよ・・・と床に崩れ落ち、
「会いたいぞぉぉぉ・・・・・・・・・・・・!!」
「師匠は本当に親バカよね・・・。あ、あと、うちのお父さんから師匠宛に手紙が来てるけど・・・」
「ロブなどどうでもいい。アヴィーの手紙が全てだ。」
「・・・お父さん、最大の敵はアヴィーくんだよ・・・・・・。」
「・・・む!!」
「どうしたの?」
「アヴィーがアーモロードの樹海に潜っているだと・・・!!」
「ああ、アーモロードにも樹海があるんだ。」
「危険だ!今から私が止めに行く!!」
「師匠、盾を持つのは待って!」
「離せ、フレドリカ!・・・フェイデンは何故止めなかったのだ・・・!会ったら盾の錆にしてくれる・・・・・・!!」
 盾は鈍器だと頑なに信じているシルンはそんなことを言い、腕にしがみついて止めるフレドリカをずるずる引きずりながら家から出ようとする。フレドリカはぐっと踏ん張りながら、
「大体、どうやってアーモロードまで行くのよ!」
「何とかする!泳いででも行く!!アヴィーのためなら、真冬の海に水着で突貫したっていい!!」
「ああ、もう!待ってったら、師匠!!」
 フレドリカは荷物の中から分厚い医学書を取り出し、ヘヴィストライク(☆MASTER)そのものの動きでシルンの後頭部を殴りつけた。
「・・・き・・・貴様、師になんてことをするのだ!?」
 涙目で後頭部を押さえながらシルンはフレドリカを振り返る。フレドリカは腰に手を当て、
「師匠!よく手紙を読んで!!アヴィーくんがいい加減な気持ちで樹海に潜るわけないでしょう!?アヴィーくんにはアヴィーくんの目的があるはずよ!!」
「・・・む、だが、しかし・・・!」
「師匠はアヴィーくんが信じられないの!?」
「そんなわけなかろう!!アヴィーは賢くて素直で気持ちが優しくて可愛らしくしっかりしていて真面目で穏やかなそんな子だぞ!!ちゃんと考えて行動しているに決まっている!!」
「でしょう!だったら、アヴィーくんがやるって決めたこと、まずはちゃんと認めなきゃ!フェイデンお兄ちゃん・・・というよりマリアお姉ちゃんなら、本当に危ないなって思ったときにはアヴィーくんを止めてくれるわ!核熱で脅したとしても!!」
「・・・・・・・・・む・・・、確かにマリアはそうする気がするが・・・」
「でしょう!?」
「・・・むむむ・・・だが、・・・しかし、やはり!!アヴィーが怪我でもしたらどうしたらいいのだッ!?」
「そうしたらあたしが治しにいくから安心して!それより、こっちの荷物は何?・・・あ!あたし宛だ!」
「なんだと!?私への荷物はないのか!?」
「・・・あ!見て、師匠!貝のネックレス!留学のお祝いだって!」
「ふざけるなーーーッ!!私への荷物はなくて何でお前宛のものがあるのだッ!?私もアヴィーから贈り物をされたいというのに!!」
 と、いい年して地団太を踏み出したシルンを無視して、フレドリカはもう一つの包みを見、
「あ、こっちの包みは師匠宛だよ。花の種だって!」
「む!」
 シルンはフレドリカの手から包みとそこについていたカードを引ったくる。「ハイビスカスっていう花の種だって。大切に育ててあげてね。」という一言と育て方がカードには書かれており、
「・・・・・・アヴィー・・・お前は自分の代わりに花を育てれば私の寂しい思いも少しは和らぐと思って花の種を送ってくれたのだな・・・うう・・・やはり優しい子だ・・・・・・」
「・・・絶対にそこまで考えてないと思うけど。」
「フレドリカ!植木鉢を買いに行くぞ!カーラもついてこい!!」
「・・・あ、待って、師匠!お父さんの手紙が完璧に無視なの!?」
「ごちゃごちゃ五月蝿ぇ!さっさと行くぞ!!」



---------------あとがきのようなもの-------------------

「パラほん。」を購入された方は、ニヤリとするか混乱するかだな。
まあ、「あー、黒ゾディの母ちゃん、こんな人なのね。」ぐらいに思ってもらえれば。

パラ子とメディ子なので、「師匠!」呼ばわりです。
殴りメディと殴りパラなので「打撃」の師匠らしいです。
他にも日向さんの漫画ネタがちらほらしてますね、真冬の海に水着で突貫、とか。



次回は、アーモロードの話に戻って、5章です。
新キャラのファマ男とビス子が登場すると思います。

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