まよらなブログ

五章2話。


先走った志水の「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮?」妄想話です。

ワンピの新刊が出たので、時代の流れに乗ってこんなことを告白してみる。
ウチの赤パイ、そもそものコンセプトが、
「『安いもんだ、腕の一本ぐらい』とは言えなさそうな赤い髪の海賊」
というそんなところからスタートしてるんですが、
今となっては、黒ゾディやプリ子を守るためなら、腕の一本、手放しそうだ。
なんでこうなっちゃったんだろうか。


ともあれ、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。


五章2話

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 マルカブとディスケが会った少年と少女は、サビクとアル・ジルという名前だった。(羊はハマルで鷹はギェナーだ。)二人は船で数日かかる島にある農村から、出稼ぎにやってきたらしい。正確には、災害で村の作物がやられえてしまい、出稼ぎに出ざる得なかったサビクに、アル・ジルが強引についてきた形らしい。農村近くの森で猟師の父と暮らしていたというアル・ジルは世間ずれしていないためか、「だって、サビクと一緒にいたいんだもん!」と照れもなく言い放ち、サビクはイラっとしたマルカブに耳を引っ張られた。
 そんな経緯でアーモロードまでやってきた二人だったが、働く予定だった商店はどういうわけか潰れていて、おまけに悪どい宿屋にカモられるわ財布はスられるわで、数日で文無しになったらしい。樹海近くの森で薬草を取ってきて売るなどして何とか毎日を暮らしていたものの、アル・ジルが風邪を引き薬代のためにスリをしたらしかった。(アル・ジルの風邪のことはサビクは言うまいとしていたようだが、本人が「サビクは悪くない!」と主張して明らかになった。)一度、盗みをしてしまうと、次の抵抗は少なくなってそのままスリを繰り返して一ヶ月ほど経ったらしい。
 そんな経緯を聞きながら、一行はフェイデンとマリアのいるフィニック家にやってくる。まあ、困ったことがあったら顔の広い地元民に相談するに限る。
 フィニック家のリビングから出られる庭では、フェイデンと一緒にアヴィーとカリーナが植木鉢に苗を植えていた。
「・・・何やってんだ?」
 土まみれになっている二人にマルカブが問いかけると、
「あ、おかえりー!今、フェイデンさんを手伝ってるんだよ。」
「今度、市で花の苗を売るんだって。」
「ほらー、家族が増えたからなー、僕も頑張らないとーーーー。」
 へにゃーっと幸せそうな笑顔でそんなことを言うフェイデンを、ぶっ飛ばしたいような気持ちに駆られたが我慢して、
「フェイデン。悪いんだけどよ、ちょっと相談・・・・・・」
「あーーーー!!」
 言いかけたマルカブの背後で声が上がった。彼の後ろにいたサビクが、制止するような声を出して、ぱっと庭に出ていき、
「ダメだ、この花は根腐れしやすいんだからちゃんと水はけ用の石入れとかないと!」
 とアヴィーが用意していた植木鉢に土と石を積めていく。
「・・・お?」
 フェイデンは手慣れた手つきで作業をしていくサビクを見てから、マルカブを見て、
「マルカブも扶養家族が増えたのか。お互い頑張ろうな。おとーさんだもんな。」
 からかいの色など全くなく真剣に言われた言葉に、マルカブは呻くように叫ぶのだ。
「お前らはどこまで俺を父親にしたいんだ!?」


******

 土いじりをしながら、サビクとアル・ジルの話を聞いたフェイデンは、二人がせっせと植えた植木鉢を見て、
「サビクは植物に詳しいのか?」
「詳しいっていうか・・・育てるのは慣れてます。野草に詳しいのはジルの方。」
「でも薬草で薬を作ったりするのはサビクなの。サビクの薬はよく効くんだよ。」
 アル・ジルがにこにこしながら言うと、サビクは頭を掻いた。すごいねえ、とアヴィーが感心すると、「普通だよ。」とサビクはちょっとそっぽを向いた。やたらと素直なアヴィーといると新鮮だが、サビクの言動の方が年齢相応なんだよな、と思いながらテラスのテーブルに座っているマルカブはそれを眺める。
「おお、そうか。じゃあ、僕の手伝いをしてもらおうかなあ。」
 そうしてもらおう、とフェイデンは一人で頷き、
「なあ、マリア、いいよなあ。僕も図鑑の編纂もしたいし、品種改良もしたいし、助手がいると助かるんだよな。せめて二人の仕事が見つかるまでの間でも。」
 テラスのテーブルにお茶の用意をしているマリアにそんなことをお願いした。マリアは。いいわよーと安請け合いをした。
「・・・いいのかよ。」
 と、思わずマルカブが問いかけると、マリアはやっぱり、いいわよー、と答え、
「アヴィーくんが下宿する予定だった部屋もあるし。」
「・・・連れて来ておいてなんだけどよ、お人好し過ぎないか?」
「あらあら、大丈夫よー。もし悪い子たちだったら超核熱・・・・・・」
「マリア、町が一つ消し飛ぶからやめようなーー。」
 夫妻はにこにこしながらそんなことを言う。意味はよく分からなかったが、マリアの錬金術の技術はアヴィーの星術などとは比べ物にならないらしいので、「まあ、それならいいんだけどよ。」とマルカブは呟いた。
「ただね、お給料みたいのはちょっと渡せないから、お部屋と食事を提供できるってぐらいなんだけど・・・」
「それで十分です!」
 サビクが立ち上がって、力一杯答えた。
「ジルにだけでも部屋を貸してくれれば、十分です!」
「あらあら、男の子ねえ。」
 マリアは嬉しそうに笑い、
「そういう男の子は応援したくなっちゃうわよね。でも大丈夫よ。今、物置にしている部屋があるから、二人にお部屋を貸してあげられる。羊さんと鳥さんは、お外でもいいかしらね?この辺に小屋でも作るから。」
 めえええ、とテーブルの下に座っているハマルは低く鳴いて答えた。ギェナーと呼ばれている鷹は椅子の背もたれに停まりながら翼に嘴をつっこんで毛づくろいをしている。カリーナがその鷹をまじまじと観察し、ぎょろっとギェナーの目が動くとびくっと身を竦めるのだ。
「ギェナーは怖くないよ?」
 そんなカリーナを見て、アル・ジルが歩み寄ってきた。
「触ってみる?」
 そういって彼女がギェナーに伸ばした腕を見て、カリーナはもう一度身を竦めて後ずさった。初対面の人間には警戒を浮かべるカリーナではあるが、後ずさるまでのことはない。しかも相手は同じ年頃の少女だ。
「・・・カリーナ、どうした?」
 マルカブが問いかけると、カリーナは我に返って首を振る。その様子を見ていたマリアがカリーナを、フェイデンはアル・ジルを呼んだ。
「カリーナちゃん、ちょっと食器を運ぶの手伝って?」
「アル・ジルー。こっちの植木鉢もサビクと一緒に植えてくれるかなあ?」
 少女たちはそれぞれの言葉に素直に従ったが、フィニック夫妻が同時に声をかけたことには何か必然性があるのだろう。リビングでドルチェのゆりかごを揺らしていたディスケが、テラスに顔を出し、
「・・・なあ、カリーナの様子見に行った方がよくね?」
 と、小声で言った。マルカブはちらりとフェイデンを見ると、フェイデンも、そうしろ、と目配せしている。マルカブは頭を掻いてと立ち上がった。


*****

「アル・ジルちゃんの肌の色が怖い?」
「・・・・・・そういうわけでは。」
 マリアとカリーナは台所でコップを出しながらそんな会話をしている。
「・・・確かに、私の国ではああいう肌の色の人間は差別されています。・・・人ではない、という人までいます。」
「そうらしいわね。私もシルンさ・・・アヴィーくんのお母さんからそんな話は聞いたわ。」
 まあ、あの人はそういうのに全く無頓着だったけどね、と言いながら、マリアは茶菓子も用意した。
「・・・あの、私、本当に差別をしてない・・・とまでは言えませんけど、でも、そういうのは間違ってると思ってます。」
「そう。」
「・・・でも・・・、困るんです。」
「何が?」
「・・・・・・私、・・・私のせいで、昔、褐色の肌の騎士が死んでしまった・・・」
 その一言に、マリアは眉を寄せた。
「・・・それを、思い出すんです。」
 カリーナはぎゅっと唇を噛みしめる。声が震えだしていた。
「でも、この街にも褐色の肌の人は結構いるし・・・、ギルド長もそうだし・・・、みんな、みんなと同じように生活してて、何で私たちの国は、あの肌の色の人は人間じゃないなんて、そんなことを言って、あんな・・・、あんな酷いことを、どうしてお祖父様は・・・・・・っ」
 しゃくり上げ始めたカリーナの肩を、マリアはトントンとゆっくりとしたリズムで叩く。そして様子を見に来たマルカブが台所の入り口で立ち止まったのに気がついて、軽く手招きした。
「カリーナちゃん、マルカブさんが心配して来てくれたわ。」
 マリアは静かな声でそう言って、マルカブは少々困った様子で鼻の頭を掻いてから、台所へと入っていき、
「・・・カリーナ。また泣いてんのか。」
 カリーナの頭をいつもの調子で撫でる。マリアはそっと、カリーナの肩を叩くのをやめた。
「・・・聞いてたの・・・?」
「・・・、悪いな、聞こえてた。」
 涙声で問いかけるカリーナに、マルカブはそう答え、少し身を屈めて問いかけた。
「・・・辛いなら先に宿に帰ろう。」
「でも、そんなの、おかしい。アル・ジルは何もしてないの、私が思い出してるだけ。」
「おかしくない。お前が悪くないことでお前が辛くなるんなら、宿に帰ったっておかしくない。」
「でも、私のせいなの、あの騎士が・・・フィデリオが死んだのは、私がお祖父様の言うことを聞かなかったから、」
 マルカブはふと、ほんの数週間前のあの夕焼けの海のことを思い出す。今までは祖父の人形だったかもしれない、と言った彼女。でも今までの自分と今の自分は違う、と言った彼女。あの日、この娘をあんなに泣かせたの本当の人物を知る。
「・・・お前は、その・・・罪悪感みたいなもので一杯になっちまうのか?」
 お前のせいじゃない、と言い聞かせても、彼女は本当に納得は出来ないだろう。それはゆっくりと納得していくことだ。だから今は、こうして彼女がここで泣くことで更に罪悪感とか申し訳なさとかを感じることは止めたいと思う。そうでないなら、何に泣いているか分からなくなる。
 カリーナは、頷きかけて、でも首を振った。
「・・・そういうのもあるよ。でも、それだけじゃない、と思う。」
「・・・それだけじゃないって?」
「・・・私は、それでも、きっと、私の国では接することが出来なかった人と話をしたり、友達になったりしたいの・・・、それは罪悪感とかじゃない・・・と思う。だって、ただの罪悪感なら、謝ろうとか優しくしようとか、そう言う風に思うでしょう・・・?でも、違うもの、私は、サビクやアル・ジルと、アヴィーみたいに友達になれるんじゃないかって、楽しめるんじゃないかって、そういう風にも思うの。」
 ひっくひっく、としゃくり上げながら、カリーナはしっかりとそう言った。それを聞いて、大丈夫だ、とマルカブは確信した。彼女は確かに、今までの彼女とは違うのだ。次の一歩に、希望はある。
「分かった。」
 マルカブは最後にカリーナの頭を強めに撫でて、
「泣き止んだら、庭に戻ろう。俺も一緒に行くから、辛くなったらそう言え。その時は、俺が適当な理由をつくるから、宿に帰ろう。それでいいな?」
「・・・マルカブも一緒に帰るの?」
「当たり前だ。俺は言ったぞ、『どこにでも連れていってやるし、いつでも連れて帰ってきてやる』って。」
 マルカブは大真面目な顔でそう言った。カリーナは瞬きをして彼を見つめ、そして思い出すのだ。あの夕焼けの海で、彼が言ってくれたこと。
 ・・・ああ、この人は、これっぽっちも忘れてない。
 そう思うと、カリーナの胸がきゅうっと締まる。嬉しいのと何故か切ないのとが混ざった中で、カリーナは自分は幸せなのだ、と思って微笑んだ。


*****

「・・・もしかしたら、私たち、」
「うん?」
「褐色の肌の騎士のこと、知っているかもしれない。」
「うん??」
「会ったことはないわよ、勿論。」
 マリアはリビングでゆりかごを揺らしつつ庭を見ながら、テラスでお茶を飲んでいるフェイデンにそんなことを話す。
「・・・まあ、そんなこと言ったって、今更どうにもならないわね。知り合いの知り合いだし。そんなことをカリーナちゃんや・・・ましてアヴィーくんに教えて、どうにかなるわけでもないし。」
 マリアはため息をつきながら、
「今からどうにかなるのは、今から起こることだけだもの。」
 そう言って、アル・ジルの腕に停まった鷹に果物を差し出してみるカリーナを眺める。鋭い嘴で果物をついばまれ、ひゃん、と小さく悲鳴をあげたカリーナだが、アル・ジルに微笑まれておずおずと微笑を返した。その様子を眺めていたマルカブが立ち上がり、木の実も食うのか?とアル・ジルに聞きながら、カリーナに胡桃を渡した。再びカリーナが鷹に胡桃を差しだし、アル・ジルは笑顔を見せ、少女二人は笑いあった。
「・・・今が幸せなら、これから起こることをどうにかしようってそう思えるわよね。」
 そう呟くマリアは少しだけ安心した様子を見せた。



(五章3話に続く)

---------------あとがきのようなもの-------------------

プリ子の国の話は徐々に進めていくしかないので。
褐色の肌の騎士はオリジナルキャラですが、
ハイラガで冒険者をしている褐色パラ子の兄、という設定です。
ハイラガにも行ったフィニック夫妻と褐色パラ子は知り合いです。
そういうのを匂わしてしまうのは、
「文章にしてないところでもキャラは生活してんねん。」
という思いがあるからかもしれません。

5章は今後の展開に関わる部分の提示の章にするつもりなので、
ちょっと唐突な感じでいろいろ話を進めます。新キャラ出てくるのがちょっと続くかも。

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