まよらなブログ

七章5話。


先走った志水の「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮?」妄想話です。

どこかで呟かれていたようなのでぼやき返しておくと、オランたんは永遠に自爆しません。
この話が何年掛かろうと、自爆しません。
むしろ志水の懸案事項はクジュラさんの名言「俺を信じろ」をどう書くかということです。


では、興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。


7章5話
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 目の前でアイスが溶けきった。
「・・・・・・。」
 結局、その頃にはマルカブは猛省を始めていて、
「・・・・・・あー、くそ。」
 何でカリーナを追わなかったのか、などと後悔し始めるのだ。頭を乱暴に掻いてから、
「ママさん、お勘定!!」
 金を払ったらすぐに駆け出す勢いで立ち上がる。代金を受け取った女主人は事情を分かっているのか分かっていないのか、いや八割分かっていないと思うのだが、カリーナに渡すように、と飴玉を一つ渡して「イザユケー!」とマルカブの背中を叩いて送り出した。樹海に向かうときよりも、よっぽど腹に力を込める必要があるに思われた。
 急いで蝶亭を出るときに、入り口でディスケとコロネにすれ違った。思わずぶつかりそうになったディスケが驚いて、
「マルカブ、どうした?」
「丁度よかった。お前ら、カリーナ見なかったか?」
「見てないよな?」
 ディスケがコロネに確認し、コロネは頷く。ディスケはははーん、と顎を撫でながら
「何だよ、喧嘩か?親子喧嘩。」
「そんなもんだよ。」
 マルカブは短く答え、邪魔したな、と走っていく。その背中にディスケが
「ちゃんと謝れよー。お前が8割悪いに決まってるんだからー。」
 と声を掛け、マルカブはおうよ、と手を上げて答えた。ディスケとコロネは意外そうな顔でそれを眺める。
「ありゃりゃ。素直な返事だな。」
「ってことは十割マルカブさんが悪いんだあ。」


*****

「・・・・・・うー・・・」
 カリーナはとぼとぼ桟橋を歩いていた。
「・・・恥ずかしいところ見られちゃった・・・」
 ミアプラキドゥス号の前で泣いていたところを、港の管理者である老人に声をかけられた。その後、港の管理所でお茶をご馳走になって、帰ってくるところだ。老人は泣いていた理由ではなく、「君たち、昨夜は船に泊まっていたようだが?」と尋ねてきた。カリーナは昨日の樹海での出来事を話し、それを老人は興味深そうに聞き、一つだけ聞いてもいいかな、と許可を求めてきた。
 老人が尋ねたことは、カリーナが泣いていたのは昨日の恐ろしい出来事のせいか?ということだった。カリーナは首を振って、そして気がついた。あの古代魚のことは、もうどうでもよくなっている自分がいる。
「・・・・・・生きるか死ぬかの事件だったのに・・・、」
 思わずカリーナは老人の前でため息をついた。
「・・・好きか嫌いかの方が重要なんだ・・・」
 言ってしまってから、はっと口を押さえる。老人は微笑んで「それは泣いても仕方のない悩みだね。」と言うので、カリーナは用事を思い出したふりをして逃げてきた。
 カリーナは桟橋の端までたどり着き、ぼんやりと海を眺める。
「・・・・・・ホントはもっと考えなきゃいけないことあるんだよね・・・」
 樹海で何が起きてるか、オランピアのねらいは何なのか、ミッションを受けるか、先に進むか。
 カリーナはそこにしゃがみ込んだ。桟橋の下で波が揺れている。
「・・・私たち、どうするのかな・・・。ディスケは先に進みたいだろうし・・・クー・シーはオランピアに聞きたいこと一杯あるよね・・・。アヴィーは・・・たぶん、進むっていうだろうな。・・・・・・、マルカブは、私たちを留守番させようとするんだろうな・・・」
 私は、とカリーナは呟いた。
「みんなと一緒にいられればいいな。・・・うん、そうだ・・・みんなでこれからどうするか決めなきゃ・・・。」
 呟いて、そのためにまずはマルカブとどうやって顔を合わせるかを思い煩い始める。彼の顔を直視できるかな。でも、まずはさっきのことを謝らなきゃ。そこまでは上手くできると思う。でも、そこから先がどうしていいか分からない。今までみたいに話は出来る・・・とは思う。でも、それは本心じゃないんだもの!
「・・・どうしよう・・・。誰かに相談しようかな・・・でも、アヴィーにする話じゃないよね・・・。」
 他のことなら何でも相談できるのになあ、とカリーナはため息をつく。その背中に、
「カリーナ!!」
 よりによって、マルカブの声がかかった。
 カリーナはびく!と背中を振るわせて、立ち上がり振り返る。桟橋をマルカブが走ってくる。
 あ、どうしよう。カリーナは頭に熱が昇るのを感じたが、さっき考えていたことを必死に反芻する。まずは謝らなきゃ。
「・・・あ、あの、マルカブ。さっきは・・・」
「・・・さっきは悪かった。」
 マルカブはカリーナの前までやってきて、先に謝った。出鼻を挫かれた感のあるカリーナにはまったく気がついていない様子で、
「なんていうか・・・ガキに八つ当たりしてどうすんだって話だよな、あれじゃ。悪かった。」
「・・・・・・・・・、」
 カリーナは数度瞬きをした。何だか無性に腹立たしくなってくる。謝ってきた彼は何も悪くないはずなのだが、それがどうしようもなく腹立たしい。
「・・・・・・・・・何で先に言っちゃうの!マルカブはタイミングが悪すぎる!!」
「・・・・・・・・・はあ?」
「しかもまたガキ扱いして!」
「ああ、悪かったよ。お前も年頃だもんな。」
「それがもう子ども扱いでしょう!」
「悪かったよ。ほら、飴やるから。」
「だから、それが子ども扱いでしょう!?」
「要らないなら俺が食うぞ。ママさんがお前にってくれたんだけどな。」
「要る!」
 ばっとカリーナはそれを引ったくり、ぷんぷん怒りながら口に放り込んだ。ただでさえ膨れた頬が、飴玉のせいでぽっこりと膨らんだ。ガキだなあ、とマルカブは思って苦笑を浮かべたが、すぐに少しだけ顔を強ばらせた。
「カリーナ、」
「何!?」
「ガーネ・・・・・・エラキスに会っても、俺がさっき話したことは伝えないでくれ。」
「・・・伝えられるほど、ちゃんと聞いてない。」
「じゃあ、簡単に伝える。ガーネットは海賊の元締めから稼ぎか何かをチョロまかして、見せしめに海に沈められた。・・・沈められる前に何をされたかも分からない。」
 カリーナは喉の奥から、く、と声を漏らした。拷問めいたこともされたかもしれない、ということは理解出来る。まして、ガーネットは女性だ。責めとなる行為は男性よりも確実に多い。
 マルカブは少女相手にそれ以上話すつもりはないらしく、だから、と話をまとめた。
「もし、『彼女』がガーネット本人なら、記憶を無くしていることが救いかもしれないんだ。」
「・・・で、でもマルカブ。もし、エラキスさんがガーネットさんだったら・・・・・・マルカブ、それでいいの・・・?」
 カリーナは、おずおずと聞いた。
「・・・マルカブはガーネットさんが好きなんでしょう・・・?忘れられて・・・一緒にいることも出来ないなんて・・・」
 自分はイヤだ、とカリーナは思うのだ。もしこの人に忘れられたらイヤだ、と思うのだ。あの夕焼けの海で言ってくれたことも忘れられてしまったら、私はどこを「家」にして生きていけばいいんだろう。私が途方に暮れている間に、他の人が彼の傍にいるようになったらそれこそ悲しくなってしまう。私は一緒にいたいのに。
 マルカブはゆっくりと首を振った。
「もし、『彼女』がガーネットなら、・・・・・・生きてくれてるだけで儲けもんだ。」
 ・・・ああ、勝てない。
 カリーナは恋心を自覚したそばから、自分がフラれたことを自覚した。それでも今度は泣き出さなかった。
「・・・・・・マルカブは、」
 分かっていることはただ一つ。この人がこういう人だから、私は好きになってしまったんだということだ。
「優しいよね。」
 マルカブは露骨に眉をしかめた。
 カリーナはその眉間の皺をみて、微笑んだ。年上の男性に向かって妙な話だが、「可愛いな。」と思う。そんな自分もおかしくて、ころころと口の中で飴を転がしながら、
「分かった、マルカブ。私、そのことは言わない。」
「頼むよ。」
「・・・でも、マルカブが誤解されてるのはイヤだな・・・。エラキスさん、怖がってたけど・・・マルカブが怖い思いをさせるわけないのに・・・」
「どうだろうね。俺は女に酷いことする気はねえけど、知らずに怖がらせることもあるだろうから。」
「そんなことないと思う。マルカブと話をすればきっと分かるのに・・・。」
 カリーナは呟いて、頭の片隅で自分が出来ることはないか考え始める。ガーネットを怖がらせることなく、彼をほんの少しでも救う方法というものを。そうでなくてはこの優しい人にこれっぽっちも近づけない。そうでなくては自分はいつまでも本当にガキだ。
 ・・・・・・考えなきゃいけないことが一杯。
 カリーナは胸の前で小さく拳をつくって、自分を奮い立たせた。
「・・・何だよ?」
「何でもない。がんばろうと思ったの。」
 何を?とマルカブが聞いたが、カリーナは答えなかった。代わりに提案を一つ。
「・・・シェリアクさんにお礼するのは、私が行くね?」
「・・・いや、そこは俺も・・・」
「・・・エラキスさんに顔を合わせにくいでしょう?」
「・・・そうだけどさ・・・。いや、でも、あれだ。行くなら、誰か連れてけよ。」
「何で?」
「・・・一人で男の部屋を訪ねるな。」
「本当に心配性だよね・・・。」
「何かあってからじゃ遅いって言っただろうが。」
「じゃあ、アヴィーと一緒に行く。で、シェリアクさんだけがいたらマルカブを呼ぶ。」
「おう。そうしてくれよ。」
 カリーナは、うん、と頷き、それから、
「ねえ、話を変えてもいい?」
「おう。俺としてもそっちの方が助かるね。」
「ミッション、どうする?」
「・・・・・・そっちも気が重い話だな。」
「だから、みんなで決めようよ、マルカブ。」
 カリーナは自然にマルカブの手首をつかみ、そっと引いた。
「アヴィーたち、先生と話は終わったかな・・・。みんなで一緒に話して決めよう。」
 そうすれば一番いい方法が思いつくよ、とカリーナは言って、マルカブの手を引いて歩きだした。マルカブは、はいはい、と適当に答えながら、それに付き合った。


(八章に続く)

---------------あとがきのようなもの-------------------

NPCがこっそりと動き出しています。
書かない、という選択は難しいな。それにしても、蝶亭のママさんは可愛いなあ。

各キャラの恋愛模様に的を絞りすぎたこっぱずかしい七章も終わりです。
プリ子はもう少しグジグジする予定でしたが、恋した少女は予想外に強いようです。
次回から八章です。ミッション受けつつ、ムロツミのイベ(規制)。

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