まよらなブログ

八章3話。

先走った志水の「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮?」妄想話です。

まず最初に、
このたびの東北地方太平洋沖地震におきまして、被災された方々にお見舞い申し上げます。
被災地の一日も早い復興を祈るとともに、東京から出来ることをしていこうと思っています。


地震のため、一時中断していました世界樹?妄想話、再開させていただきます。
お休みした分を更新するので、一挙に三話アップします。
自重した最大の理由ですが、今回の話は、NPCが死んでしまうイベントの話になります。
志水は悲惨な書き方が出来ないので、はっきりとしたことは元々書いておりません。
ですが、見たくない方はどうぞ飛ばしてください。次の話からいつもの擬似家族ギルドです。
どうぞお願いいたします。

では、読める方は「つづきを表示」からどうぞ。





8章3話
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 仲間たちを見送ったカリーナは、宿の庭に出てみた。宿の周囲を沿うように歩きながら、そっと二階の窓を見上げてみる。自分たちが借りている部屋と真逆の位置の部屋に人影を見つけた。窓を開けずに世界樹に向かって手を組む女性がいる。エラキスだ。目を閉じて祈っているのか、カリーナに気がついた様子はなかった。
 カリーナは窓に背中を向けて、そっとそこから離れた。あの人は本当はシェリアクさんたちを見送りたかったんだ、と感じた。それを確かめられて良かったと思う。好きな人が、仲間を心配できないような人を好きだったら、とてもじゃないがやりきれない。
 一晩考えたことがある。それはやっぱり必要なことだと思った。思い出を全部自分だけで仕舞っておくつもりのマルカブのためにも、自分ではどうにもならない記憶の空白と奔流に部屋から出てこられなかったエラキスのためにも。それで彼女が何かを思い出しても思い出さなくても、そんなことは二の次だ。それで私が悲しい思いをしたとしても、そんなことは三の次!
 カリーナはずんずんと大股で歩み、宿の中に入り、そのまま二階へと階段を上がっていった。


*****


 一方、『アルゴー』と『ファクト』は樹海を進む。野営地で休憩をして弁当もたいらげて、細く曲がる小道をすすむ。そして以前、オランピアがいた付近で、『ムロツミ』と出会った。カナエに頼まれた通り、『ムロツミ』のシノビの少年・アガタには古代魚の巣の場所を教えなかった。答えを返さない一向に業を煮やした少年はずんずんと先に進み出した。
「カナエ、追った方が・・・」
 立ち尽くす少女にマルカブが声をかけ、そして眉を寄せる。少女は悲愴な表情を浮かべ、どうしていいか分からない様子でその場に立ち尽くす。正確には、立っているだけで精一杯、と言う様子だ。
 カナエの唇が動く。声は出ていない、その動きは問いかけている。「どうして?」と。その問いかけはアガタに向けたものなのか、別の誰かに向けたものなのか、分からなかった。
 マルカブは頭を掻いた。
「ミラ。」
 そして、ファクトのファーマーの少女を呼ぶ。少女はつっけんどんに「何ですの?」と返事をした。(彼女は、エラキスと因縁のありそうなマルカブを露骨に警戒しているのだ。)
「余裕はあるか?」
「・・・どういう意味でしょうか。」
「アガタを連れ戻した方がいいだろ。アイツを追って、ここに連れてくるだけの余裕はあるか?」
 問いかけにミラはシェリアクを見上げた。シェリアクは頷いた。
「・・・私も同意見だ。彼はカナエを放っておくべきではない。」
 シェリアクの言葉にミラは素直に頷いたものの、マルカブへの返事は素直さとはかけ離れた様子で、
「・・・、先ほど野営地で休みましたから。」
 と、そっぽを向きながら答える。随分、嫌われたなあ、と思いながらもマルカブは頷いた。(その背後で、「うちのおとーさんがあのくらいの年の子に嫌われるなんて!」「うちの子たちやサビクくんたちには懐かれてるのに嫌われるなんて!」とディスケとクー・シーが無意味に茶々を入れている。)
「・・・よし、じゃあ、アガタを追うぞ。カナエはここで待ってろ。」
 青い顔をしている少女は、はっと我に返り、「ですが・・・」と何かを口にしようとしたが、続きは言葉にならなかった。代わりに、カナエは「アガタが・・・無理なことばかり言って・・・」と頭を下げる。
「・・・私は彼が無理を言っているとは思わない。」
 シェリアクが静かな口調でカナエに言い聞かせた。
「勿論、古代魚の巣へ向かうことが正しいとも思わないが。・・・彼は、君が苦しんでいることから救いたがっている。」
 それだけのことだ、とシェリアクに言われ、カナエは少しだけ頬を染めて、ためらいがちに頷いた。
「彼が戻ってきても、彼を叱らないでくれ。」
 シェリアクは小さく苦笑混じりにカナエに告げる。少女は小さな声で「お約束します。」と答えた。
 ――、苦しんでいることから救いたがっている。
 何だか俺に言われてるみたいだな、とマルカブは思う。カナエも記憶を一部無くしていて、アガタは彼女が苦しまないで生きてほしいと願っている。それはガーネット・・・というよりエラキスに対するシェリアクの願いそのものなのだ。
 ――、俺は別の苦しみを重ねさせたくないんだけどな。
 思い出すことが逆に苦しめるかもしれないこと。それは「もしかしたら」という程度のことかもしれない。エラキス・・・というよりガーネットが泣かなかった理由を考えてしまうと、その「もしかしたら」の重さは無視できない。古代魚の恐怖の直後、泣き出せなかったカリーナを思いだし、マルカブは考える。ガーネットが泣かなかったのは、「泣けない」ほどの苦しさのせいだったのかもしれないと。
「・・・ぼんやりすんな。」
 小声でディスケに声をかけられ、マルカブは我に返った。ディスケは弩を担ぎ直しつつ、
「・・・今はアガタを探すこと。女のことでお悩みなら、後で俺が相談に乗ってやるから。」
「・・・おう。悪い。」
 マルカブは一息吐いて、頷いた。彼が切り替えたのを確認したディスケは、へらへら笑いながら、
「幸せいっぱいなディスケさんの恋愛相談だから御利益あるぞー。」
「そうか。お前にだけは絶対に相談しないことに決めた。」
 マルカブはそう言いながら帽子をかぶりなおした。


*****


 そして進む先で。古代魚の巣で。
 心配になってアガタを追いかけてきたカナエが地面に横たわっている姿と、彼女を呆然と見つめるアガタの姿を見つけるのだ。二人の周囲には、古代魚の残骸。
 シェリアクは素早くミラの前に立ち、彼女の視界をふさぎながら、ディスケにミラとともに巣の外にいてくれと頼む。ディスケはミラの腕をつかみ、彼女の反論も聞かずに引きずるようにして巣からでていく。クー・シーは倒れたカナエに走りよろうとして、アガタの一喝に足を止めた。もう遅い、ようだった。
 アガタは淡々とそこで起きたことを語り、眠るようなカナエを抱き上げて巣から去っていった。追いかけることは勿論、かける言葉も見つからず、死臭だけが充満するその巣の中に一行は取り残された。
 クー・シーが「・・・もう、こんなことは嫌だよ。」と呻いた声に、マルカブとシェリアクは我に返る。老人は拳を握りしめ、
「・・・ピックだけでも十分なのに。」
 そう言って、クー・シーは赤黒い血のこびりついた木の幹を殴り付けた。
 マルカブは、やっぱりアヴィーもカリーナも連れてこなくてよかった、と思い、そんなことを思った自分を嫌悪する。せめてもう少し、自分たちが早くたどり着けば、彼らの退路ぐらい作れたかもしれない。そのことを考える前に、よかったことを考える自分を嫌悪する。
 だが、だからといって何が出来たと言うんだろう!
 マルカブは心の底で叫んだときだ、クー・シーは拳を握りしめたままで、
「・・・戻ろう。」
 と、言い、そして二人に向き直る。
「わしはここにピックの弔いにきた。・・・だが、今はダメだ。ここで弔いをしたら、まるで・・・・・・、まるで、カナエちゃんに起きることを知っていたかのようじゃないか!そんなこと、わしは出来ない。・・・出来ない!」
 今、ここにいる人間の中で、この出来事を最も耐えられない人物は誰か。
 それを知っているマルカブは、低く息を吐いた。かつての仲間に起きたことを必死の思いで過去のことにしようとしている老人だ。その鼻先に、かつての出来事と同じことを突きつけられている老人だ。
「・・・クー爺。お前も巣の外に出てろ。」
 先に気がつけば良かった、とマルカブは後悔しつつクー・シーに命じた。クー・シーは、そういうことでは、と言いかけて、だが
口を噤んでから
「・・・そう、だよね。そうするよ。」
「おう。・・・・・・悪かった、お前にミラを頼めば良かった。」
 付け加えるようなマルカブの言葉に、クー・シーは力なく首を振り、巣から立ち去る。死の匂いが充満する音もない部屋に残ったマルカブは、シェリアクに、
「・・・悪いな。クー爺は、・・・ここで仲間を亡くしてる。」
「・・・それは、かえって・・・すまないことをした・・・。」
「別にアンタのせいじゃない。」
 マルカブは言いながら、小部屋を見渡し、
「・・・俺も正直、町に帰りたい気持ちでいっぱいだ。」
「・・・私もだ。」
 シェリアクの同意に、マルカブは力なく苦笑を浮かべ、それから何時になく真剣な表情でシェリアクに向き直った。
「・・・こんなときに、こんな話をするべきじゃないことは分かってる。だが・・・カナエのような犠牲者は増やしたくないから言わせてもらう。」
「・・・・・・ああ。」
 彼が何を言うか、シェリアクは予測がついているらしい。静かに、続きの言葉を促しただけだった。だからマルカブも静かに続けた。
「・・・ここに赤い印をつけたかもしれない。でも、それは「かもしれない。」だ。そう、ガーネ・・・・・・エラキスに言ってくれ。ここに彼女を近づけるべきじゃない。同じことを繰り返すべきじゃない。」
 シェリアクは眉を寄せ、
「・・・カナエは記憶をなくしていたが、」
「・・・ああ?」
「もし、彼女がここで起きた出来事を覚えていたら・・・彼女とアガタの運命は違っていたのではないか?」
「・・・、何が言いたい?」
「いいか、私も犠牲者を増やしたくはない。エラキスをその一人には絶対しない。それは君と同じだ。だが彼女は『彼女』の過去を知るべきだ。もし、過去と同じような出来事が起きても、過去を知らない彼女はそこから逃げる術を知らないのだ。・・・『知らない』ことで繰り返してしまうこともある。」
 訥々と喋るシェリアクにしては口調が早い。それだけ『彼女』に必死なのだ。マルカブもそれは分かる。分かるからこそ、認めるわけにもいかなかった。
 認めたくはなかった。
「・・・それとここに赤い印をつけたことは関係ないだろ。」
「そうだな。だが、関係があるように言ったのは君だ。赤い印の件も、彼女の昔のことも、君は『無かったことにしろ』とそう言いたいのだろう。」
「・・・無かったことにした方がいいことだってあるだろ。」
「・・・無かったことに出来ることなどないだろう。」
 同じような言葉で全く逆のことを言い、二人はにらみ合った。その視線の中間に、ぶおん!と鈍い音とともに弩が振り降ろされた。直後、弩の足が地面に着地し、青い床にヒビを刻む。
「・・・はいはい、そこまで。」
 二人の間に弩を振り降ろしたのは勿論ディスケだ。呆れた調子で・・・むしろ怒りすら醸し出して、
「様子を見に来てみれば何やってんだ。そんな話をしてる場合かよ。爺さんは凹んでるしお嬢さんは心配してる。しっかりしろよ、おとーさん方。今、やんなきゃいけないことは何だ?」
 そう言いながら、ディスケは再び弩をかつぎ上げた。
「「・・・すまない。」」
 ほとんど同時にマルカブとシェリアクが謝った。ディスケは「・・・似たもの同士だな。」と呟いてから、先に巣の出口へと向かっていった。シェリアクは息を吐き、
「・・・いい仲間だ。」
「・・・たまに迷惑だけどな。」
「・・・エラキスのことを譲る気はないが、」
「あ?」
「彼女が知りたい、と言ってきたのなら・・・教えてやってほしい。」
 シェリアクは巣の出口へ進み出しながら、
「もっとも、彼女の意志を断るつもりは、君にはないだろうが。」
 そして振り返りもせず、
「私が彼女の意志を押し切ってまで、彼女が記憶を取り戻すべきだとは言えないのと同じように。」
 そう言うシェリアクの背中に
「・・・どういう意味だ。」
 と問いかけたが、答えは当然返ってこなかった。

*****

 一方、樹海で一行が古代魚の巣に踏み込む少し前の時間。
 宿のカリーナは、きゅっと唇をかみしめてから、扉をノックする。どちら様?という声がした。
「カリーナです。お願いしたいことがあります。」
 少しの間のあと、扉が開いた。そっとのぞき込むように中から顔を出したのはエラキスだ。カリーナは、突然申し訳ありません、と頭を下げてから、
「お願いしたいことがあるんです。」


(八章4話に続く)

---------------あとがきのようなもの-------------------

こんな話だったので、地震直後の更新は見送りました。
もともとムロツミがどうなったかははっきり書かない、というつもりではありましたが。

今、そんなことを話してる場合じゃないおっさん二人の会話が不謹慎だと思うんですが、
極限状態で「それどころじゃない。」という行動を取る、というのも極限状態の表現かな、とも。
まあ、いずれにせよ、うちの話の中では眼鏡バリが何だかんだ言って一番大人なようです。

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