まよらなブログ

六章5話。

先走った志水の「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮?」妄想話です。
2010年最後の世界樹妄想話の更新となります。
10ヶ月かけて6階までしか進んでない、というすごい速度で書いているこの話、
おまけに鋼サイトのブログで更新するという超アウェーな中のこの話、
読んでくださる方々からの拍手に支えられて続けております。どうもありがとうございます。

来年もこんな調子で書いていくかと思いますが、
32歳になるまでに何とか第一部を終わらせたいものです。
志水自身がうちの赤パイの年を越えることに、
 も の す げ え 敗 北 感 を感じるような気がするからです。
・・・(ネタ帳を見ながら)・・・無理そうだな。(どれだけ長い話を書く気だ)

というわけで、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。

6章5話
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 明るい声の少女に導かれ、進んだ蒼い樹海の迷宮。
 多くの魔物と空気の海流。
 それを抜けた先で、ぐるぐると道を周回していた古代魚の群。
 うまく避けて進んだはずなのに、古代魚の襲撃と海流のせいで、仲間は分断されてしまった。
 海流によって道を戻された男らが二人、その場に取り残された娘が一人。
 そして先の道へと押し出された青年が一人。
 青年は、仲間の名を呼び、返事が返ってこないことを知って決意して先の道を進んだのだ。
 そして、その先の袋小路に――・・・


*****
 古代魚の群が二つ、ぐるぐると回廊を周遊している。
 出会った少女・オランピアの「東に進み海流を抜けた先に深都につながる隠し階段があるらしい。」という言葉を聞いて、進んだ先だ。この先に隠し階段があるのかどうかは分からない。オランピアもどこかで聞いた情報らしいから、確証はない。それでも道は彼女が示した先にしかなかった。
「この先を抜けたら、マルカブの持ってた地図の場所ね。」
 カリーナが地図を確認する。オランピアの言葉を信じたわけでも疑ったわけでもない。一行が進むのは、マルカブの持っていた地図の赤い印に何か意味があると思ったからだ。
 マルカブは、ガーネットの地図を懐から取り出して、見つめながら頷いた。正直、複雑な心境だ。この場所を確かめにやってきたのに、何となく先に進みたくない。この先を確かめたら、本当にガーネットと別れることになるんだろう、とぼんやり思う。
 カリーナはそのマルカブを、彼と同じくらい複雑な心境で見つめる。けれど、何故かが分からない。ただ分かるのは、あの地図は彼にとって大切なものらしい、ということと、それを許容できない自分がいるということだ。
 ・・・マルカブが大切にしてるものなら、私も大切に思いたいのにな。
 カリーナはぼうっとそんなことを考えた。これがもし、アヴィーが大事にしているものならきっと大事にできるのにな、とそんなことも思うのだが、それ以上に思考を進めることは自ら放棄した。何となく嫌な予感がしたのだ。
 一方で、アヴィーがにこにこしながら、
「何だろうね、この赤い印。オランピアが言ったとおり、隠し階段があるのかな。」
 アヴィーは、それとも、と顔を輝かせ、
「宝箱とかあるのかなあ!」
 無邪気なアヴィーの言葉に、マルカブの複雑な心情は少しだけ軽くなった。この先に何があるのか知らないが、独りで来るよりマシだと思った。ましてそれが、どうでもいいような連中とではないことは救いだった。
「そうだったら今日はご馳走でも食いに行くか。」
 とマルカブは言いつつ、地図をしまう。だから、カリーナもその地図のことは考えないことにした。
「おい、今がチャンスだ。群の後について、先に抜けようぜ。」
 古代魚の動きを見ていたディスケが声をかけて、一歩踏み出す。
「向こう側にも群がいるよ。こっちの群を抜けてすぐに次の群の後に続こう。」
 クー・シーが通路の奥をのぞき込みながら、カリーナが広げている地図を指でなぞり進む道を示す。カリーナは地図を数秒じっと見てから、それを丸めて荷物にしまった。
 そして一行はぐるぐると回廊を周遊する古代魚の後に続いていく。方向転換できないらしい古代魚は、後方をついてくる一行には気がついていないようだった。それでも足音を極力立てないようにしながら、一つの群を抜け次の群の後に続く。回廊を抜け、左に曲がれば目的地へと続く通路・・・その通路の入り口が見えた時だ。
「・・・ッ!」
 がくん!とアヴィーの体が沈む。その足首に赤い縄のようなものが絡みついている。うねうねと動く赤い縄には吸盤が付いている。回廊の横の茂みに潜んでいたアカグロダコがアヴィーの足をからめとり、ずずず・・・と茂みに引き込もうとした。カリーナが剣を抜きタコの足を切断し、クー・シーがアヴィーを助け起こす。体から切り取られたタコの足は、アヴィーの足首についたままバタバタと動いている。アヴィーは背中を泡立たせたが、その足をふりほどくのは回廊を抜けてからだ、と決めた。
 7本足になったタコは、そのうち二本の足でカリーナの首を締めあげる。マルカブがタコの目を狙って、三発の連射をたたき込んだ。片目を潰したタコは、カリーナの首から足を解き、黒い炭を吐いて彼らを威嚇した。一瞬、地面に崩れ落ちそうになったカリーナをマルカブが支え、彼女の背を叩きながら、
「逃げるぞ!!」
 アカグロダコ一体なら、それほど苦戦する相手ではない。だが、今ここで戦う時間が致命的だ。古代魚の群はこの回廊を周遊している。つまり、またここに戻ってくる。
 そして、それを知っているから、ディスケは大弓の弦を引きながら、タコではなく自分たちの背後に照準を合わせていた。回廊を一回りした古代魚が、角を曲がって現れた。
 古代魚は一行を見て、金属を引っかくような声を上げて向かってくる。ディスケは準備していた矢弾を発射し、古代魚の進撃をわずかでも遅らせようとした。宙を海のように泳ぐ古代魚は、優雅な宙返りを見せて矢弾を避け、そして一行に向かって尾を降り下ろした。
 パアン!!という音とともに、古代魚がアヴィーを振り払う。
「・・・ッ!!」
 とっさに両手を体の前で交差させ、胴への直接の一撃を避けたものの、アヴィーは回廊の道順、つまり回って元の道の方向へ吹き飛ばされる。
「アヴィー!!」
 マルカブがアヴィーに手を伸ばそうとしたときだ、すっと上空が陰る。アヴィーを吹き飛ばした尾がそのまま弧を描いて動きを続けている。
 ・・・しまった。
 と思うのと同時に、マルカブも古代魚に打たれた。その円を描く動きの中でディスケとクー・シーも尾に巻き込まれる。
 カリーナが自分に手を伸ばして駆け寄ってくるのをマルカブは見たが、そのカリーナの姿が急激に遠くなる。
 ・・・しまった!!
 と、再度思った。吹き飛ばされたその勢いで、海流に入り込んでしまったのだ。しかも、同時に尾に振り払われたディスケとクー・シーも一緒に。
「カリーナ!逃げろ!!」
 空気が逆巻く中でそれだけをマルカブは叫んだが、カリーナの耳には届かなかった。それでも、彼女は独りその場に残されて、反射的に選ぶ。この古代魚たちから逃れるために、進むべき方向を。
 カリーナは、古代魚のさらなる一撃が来る前に、回廊から逸れるべく左の道へと飛びこんだ。転がるように道に入り込んで、荒い息をついて振り返る。己の道を塞ぐものがいなくなった古代魚の群は、悠々と周遊を再開している。回廊から逸れたカリーナのことはもう覚えてもいないようだった。
 カリーナは自分をぎゅっと抱きしめて、立ち上がり、
「マルカブ!!」
 海流に流された仲間を呼び、
「アヴィー!」
 一人方向の違う方に吹き飛ばされた仲間を呼び、
「ディスケ!!クー・シー!!」
 やはりそこにいない仲間を呼んだ。
「みんな!いないの!?」
 問いかけの返事の代わりに、周囲で気配が沸いた。カリーナはぐっと唇をかみしめる。古代魚の群から逃れたものの、周囲に魔物がいるのだ。大声を出したらマズい。
「・・・・・・う・・・」
 カリーナは唇をへの字に曲げて、泣くまいと必死になった。
「・・・平気・・・!みんなきっと無事・・・!」
 自分にそう言い聞かせ、そして道の先を見る。まっすぐの道が続いている。
 カリーナは目を凝らし、道の先を見ようとした。その先は、マルカブが持っていた地図で赤い印があったところだ。木々が多いのか、周囲より暗く感じられる。
「・・・・・・先に進もう。」
 カリーナは前を見据えて呟いた。ここにじっとしていると、先ほどから気配をちらつかせている魔物がいつ襲いかかってくか分からない。
「・・・みんなが目指してるのも、この先だもの・・・。きっと来てくれる。」
 カリーナはぐっと拳で瞼を拭い、剣を握りしめて歩きだした。

*****

「・・・どうしよう・・・]
 同じように一人回廊に取り残されたアヴィーが呆然と呟いた。古代魚に吹き飛ばされ、地面を転がって着いた先は、ロの字型の回廊の始点にして終点だ。腹ばいの姿勢のまま、顔をぐっと起こして、先ほど進んだ道を見る。
「・・・急いでもう一周して戻れば、古代魚に追いつかれないよね・・・」
 アヴィーはぱん!と自分の頬を叩いて、古代魚の群が周遊する回廊をもう一周することに決める。後方で物音がした。おそらくアヴィーを吹き飛ばした古代魚が、ぐるっと回廊を回って来ているのだろう。
 アヴィーは身を起こし、足に絡まったタコの足をほどいた。時間がたってきているためか、タコの足の力は緩んできたものの、まだぐねぐねと踊っている。それを手にしながら立ち上がり、すぐに駆けだした。回廊を走りながら、アヴィーはちらりと後ろを振り返る。古代魚の鼻先が曲がり角に見えた。
 その鼻先に向かって、タコの足を投げつける。古代魚は、己の口の上に、ぽとりと落ちたタコの足をぎょろりと寄り目で見つめ、顔を軽く振るって足を地面に落とし、そして一飲みにした。
 アヴィーはその隙に角を曲がり、先に進む。移動速度は自分と変わらない魔物だ。わずかな時間さえ出来れば、追いつかれずに先に進める。
「・・・みんな、先の道に行ったかな・・・。」
 アヴィーはついさっきまで仲間たちと歩いていた道を、独りで走り抜けながら呟いた。
「・・・みんな、無事だよね・・・!」

*****

「・・・同じだ。」
 海流の先でクー・シーが呟いた。マルカブとディスケが振り返る。
 三人は、一つ目の古代魚の群の手前まで戻されてしまっている。すぐに、先ほど進んだ道を再度進み、アヴィーとカリーナのもとに駆けつけようとしたものの、ちょうど古代魚の群が通り抜ける最中で、群が去るまで立ち止まらざる得ない。
「・・・何がだ、クー爺。」
 群が去るのを苛立たしげに待っていたマルカブが、低い声で問いかける。それは問い掛け、というより問い詰めに近かった。
「・・・セイリアスとピックも同じように分断された。」
 クー・シーは今ここではない何かを見ているようだった。
「・・・急がなくては・・・!」
 そのままクー・シーは群にも構わず進もうとする。慌ててディスケがそれを止めた。
「どうした、爺さん!ついに耄碌したわけでもないだろう!?」
「違う!あの先に、あの回廊の先で、ピックは死に、セイリアスは倒れていた!」
 クー・シーはディスケの腕を振り払い、
「わしらはここに戻された!あの子等に追いついたときには、すべてが終わっていた!」
 クー・シーの言葉を聞いて、二人の胸がすっと冷える。
「爺さん!もしかして、アンタ、何が起こるか全部分かっていて・・・・・・!」
「知っていたとも!この先の小部屋が、血の臭いで充満していることを!だからこそ、そこで何が起きたのかわしは知りたかったし、だからこそ今度こそ同じことは起こしたくなかった!」
「何で黙ってたんだ!!」
 ディスケが怒鳴りつけると、クー・シーはそれ以上の声で、
「言ったら、お前たちは先に進んだかね!?わしのかつての仲間の無念をそのままにしておけるものか!だから、あの先にわし独りで進み、そこで起きたことをお前たちが伝えてくれればいいと、そう思っていたのに!」
 クー・シーは唾まで飛ばして、喚くように叫ぶのだ。
「これじゃあ、まったく同じじゃないか!!」
 叫んだクー・シーの顔面を、マルカブが力の限り殴りつけた。クー・シーはよろり、と後ずさり顔を押さえる。
「・・・言いたいことは山のようにあるがな、クー爺。一つだけ答えろ。」
 鼻血を流して自分を見るクー・シーに、マルカブは問いかける。
「・・・お前が前にここに来たとき、俺たちはいたか?」
 その問いかけに、クー・シーが眉を上げた。眉に隠れた目がわずかに見える。泣いているようだった。
「その時と、同じじゃない。」
 マルカブは、その目に叩き込むかのようにきっぱりと。
「同じじゃないだろう。」
 そう言うマルカブの背後で、古代魚の群がすーっと泳ぎ去った。そのタイミングを図っていたかのように、マルカブは回廊へと視線を向け、
「あとで全部吐けよ、ジジイ。ガキどもに謝れ。今頃、心細い思いしてんだから。」
 そう言って回廊へと駆けだした。
「まあ、二人の保護が先だよな。」
 ディスケもそう言って走り出し、走りながら、
「爺さん、急げ!急がなかったら、俺も殴るぞ!!」
 とクー・シーに声を掛ける。クー・シーは一度ぐっと拳を握りしめ、鼻血を拭った。同じじゃない。20年前と同じじゃない。この顔面の痛みは20年前には存在しなかった。
 だから、クー・シーも駆け出すのだ。折角、ここまでが同じではないのだから、結末まで同じものにさせないために。
 

(六章6話に続く)

---------------あとがきのようなもの-------------------

さて、ゲームではこの辺りから話がぐっと進み、どう書いていくか非常に考えるところです。
でも個人的には、プリ子の複雑な心境をどう書いていくかの方がずっと難しいです。

まあ、志水の心の山場はモン爺ですけどね。

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