まよらなブログ

五章3話。

先走った志水の「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮?」妄想話です。

井藤さんに「誰が主役なのか分からない。」といわれましたが、
主役はメイン3人です。ただ、1?2階層が赤パイ、4?5階層がプリ子メインで、
第二部(第二部って・・・)からは黒ゾディ単独主役、となる予定です。

と、いうわけで、二階層に入っている今は、
赤パイメインなんだけど陰の主役はモン爺の様な気がします。
まあ、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。


五章3話

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「はいはいー、その家具はこっちに運んでー。そっちのフラスコは割らないようにこっちにねー。」
 フィニック家・二階の廊下で、マリアがドルチェを抱きながらてきぱき指示を出している。チェストを運びながらマルカブが、
「・・・あのさ、マリアさん。俺たち、客なんじゃないかな?」
「そうねえ。でも、人手があるうちにサビクくんたちの部屋を用意してあげたいじゃない?」
「フェイデンとサビクにやらせりゃいいんじゃないかな?」
「そうねえ。でも、男手が多い方がちゃちゃっと終わるじゃない?あ、マルカブさん、そこの角にぶつけないように注意してね。それを運び終わったら下からマットレスを持ってきて。アヴィーくん、そっちの床も拭いてちょうだいね。ああ、ディスケさん、手が空いたならいいかしら。時計が止まってしまってね、直してもらえると助かるんだけど。」
 マリアは指示を出してから、全部片づいたらお茶にしましょうね、と微笑むのだ。その一言で文句を言う雰囲気も封じ込めてしまったマリアに、
「・・・主婦って怖え・・・。」
 と、マルカブは呻き、窓を拭いていたサビクが、
「・・・なんかゴメン・・・おれたちのせいで・・・」
 と、申し訳なさそうに呟いた。
 マリアはそんな様子などきっぱり無視をして、ふぎゃふぎゃ、と泣き出したドルチェをあやし、
「あらあら、どうしたのドルチェ。おむつはさっき替えたから・・・ミルクかな。ちょっと待っててねー、今あげるわねー。」
「ここで授乳をしようとするなッ!!」
 全く無頓着なマリアにマルカブが叫び、あらあらそれもそうよね、とマリアは舌を出して笑って、
「じゃあ、下に行ってるからちょっとよろしくね。」
 そう言い、ドルチェをあやしながら階段を降りていく。「・・・俺、あの人、嫌いじゃないんだけど苦手だな・・・」とマルカブが呻く中で、
「・・・頑張れよ、サビク。マリアさんはいい人だけど、誰も頭上がんないから。」
 ディスケがサビクの肩を叩いた。
 そんな二階に反して、一階からは「かわいい??!」と女子二人の歓声が聞こえてくる。おそらく母子の授乳を暢気に見学してるのだろう。サビクは頬を軽く掻いてから、話題を変えた。
「・・・なあ、あんたら、二層まで行ったんだろ?」
「おう、そうだけど。」
「・・・あの、今回、世話になったし、借りは返さなきゃ。おれも何か協力したい。」
「気持ちは嬉しいが、やめとけ。お前、魔物を戦うのとかやったことねえだろ。」
「僕もそういうのやったことなかったよ?だから大丈夫だと思うけど。」
 アヴィーが雑巾を絞りながら言い、サビクは首を振った。
「確かに魔物を戦ったことはないし、戦う力とかもないけど。樹海の植物や鉱物を探すことは出来ると思う。売れば結構な金にもなるだろ?あんな薄い財布持ってるんだから、金も必要だろ?」
「だから、薄さを強調するな。」
「おまけに軽いしなー。」
「小銭もないんだね。」
 ディスケとアヴィーが茶々を入れるのを睨み付けてから、マルカブはサビクを見て、
「・・・まあ、そうだな。地下一階や二階なら魔物がでても俺たちで何とか出来るだろうし。まあ、落ち着いたら頼むこともあるだろ。そん時は頼むわ。それまでは、しっかりフェイデンの手伝いしろよ。」
「お、おう!任せとけ!」
 サビクは嬉しそうに、しかし、それを隠すようにしながら頷いた。それと同時に、フィニック家の呼び鈴が鳴った。


「アヴィー。ベクがどこかに行ったか知ってるか?」
 呼び鈴の直後、フェイデンが二階へ上がってきてアヴィーに問いかける。アヴィーは首をひねり、
「先生、ですか?僕、今日は先生の家に行ってないんです。何かあったんですか?」
「ミモザが来てるんだ。ベクにお客さんが来てるらしいんだけど、家にいないから探しに来たらしくて。」
「お前、一緒に探してやれば?」
 ディスケが壁掛け時計の中身をいじりながら、あまり気のない様子でそう言った。世話になってるんだから行って来い、とマルカブも手を振って促す。アヴィーはうん、と頷いて、階段を降りていった。玄関では走ってきたらしいミモザにカリーナが水を渡している。(フィニック家に遊びに来ている中で、カリーナはミモザと仲良くなっていた。)
「ミモザ、先生いないの?」
 アヴィーが聞くと、アヴィーの師匠の娘であるミモザはこくり、と頷いて、
「パパ、今日、どこかに出かけるって言ってなかったんだけど・・・。」
(一階から聞こえてくるミモザの声に、「パパか。」「そんな顔してないのにな。」とマルカブとディスケが呟いた。)
「図書館かな・・・。僕も探しに行くよ。ミモザは家に戻ってて、お客さんが来てるんでしょう?」
「う、うん。」
「私も探そうか?」
 カリーナがミモザに尋ねると、ミモザはこくん、と頷いた。
「じゃあ、カリーナは図書館に行ってみて。僕はお店を探すよ。先生が行くのは、本屋か道具屋だと思うから。」
「うん。探したら一度ミモザの家に行くね。」
 二人はそこまで決めてから、二階に向かって、
「マルカブー!ちょっと出かけてくるーー!」
「もし遅くなったら宿に戻っててーーー!」
 と声をかけ、気をつけていけよー、と返事を聞いてから、いってきまーす、と出ていった。
「ちゃんとおとーさんに言ってからお出かけするんだなあ。」
 二階に残っていたフェイデンが感心感心と頷いて、
「どう育てたら、ああいう素直な子たちに育つんだ?」
 と真剣に聞くので、だから俺は父親じゃねえぞ、とマルカブに耳を引っ張られるのだ。
 

*****

 樹海近くの丘の上。海を臨む場所に、一抱え出来る大きさの石で出来た墓があった。クー・シーはそこに花を供えてから、ため息をつく。
「・・・きれいにしてもらっているね。ありがとう、ベク。」
「・・・墓守は引き受けた、と約束したからな。」
「わしはセイリアスのお守りを引き受けたはずなんだけどね。アイツは人に頼ることに全く臆病になってしまって。」
「・・・セイリアスには誰もいないのか?」
「いないこともないんだけど。近衛騎士と侍医の双子とか側近中の側近もいるし、彼を慕う部下もいる。わしの孫娘もアイツの部下だ。けれど、まあ、所詮は部下だからねえ。それ以上の思いがあったとしても、それ以上にはならないようにしているよ。」
 クー・シーはため息をつき、
「そんなの、ピックはきっと良しとしないんだろうな。」
「お節介だからな。」
「だからこそ、セイリアスは彼女に惹かれたんだろうけど。」
 だからこそあれっきり誰にも縋れないんだろうけど、とクー・シーは呟いた。ベクルックスがそんなクー・シーに数枚の地図を渡す。
「何だね?」
 血のこびりついた地図をみて、クー・シーは眉を寄せた。
「二階層にたどり着き、帰ってこなかったギルドや記憶を失っている冒険者の荷物から集めた地図だ。一部しかないものがほとんどだが。」
 ベクルックスは静かに続ける。
「それでも、我々の地図と繋ぎ合わせて、あることに気がついた。どの地図もある地点から記載されていない。」
 その言葉に、クー・シーが地図を素早くめくる。どの地図も地下6階で止まっており、そしてその6階の中央部より東側・細い道を抜けた先が描かれたものが一枚もない。
「・・・わしがピックの遺髪らしきものを見つけた場所が描かれてない。」
「おそらくそこに何かあり、それが冒険者を阻んでいる。何十年と続けられる何かだ。」
「・・・これをどうしたらいいのかね、ベク。」
「好きに使え。ただし、一つ約束しろ。」
「なんだね。」
「我々、『ムルジム』のために、今お前がいるギルドを犠牲になどするな。」
 クー・シーは曖昧に笑みを浮かべた。そこにベクルックスは畳みかける。それはまるで、懇願のようだった。
「気がつけ、クー・シー。あれは昔の我々だ。お前があの子たちを守りたかったように、今のあの子らを守りたい者がいる。お前がそれを壊すのなら、お前は昔の自分を壊すことになるんだ。」
 そんなことはもう許したくはない、そう言うベクルックスに、クー・シーは苦笑を浮かべるだけだった。


*****


図書館をきょろきょろとまわったものの、ベクルックスの姿を見つけられなかったカリーナは、一度ミモザの家に向かうことにした。近道をしようと路地裏を曲がったところで、人にぶつかる。ごめんなさい、と言って通り過ぎようとしたが、その腕を掴まれた。カリーナは自分の腕をつかんでいる人を見る。三人ほどの若い男だ。肩から「チンピラです。」とタスキを掛けているような、いかにもな風貌だった。
 カリーナは舌打ちをした。「一人で路地に入るなよ。」とマルカブがよく言っているのはこういうことか、と今になって悟るのだ。
「・・・何か御用でしょうか?」
 いざとなったらスカートの下に備えている短剣を抜こう、と思いつつ、カリーナは男たちに聞く。彼らは品なく笑いながらカリーナに顔を近づけて、
 ――何か品のないことを言おうとしたのだろう。だが、その一言を言う前に、カリーナの腕を掴んでいない二人が後ろから襟を掴まれて放り投げられた。
 カリーナは男の後ろに更に一人、長身というよりも大柄な男がぬうっと現れたのに気がついた。重騎士なのか、町中で重装備の鎧を着ている。と、なると樹海帰り(行きかもしれないが)の冒険者だ。
 重騎士らしき男は、チンピラの腕をつかんで捻りあげた。悲鳴を出しながら、カリーナに絡んだ男も放り投げられる。三人は身を起こし、威勢のいいことを言おうとしたが、重騎士に遙か高くから見下ろされて陳腐な捨て台詞とともに去っていった。
 重騎士はカリーナを見下ろした。年は30半ばぐらいの、栗色の髪の男性。実に生真面目そうだった。
「お嬢ちゃん、大丈夫?」
 と、その彼の後ろから、ひょこっと女性が顔を出す。ゆるくウェーブのかかった亜麻色の髪の女性。抜群のスタイルを薄手のシャツと短いスカートで覆っている。何となく、海の匂いがした。
 大柄の男が、すっと身をわずかに屈めて、カリーナと視線を合わせようとした。その仕草に、この人は大丈夫、とカリーナは思うのだった。
「・・・・・・無事かね?」
 彼は低い声で問いかけてきた。カリーナはおどおどしながらも、警戒心を解いて頷いた。
「は、はい。ありがとうございます。」
「・・・この道は通らない方がいい。」
「なんなら送っていこうか?」
 と女性が聞く。カリーナは首を振り、
「大丈夫です。他の道を使いますから。」
「そう?」
「あ、あの、ありがとうございました。」
 カリーナはぺこり、とお辞儀をした。
「あの、ちゃんとお礼をしたいんです。お名前を教えていただけますか?」
「そんなことは気にしなくていい。」
 と男性の方が静かに言い、そのまま歩き出す。カリーナは、でも・・・と呟いた後に、女性に問いかけた。
「あの、あの、お二人は冒険者なんですか?」
「うん、ちょっと前にこの町に来たんだけど。」
「わ、私も冒険者なんです。もし、樹海でお会いしたら、その時はお礼をさせてください。」
「そうね。ピンチになってたら助けてちょうだいよ。」
 と女性が笑う。カリーナは大まじめな顔で、はい、と頷いた。その様子に女性はますます笑みを深めてから、その時にまたね、とカリーナに手を振り、連れの男を追いかけた。
「ちょっとシェリアク。待ってよ。宿に帰るまで腕組んでくれるって言ってたじゃん。」
 女性はそう言って、重騎士と腕を組んだ。カリーナはそれを見ながら、恋人同士なんだ、とか、シェリアクさんっていうんだ、といくつかのことに気がついて、それからふと、シェリアクと呼ばれた男が身を屈める仕草を思い出す。そしてそれが、マルカブが自分たちに言い聞かせるときの仕草によく似ていたことに気がつくのだ。
 雰囲気が全然違うのにな、とカリーナは思いながら、通りの方へ戻っていった。



(五章4話に続く)

---------------あとがきのようなもの-------------------

新キャラ続いてすみません。
重騎士と連れの女性は、おっさんファランクスとパイレーツの姐さんです。
そのうち本格的に話に参入してきます。

最初の授乳云々の話は正直いらないような気もするんですが、
まあ、そういう人なんです、うちのケミ姐は。

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