まよらなブログ

八章4話。

先走った志水の「世界樹カンケーねえ!」な「世界樹の迷宮?」妄想話です。
(今回から通常運営に戻ります。)

井藤さんらが主催をしている
世界樹の迷宮・少年パラディン合同誌「週刊少年パラディン」、
告知サイトでCM公開中です。
CMを見たときの正直な感想は「本気で遊びすぎだ編集部ーーーー!!(笑)」でした。
本気でふざけるって言ってたけど、そうかこういうことか・・・・・・!

そして「なんか、売り文句みたいのを考えてよ」と井藤さんに言われて、
お風呂で思いついた「鉄壁の少年漫画誌」がくるくる回って登場するのを見て、
もっとカッコいい文句を考えておけばよかったと後悔の念で一杯です。



・・・ということを3月13日の更新の際に書こうと思っていたのですが見送っておりました。
とはいえ、いつまで見送ればいいのかよく分からないのでそろそろ書かせていただきます。
頒布予定だった春コミも中止になり、
「週刊少年パラディン」も自家通販を考えているようです。


そんなこんなで、
「少パラ」こと「週刊少年パラディン」告知サイトはこちらから、
(むしろ週パラと略した方が、正しいんじゃないか?パロディ的に。)
志水の妄想話に興味のある方は「つづきを表示」からどうぞ。




8章4話
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 仲間たちが帰ってきたらすぐ出迎えられるように、と思って、アヴィーは宿のロビーに置かれたソファに陣取って本を読んでいる。本日、何回目か分からない玄関の扉が開く音に顔を上げ、仲間たちではないと知ると再び本へと視線を落とした。そのアヴィーの前に、すっと影が出来る。
「アヴィー、ずっとここにいたの?」
 顔を上げるとカリーナがいた。アヴィーは頷いてから首を傾げ、
「カリーナこそ、どこにいたの?ずっと部屋にいなかったよね?」
「うん。ちょっとね。」
 カリーナは曖昧に頷いてから、アヴィーの隣に腰を下ろした。アヴィーも本に栞をはさみ、表紙を閉じた。そして二人は玄関を見つめる。カリーナが呟いた。
「待ってるのって、落ち着かないね。」
「そうだね。」
「・・・早く帰ってこないかな。」
「うん。」
「・・・ねえ、アヴィー。今度、出汁巻き卵の作り方を教えて。」
「いいよ。おじいちゃんに作ってあげるの?」
「うん。だって悔しいもの。」
 そうだね、とアヴィーは笑ってから、
「お弁当、食べてくれたかなあ。」
「お昼も過ぎてるし・・・。アヴィーは料理が上手だから、みんな喜んでくれてるんじゃないかな・・・。」
「カリーナも頑張ったしね。」
 アヴィーはにこにことそんなことを言う。それは彼の優しさだし素直さで、幼さだ。でも、頑張ったことまで弁当では伝わらない。カリーナは、そうね、とだけ答えた。
 アヴィーは不思議そうにカリーナを見つめ、そして宿の扉が開く音を聞いてぱっとそちらに視線を移した。中に入ってきたのは長い髭の老人と背の高い青年だ。青年の方が、何かを小声で老人に伝え、老人は力なく頷いた。
「おじいちゃん!」
「ディスケ!」
 アヴィーとカリーナが立ち上がって、二人を呼ぶ。老人と青年は、勿論クー・シーとディスケだが、はっとした表情をして二人を見つけた。そしてディスケが苦笑を浮かべ、
「何だよー、お前らここで待っててくれたのかよー。おにーさん、超うれしー。」
 あっはっはっは、と笑いながら、二人の肩を抱くようにして叩く。
「おじーちゃんも、超ウレシーーー!」
 と言いながらクー・シーが二人に抱きついてこようとしたので、それはディスケが裏拳で阻止した。
「あ!弁当ありがとな!旨かった!シェリアクとミラちゃんにもお裾分けしたけど大絶賛だったぞ!」
「うん、それなら良かった。」
 アヴィーは頷きながらディスケの背後、扉をちらりと見る。カリーナも不思議そうにディスケを見上げた。ディスケは「心配すんな。」と二人の肩を叩き、
「おとーさんはシェリアクたちと元老院と冒険者ギルドにご用だ。もうちょっとしたら帰ってくる。」
「・・・ギルドに?何で?」
 アヴィーの問いかけに、ディスケは「野暮用!」とだけ答えた。実際は『ムロツミ』の二人組のことをギルド長に伝えにいっている。冒険者を管理することが冒険者ギルドの仕事である以上、二人の身に起きたことは伝えておかなければならなかった。
「・・・二人だけ、先に帰ってきたの?」
 カリーナが尋ねた。ディスケは、おうよ、と答え、
「だって、爺さんが『疲れた疲れた』って言うんだもんよ!」
「だって、わし『疲れた』よ!」
 もうとっとと休んじゃうんだからね!と言いながら、クー・シーは階段をととととと、と上がっていく。踊り場でくるり、と振り返り、
「おじいちゃん、明日の朝まで爆睡だからね!起こさないでよ!」
「分かった分かった。休めよ、爺さん。お子ちゃまたちが部屋に行かないように見てるから。」
「頼んだよ!」
 とクー・シーは言って、再び階段を上っていく。カリーナはその背中を見て、
「・・・何か、あったの?」
 ディスケは言うべきかを逡巡した。『ムロツミ』の二人組のことを伝えるべきか。だが、言ったところでどうなる。しかし、言わなかったらどうなる?
「・・・大したことは起きなかったよ、俺たちには。」
 と、だけディスケは答えた。

*****

 その後、アヴィーとカリーナはやはり玄関近くのソファに陣取り続けた。ディスケは食堂からコーヒーをもらってきて二人と一緒にソファに座って時間をつぶす。ディスケが自分自身に課しているそのときの役目は、「子どもたちをクー・シーのいる部屋へ行かせないこと」だ。老人は古代魚の巣での出来事に打ちのめされているはずだが、それを子どもらに見せるつもりはないはずだ。
(爺さんは俺の家に行かせればよかったな。ミアプラ号でも良かったけど。)
 ディスケはコーヒーをすすって反省した。
とはいえ、自分一人しか帰ってこなかったら、子どもたちは何を想像するんだろう、とも思う。ディスケの隣では、カリーナがアヴィーの本をのぞき込んでいる。そこにかかれた星図に「あ!冬の大三角!」と発見した。
「あ、この前、マルカブに教わってたよね。」
 アヴィーが星図をなぞりながら尋ねると、カリーナはうん、と頷いた。
「そういえば、青星の下にある星を見ると長生きできるとか、そういう話もしてた。」
「カノープスのことだね。この辺でも水平線の真上に上ってすぐに沈んじゃうんだって。だから見えたら、長生きするくらいに縁起がいいんだよ。」
 アヴィーの解説を、ふうん、と聞いていたカリーナだが、玄関の扉が開く音にぱっと顔を上げた。入ってきたのは巨漢と少女。シェリアクとミラだ。
「おう、お疲れさーん。」
 ディスケが片手を上げて二人を迎える。シェリアクは頷き、それからアヴィーたちに歩み寄り、
「君らの作った弁当を少しいただいた。旨かった。ありがとう。」
 と、誠実に口にする。アヴィーとカリーナは気恥ずかしそうにしながら頷いた。
「うちのおとーさんは一緒じゃないの?」
 ディスケがコーヒーをすすりながら、顎でアヴィーとカリーナをしゃくり、
「うちの可愛いお子ちゃまたちがお待ちなんだけど。」
「私たちは元老院へ、彼は冒険者ギルドへ行った。そろそろ戻ってくると思うが・・・何か話をしているのかもしれない。」
 シェリアクはそして、顔色の悪いミラをちらりと見て、
「・・・すまない。少し疲れたようだ。エラキスに帰ってきたことを伝えたいし、失礼させてもらう。」
 そしてシェリアクはミラを呼び、彼女の背を軽く押して階段を上がっていく。シェリアクはふと立ち止まり、心配そうに口を開いた。
「・・・クー・シー殿は・・・」
「ああ、爺さんも休んでるよ。」
 ディスケはシェリアクにすべてを言わせる前にそう口にし、ひらひらと手を振って、
「・・お疲れさん。」
 と、静かに伝えた。


*****

 それから何度目かの扉が開く音で、やっと待っていた人が帰ってきた。
「マルカブ!」
「おかえり!」
 カリーナとアヴィーはぱっと立ち上がり、駆け寄っていく。マルカブは二人を見て、ほっとした様子を見せて、持っていた紙袋をカリーナに渡してから、
「おう、ただいま。」
 左右の手でそれぞれの頭を強めに撫でる。やっと帰ってきた、と心の中で嘆息した。
「・・・ああ、そうだ。弁当、旨かったぞ。カリーナも初めての割に上出来だ。」
「・・・ホント?」
「・・・ま、焼き具合がどうとか言わねえけど。味付け、上手いな。」
 それでも不安そうにしているカリーナの頭を、そう言いながらもう一度くしゃりと撫でる。カリーナは渡された紙袋を胸に抱くようにして、うん、と小さく頷いた。
「何だよー、お前らー。」
 ディスケが唇を尖らせながら、寄ってきて
「俺と爺さんが帰ってきたときは駆け寄らなかったくせにー。」
「人徳の差だ。」
「単純におとーさんかどうかっていう差だよ。」
 と言いながら、持っていたコーヒーを啜る。マルカブはカリーナに渡した紙袋に目をやり、
「それ、土産だ。揚げたてだってよ。」
「おみやげ?」
「甘いにおいがするね。」
 アヴィーがくんくん、と鼻を鳴らしながらいい、カリーナは紙袋の口をあける。
「ドーナツ!」
 こんがりキツネ色の円に砂糖を少しまぶした中味を、カリーナは笑顔でアヴィーにも見せる。アヴィーも、うわあい、と声を上げて、
「みんなで食べよう!僕、お茶淹れてくる!」
「私も手伝う!」
 と、二人はたーっと厨房へ駆けていく。宿に迷惑かけんなよ、とマルカブは声をかけてから、ため息をついた。ディスケが珍しく神妙な顔をした。
「・・・お疲れさん。」
「おう。・・・クー爺、どうした?」
「部屋で寝るって言って上がっていった。・・・でも、ドーナツ食うか、聞いた方がいいんだろうな。」
「・・・・・・ガキどもに『ムロツミ』のことは、」
「言ってない。言ってたら、あんなに無邪気にドーナツで喜ぶかよ。」
「・・・言った方がいいと思うか?」
「・・・・・・いつかは言った方がいいと思う。どうせバレる。だったら、俺らからちゃんと話した方がいい。」
「・・・、ギルド長にも同じこと言われた。」
「だろうなあ。・・・っていうか、ギルド長にも相談したのかよ。」
「話の流れだ。・・・俺も、言った方がいいとは思うんだよ。・・・俺らだけが見たことなら、隠し通してもいいんだ。でも・・・ミラに、黙っていてくれっていうのは可哀想だしな。」
「余所の子まで心配して、本当におとーさんったら心配性。」
「・・・まじめな話をしてるんだ、俺は。」
「分かってるよ。俺も概ね同意見。でも、今すぐする必要があるのか、とは正直思えないよ。辛いだろうが・・・俺らが。」
「・・・ああ、クー爺にも心の準備が必要だろうしな。」
「・・・だから、お前さー。」
「あ?」
「辛いだろうが、お前もよ。なのに他人のことばっか気にしてさ。俺は優しくないから、それを『優しさ』だとは言い切らないぞ。そうやって自分以外を心配することで、自分の辛さを誤魔化しているのかもしれないし。」
 ディスケの最後の一言に、マルカブは一瞬唇を引き結んだ。それから、ゆっくりと息を吐き、
「・・・そうなんだろうな、きっと。」
「そういう自分を薄々分かってるから、お前は自分がいい人だってことを否定するんだろうけどさ。どうしようもないお人好しのくせに。」
 ディスケは、めんどくせえ奴だよなあ、と笑ったが、そんなことは思っていなそうだった。
「まあ、それでも優しさには充分なんだからいいんだけど。」
「わしは!」
 ディスケが肩を竦めて言った言葉に重ねるように、階段上から声がした。
「そんなうちのおとーさんが抱きついちゃうくらいに大好きだけどねひゃっふーー!」
 声を聞いたマルカブは、とりあえず勘に従って、階段上から飛んできたクー・シーを叩き落とした。ごすん!と鈍い音を立てて、クー・シーは地面に顔面から着地した。
「ヒドいよヒドいよ!おじいちゃんは素直な気持ちを表現しただけなのに!」
「だからイチイチ抱きついてくんなッ!」
「あれー、爺さん、朝まで爆睡の予定だったんじゃねえの?」
「年をとると長く寝れなくてイヤだね。」
 クー・シーはそう言いながら、やれやれ、と立ち上がり、
「おじいちゃんが凹んでると、おとーさんはグダグダ考えちゃうだろう、と思って起きてくることにしたよ。」
 膝の辺りの埃を払いながら、
「そういうわしも、辛くなりたくないから他人の心配をしてるのかもしれないけどねえ。だからこそ、痛み分けは必要だと思うんだよね。言葉の用法、間違ってるけど。」
 そして、ふふん、とわざとらしく鼻を鳴らす。
「わしも『優しくない』から、辛いことはみんなで分ければ軽くなる、なんて脳天気なこと言わないよ。でも、同じ場所で同じもので辛くなったのなら、一緒に振り返ってもいいと思うね、わし自身の為にも。」
 それは優しさに充分ではないかね?とクー・シーは片眉を上げて問いかけた。俺の真似すんなよー、とディスケがわざとらしく唇を尖らせる。マルカブはため息を一つ吐き、それでも何かを安心した。
 何一つ解決はせず、悲劇は回避出来なかった。何度も後悔を繰り返すに違いない。それでも、それでも、何かを安心する。おそらくそれは、独りではないということだ。
 だからこそ、子どもたちにも、独りではないことを伝えようと思うのだ。


(八章5話に続く)

---------------あとがきのようなもの-------------------

7時に宿をでて磁軸を使い野営地に寄って古代魚の巣につくのは3時。
ということをレベル75パーティで検証して、書き始めました。

眼鏡バリが痛いところを突いてます。
果たしてソレは本当に優しさか。優しさを言い訳にした隠れ蓑か。
まあ、どっちだっていいじゃない、めんどくせえ。
誰かにとって充分に優しければそれでいいのだろう、と思います。



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