まよらなブログ

七章1話。

先走った志水の「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮?」妄想話です。
本日から七章です。七章は既に書きあがっておりますが、
いつにもまして「世界樹カンケーねえ!!!」な感じです。
・・・シナリオの隙間を縫ってんねん・・・八章でちゃんと関係あるようにしたいねん・・・



というわけで、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。
今回はサンドイッチを作ってます、世界樹カンケーねえ。



七章1話

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 翌朝は、少しだけ霧が出ていた。微かに白い空気の中、ディスケが紙袋を抱えてミアプラキドゥス号の甲板に降り立った。
「入り口用の板、出しっぱなしにしてー。防犯意識がなってねえなー。困ったうちのおとーさんだよ、本当にもー。」
 と、一人で既に家族ごっこをしつつ甲板を眺めると、壁に寄り掛かって寝ているマルカブとその両横で彼にもたれ掛かりながら寝ているカリーナとアヴィーがいた。
「・・・。」
 ディスケは瞬きをしてから、そーっと三人の前に歩み寄りしゃがみ込む。カリーナは穏やかな顔で、アヴィーは口を開けて無邪気に寝ている。マルカブは俯きがちに、どういうわけかしかめっ面だ。
 ディスケはそーっと両手を伸ばした。そして、マルカブの目の前で、ぱん!!と思いっきり両手を打つ。びく!とマルカブの肩が跳ね、彼は素早くベルトに差した銃に手をかけた。マルカブにもたれ掛かっていたアヴィーがずるっと滑り、カリーナも顔を上げ何度も瞬きをした。
 マルカブの驚きと警戒に開かれた目が、目の前でニヤニヤしているディスケをとらえる。マルカブは銃から手を離し、その手で拳を作りディスケの顎をぐぐぐぐぐ、と押し上げた。
「・・・・・・ッお前はーーーーッ!!!」
「あっはっはっは!おはようさん!仲良し家族だなあ本当に!」
 顎を押し上げられながらディスケは愉快そうに笑い、それから頭を振って目を覚まそうとしているカリーナと目を擦って眠そうにしているアヴィーを見た。
「二人とも腹減ってねえ?昨日、夕飯食ってないだろ?」
 そう言いながら、抱えて持ってきた紙袋を軽く掲げて、
「折角だからさ、ミアプラ号のキッチンでサンドイッチパーティしようぜ!」
 まだまだ寝ぼけ眼の子どもたちに、楽しそうに問いかける。二人は夢現のまま、うん、と頷いた。マルカブは、船の名前を略すな、とそっちに小言を言った。

*****

 ミアプラキドゥス号のキッチンのテーブルには、薄めに切った食パンと、野菜やハムやチーズ、果物の入った皿やアンチョビの缶詰を開けたものなどが並べられた。アヴィーがにこにこしながら食パンにバターを塗る。
「何を挟もうかなあ!一杯あると迷っちゃうね!」
「折角だから分厚いサンドイッチにしろよー。」
 ディスケが全ての具材を挟む勢いで、食材をパンに乗せていく。
「で、デカい口を開いて食べる!」
 10センチもありそうな高さまで食材を積み、その上にもう一枚食パンを乗せて、ぐっと手で押す。
「それがサンドイッチパーティの醍醐味だ!俺はばあちゃんにそう教わった!」
「・・・どんなパーティだ・・・そして、どんなばあちゃんだ・・・」
 呆れた様子でマルカブはツッコんだが、ディスケが気楽に子どもたちに食事を取らせるつもりだということは分かっていたので、何を挟もうか迷いがちのカリーナにパンを渡しつつ、
「好きなもん入れとけ、カリーナ。組み合わせが悪かったら、それはそれだ。」
「何言ってんだよー。意外な組み合わせに新しい発見があるかもしれないだろー。」
 分厚いサンドイッチを持ち上げて、いただきまーす、とディスケが大口を上げてかぶりついた。それを見て、僕もいっぱい挟もうー!とアヴィーが食パンに具材を乗せ始めた。ディスケがサンドイッチにかぶりつくと、反対側から具材が飛び出す。慌てて押さえたディスケを見て、カリーナは笑った。
「お行儀が悪いよ、ディスケ。」
 ディスケはもぐもぐ、と口を動かしつつ、分かってねなあ、とわざとらしく指を振る。
「これもサンドイッチパーティの醍醐味だ!!」
「サンドイッチパーティって、よくするの?」
「子どもの頃はよくやってたなー。休日の昼とかに、ばあちゃんと。どういうわけかコロネも嗅ぎ付けてやってくるんだよなー。」
 ディスケは口の周り拭いながら、
「コロネもこーーーんな分厚いサンドイッチ作って、デカい口開けて食ってたぞ!女の子だからって遠慮すんな、カリーナ!」
 カリーナはおかしそうに笑い、
「私はフルーツサンドにする!いっぱいいっぱい挟んじゃう!」
「そうそう、その意気だ!」
 どんな意気だ、とマルカブはため息をついた。
「たのもーーーー!」
 と、外から声がする。大口を開けて自作したサンドイッチを食べようとしていたアヴィーが、ぱっと顔を上げて
「おじいちゃんだ!ちゃんと戻ってきてくれた!」
「・・・すぐに入ってこないなんて、らしくねえな。」
 マルカブはそう言って立ち上がり、キッチンの戸を開けて外へ向かって大声を出した。
「入ってこられるだろ!とっとと来い、クー爺!」
「今ねー!サンドイッチパーティだよ!」
「ディスケがすごく厚いサンドイッチを作ったのよ!」
「爺さん、人間の顎の限界に挑戦しようぜー!」
 わーわー、と聞こえる声に、クー・シーから「すぐにいくよー!」という返事が返ってくる。そしてすぐにやってきたクー・シーは、
「朝からなんて楽しいことをしてるんだね!おじいちゃんも混ぜて!」
 ひょーん!と飛ぶようにキッチンのテーブルに座り、
「あ、マルカブ。おじいちゃん、お茶がほしいな。紅茶がいいな。」
「・・・自分で淹れろ。」
「わしにそんな暇はないよ!今から天井に届くかっていうサンドイッチを作るんだからね!途中にパンを挟むと、バランスが安定すると思うんだけどどう思うかね!?」
「おー、そりゃいい考えだなー。バランス重視なら、最後に重めのものを乗せた方が重心が下に向かっていいんじゃねえの?ちょっと設計図でも描くかー。」
「やはり最初と最後と中間にチーズかね。」
「色合いも考えないとな。デザインも重要だ。」
「・・・食い物で遊ぶな。」
 真剣に最初の食パンの上にまず何を乗せるかを考え出すクー・シーとディスケに、マルカブがアンチョビと薄切りにしたタマネギをパンに乗せながら、一応、ツッコんだ。もちろん、効果は無かった。マルカブはため息を吐いて、アヴィーとカリーナをちらりと見る。カリーナがたっぷりと果物を挟んだパンを口に運び、それを見てアヴィーが「クリームもあると良かったね。」と言い、ちょっと考えてから、
「今度サンドイッチパーティするときは用意しようね!」
「うん!今度はマリアさんたちやコロネさんやアル・ジルたちも呼ぼうね!」
 ね!と子ども二人は次回の予定を立てているらしかった。まあ元気になってるんならいいんだけどよ、とマルカブはパンを口に運ぶのだ。


*****

「・・・さて、約束通り、ちゃんと話そうかね。」
 食後の茶を一口すすり、クー・シーが切り出した。アヴィーから茶を受け取ったマルカブが(アヴィーは紅茶を淹れるのもうまいのだった)、椅子に座ったアヴィーと砂糖をカップに入れているカリーナに、
「・・・お前等、話聞けるか?」
 問いかけると二人は顔を見合わせてから、神妙に頷いた。カリーナがカップを持ちながらマルカブの隣に移動して、
「・・・思い出して怖くなったら、聞かなくてもいい?」
 と尋ねる。当たり前だ、とマルカブは答え、自分の隣の席に目を落とし、座れ、と示す。カリーナはちょこん、とそこに座った。アヴィーも席について、茶を舐める様に一口啜った。
「まあ、薄々みんな気づいてると思うけど、」
 と、クー・シーは髭を撫でながら、
「わしは20年前にこの町にやってきて、仲間と出会って樹海の探索をしていた。仲間は姫の兄君のセイリアスとベクルックス・・・」
「先生?」
 アヴィーが顔をあげると、クー・シーは頷いた。
「黙っていて悪かったね、アヴィー。まさか彼が弟子を取るとはねえ、結婚して丸くなったもんだよ。」
「・・・先生は、全部知っていたの?」
「そうだね。知っていた。わしが、口止めをしていたんだ。ベクはお前に謝りたい、と言っている。許してやってくれ。」
「・・・・・・。」
 アヴィーは茶に目を落とし、
「許すかどうかは分からないよ。」
「そうだね。」
「でも、先生には話を聞きにいく。」
「そうだね。」
 クー・シーは頷いて、それから、と話を戻す。
「もう一人、仲間がいた。ピーコックと名乗る戦士の娘だ。彼女は褐色の肌の持ち主で姫の国の被差別部族の出身だった。この町で一旗上げようとやってきた。己を差別してきた王族出身のセイリアスを恨んだっておかしくないのに、仲良くやっていた気のいい娘だった。」
 クー・シーは少しだけぼんやりとした。ゆっくりと20年前の仲間を思い出しているようだった。やがて頭を振り、話を続ける。
「そして、わしらは6階までたどり着いた。その時も、あの場所で、あの道を指したのだ。あのオランピアを名乗る娘は。わしらはその先を進み、そして分断され、・・・あの古代魚の巣へと繋がる道で、わしとベクルックスはセイリアスが倒れているのを見つけ・・・・・・、古代魚の巣でピックの遺髪と遺品を見つけた。」
 クー・シーは静かだった。力もなく、うな垂れる。
「セイリアスはわしらと分断されてからの記憶をなくしていた。わしがあの古代魚の巣に踏み込んだとき、もう古代魚たちはどこかにいってしまっていた。オランピアも消えていて・・・、何が起きたのか何も分からないままわしらは町に戻り・・・・・・、二度と樹海に向かうことはなかった。そしてギルド『ムルジム』は解散となった。」
 クー・シーはため息をゆっくりと吐き出す。
「セイリアスは父君の崩御によって国に帰ることになった。わしはセイリアスとともに彼の国に向かい、彼の仕事を手伝った。彼はピックのために国の身分制度を改革しようとしていたから、それを手伝うことがあの子の弔いになると思ったんだ。ベクルックスはこの町でピックの墓を守りながら、あの場所で何が起きたかを調べてくれていた。そして、いつかすべてを明らかにしてくれる冒険者に託すため、あの地図を集めていた。・・・彼も内臓に傷を負ってね、樹海に潜れる体力はないから。」
 アヴィーは何か思い当たることがあるらしく、あ、と小さく声を出した。
「・・・そうこうして過ごすうちに、ベクルックスからセイリアスの元に、『プレアデス』がアーモロードにある、という手紙が届いた。」
「『プレアデス』?」
 ディスケの問いかけに、カリーナが
「私の髪飾りのこと。」
「そう。その髪飾りは、セイリアスの国の秘宝で、国から持ち出されることはない。ただし、その時は例外だったのだ。」
「・・・私が国外追放されていたから・・・。」
「そう。それをベクは知っていた。ただ、詳しい事情は分からない。だから、セイリアスに手紙を出して、己にすべきことはあるか聞いたのだ。セイリアスはわしに、姫の無事の確認と監視及び護衛を依頼して、アーモロードに向かわせた。」
「・・・なあ、おかしくないか。」
 頬杖をついて聞いていたマルカブが、軽くテーブルをたたく。
「なんで、国外追放にした姫に国の宝を持たせたままなんだよ。」
「・・・悪いが、それは今回の件とは無関係だ。答えられない。ただ、・・・それが最初の質問の答えだ、と答えておきます。」
 後半の言葉はカリーナに向けたものだった。「最初の質問・・・?」とカリーナは首を傾げた。マルカブは苛立たしげに腕を組み、
「クー爺。俺は全部吐けって言ったぞ。酷い目にあったのはカリーナだ。カリーナに関係することは全部話すのがお前の義務だ。」
「セイリアスは姫の護衛をわしに任せたが、今回の件はわしの独断だ。セイリアスの意志や考えは関係ない。だから、答えられない。」
 何か言おうと口を開いたマルカブの袖をつかんで、カリーナが止める。マルカブはカリーナを見つめ、「でもよ、」と言いかける。カリーナは首を振った。
「いいの。たぶん、本当に関係がないの。きっかけだっただけ。」
「そんなの分かんねえだろうが。」
「だって、そうだもの。クー・シーが大切な仲間のせいにして、嘘をつくとは思えない。マルカブだって私やアヴィーのことを言い訳にして嘘をついたりしないでしょう?それに、クー・シーが仲間のことを庇っているのも分かるもの。」
 そんなことを言われては、マルカブもそれ以上追求することは出来ないのだ。お前がいいならいいけどよ、と呟いて、続けろ、とクー・シーに言う。カリーナはマルカブが自分から視線を逸らしたことに少しだけ不安になりながら、彼の袖から手を離した。
 その様子を見ながら、クー・シーは小さく微笑んだ。それはもう、泣きそうな顔だった。



(七章2話に続く)


---------------あとがきのようなもの-------------------

サンドイッチパーティの部分は「世界樹カンケーなさすぎる!」んですが、
しかしこういうシーンほど楽しいのも事実。
このシーン、2000字以内で納めるつもりだったのに一話の半分以上を使ってしまった。
こんなことばっか書いてるからノロノロなんだよ、分かってるけど止めないよ。


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